※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#754  ドキュメント・暴行

 

 

 

(本放送)・・・1976年4月28日

(再放送)・・・2020年3月5日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

古屋哲、小野ひずる、沢田勝美、小浅初江、町田政則、佐藤昇、仙波和之、

須永慶、三田桃基子、高木二朗

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・(女の証言する声が聞こえる場面)

女  「私は見たのです、あの人が犯人に間違いありません!」

・・(ナレーションの場面)

暴行!

それは、なぜ起きたか?

・・(取調室で、容疑者・山澄に訊問する石原・水木の場面)

石原 「とぼけんな、この野郎! 

    そんなもんが、アリバイになると思ってんのか!? ああ?」

・・(現場検証中の石原・水木・山澄に、三船主任らが駆けつけ釈放を伝える場面)

山澄 「お前が殺したんだ・・・! 殺したんだ!」

・・(ナレーションに戻る)

目撃者の証言が呼んだ、誤認逮捕。

刑事の厳しい追及が、果たして死を招いたのか?

・・(現場での釈放直後に、山澄が叫ぶ声の場面)

山澄 「夏子・・・! お前だ! 警察が夏子を殺したんだ!」

・・(以下、ナレーション)

次回、特捜隊、「ドキュメント・暴行」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・予告篇の、女の証言場面(発声)は、本篇では見当らない。

・石原・水木を除く三船班メンバーは、開始約14分終盤以降の出演場面が無い。

・ワンシーンで登場する京王線・つつじヶ丘駅は、現在では大幅に改装され橋上に改札があるため、当作の頃の面影は無くなっている。

・劇中で、中学浪人、高校浪人という表現がなされるが、希望する上級学校不合格のため次回受験をうかがう学卒者の意であり、中卒浪人、高卒浪人という表現がふさわしく考える。

・当作でいう「暴行」とは刑法上の「暴行」とは合致せず、旧刑法でいう「強姦」であり、現行法の「強制性交」のことである。旧刑法時代からこのように表現されているのは、「強姦」だと言葉によるインパクトが大きいのと、昭和40年代のポルノ映画隆盛の風潮もあり、マスコミが「婦女暴行」とせず「暴行」とひとくくりで報道していたことも一因と考える。

 

 

(視聴録)・・・開始約14分後半まで

 

4月20日の蒸し暑い日、埼玉県の教会で、結婚式を挙げている新郎・山澄篤志(古屋哲)、新婦・夏子(小野ひずる)。そして、祝福する多数の身内・友人の中でも、山澄の親友の自動車整備士・渡辺(沢田勝美)の喜びはひとしおだった。と、そこに三船班の石原・水木がやって来て、山澄を連行、所轄署で県警刑事(高木二朗、須永慶)の協力も得ながら取り調べる。

 

事の発端は、6日前の午後、東京のマンションのエレベーター内で、主婦(未詳)が婦女暴行を受け、殺害された事件であった。たまたま、主婦を訪れようと妹・純子(小浅初江)が来たところ、逃走する犯人を目撃、その人相が一致したことで逮捕したものであった。山澄は家具店で働き、配送歴からマンションに場所勘があったこと、アリバイが曖昧なこと、エレベーター内の指紋と主婦体内残留の血液型B型とが山澄のものと一致したことで、石原・水木の取り調べは鮮烈を極めた。そして、山脇は特捜隊本部へと移送されることになり、無実を信じ取調室の外で待つウエディング姿の夏子、親友の渡辺は、それを見守るしかなかった。。。

 

と、数時間後の深夜未明、石原・水木・山澄そして県警刑事たちの姿は、埼玉県の川原にあった。夏子がウエディング姿のまま婦女暴行を受け、後頭部打撲で首の骨が折れた死体で発見されたのである。死亡推定時刻は深夜0時10分、足跡から見て3人以上の犯行と見受けられた。呆然とする山澄、施錠している石原も黙りこくる中、東京から三船主任・畑野が駆けつける。先ほど、婦女暴行殺人犯が母親に付き添われ出頭したことで、山澄の疑いは晴れ、手錠を外すよう命じたのだった。解放された山澄は夏子のもとに駆け寄り号泣。さらに石原が近づくと殴り倒し、石原だけでなく警察が夏子を殺したと絶叫。これには石原も、見つめていた水木も返す言葉は無かった。。。

 

その後、山澄は現場の川原に石を重ね、仕事が終わると朝まで夏子の冥福を祈る毎日だった。夏子暴行殺害事件を担当する県警は、11日経っても手がかりは掴めず、石原・水木、そして目撃証言をした純子とともに、現場に来て祈りを捧げる。しかし、山際は挨拶を避け横を向くのだが、純子が花を供えるとそれを川に投げ捨てるなど、その怒り・悲しさは何ともしがたいところがあった。

 

石原・水木は、夏子暴行殺害事件のことを聞きこみに、仕事中の渡辺を訪れる。渡辺もまた、あの晩夏子と所轄署を自動車で出て、川原で降りるといった夏子をなぜ止められなかったのか、なぜ家まで送れなかったのかと悔やみ、そのことを山澄に詫びても無言を貫くだけであったという。そして、山澄が自分を責めるのは構わないが、山澄から夏子を奪った石原・水木が自分を責める資格は無いと締めくくった。

 

これらのこともあり、石原・水木は三船主任に、管轄外だが夏子暴行殺害事件の応援に県警へ行かせてくれるよう具申し続けるが、三船主任は無言を突き通す。そして、新宿サブナードで、ある事件の首謀者・浜田(仙波和之)が情婦(未詳)と落ち合うところを逮捕する案件も、石原・水木は心ここにあらずの状態であった。それでも、なんとか浜田・情婦を逮捕出来た三船主任は、石原・水木に「2度と県警の事件(ヤマ)を口にするな!」と通告する・・・。

 

 

上記まで、(備考)にも書きましたが、物足りないことは、その後は三船主任以下の出演場面が無いことです。結局、石原・水木は独断専行まがいに、夏子暴行殺害事件に突っ込んでいくのですが、これを三船主任は、本当に介入を禁じたのか? それとも見て見ぬふりをしたのか? という点は明確にしてほしかったところがありました。

独断専行といえば三船主任も#734 絶望を越えて で調書を握りつぶしたり、#725 拳銃 では石原を巡り矢崎主任と対立したり、さらには#625 生と死の詩 では畑野の独断専行も暗黙の裡に認めているところがあり、今回の「途中退場」は物足りない気がしました。また当作と同じ脚本・監督作品で、序盤から三船主任がなかなか登場しない#623 ある夜の 出来ごと は、完全に畑野刑事主演譚なのですが、それでもラストの三船主任・畑野の印象的な場面で昇華させたのに、この違いはなぜ? と思うところもありました(これは視聴中のことです、後述)。

 

 

それはともかく、当作は、石原刑事活躍譚ではありますが、水木もいい味を出しており、石原・水木両刑事主演譚とでもいいくらいです。

そして、ストーリーはその後、前述したように石原・水木は県警に介入、石原の努力もあり山澄はようやく心を開こうとしていたあたりから、大きく展開します。現場に車でよく訪れる洋装店婦人・尾崎(三田桃基子)、その息子・孝雄(佐藤昇)、孝雄の友人・須山(町田政則)、その仲間(未詳)など、怪しげな人物も登場して、いよいよ事件の真相が解明されて行きます。

 

観終わって思ったことは、特捜隊ではたまに、元も子もない結束信二脚本テイストの作品に遭遇することがありますが(もちろんいい意味で)、当作ほどそれを感じた作品はありません。

理不尽極まりない出来事が起こり、助けてもらいたいと期待しても、信用しきれない相手ばかり。そこで自らが行動を起こし、本懐を遂げると思いきや二転三転、石原の慟哭でのエンディングは悲壮感そのものであり、これほどまで結束信二テイストにこだわった特捜隊には、これまでお目にかかったことはありません。それだけ、インパクトのある作品でした。

 

#623 ある夜の 出来ごと が、唯一似たようなつくりにも感じますが、それとて「刑事としての矜持」をラストでみせたことで、ある意味「ハッピーエンド」っぽくなったのです。対して当作は、悲壮感を徹底的に追及、石原の涙、水木の怒りの鉄拳、これらをラストに描き出すことで見事に昇華、対照的にこれまでにない特捜隊作品として出来上がったと評価できます。

(まあ、とにかく、ラスト10分の急転直下の流れも凄く、ここは語るよりも東映chで視聴する方がベストだと思います。しかし、早朝の放送枠が無くなってしまいましたので、当ブログ更新の2020年3月12日10:00-11:00を見落とした方にはどうしたら良いものか・・・)

 

当作の評価は、前述した「三船主任の途中退場」にも繋がり、物足りないと思ったのは、逆に特捜隊の新生面を出したとみえることに気づかされます。

かつての特捜隊は、事件優先のストーリー(ノンフィクション系)が主流で、捜査班の活躍を描くものでした。それが、三船班登場のころからか、刑事ドラマのストーリー(フィクション系)に移り、捜査主任をクローズアップする機運になっていました。そして、【第4回再放送】となってから、今までにもたまに見かけた「刑事個人」を描写する方向性に移り、それが当作での石原・水木両刑事主演譚に繋がり、三船主任途中退場という構成とみたほうがよさそうです。

そして、その「物足りなさ」が、逆に石原・水木を引き立て、結束信二テイストの作品にするうえで大きなポイントになったのかもしれません。視聴していて、上記の物足りなさ(三船主任の2人に対する不明確な感情も含みます)の私見が、視聴後考えていると、一転して新生面を感じるという、対照的な視聴録というのも珍しく、面白い特徴ともいえます。

実際、ラストの石原の慟哭は、#623 ある夜の 出来ごと の畑野の慟哭よりインパクトは大きく、姉妹作(?)の#705 ドキュメント追跡 でのラストの泥まみれの石原と並び、俳優・吉田豊明の頂点に近いアクトだったように思えます。

 

この新生面という点では、あまり印象の良くなかった横田年昭の劇中音楽にも繋がります。エンディングの尺八調音楽は相変わらず違和感があるのですが、劇中の音楽・効果音は、当作の作品イメージと相まった出来であります。悲壮感・不安感を煽るというより、そこへ向かって突き進んでいく登場人物たちの心境を音楽を通じて表現しているようで、作品の質によってここまで違うものか? とも感じました。ですので、横田年昭の音楽への違和感は、今までの特捜隊のイメージから来るもので、当作スタイルの特捜隊作品から担当すればよかったのかもと感じます。

 

さて、夏子を演じた小野ひずるですが、この人は仮面ライダーV3にレギュラー出演(1973年2月17日-1974年2月9日)していたことが思い出されます。まあ、これはネットで検索できるようになったからというのもあったのですが、これが無ければ芸名もわからないままでありました。この当時、仮面ライダーV3を見ていた自分は、なぜかわかりませんが女優・岩下志麻は知っており、(芸名を知らなかった)小野ひずるを岩下志麻と勘違いしていたことがありました。恥ずかしながら、今振り返ると、当時の岩下志麻の髪型とおでこの広さだけが似ていたというだけで、似ているとはいえませんね。。。

女優業は引退していますが、時折、イベントゲストで呼ばれることもあるようです。最新は、9年前の2011年3月20日にFM西東京・北脇貴士の大相撲甚句に出演しており、その模様がブログ・北脇貴士の大相撲甚句(2011年3月12日記事)に写真付きで紹介されています。当作のころと、あまり変わられないなという印象でした。