ネタばれ注意!本誌ACT196(1/5発売)の関連妄想です!
未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!
にも初提出とさせていただきました!
メロキュンになるかちょっと怪しいですが、よろしくお願いします~
長くなりそうなので、タイトルを分かりやすいようにナンバリングしました。
亀の歩みで進みますがよろしくお願いします。
これまでのお話
ACT196妄想-12-(side/R-7)
「・・・すき・・・」
小さな声は幻聴だと思った。
顔を覆って抵抗する手を無理やり取り払い、暴いた素顔はやっぱり最上キョーコのものだった。
彼女の謝罪の意味が理解できずに濡れて揺れる瞳の奥にある感情を読み取ろうと必死で、俺はこの子の唇が動いていたかなんて見ていなかったから。
(重症だな・・・。いくらこの子に執着しているからって、こんな状態でそんな幻聴を聞くなんて)
何の脈絡もなく突如聞こえた単語は、泣きながら謝罪を繰り返すこの子と俺の現状にはどう考えてもそぐわ無かった。
それより・・・
『隣に・・・そばに居させて下さい』
懇願するようなセリフが耳に残っている。ともすれば勘違いをしてしまいそうなくらい、俺には甘美な声音だった。
(だから期待しちゃいけない。この言葉はセツカを演じるからカインの隣に居させてくれという意味だろう)
兄弟としてこのホテルに足を踏み入れた時、色々と自信が持てなくなりそうでセツカの仮面をはがして俺の相手が務まるかと追い出そうとしたことを思い出した。
いままさにそれが叶うような状況なのに、素に戻ってしまっているこの子の方からちゃんと演じる努力をするからお守り役を続投させてくれと懇願されている。
(・・・まったく、仕事に対しての根性には参ったな)
社長からお守り役と言われラブミー部としてセツカの依頼を受けたのだから、演技で躓こうがこの子が持ち前の律義さで仕事を途中で放棄するようなことをするはずがないんだ。
そう、すべてこれは『仕事』だ。
どうしてこの子がセツカを演じられずにいるのか理由を探っていたはずなのに、『そばに居たい』と懇願する言葉にあらぬ方向に思考が転がっていってしまった。
(今考えたいのはそこじゃないだろうっ)
性懲りもなく学習能力を働かすことができず勝手な期待をして落胆した俺は、当初の目的も忘れこの子の一挙手一投足にまたしても翻弄されていた。
頭の中を整理し、今セツカでなく素の最上さんでいる理由を探ろうと、目の前にある『最上さん』の表情をじっと見つめた。
その瞳の色は何を示しているのか。
改めてじっと見つめた瞳は、涙の海に沈み込んでしまいそうだったけれどもまっすぐ俺を見ていた。
目をそらさないように、視線を絡めて捕まえる。まっすぐ見ているというより、俺が捕えているから視線を外せないのか。
それでも結ばれた視線に、俺の方がカインではないことを見透かされているような気にもなってくる。
時間にしては数秒だったと思う。でもとても長く感じた時間は彼女の表情の変化で動き出した。
「・・・?」
俺を見上げるその顔の、頬や耳がジワジワと赤く染まっていく。
その色には見覚えがあった。
そう、不破とのキスに嫉妬してこの子の頬にキスをしたあと、後ろ姿だったけれども声をかけたら耳まで赤く染まったあの時の色と同じだ。
(あの時は男として意識されてる夢の反応に思わず嬉しくなったっけ・・・)
思わず思い出して、あの時と同じようにこの子の目の前にも関わらず口元が緩んだ。
(でもどうして、今、この反応なんだ?)
強化された学習能力はついさっき聞いた言葉を幻聴と認識していた。
緩んだ口元のまま、まじまじとこの子を見つめてみればついに耐えきれなくなったのかふいっと顔をそらされた。それでも組み敷いでいる状態では赤い顔は全く隠せてはいない。
どういうことなのか、先ほどまでの状況を思い返してみる。
『すき』
幻聴と思っていた言葉が脳裏に蘇った。
好きだとストレートに伝えられればどんなにいいだろう。
いっそ、このまま自分の想いを伝えてしまった方が楽になるだろうか?
(好きだと言って、そのあとどんな顔をすればいいんだろう・・・)
「・・・!?」
好きだと伝えて、沈黙が続けば恥ずかしくもなるだろう。
顔だって真っ赤になるかもしれない。
目を合わせていることだって、できないかもしれない。
想像した反応は今自分の下に居るこの子の反応とすべて合致する。
(さっき聞いたのは幻聴じゃなかったのか?)
誰が?誰に?『好き』だと言った?
(この子が・・・俺に・・・?)
信じられない気持ちと、強化された学習能力がすんなりこの状況を認めてはくれない。
いや、そう思い込んで間違っていた時にはもうどう収拾をつけてよいのかもわからない。
「・・・最上さん、今、なんて言った?」
もし仮に、万が一、期待した通りの状況であればこれほど格好の悪いセリフは無い。
告白を聞き逃して、二度聞きするなんて。
それでも、この子の行動はいつも予測がつかないからこんな段階で期待なんてしてはいけない。
彼女が演技で逃げられない様に「最上さん」と呼んで俺がカインでなく「敦賀蓮」であることを伝える。
礼儀正しい君のことだ、こんな状況で先輩からの質問に答えずにやり過ごすことなんてできないだろう。
「・・・え、いえ・・・あの・・・何でもな」
「何でもないなら、ちゃんと答えて」
この期に及んで逃げようとした言葉を遮った。
「わ・・・私、セツカに」
「演技は一時中断。俺は今最上さんって呼んだよね?」
焦る気持ちが言い訳をするこの子の言葉尻を捕えて押し込める。
「君が今セツカになれていないことは明白だ」
(確かめたい)
「最上さん、何があった?・・・何を考えている?」
逸らした顔の顎を取って、こちらを向かせる。
もう一度、逃さないように視線を絡めて、赤くなって動揺している顔を見つめる。
なかなか出てこない回答に、焦れて。
「すきって言った?」
「・・・・・っ」
ピクリと揺れた肩に、先ほどの言葉は幻聴でなかったことを確認した。
問題はその先だ。
「・・・誰のこと?」
口にしてしまってから、自分の方が窮地に立たされていることに気が付いた。
もしここで、別の誰かを指していることが判明したら、俺はどうするんだろう?
(でももうこれ以上は無理だ)
我慢も曲解ももうたくさんだ。
それに、この子がどこを向いていても諦めないと決めているのだから。
「・・・・・・・俺の・・・こと?」
向かい合った瞳が、今迄で一番大きな動揺を見せていた。
きっと聞いた俺の声も、同じくらい震えていたと思う。
続き→
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ちょい短めですがここでいったん切ります。
・・・わたしゃ情けないよ、蓮さんorz
あんたここまで・・・!!!