※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#800  あゝ夫婦 (三船班最終話)

 

 

 

(本放送)・・・1977年3月23日

(再放送)・・・2020年8月13日

(脚本)・・・西沢治

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷隆)、

松木部長刑事(早川雄三)、佐田刑事(立花直樹)、戸川刑事(一の瀬玲奈)、

石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

三原葉子、守屋俊志、方上江麻、宮桂子、大東梁佶、竹口安芸子、近藤秀樹、

藤竹修、城海峯、天現寺竜、川畑恵子、宇南山宏、柴田昌、水木梨恵、臼井正明、

島宇志夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

毎日、機械的に夫を送り迎えする以外に、

何もすることの無くなった妻が、ふと垣間見た他人の情事・・・。

面白半分の覗き見が、ある日突然、殺人事件と結びついた!

化粧品のセールスマンと浮気を続けていた若妻が、

乳飲み児を残して殺されたのだ!

隣に起こったこの大事件は、

2人にとっては、つかの間の話題でしかなく、

また元の退廃生活を繰り返す、中年夫婦の虚しさ。

その虚しさこそ、本当の危機だったのだが・・・。

次回、特捜隊、「あゝ夫婦」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・検証本、東映chともに「ああ夫婦」の題名表記だが、実見すると「あゝ夫婦」とある。

・阿久津を演じる宇南山宏は、特別機動捜査隊・#801最終回 のゲスト出演者 でも名を連ねているため、日高・三船・矢崎の3主任最終話に出演していることになる。

・かつて特捜隊で鷲見刑事を演じていた柴田昌宏が、柴田昌に改名して、#646 嘆きの天使 (高倉班最終話) 以来、別役で約3年ぶりのゲスト出演。

・【第4回再放送】となって、久しぶりの田中係長、鑑識員2人が揃っての出演。

・特捜隊常連女優・水木梨恵の、特捜隊最後の出演作品。

・この当時は、#531 わが作戦 敗れたり で触れたとおり、土曜は午前中まで仕事で、土曜午後と日曜終日をセットで休日とした「半ドン」であり、一部ではこの風習は平成初期まで続く。

・再見時視聴=#800 あゝ夫婦 (三船班最終話)【スペシャルセレクション】

 

 

 

(視聴録)・・・開始約19分前半まで

 

3月の終わりに近い土曜の午後、死体発見の通報を受けた三船班は都内の一軒家に到着、捜査に入る。発見者は家主の小柳(柴田昌)、被害者は妻・美佐子(方上江麻)、生まれたばかりの赤ん坊のいる居間で事件は起こった。状況は、仕事の終わった小柳が帰宅、玄関のドアを開けると、見知らぬ背広男が「奥さんにはいつもお世話になってまして」と外に出ていったのだが、そのあと居間にいくと美佐子が死んでいたというものだった。三船主任は強盗の線も考え、小柳と松木・佐田に家宅内の盗難物捜索、畑野・石原に近辺の聞きこみを指示する。

 

主婦たちへの聞きこみでは、近所に住む結婚相談所所長・岩下(守屋俊志)の妻(水木梨恵)から、クイーン化粧品のセールスマン・阿久津(宇南山宏)が美佐子のところによく出入りしていたこと、入ると1-2時間は出て来ないという証言を得る。さらに、マンション5階に住む平松三郎(臼井正明)の妻・路子(三原葉子)からは、今日も小柳家前に阿久津が駐車、帰ってきた小柳は車を見つめていたという目撃証言も得る。念のため、マンションの平松にも確認すると、平松は玄関先でサンダルを片付けながら、美佐子・阿久津の怪しげな話は無責任な噂と語ったうえで、小柳が車を見つめたあとは急ぎ足で家に入ったと証言した。

 

一方、悲しみに暮れる小柳は、美佐子は襲われそうになり抵抗したので殺されたのだから、早く背広男を逮捕するよう訴える。しかし、三船班としては盗難された形跡が無いこと、車を見てすぐに家に入ったということで、小柳自身が美佐子の浮気を疑い阿久津のことも知っていた可能性が有り、容疑者のひとりとしてマークせざるを得なかった。

 

そして三船主任・戸川は、阿久津が仲間うちで麻雀をしているということから、雀荘を訪れ特捜隊本部へと連行、三船主任・松木で取り調べを行なうが、阿久津はのらりくらりと供述、確信になかなか触れようとしない。そこで、佐田・戸川は阿久津の上司の部長(宮桂子?)に聞きこむ。すると阿久津は事件当日の午前9時にセールス会議に出席、午前9時40分過ぎにセールスに出かけ、部長が昼食から戻った午後1時ごろに定時連絡をくれたというのだが・・・。

 

 

当作を観終えて、山中貞雄監督が支那事変出征時、「人情紙風船が遺作とは、チト寂しい」と言い残していった逸話を思い出しました。これを当作に当てはめれば

「あゝ夫婦が三船班最終話とは、チト寂しい」

と個人的に感じる作品といえます。当作が三船班最終話として観賞したことが重しにはなったのでしょうが、それを割り引いても、刑事ドラマとしてはどうにも?をつける出来になっていることもあります。

上記本文も、部分的には上手いトリックを使っているものの、文章を書いていて、なぜ三船班はこのような思考に至るのだろうかと、首をかしげながらの記述でした。特に、容疑者が阿久津から小柳に移る思考が、どうにもわかりません。容疑者から阿久津を外す「ある事柄」を認めれば、阿久津と自宅でバッティングした小柳も、自動的に容疑者から外されると思うのです。より追及すると、通報時刻が何時かわからないのも不思議なことで、これもパトカーが駆けつけたのを、平松夫妻が目撃しているので明確にすべきだったとも考えます。

 

ただ、人間ドラマとしては、夫=サラリーマン、妻=専業主婦、の形態を共通させて

・平松夫妻=子供無し

・岩下夫妻=子供・晃(近藤秀樹)有り

・小柳夫妻=赤ん坊有り

の対比の方向は間違っているとはいえず、これが知らず知らずのうちに犯行動機と関連して来るのですから、無難にこなしたともいえそうです。特に、犯行動機については、正直これで激怒しない人はいない、殺害されても仕方ないだろうと思ってしまい、その勢いで予告篇にもある

>隣に起こったこの大事件は、2人にとっては、つかの間の話題でしかなく、

>また元の退廃生活を繰り返す、中年夫婦の虚しさ。

>その虚しさこそ、本当の危機だったのだが・・・。

に結びつけるのが、当作のねらいだったのかとも考えます。ですので、ラストの特捜隊本部での大立ち回り、劇中序盤で平松のいう哀しい亭主族の習性、そしてブーツを掴み何やら話そうとする独身・三船主任の表情、とは非常に良いコントラストを醸し出しています。

 

これだけ人間ドラマとしては良いところが有りながら、刑事ドラマとしての不完全燃焼が上回るため、全体的には辛口の三船班最終話となるのは避けられません(前述した以外にも、刑事ドラマとしての体をなさないところも目につくのですが、そこは省きます)。

これならば、石原刑事主役譚でありますが、#797 わが青春の 輝ける日 を三船班最終話に持ってきたらどうだったかというタラレバをつい考えます。三船主任の台詞が一言も無い作品でしたが、ラストで2人がこれからどうなるのか、これを特捜隊車両の中でみていた三船主任が「石原・・・」とたった一言呟く場面を挿入するだけでも、充分三船班最終話として相応しいのですが。。。。

→(追加)R3.3.24

現在では三船班最終話は#788 無情の風に散る の方が相応しかったと、考えを改めています。詳細は、当作以降の視聴録を参照してください。

 

ところで、三船班は#764 駄目な奴 で三船主任が怪我のため2カ月ほど休養(?)、#773 ゆり子と言う女 で再開したのですが、再開直後の三船主任は、かつてのスポーツ刈りを卒業して長めの髪(パーマ?)型になったこと、指揮官先頭スタイルから後ろに下がった感もあり、「おとなしくなったな・・・」という印象です。それでも#784 ドキュメント・逃亡 では石原救出のためヘリコプターに乗り込んだり、桐ヶ丘団地での一撃場面などあったのですが、#565 誘拐 でのスーパースター三船主任を知る立場からは物足りない。

当作でも、取調室ではドスのきいた声を出してくれますが、詰めは松木に委任するなど、やはり物足りない。三船班最終話として、こういった点も「チト寂しい」となるところです。

 

三原葉子については、#756 悪魔の暴走 のときと比べて、ずいぶんと「大きくなった」と感じましたが、本放送の1977年に女優引退していますので、この点関連あるかもしれません。

また特捜隊常連女優の水木梨恵が、最終回を待たずして、当作が最終出演になるところも印象深い。本人の希望があったのかどうかはわかりませんが、三船班で掉尾を飾った感も有り、主婦役でありながら「お酒」は欠かせません(笑)

 

さて、いよいよ次作は、矢崎班最終話でもあり、特捜隊最終回でもあります。本音は、特捜隊最終回は三船班にという気持ちがあるのですが、予告篇で「次回、特捜隊、最終回!」と告知されています。ここは当時の視聴者の気持ちになって、矢崎班が締める最終回として、観賞したいと思います。