ネタばれ注意!本誌ACT196(1/5発売)の関連妄想です!
未読の方、コミックス派の方はバックプリーズ!!
にも初提出とさせていただきました!
メロキュンになるかちょっと怪しいですが、よろしくお願いします~
長くなりそうなので、タイトルを分かりやすいようにナンバリングしました。
亀の歩みで進みますがよろしくお願いします。
これまでのお話
ACT196妄想-7-(side/R-4)
ホテルに戻る道を歩く。
時計は時間を確認しようとして携帯も何も持たずに出てきたことに今更気が付いた。 おそらく1時間は経過しているだろう。 いくらなんでも、仕事に熱心なあの子のことだ。ちょっと買い物に出ただけの俺の帰りが遅ければ心配するだろう。
セツカとしてなら部屋で待っているか?それとも外に探しにでるか? どちらにしても、戻れば小言の一つは言われるだろう。
ホテルのロビーを通り抜け、エレベーターに乗り込む。相も変わらずロビーは無人だった。
鏡張りのエレベーターで、自分の姿を見る。
芝居への熱意とあの子への想い。
今の自分を形作るのはその二つだ。
逃げるようにこのエレベーターに乗り込んだ時には、自分の闇と向かい合いあの子との芝居に振り回される自分を自覚した。
あの子にも芝居では負けたくないと強く思った。
母国で挫折し、消えてしまおうかと思っても生きる糧となった芝居への熱意。
それは、何度否定されようと諦めることができなかった自分の生存本能に近いものだ。
ならばあの子への想いも同じなのではないか?
(否定されても、拒絶されても、もう諦めることなんてできない)
首筋に刻まれた印が疼く。
役柄の上であっても、あの子に残された所有印はもう一生消えることはない。
部屋のドアの前に立ち、手の中のカードキーを見る。
(・・・緊張してるのか)
手にしたカードキーがわずかに震えているのに苦笑する。 負けないと決意したのに、自分は挑む立場なのだと痛感した。
静かに息を吐き、カインを憑かせる。 この先は、暗黙のルールが支配する2人だけの舞台だ。
ピッ・・・カチリ・・・
小さな機械音が舞台のドアが開いたことを知らせた。
静かにドアを開くと、薄暗い室内。 ベッドサイドの照明だけつけているのか通路の先に広がる部屋の奥がだけぼんやりと明るい。通路からではベッドは足元だけしか見えず、入口からは人影を見つけることができない。
(寝てるのか?それとも・・・?)
耳を澄ませばバスルームから水音もなく、見えない部屋の死角にセツカが居るかどうかも分からない。 それほど部屋は静まり返っていた。 警戒しつつも歩を進める。
数歩進めると死角になっていたベッドが見え、気配もなくベッドに腰掛けるあの子が目に入りわずかに息が止まる。
それは安堵か緊張か。
「セツ、悪かった。遅くなって」
クローゼットに上着を放り込みながら、セツカの後ろ姿に声をかける。 部屋着の彼女はゆったりとしたニットワンピで足を投げだしベッドに腰掛けている。背中を向けているため表情はうかがい知れない。
「・・・セツ?」
遅いとか、どこまで行っていたのかとかセツカなら当然返ってくるだろうセリフはなく、反応すらない。
訝しんだ俺はもう一度彼女を呼んだ。 何のアクションも返ってこないことに、なぜだか胸騒ぎがした。
クローゼットを閉め、反応のないあの子に歩み寄る。 自分のベッドに腰を下ろせばギシリとスプリングが軋んだ。
その音に、あの子は俯いていた顔をヘッドボードの方に向け俺から顔をそらす。
「どうした?」
想定外のセツカの態度に今の状況を推理する。
怒っている?
拗ねている?
ベッドサイドの時計に目をやると部屋を出てから1時間半が経とうとしていた。
「・・・悪かった、遅くなって」
先ほどと同じセリフを口にし、機嫌を伺うように飲みかけであろうマグカップを持っている手に触れた。 触ったカップはすでに冷え切っており、手にしたままのカップと半分以上残っている中身。 風呂に入っておけと言い残したのに触れた手は冷たかった。
何時からこうしていたのか?
一気に警戒心が高まった。
セツカらしからぬ反応に、不自然な状況。
カップを取り上げ、ベッドサイドテーブルに置いた。
「・・・・や・・・」
手を取ろうとしたら、小さい声が聞こえた。 頭の中でシグナルが激しく点滅している。
(おかしい)
顔を見せまいと身体を反転させようようとした彼女の左手首を右手で掴みベッドに押さえつけた。 座った体制のまま左手を固定され逃げられなくなった彼女の顎をとって逃げる瞳を捕える。
「!」
そこには涙が伝ったあとが頬に残っていた。
(何だ?何があった!?)
全く予想外の状況に頭が混乱する。 何をどうしてよいのか分からず、ただ目が離せない。
絡んだ視線の先で、彼女の瞳が大きく揺らぎおさえきれないとでもいうように涙があふれ始めていた。
「やっ・・・」
俺の視線を遮るように、ギュッと瞼を閉じ頭を振って先ほどと同じように顔を背ける。 ぱたっと涙がシーツに散って音を立てた。
(泣いているのはセツカじゃない・・・)
揺れる瞳はセツカの色を持っていなかった。
なぜ、どうして、常にセツカとして振る舞っていたこの子に何があった?
この子が、この部屋で、俺に対して、ルールを破ることを自分で許したりはしない。
左手を固定され勢いよく右側に顔をそらしたため、ゆったりした襟元から左肩が露出していた。
冷たい手に寒いだろうと混乱する頭でそんなことを思うが、目に飛び込んできた白い左肩に完全に思考が止まった。
さっきまであれほど思っていた、決意を破壊するかのような衝撃。
潮が引くように何も考えられない。 でも一度岸から引いた波は津波のようにうねり 黒い激流となって押し寄せようとしていた。
続き→
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さて、やっと小部屋から出てきたお二人さん。絡んでくださいな。ここまで来るのにどんだけ時間がかかってんの?
そしてなかなか終わらない。
そして、最後の表現。
「津波」・・・書いていて表現をためらいました。不快に思った方、申し訳ありません。
でも言葉を避ければその事象がなくなるわけじゃないし、他の表現を使ってみたものの意味が合致しないのでこのまま採用。
私も日本人、言霊にとらわれてますね。