ひまわり【新アルバム各曲解説】映画音楽をジャズスタイルで弾く時に気をつけること | 保坂修平のピアノ音楽

保坂修平のピアノ音楽

東京藝術大学楽理科卒業。ジャズピアニスト、作曲家。

2023年12月27日にリリースした保坂修平トリオのアルバム「ボス・サイズ・ナウ」。

アルバム収録の各曲について、CDのライナーノートに書ききれなかったこと。

今日は6曲目の解説です。

 

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6, Sunflower

 映画「ひまわり」(1970)のテーマ曲でヘンリー・マンシーニが作曲した。センチメンタルに傾斜していく誘惑から逃れ、この音楽本来の美しさを立ち上がらせるのは常に難しい。映画中に現れるひまわり畑のシーンはウクライナのヘルソン州で撮影された。私はこの曲を演奏するとき、ウクライナでの戦争が1日も早く終わるようにと祈りを込めている。

 

 この曲は長い間、繰り返し弾いてきた。ソロピアノでのコンサートでは定番、トリオでもよく取り上げた。自分のYouTubeチャンネルでも複数回アップしている。いわば自分にとっての勝負曲。でも難しい曲だ。美しいメロディーとコード進行なのだが、「お涙頂戴」にしたくない。ともすると安っぽくなってしまう。この曲のファンはとても多いし、皆こころの中に大切な思い出を抱いているから、そのこころに土足で入るようなことはしたくない。長年格闘してきた。


 ヘンリー・マンシーニの音楽は、ジャズのアプローチにうまくハマる部分と、安易なジャズ化によって壊れてしまう「フラジャイルな部分」と両面ある気がする。

 オーケストラ演奏による、いわゆる「原曲」、映画のサウンドトラックの感動が、ジャズの方法によるリダクションと再解釈によって損なわれるケースがあるのだ。

 映画のサントラの「ひまわり」は、有名なピアノの分散和音で始まるのだが、あれが、結構大事だったりする。なかには、あれがないと「ひまわり」じゃないと思われる方もいるかもしれない。実際僕のYouTube動画にも何度かそのようなコメントが載った。その時は頭にきたが、冷静に考えると、その意見も一理あると分かる。それくらい、マンシーニの音楽とオーケストレーションは緊密に結びついていて、ある種不可分なのである。

 「酒とバラの日々」。オスカー・ピーターソンの演奏で好きになり、後期ビル・エヴァンスの激しい演奏も繰り返し聴いた。ジャム・セッションの定番曲であるので、ジャズを学び始めた頃から何度も弾いてきた。あるときトニー・ベネットのオーケストラ伴奏の演奏を聴いて、衝撃を受けた。めちゃくちゃ遅い。そしてドラマティック。そしてコードワークの精妙さ(たしかジョニー・マンデルの編曲)。こんな解釈もあるんだ、と。それから映画をみた。「こんな解釈もあり」じゃなくて、トニー・ベネットの方が、原曲に近いのである。そう「酒とバラの日々は」スローで優美なバラードだったのである。悲しきアル中人間の絶望に優しく寄り添う、天上的な音楽だったのだ。だから、ピーターソンやエヴァンスの方が新解釈。こういう機微がとても大切だと、学ぶ良い機会でもあった。Two for the roadなんかも難しい曲だ。あのサントラを聴くと、自分では弾きたくなくなる。弾けるけど、何かが違う…

 

 ところで「ひまわり」については、映画をみて確かに発見はあったが、自分がそれまで弾いてきたアプローチを一新しようとは思わなかった。僕はあのアルペジオは採用しない。ジャズ・バラードの流儀で弾いてきたし、これからも続けていく。それでも、やはり「原曲」にちょっと目配せする。その目配せが、リスナーと心を通わせるために実は決定的に大切な所作だったりする。


 最後まで、ありがとうございます。

 

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こちらは、かなり昔にソロで弾いたバージョン。