眠れない夜って、だいたい「自分がこの世界に居ていいのか分からなくなる夜」だと思う。
体がしんどいとか、頭が冴えるとか、
そういう話じゃなくて。
もっと根っこのところが、じわじわ揺れる。
「明日もちゃんと働けるかな」
「また迷惑をかけるんじゃないかな」
「役に立たない自分は、いつまでここに居ていいんだろう」
そんな問いが、誰にも頼まれていないのに、勝手に胸の中で始まる。
弱者でいるって、こういう感覚だと思う。
いつでも奪われる側に立たされている感じ。
いつでも「代わりはいくらでもいる」と言われそうな感じ。
だから、言葉が欲しくなる。
思想が欲しくなる。
自分を否定しないための、何かが欲しくなる。
でも、同時にこうも思ってしまう。
これって、ただの負け犬の遠吠えじゃない?
社会に適応できない私が、自分を正当化したいだけじゃない?
この疑い、たぶん、弱っている人ほど強く刺さる。
ソクラテスは、プラトンがいたから生き残った
眠れない夜って、だいたい「自分の価値」が揺らぐ。
身体が動かない。頭が冴える。明日が怖い。
そして気づけば、社会のルールが頭の中で勝手に裁判を始める。
働けないかもしれない。
稼げないかもしれない。
役に立てないかもしれない。
その瞬間、ただの不眠が、ただの疲れが、
「排斥の予告」みたいに感じてしまう。
弱者でいるというのは、こういうことだと思う。
いつでも奪われる側にいる。
いつでも「消えてもいい」と扱われる側にいる。
だからこそ、言葉を持ちたくなる。
思想を持ちたくなる。
自分を否定しないための根拠が欲しくなる。
でも同時に、こういう疑いが刺さる。
これって、負け犬の遠吠えじゃないのか。
ただの嫉妬と怨嗟を、思想って呼んでるだけじゃないのか。
ソクラテスが“歴史に残った”のは、プラトンがいたから
ここで思い出すのが、ソクラテスとプラトンの関係だ。
ソクラテスは、問い続けた人だと言われる。
でも、その問いは「書かれていない」。
残したのはプラトンだった。
冷たい言い方をすれば、
ソクラテスが歴史に残ったのは、プラトンが優秀だったから。
もしプラトンがいなければ、ソクラテスは「異端」で終わっていた可能性がある。
その問いは、価値として証明される前に消えていたかもしれない。
つまり、こういうことだ。
思想は、内容だけでは生き残れない。
思想が生き残るには、証人が必要だ。
承認が必要だ。
媒介する力が必要だ。
ソクラテスの思想が生きたのは、
ソクラテスの強さだけじゃない。
プラトンという他者がいたからだ。
弱者の思想は、最初から「殺されやすい」
弱者の言葉は、残りにくい。
残りにくいどころか、消されやすい。
なぜなら、弱者の言葉は、社会にとって都合が悪いから。
構造の矛盾を言語化してしまうから。
「運用」を止める可能性があるから。
さらに弱者は、立場を持たない。
肩書きも、権威も、味方も、証人も、持てないことがある。
だからこそ、言葉は遠吠えになりやすい。
誰にも届かない。
届かないから、無かったことにされる。
無かったことにされるから、自分で自分を疑う。
私の思想は、ただの怨嗟かもしれない。
私は異常者で、社会不適合者で、負け犬なのかもしれない。
この自己疑いは、弱者の“当たり前の副作用”だと思う。
否定された側は、否定される前に、自分で自分を否定してしまうから。
それでも、問いを捨てない理由がある
ここで大切なのは、慰めじゃない。
「大丈夫だよ」でもない。
現実はちゃんと残酷だ。
弱者の言葉は、消される。
弱者の思想は、遠吠えとして片付けられる。
そして社会は、何事もなかったように回っていく。
だからこそ、必要になるのが「プラトン機能」だと思う。
問いを、言葉として残す。
残して、並べて、整理して、編集して、見える形にする。
怨嗟のまま終わらせない。
ただの感情の爆発で終わらせない。
弱者の思想を、弱者のまま“生き延びさせる”ために。
「プラトン機能」とは、才能ではなく、生存技術
プラトン機能って、たぶんこういうこと。
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その時の自分の言葉を、ログとして残す
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自分の痛みを、言葉に翻訳する
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思いつきを、散らさずにまとめる
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書きっぱなしではなく、編集して残す
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いつか誰かが拾える形にしておく
これは、成功者の証明のためじゃない。
有名になるためでもない。
消されないためだ。
弱者の言葉が「無かったこと」にされないためだ。
そして何より、
自分が自分を否定しないためだ。
社会が「無価値」と言ってくるなら、
私は「それでも在る」と言い続ける必要がある。
たとえ証人がいなくても、ログは残る
ソクラテスにはプラトンがいた。
でも私は、必ずしもプラトンを待てない。
誰かが現れるまで、
私は生き延びなければならない。
だから、先に残す。
先に書く。
先に整理する。
先に編む。
言葉は、その時点で弱くてもいい。
脆くてもいい。
遠吠えでもいい。
遠吠えを、ログに変える。
ログを、思想に育てる。
それができるのは、
「正しさ」を持っている人ではなく、
「消えそうな灯」を抱えた人だけかもしれない。
シンプルフレーズ
あなた自身が、自分のプラトンになれる
ソクラテスが生き残ったのは、プラトンがいたから。
それは事実だ。
でも、現代は違う。
現代は、あなたが書ける。
あなたが残せる。
あなたが編集できる。
思想の生存回路を、他者にだけ委ねなくていい。
たとえ弱者でも。
たとえ奪われる側でも。
たとえ承認がなくても。
あなた自身が、自分の問いの証人になれる。
あなた自身が、自分のプラトンになれる。
























