メロキュン企画第8弾に覚悟を決めて飛び込んでみました!
今回のお題テーマは『新春!!蓮キョ☆メロキュンカルタ大会!!』
現段階では【あ】【ほ】【き】【ね】【す】【み】【な】【ゆ】の札が素敵な作家様によってアップされております!
日々増えていくカルタの札に、私も毎日ドキドキしながら拝読して楽しんでます
企画に関しては総合案内ピコ様 のブログをご参照ください!
私がゲットしたのは【こ】
さて、はたしてちゃんと『メロキュン』できるのでしょうか・・・
ちょっと長くなってしまったので、前中後編です。
では行ってらっしゃいませ
前回までのお話
Call my name 後編
恥ずかしくて呼べない。
アナタを丸ごと自分のモノにしたみたいで。
恥ずかしくて、心臓がぎゅうってなって、苦しくて。
呼んだらきっと、私の心臓は壊れてしまう。
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『レン』
自分の口から飛び出した畏れ多くも恋人のファーストネーム。
その事実に気が付いて、キョーコはフリーズしていた。
心臓が飛び出さんばかりにバクバクしている。
顔に血が集まるのがわかる。頭に上った血で頭痛がするほど。
「キョーコ?」
名前を呼ばれて更にドカンと大きく心臓が跳ねそうになるが、自分を呼ぶ声はいつも心臓を締め付けるあの声に似ているが少し低くて穏やかだ。
キョーコは自分の目の前に、ビックリした表情のクーを見つけて別の意味で固まってしまった。
「・・・せ、先生っ」
急にフリーズ&赤面のキョーコに声をかければ返ってきたのは先生と自分を呼ぶキョーコの上ずった声。
クーは先ほどまで自分の子供として振る舞っていたキョーコが、急に役が落ちて素になっているのを怪訝な表情で眺めていた。
「キョーコ、どうした?」
心配そうに自分を覗き込む父親の顔をしたクーに、たった今の自分の失態を思い返しキョーコは迷っていた。
いずれ報告はしようと思っていたし、こんな挙動不審な自分を心配してくれるクーに申し訳ない気持ちもあった。そして洞察力の鋭い大先輩の前で誤魔化しの演技が通用するはずもない。
覚悟を決め、揚げ物の手を止めてストンとクーの前に腰を下ろした。
「先生、私事なんですけど、聞いてもらえますか?」
キョーコの空気が落ち着いたのを見て、クーは内心ほっとした。素の表情で自分を見上げたキョーコにクーは優しく声をかけた。
「もちろん。でもそれは父さんにか?先生にか?」
クーの言葉にキョーコは少し考えた。
役者のことではないし、プライベートなことだ。
しかもクーは父親の表情で心配してくれていた。
「父さん・・・」
キョーコは思わずごくりとつばを飲み込んだ。自然と娘から彼氏ができたと報告した時の一般的な父親像が目に浮かんだからだ。
重量級愛情を誇るこの人はどんな反応をするんだろうか?と緊張と期待がキョーコの中で湧き上がった。
「報告があります。私・・・お付き合いする人が出来ました」
背筋を伸ばして、手は膝の上。姿勢を正してまっすぐ伝えてみたが、声はちょっと震えていた。
キョーコを見つめるクーの表情はわずかに目を開いて驚き、そして溶けるような微笑、のち険しい表情へと変化していった。
「キョーコを幸せにできるような男じゃなきゃダメだ」
最初は愛を信じないと言っていたキョーコが人を好きになることを知った事実に嬉しい驚きを感じた。
それでも、愛する娘を他の男に奪われた父親の複雑な気持ちにクーは自然と低い声になっていた。
「・・・誰だ?」
誰だといっても、キョーコの交友範囲をクーは広く把握しているわけではない。しかしクーの口からは思わず追及の言葉が出た。
「・・・せ、先生も知っている人です」
まるで先ほどのやり取りを繰り返しているようなセリフ。
クーの迫力に、キョーコはつい子供として父親に報告のつもりが演技ができず先生と呼んでしまう。
場の雰囲気にキョーコが相手の名前を出すのを躊躇うほどだった。しかし、クーの無言の圧力には抵抗できない。
「あの・・・・その・・・・」
「ん?」
「・・あの・・・・・・つ・・・敦賀さん・・・です・・・」
最後はクーを見てられずキョーコはうつむいて絞り出すように言った。
だんだんと小さくなったキョーコの声。最後は蚊の鳴くような声であったが、クーの耳にはしっかり届いていた。
「あの・・・先生もご存じのとおり私の尊敬する先輩で、時々意地悪だけど、優しい人、ですよ?」
そろりと、キョーコはクーを見上げた。
目を見開いて驚いた表情のクーがいたが、それは次第に破顔に変わった。
「・・・そう・・・か、彼か・・・」
クーの表情が崩れたのを見て鼓動が少しドキリと跳ね、キョーコは胸をおさえた。
どこかで見たことがあるような気がするその表情だが、父親が自分の交際を認めてくれたようでほっとしたからだと自分の鼓動の理由を推測した。
そして、やっぱりハリウッドスターのクーにも評価されている自分の恋人にじわじわと誇らしいような、くすぐったいような感覚が込み上げてくる。
一方クーは、告げられた相手の名前が自分の実の息子であることに言いようのない幸福をかみしめていたわけで・・・。
「キョーコは、幸せか?」
「え・・・は、はぁ・・・交際というのが初めてで、名前を呼ばれるだけでドキドキして苦しいくらいで、・・・でも恥ずかしくて自分は呼べなかったり・・・幸せというかなんというか・・・」
しどろもどろなキョーコの言葉だが、はにかんで少女らしい柔らかな表情を見せるキョーコにクーは安堵していた。
だんだんとゆでダコのように赤みを増すキョーコを嬉しそうに眺め、クーは先ほどの突然のフリーズ&赤面を思い出し少し意地悪く聞いてみる。
「・・・それで、彼の名前を口にして真っ赤になったのか」
「!!!」
図星を指されて、キョーコは言葉を発することもできず口をパクパクさせる。
「ちゃんと名前を呼んであげなさい。愛する人に呼ばれる自分の名は格別だぞ」
心の中でクーは実の息子にエールを送るため、恋愛初心者のキョーコに父親の顔で後押しをしてみる。
一方のキョーコは蓮が自分の名前を呼ぶときの状況を思い浮かべますます恥ずかしさで縮こまってしまう。
そんなキョーコの内面を知らず、キョーコの反応に娘とはかわいいものだなとクーはしみじみ感じていた。が、ふと『娘』というキーワードからキョーコが名実ともに『自分の娘』になる道が開けたことに気が付いた。
「キョーコ、結婚はいつするんだ?」
あっという間にいろんな想像をしたクーはウキウキとした表情でキョーコに迫っていた。
「え?」
突拍子もないクーの発言にキョーコは目が点になった。
「式は?もちろん私も出るぞ!父親だからな!!」
「はっ?せんせぇ!?」
「孫か・・・子供は?早く作れ。いいぞ~子供は!」
「!!!!!」
暴走パパと化したクーの発言に、キョーコは『子作り』の行為を思い浮かべてしまいボンと頭から湯気が上がる。
クーはすでに自分の世界へ入ってしまったようで、赤面のキョーコには気づかず式だの孫だのとブツブツとつぶやいている。
キョーコは恥ずかしさに目を回しながらも、クーのはしゃぎようから自分を本当に子どものように思ってくれるクーに温かい気持ちに満たされていった。
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クーを見送って仕事を終えたキョーコは、仕事が珍しく早く終わった蓮に夕食を誘われマンションにいた。
「ごめんなさい、自分から伏せてほしいと言っておいて」
「大丈夫、気にしてないから。俺は公表して構わないって言っただろう?」
食事を済ませ、食後のコーヒーを入れつつ二人で立ち話。
キョーコは蓮の了解を得る前にクーに交際を報告してしまったことを謝っていた。
報告する意思はあったものの、もう少し落ち着いてからと蓮と相談してと思っていたのだ。
「君の先生で父さんなんだろう?それに彼はハリウッドの人だから日本の俳優のプライベートなんてそうそう話す場もないよ」
でも、と気にするキョーコに蓮は小さく息をついた。
「で、彼はなんて?」
落としたコーヒーを手にリビングのソファに二人で移動する。
キョーコに気にしてないと言いつつも、実の父親に知らぬとはいえ自分の恋人から報告をされた事実にやっぱり蓮は気にしていた。
「最初はちょっと怖い、というか娘は嫁にやらん!とか言う感じの迫力で相手の名前をきかれたんですけど・・・」
ふふっと笑うキョーコの愛らしさに、蓮は抱きしめたい衝動に駆られる。
「敦賀さんの名前を出したら喜んでくれました。やっぱり敦賀さんは先生にも認められるスゴイ役者なんですよ!」
そうじゃないと思うけど、という言葉を蓮は飲み込む。
「それですごい勢いで、結婚は?式は?子供は?なんていわれちゃって困っちゃいました」
「・・・そう」
全然困っていない、むしろ嬉しそうな表情で笑うキョーコに、蓮も苦笑した。
もちろん、キョーコの表情と自分の父親の暴走っぷりに。
でも嬉しそうにクーの話を続けるキョーコに、子供っぽい嫉妬心が湧き上がるのも事実で。
「キョーコ」
条件反射の呪文を唱える。
ピクリとキョーコの肩が揺れて、蓮はむぅっとした上目づかいで睨まれた。
「・・・ずるい」
その上目使いこそ狡いよと蓮は内心呟きながら、キョーコの後れ毛を絡め取って首筋をくすぐる。
「彼に孫をプレゼントしてみる?」
「!!もうっ!!そんなこと言う!」
ふいっと顔を背けたキョーコに蓮は苦笑して更に囁いた。
「ごめん、キョーコ」
キョーコの顎を取って、蓮はそっと唇を重ねる。
軽いキスで離れて、蓮はこっちを向いた少し潤んだ瞳を捕える。
「キョーコ。今日は名前、呼んでくれる?」
最近の定番セリフ。中々望む答えは返ってこないけど。
「・・・・ん・・・・・」
戸惑ったように瞳を揺らしたキョーコが真っ赤になってうつむいた。下を向いた口から小さく声がこぼれる。
「・・・・・・れん」
かすかに聞き取れた小さな声。
蓮は大きく跳ね上がった自分の鼓動に驚いて、顔が熱くなるのを感じた。
「キョーコ」
蓮は呼応するように名前を呼ぶ。
いまだ恥ずかしさにうつむいたままのキョーコは自分と同じくらい蓮の顔が赤いことに気が付かない。
「もうだめ。今日は覚悟して?」
「へ?」
蓮の言葉に顔を上げたキョーコは、いつもより赤い蓮の顔を目にしたのであった。
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<補足>
好きな人に呼ばれる自分の名は
魔法の言葉
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〆の後編です。
何気に成立後の二人を書くのは初めてだったり。
お粗末様でした!