映像制作者の映像レビュー
★★★★☆


あいにくと原作は読んでいないが、映画でこれだけ面白いのだから漫画はもっと面白いのだろう。


中国のハゲタカのシーンは赤いフィルタ、日本のハゲタカのシーンは青いフィルタで画面を色分けしているところや、画面構成なんかが映画用にきっちり作ってある。


さらに、いい役者を揃えているので、邦画にありがちな「テレビで見れば充分な学芸会崩れ」とは一線を画す出来。


惜しいのは、後半にそりゃあ都合良すぎでしょ~という展開があり、そこさえきちんと練られていたら、文句なしに良い作品だったのだが。何でああなっちゃったんだろう?


そこだけが謎。



映像制作者の映像レビュー
★★★★★


泣いてしまった。”男”の生き様に。


現実の中に居場所を見つけられず、孤独の中で突っ張って、自分の好きなことに殉じる。

自業自得ということは充分わかっていても、そういう生き方しかできない不器用な人種がいて、その孤高に本当の男の強さを感じてしまう。


男の生き方を描く題材として、レスラーを選んだのが素晴らしい。

舞台裏と日常を描くことで、レスラーが夢の世界の住人ではなく、観客にカタルシスを与えるために自らを痛めつける「仕事」なのだということがわかり、男にとっての仕事とは何なのか、を考えさせられる。


演出も上手い。

歩いている背中を追うカットが要所要所で出てきて、その時に主人公の息遣いをエフェクトで入れているのだ。それが、彼の心の高まりや、時には追い詰められている心情を効果的に見せている。


そして主演のミッキー・ローク。

体型も完全にレスラーだし、老いている自分を自覚しながらも「男」であることを捨てられない葛藤と悲哀が見事に伝わってくる。


決して救いがあるストーリーではないが、これは名作。




映像制作者の映像レビュー
★★☆☆☆


元GIのマッチョな英会話教師からオススメされた作品。

普段ほとんど見ることの無いアクション映画。


合成がぬるいとか、んなアホな、という無敵っぷりの展開とか、突っ込みどころ満載だが、派手な爆発やら大掛かりな演出やらで、何も考えずに楽しめばいい。。ということに気づいた時にはもう映画が終わってた(笑)


「あー楽しかった」って満足気に映画館を後にするんだろうか?この手の映画が好きな人って。


実写のカーアクションは、何台車をぶっ壊してんだろう?あれだけで幾らかかるだろう?その予算があるなら・・・と思わずにはいられない。


自発的に見ることは絶対ない映画だったので、その意味では新鮮だった。たまにはこういうのも面白い。


映像制作者の映像レビュー
★★★★★


いわずもがなの名作。

誰もが知ってるテーマソングと、あまりに有名なシーンの数々。


制作者視点で見てないな、と思い再度見直してみたが、

いつの間にかストーリーに引き込まれてた。


各分野に特化したスペシャリストたちが、プロジェクトリーダーの元に力を合わせて難関を突破しようと試みる。

好きなんだよね、男の子はこういうの。無条件に燃えてくるっていうか。何なんだろうあれは。男の遺伝子なんだろうか?


そしてとどめは、これが実話であること。

こんな、良い意味で漫画的な、ドラマチックな物語を、命を賭けて生きた男達が実在したということ。


企画、構成、脚本、演出、キャスト、音楽・・・全てにおいて不朽の名作。もしまだ見てない方、特に男子は必見。



映像制作者の映像レビュー
★★★☆☆


記事を捏造して発表していたジャーナリストの栄枯盛衰の話。


自分の非を決して認めず、責任転嫁を繰り返す主人公の性格にイラつきながら見ていたが、これが実話だというからスゴイ。


確かに、世間の注目を浴びたい野心あふれる記者という人種は、意外と誰しもこういう側面を持っていそう。あくまでイメージだけど。


取材した事実を記事にまとめる過程で、「どういう文脈でその事実を伝えるか」は取材した側に委ねられているわけだから、世に出るニュースのほとんどは客観的ではあり得ず、事実の捏造は論外としても、ある程度はその記者なりの、もしくは発表する会社としての主観が入る。



映画、映像としての良し悪しとは別に、題材として考えさせられる作品。




映像制作者の映像レビュー
★★★★★


映像制作に携わるようになって、映画の見方が変わった。


シナリオの構成、画面デザイン、カメラワーク、演出、編集、音楽など「作り手の視点」で見るようになった。

職業病と言われたらそれまでだが、より深く映画を楽しめるようになったのも確かだ。


なので、この仕事に就く前に見た映画を今再び見直したら、違う発見があるはず、と思って選んだのがコレ。


で、ぶったまげた。あまりの完成度の高さに。


脚本に一切の無駄がない。オープニングの、目覚ましのラジオ放送がすでに伏線になっているのをはじめ、至るところで「なるほど」と思わせる仕掛けが盛り沢山。


昔からよくあるタイムトラベル企画を、これだけのエンターテイメントに昇華させるエネルギーの込め方が半端ない。


当時は「面白いな~」と単純に喜ぶだけだったが、作り手の視点で見ると、制作者たちが一切妥協せずに作りこんだことがよくわかる。あの時代に自分が映像を作っていてコレを見たら相当落ち込んだんじゃないか。


というか、現代でも通用する圧倒的なクオリティ。

時代に名を残す映画には、やはりそれなりの理由がある。



映像制作者の映像レビュー
★★★☆☆


「そういや見てないな」という映画が無数にあるが、これもその一本。


プロットは面白いけど、下手をするとB級になりそうな企画。それを救っているのが熟練役者陣の演技。

「イキがいい頑固ジジイ」系のキャラクター演出はイーストウッド監督ならでは。抜群に上手い。


特に面白かったのが、DVD特典映像に入っていたTVショーのシーン。本編ではカットされて数十秒しか使われていないが、撮影は20分ほど行ったらしく、その素材が司会者のインタビューと共に収録されている。


驚いたのが、ここのシーンの台詞が全てアドリブだということ。

これだけの長時間、一切の隙もなく、役柄のままに、アドリブで話ができるのは本当にすごい。


しかし、イーストウッドって、役柄そのままに頑固ジジイっぽいな(笑)


映像制作者の映像レビュー
★★★☆☆


大恐慌時代のアメリカの、銀行強盗の物語。


すごくきちんと作りこんでる割に、ずいぶん淡々と話が進むんだな~と思っていたら、実在人物のノンフィクションもの。


実際にいたという文脈を知ると、この男の生き様が途端に説得力を持つ。決して「悪」ではない。誰かが決めた「法」に従う気はないだけの、ただ「自由」な価値観。

そういう人間が、時代が変わる狭間で追い詰められ、自滅していく。


この「男の滅びの美学」は、人種を問わないのかもしれないが、女性にはわからないものだろう。


マイケル・マン監督らしい、硬派な作品。



映像制作者の映像レビュー
★★★★★


全てが「お見事」の一言。


”他人の夢に干渉する”というアイディアも。

そのアイディアを、あそこまで緻密に練り上げる脚本力も。

世界観を魅力的に見せる様々なビジュアルマジックも。

入れ子構造の複雑なストーリーを混乱せずに伝える編集のテクニックも。


観終わった後、ふと、何故映画は一律1800円なのか疑問に思った。

これぐらい完成度の高いエンターテイメントなら、もう少し高く設定してもいいような気がしたのだ。仮に2500円だったとしても元はとれるぐらい満足できる。


一方で500円ぐらいしか価値を見出せない映画があるのも事実。

そこら辺、制作側が自由に設定できるようになれば、なるべく多くの人に観てもらいたいから安くしたとか、コストかかった超大作だから高くしたとか、映画産業ももっと活気づくんじゃないかな。


いずれにせよ、ストーリーはもちろんのこと、今の映像技術を駆使すれば、ここまで表現の幅は広がるという意味で、映像としても楽しめるし、1800円は確実にお得。オススメ。


映像制作者の映像レビュー
★★☆☆☆


松本人志は、やはり「天才」。

なかなか常人には思いつかないビジュアル、そして構成。


惜しむらくは、映像の文法や文脈を理解して、きちんと彼にNOを言える人間がいないことだろう。折角の面白い企画が、「映画」として定着していない。

芝居の「間」も、カットした方がいい場所が多く、無駄が多い。

結果、1時間半にもかかわらず、ものすごく長く感じる。

映画館で見た人は退屈したんじゃないかな。


企画・主演まではいいが、監督を別のプロがやっていたら、もっと面白い、味のある映画になったのではないか。まぁ、それでは意味がないのだろうが。


笑いであれだけ大勢の感情を動かせる彼が作った映像が、観た人の心に届かない。「コミュニケーションする映像」と「マスターベーションの映像」の間には、確実に壁がある。