※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#784  ドキュメント・逃亡

 

 

 

(本放送)・・・1976年12月1日

(再放送)・・・2020年6月18日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・瀬川淑

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

松木部長刑事(早川雄三)、三宅刑事(三宅良彦)、戸川刑事(一の瀬玲奈)、

石原刑事(吉田豊明)、谷山部長刑事(和崎俊哉)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

中井啓輔、大堀早苗、真山譲次、続圭子、花岡菊子、笹川恵三、戸沢祐介、須賀良、

幾野道子、森山周一郎、島宇志夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

凶悪事件が発生した!

刑務所を出所した暴力団員が、

内縁の妻が事もあろうに警察官と結婚し

妊娠していることを知って逆上し、警官2名を殺害!

逃走途中に、情夫と行きずりの人4名を殺害し、

復讐の鬼となって、尚も殺戮を重ねようとしていた!

張り込み中の戸川刑事が襲われ、石原刑事も不意を突かれ、

手錠をかけられたまま逃走する犯人に、必死に食らいついた。

特捜隊・三船班は、隣接する県警の応援を得て、

逃亡する犯人を追い詰めた。

だが、巧みに逃れる犯人は、もはや狂人と化し、

石原刑事を道連れにしようとしていた・・・!

次回、特捜隊、「ドキュメント・逃亡」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・検証本441頁、443頁の監督=瀬山寂は、明らかに瀬川淑(キヨシ)の誤り。

・オープニングで、三宅刑事(三宅良彦)、谷山部長刑事(和崎俊哉)の表記有り。三宅刑事は、初登場だが動画アップされている特別機動捜査隊(最終回(第801回))浮気の報酬 のオープニング映像を観賞すると矢崎班所属とみられるため、当作は谷山部長刑事と併せて三船班への応援と判断される。

・撮影で使われた団地は、桐ヶ丘団地と思われる。

 

 

(視聴録)・・・開始約18分前半まで

 

11月24日早朝、同僚巡査(未詳)運転のパトカーに同乗していた巡査・松田和雄(真山譲次)は、すれ違った車の男の顔を見て高梨勝哉(中井啓輔)ではないかと疑問を持つ。同僚巡査は、高梨は恐喝傷害で1年6カ月の服役中だからと答えるも、松田は仮釈放ということも考え、その車を追跡することになった。その予感は的中し、仮釈放の高梨は舎弟・服部(須賀良)の運転する車に同乗。実は、高梨の情婦・神山路子(大堀早苗)は、路子の幼馴染でもある松田に匿われており、それを知った高梨は松田の住む団地に向かおうと服部に命じていた。

 

団地に着くと、路子は松田母(幾野道子)に連られて出かけるところだったが、路子の妊婦姿を見た高梨は匿った松田が孕ませたものだと激高、松田母を突き飛ばし路子を車内に拉致監禁しようとする。そこに追跡してきた松田と同僚巡査は、松田母から事情を聴くと路子救出に動くのだが、拳銃を奪った高梨は松田の背中に発砲、同僚巡査を射殺した。そして、重傷の松田と路子を車に乗せ逃走、この状況を松田母が通報して事件は明るみになる。

 

矢崎班の谷山・三宅を応援に加えた三船班は、現場の状況から検問・緊急配備をひくものの、松田母の証言から松田は瀕死の重傷であることが予想され、安否を気遣われていた。しかし、伏見駅前で服部が運転する車を石原・戸川が確保、同乗の路子がつわりを起こし、急遽近所の産婆(花岡菊子)の手を借り出産するアクシデントもあったが、高梨・松田の不在を服部に問いただす。すると、逃走中の高架下で、高梨が逃走車両変更を考えているところ、松田・路子と言い争いが起こったという。松田は路子の妊娠相手は高梨といって説得を試みるが、路子はそれを(註・高梨への嫌悪感からか)否定したことで、高梨は松田を車外で痛めつける事態となる。と、2人が揉み合った際、銃が暴発したのか高梨は左手に被弾、松田は絶命したため、怖くなった服部は高梨・松田を置いて車で逃げたというものだった。

 

高架下に駆けつけた三船班は、松田の遺体を発見するとともに、大量の血痕跡から高梨も重傷を負っていると判断。直ちに警察犬を動員して追跡、さらに近隣民家や医院も当たることにした。その結果、谷山・三宅が南町3丁目18の電話BOXで血痕を発見、数m先で途切れていた。この報告を受け電話BOXに駆けつけた三船主任は、高梨の逃亡を助けた人物を考える。その後、遅れて到着した松木・石原も含め全員に、高梨を手引きした人物が近辺に住んでいる可能性から聞きこみを指示、自らは、高梨の所属する東西興業に乗り込むと宣言する。これに谷山が、ふと「松木さん・・・、三船主任は、相手が暴力団だとカッとくるそうですな」と話したことで、松木・石原は三船主任の後を追う。

 

そして東西興業では、高梨への手引きをとぼける組長(森山周一郎)に、三船主任は力で対抗、ついに組長の情婦・真知子(続圭子)が電話BOX近くに住んでいることから、逃走を真知子に手伝ってもらったことを白状するのだった・・・。

 

 

実は、当作の序盤は、12月1日(上記本文の出来事から7日後)、団地で松田母・路子が、殉職後の松田の遺影の前で、生まれた赤ん坊をあやす場面、その団地に高梨が現われるのを特捜隊車両で張り込む石原・戸川の場面から始まります。このとき石原は腹痛で公衆便所へ、入れ替わるように張り込み交代で谷山・三宅が来たため、戸川は特捜隊車両で公衆便所に迎えに行き入口にいた石原に声をかけます。ところがそれは高梨で乱闘が発生、戸川は強引に包帯を巻いた高梨の左手に手錠をかけたものの、高梨の持つ拳銃のグリップで一撃され気絶させられます。逃走を図る高梨ですが、便所にいた石原が気づき追跡、高梨を捕え自らの右手と手錠をロックします。しかし不意を突かれたせいもあり、石原も拳銃グリップで殴打され失神状態、高梨は特捜隊車両を奪い逃走となります。

 

これが前提となり、上記本文の7日前の出来事が綴られているわけですが、上記本文ではさらに真知子と逃亡中の高梨が左手の治療もあり、村瀬診療所に目をつけます。その待合室には、鳶の伊沢(笹川恵三)、主婦(石原一代?)、その子供(未詳)がおり、果たしてストーリーはこれからどう展開するのか、後半に向けての露払いの場面となります。

 

 

全体を述べる前に納得しがたい点がひとつあります。松田母は、路子の生んだ赤ん坊を松田(註・我が子)の子だと主張、路子ともども守っていく態度を見せます。しかし、単純に考えれば、いくら幼馴染だとはいえ、路子に関わらなかったら松田は死ななかったと考えられるのです。ですので、路子を庇うならばもっと掘り下げる必要があります。さらには、ネタバレになりますが、松田の血のつながらない赤ん坊は孫ではないわけですから、昭和のこの時代ならなおさら拒絶するのが普通だと感じます。

これらを解消するには、赤ん坊の父は誰かを話題に出すのを控え、「高梨だけ」が騒いでいる体であれば、ラストの場面と相まって、高梨の異常性をメインに置けたとも考えます。ここいらはどうしても気になる点ですが、万人が視聴するテレビということで、「模範的な年配者=松田母」を強調させたかったのかもしれません。

 

しかし、このように述べながらも、全体的には非常に面白い!

序盤の石原拉致状態をみて、傑作#562 真夏の逃亡者 

と同じ流れをくむ逃走劇になると思いきや、7日前の根本の事件への踏み込みを追及、さらには前述した高梨の異常性の描写となり、あっという間の45分間で映像にひきこまれました。横山保朗の一味変えた逃走劇の構成もそうですが、#781 純愛の女 (特捜隊デビュー作)

で評した、瀬川淑監督の非凡さが開花したのだと感じます。

 

#705 ドキュメント追跡 (便宜上第1作、脚本・横山保朗、監督・天野利彦)

 

#754 ドキュメント・暴行 (便宜上第2作、脚本・横山保朗、監督・天野利彦)

 

では石原刑事活躍譚として展開。その流れを瀬川淑監督が上手く引き継き、第2作では薄れ気味だった三船主任との師弟関係も明確化、都会⇔地方への逃走劇サビが効いた描写、見せ場を短時間おきに設定するテクニックなど、個人的には特捜隊デビュー作で触れた、吉川一義監督を思わせる演出だと思いました。

特に、点々とテンポよく、逃走・場面転換のある「都会⇔地方」の描写は心地よく、まだるっこさもなく非常にスマート。1980年代以降は瀬川淑監督の作品が見当たらないのは非常に残念。特捜隊が続いていたら、刑事ドラマではそれ相当のマエストロ(職人)として、活躍されたのではとも推察されます。

 

作品を引き締めたのは、高梨を演じた中井啓輔の存在も欠かせません。悪役のイメージが強い俳優さんですが、特捜隊には出演が意外に少ない。

#466 十年目の事件(ヤマ) 

での検事役(この役柄も意外でした)が印象に残る程度で、新潟ロケ2部作の#557 芸者雪子の場合 、#562 真夏の逃亡者

 

は正直印象が薄い。

 

それが当作では異常性をもつ高梨を上手く演じ、どんな「手」を使ってでも自分の目的を達しようとする姿、ラストでは狙っている路子を忘れたかのように団地を見上げる姿、などインパクトが強い。そして、これを活躍譚たる石原と併行して描き出し、追いつめた三船主任にどう決着をつけさせるかも非常に見どころがありました。

 

特捜隊終焉まで、リアルタイムだとあと4か月となったわけですが、終末期にはキラリと光る作品が生まれるものです。新東宝の末期、「地平線がぎらぎらっ」(1961年3月公開、監督・土居通芳)というある種の浪漫劇が誕生したこともあり、その手で行けば当作もそのひとつになるのかなと思いながらの観賞。

実際、本放送は1976年12月1日ですので、暮れのこの頃、特捜隊の番組終了を打診された時期だとしたら、非常に意味深ではあります。