・・・記憶を整理することが、メンタルを守る理由
何もしていない時に限って、思い出したくない場面が浮かんでくる。
会社で言われた一言。遅刻しそうになった朝。ミスした瞬間の空気。
「もういい、忘れよう」って言い聞かせたのに、むしろ鮮明になる。
この感じ、たぶん、あなたも知ってると思う。

「ふと思い出す」じゃなくて、「意図的に振り返る」へ
何もしていない時に限って、
思い出したくもない場面が、急に浮かんでくる。
会社で言われた一言。
失敗した瞬間。
「もっとこうすればよかった」という後悔。
別に、今考えなくてもいいのに。
むしろ、考えたくないのに。
それでも、勝手に思い出してしまう。
「考えないようにする」が難しいのは、意志が弱いからじゃない
考えないようにしようとすればするほどに、
嫌な事ばかり思い出してしまう。
これは実験でも、はっきり出ています。
有名な研究に「白いクマを考えるな」という思考抑制の実験があります。
「白いクマを考えないように」と指示されるほど、逆に頭に浮かびやすくなる・・・いわゆる“白熊効果”です。
これが示しているのは残酷な事実で、
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「忘れよう」と命令するほど
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脳内で“忘れてないか監視する仕組み”が動いて
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その対象をむしろ活性化させる
ということ。理屈としては「皮肉過程(イロニック・プロセス)」と呼ばれます。
人は、
「考えないようにしよう」とするほど、
その対象を監視してしまい、
結果的に、より強く思い出してしまう。
つまり、
「忘れよう」
「気にしないようにしよう」
この努力そのものが、
心を疲れさせてしまうことがある。
正直に言えば、
人は自由に記憶を消したり、思い出さないようにしたりは出来ない。
忘れようと意識した瞬間に、その記憶はむしろ強くなる。
だから私は、「忘れること」を目標にするのをやめた。

忘れない代わりに、どの記憶を見つめ直すかを選び直すか?
代わりに意識しているのは、記憶や出来事を、どう扱うかということ。
仕事中は、仕事に集中する。
忙しい時間に感情を掘り返さない。
なぜなら、感情が動くと行動が乱れて、ケアレスミスが増えてしまうから。
これは怠けでも逃げでもなくて、自分を守るための判断だと思っている。
ここで出てくるのが、
**TNT(Think / No-Think)**という考え方。
これは、
「思い出す」「今は思い出さない」を
意識的に切り分ける訓練のようなもの。
大切なのは、永遠に思い出さないことじゃない。
「今は扱わない」
「後で向き合う」
そう区切ることで、記憶に振り回されにくくなる、という考え方。
完璧に出来るわけじゃない。
フラッシュバックする日もある。
突然、思い出してしまう瞬間もある。
でもその時は、
「また思い出した自分はダメだ」
とは思わない。
代わりに、どの記憶を見つめ直すかを選び直す。
自分の記憶・思い出の中で何を思いだしたいか?
今考えたくない事柄から、想いを馳せたい出来事へと自分の思考を持って行く。
記憶は消せないし、簡単に忘れることなんて出来ない。
でも、どの記憶を選んで思い出すか?くらいは自分で出来ても良いんじゃないかな?
懐かしい記憶
楽しかった思い出
一生懸命に生きた時期
何でも良いと思う。自分が見たい過去を見るのは、自由の一つだと思うから・・・
でも、だからって・・・嫌なコト・失敗したこと・怒られたこと・間違えたことや傷つけたことを忘れてしまって、無かったことにしたらいいなんて思っていない。
私は「全部忘れる」が正解だとは思っていない
正直に言えば、失敗や間違いを全部忘れてしまったら、
同じことを繰り返すだけだと思っている。
反省も、後悔も、生きる上では必要なものだ。
だから私は、忘れることを善だとは思っていない。
でも、何もかもを同時に抱える必要もない。
後悔は必要。反省も大事。
ただ、それが仕事中に暴発して、今日の行動を壊すなら・・・それは「使えていない後悔」になる。
だから私は、忘れることを目指さない。
見つめる先を選ぶ。
夜に回収して、用途で分けて、行動に翻訳する。
そうやって、今日の私を守る。
完璧にはできない日もある。
フラッシュバックもある。
でも、向け直せたらそれでいい。

意図的に「振り返る」
だからこそ、記憶を整理する。
意図的に「振り返る」ようにして、自分の記憶をコントロールできるようにしたい。
それは、「ふと思い出す」から解放されることだと思っている。
思い出すこと自体が悪いわけじゃない。
問題なのは、
・タイミングを選べない
・感情ごと引きずり出される
・行動に集中できなくなる
この状態。
記憶を整理するというのは、忘れることでも、消すことでもない。
「思い出す主導権を、自分に戻すこと」だと思う。
記憶の整理がもたらすのは、主にこの5つじゃないかな?
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自分を責め続ける時間が減る(責める材料を“選別”できる)
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仕事中の感情暴走が減り、ケアレスミスが減る(注意資源を守れる)
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反省が“反芻”になりにくい(反省を行動に翻訳できる)
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後悔が「杭」ではなく「糧」になりやすい(意味付けの手順ができる)
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思い出す主導権が戻る(勝手に引きずり出される回数が減る)
ここで大事なのは、整理の目的が「全部忘れる」ではないこと。
意図的に「振り返る」っていうこと
Step1:記憶を回収する(全部いったん出す)
「今日は何があった?」
いいことも悪いことも、いったん並べる。
ここで美化しない。否定もしない。
ただ回収する。
Step2:ラベルを貼る(用途で分ける)
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反省用(次の行動に使える)
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感情処理用(痛いけど、抱え方を選び直す)
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雑音(自分を責めるだけで、行動に変換できない)
記憶や思い出の「取捨選択」は、善悪で裁くことじゃない。
用途で分類することです。
必要な事実と、感情として受け取った事実と、自分を否定してしまう可能性の部分。
どこを見たいのか?どれが自分にとって必要なことなのか?
ちゃんと記憶を整理することで、次の自分に何を繋げられるか?って言うのが分かるんじゃないだろうか?
※実験でいうと、「抑制対象が来た時に別の思考を生成する」方略がTNTで侵入を減らした、という報告もあります。
Step3:翻訳する(後悔を行動に変える)
反省用だけ、最後に一行でいいから“行動”に翻訳する。
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「明日は提出前に5秒だけ見直す」
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「焦ったら、まず深呼吸して手順を声に出す」
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「言われた言葉は夜に回収、仕事中は作業だけ」
明日の自分が、これからの自分が違う選択が出来て、行動を変えられるようになるにはどれが必要なのか?
ちゃんと記憶の取捨選択をする。
後悔は生きる原動力になると私は感じてる。
その後悔をどう生かすか?って言うのは、自分次第なんだ。
私は失敗やケアレスミスが多いから。日々同じミスを繰り返してしまっているんだけど・・・
それでも、何とかしたいと思っているから書いているんだろう。

そして、どれを思い出したいのか?
自分が任意で選んだ記憶を思い出す・その思い出にフォーカスしてピントを合わせて、
選んだ事実から好きに自分に浸ったらいいと思う。
決して事実を否定するわけじゃなく、自分好みの思い出をメインで思い出すのはきっと悪くないって思うよ。