泣いてしまった。”男”の生き様に。
現実の中に居場所を見つけられず、孤独の中で突っ張って、自分の好きなことに殉じる。
自業自得ということは充分わかっていても、そういう生き方しかできない不器用な人種がいて、その孤高に本当の男の強さを感じてしまう。
男の生き方を描く題材として、レスラーを選んだのが素晴らしい。
舞台裏と日常を描くことで、レスラーが夢の世界の住人ではなく、観客にカタルシスを与えるために自らを痛めつける「仕事」なのだということがわかり、男にとっての仕事とは何なのか、を考えさせられる。
演出も上手い。
歩いている背中を追うカットが要所要所で出てきて、その時に主人公の息遣いをエフェクトで入れているのだ。それが、彼の心の高まりや、時には追い詰められている心情を効果的に見せている。
そして主演のミッキー・ローク。
体型も完全にレスラーだし、老いている自分を自覚しながらも「男」であることを捨てられない葛藤と悲哀が見事に伝わってくる。
決して救いがあるストーリーではないが、これは名作。