◆高得点句に寄せて

 

片陰に行列崩れ友の葬  柳沼宝海

 

 景の明瞭な句である。真夏の炎天下の中、葬儀の黒い喪服の列が通りかかっている。道の反対側に沿って黒さが際立っている日の当たらない涼しそうな蔭がある。列はそこを目指し方向を変え崩れているのである。列を上から俯瞰し、葬儀を客観視している。その中で友の死に対する深い悲しみと哀悼が伝わってくる句である。(木下をさむ)

 

夜もすがら妻を看し春遠くなり  柳沼宝海

 

 この句の作者はすぐに分かる。最近のことだが、小坂泰子(島華)さんと話す機会があった。奥様の句を詠まれた宝海さんのことをよく覚えていた。小坂さんが句会をお辞めになって十年以上になる。宝海さんの奥様の看病が如何に長かったかが分かる。奥様を一晩中看病した春の日々が遠くなったと言っている。時間は過ぎて確かに遠くなるかもしれないが、一晩中看病をした時のことを思い出している。上五の「夜もすがら」は寝付けずに一晩中思い起こしている今のことでもある。時間という薬があるが、そう簡単なものではない。誠に深い愛情を感じる句だ。それから小坂さんに句会にまた来ませんかと誘ってみた。(池永一生)

 

この国を叱っているか時鳥  木下をさむ

 

 野鳥の〝聞き做(な)し〟で良く知られているのがホトトギスの「トッキョキョカキョク(特許許可局)」。言葉の内容はともかく、その甲高く連続して鳴き続ける調子は、確かに誰かを叱りまわっているかのよう。心にそう聞こえるのは、紛れもないこの国の不甲斐ない現状が背景にあるからだ。日本という悠久の国の、民と歴史と大倭豊八島たる郷土に、誇りの欠片も持たぬ〝政治屋〟の跳梁跋扈はもうたくさん。そんな輩の不実のみならず本邦を覆い尽くす命粗末の風潮と拝金主義…こんな時世を嘆き叱るのは作者だけではないだろう。憂国の人々の心を代弁するかのように、今日も時鳥が鋭い警鐘を発しながら野山を飛びまわる。(板見耕人)

 

<全出句・得点順>

5 片陰に行列崩れ友の葬 宝海

4 夜もすがら妻を看し春遠くなり 宝海

4 この国を叱っているか時鳥 をさむ

3 八十年(やそとし)を経てなお汗臭きホロコーストの牢 溢平

2 夏めきて今日念入りに髪洗ふ はつ音

2 特売のチラシ見る今朝梅雨に入る 亜紀

2 半身のみ青葉生やせし古桜 溢平

2 何時となく充電遅し夕薄暑 うらら

2 万緑や我が身を染めてくれにけり 亜紀

2 ユニフォームホームにあふれ風薫る をさむ

2 善き人とまみへし過去や伊那に春 耕人

2 夏の夢戦車のみちに穴を掘る 宝海

2 友は風露店で喰らふ五月の夜 一生

1 花弁にも聖なる愛の時計草 たけし

1 草むしり種をこぼして鳥の庭 はつ音

1 里に大崩落の跡風光る 耕人

1 村長が幕開けを告ぐ春歌舞伎 耕人

1 Tシャツを脱ぎ素肌のままで眠る うらら

1 街外れ少し値上げしかき氷 一生

1 新茶汲みひそひそ話や老夫婦 溢平

1 終活や先ず本棚を風薫る 亜紀

  変容の伝播する時山笑ふ をさむ

  丘に立ちスマホ動画の麗春花 たけし

  街頭のライブステージ五月来る はつ音

  梅雨近し矢切の渡し休みをり 一生

  泡たてる物使はずに汗流れ うらら

  いつ来ても水琴窟の一滴 たけし

 

■次回6月25日(火)は中原道夫先生による新橋句会です。午後2時~5時。会場は新橋・港区生涯学習センター204号室です。

【講評】特選五句について  中原道夫選・評  [兼題]当季雑詠

 

 

亡き妻はポケットの中瀧桜  柳沼宝海
  
まさかいくら小柄の妻でもポケットの中には入るまい。遺影(写真の場合は〝小照〟でも通る語がある)をポケットに入れ、福島は三春の日本三大桜〝瀧桜〟を見に連れて行ったという愛妻句、となれば作者は歴然としている。帰りには瀧桜もポケットに入っている錯覚も覚えるやも。

蒼天は全て我が物揚雲雀  小平春草

天空を自由に飛びまわり謳歌する揚雲雀であれば、今までにもこれに近い句は量産されたであろうが、中七の全て我が物という措辞は言葉を替えれば「唯我独尊」。他にそれに対峙する物は飛行機くらいしかない。

雨過ぎて牡丹ひかりを纏ひけり  板見耕人
 
雨後(雨止んで)の牡丹にまつわり付いた〝雨滴〟に焦点を当てた句。花弁の質感が雨滴ひと粒ずつ弾く撥水加工がなされているように、その状況を、纏ひけりと詠ったもの。光だけではなかなか表現が難しいが、〝水滴〟という仲介するものがあってこそ如実に見える句になった。

甘辛の変哲句集夜半の春  柳沼宝海

読書なら夜半の〝秋〟でも良さそうなのだが、言わずと知れた変哲(小沢昭一)さんならば、少々Hで〝春〟のほうがお似合いかと思う。個人的に言えば宗匠と皆が仰いでいた光石(入船亭扇橋)さんは秋櫻子門(馬酔木同人)で間違いはなかったが、少々逸脱洒脱な味は変哲句の方であったと思う。
  
落ち牡丹くたれ九相図神々し  岩田溢平
 
落ち椿の語はあれど「落ち牡丹」とはこの作者の造語かと思う。花王とも呼ばれる牡丹の最期はあたかも屋外にうち捨てられた死体が朽ちてゆく過程を九段階にわけて描いたもの=九相図、のようだと見立てているのだ。牡丹であるから、それが神々しくも見えるという穿ちである。

 

〈全出句・得点順〉

特7 亡き妻はポケットの中瀧桜 宝海

 6 猫あくび吾輩つられ暮の春 溢平

特4 蒼天は全て我が物揚雲雀 春草

特4 雨過ぎて牡丹ひかりを纏ひけり 耕人

入4 ひと色に煙りて候春の雨 はつ音

入4 うすばしろてふつがいゆるりやまたゆるり をさむ

入4 山暮し今宵の肴伽羅蕗ぞ 一生

特3 甘辛の変哲句集夜半の春 宝海

特3 落ち牡丹くたれ九相図神々し 溢平

入3 花冷えに鯛焼きぬくし早よ帰ろ 溢平

入3 山古志の棚田の春やゆいの里 青眠

入3 立ったまま靴下履ける山笑ふ 耕人

入3 田の空に飛燕縦横無尽かな 耕人

入3 白牡丹うかれひとりの夜浮かれ うらら

 3 ほんたうのことは黄薔薇の壺の中 うらら

 3 泣く時は泣くべし燕高く飛べ うらら

 3 諸葛菜畦道確かこの辺り 春草

 3 片栗や幕末兵士共に咲く 青眠

入2 春よりも若くとはいな風の吹く はつ音

入2 今日もまた春の真夏日万歩計 宝海

入2 雨あがる用水桶の花筏 をさむ   

入2 雲雀鳴く心のままに伯耆富士 一生

入2 名所図会の着物の女や花曇 をさむ

 2 コーランの遠くにありて春の月 亜紀

入1 のどけしや吾を見つめる錦鯉 青眠

 1 キャラバンのシルクロードや若葉風 亜紀

 1 春風や撫で行く先は日本海 一生

 1 傘傾げ暫し眺むる花の雨 春草

   味噌汁にあの地を想うあおさかな はつ音

   ティータイム青の都に初夏の風 亜紀

 

次回の互選句会は5月28日(火)午後2時から新橋・生涯学習センターです。

◆高得点句に寄せて

 

春風は睡魔を乗せて窓辺より  岩田溢平

 

 〝春眠暁を覚えず〟古くから言われ誰も知るところです。この〝春眠〟は、春の夜は寝心地が良いので夜明けになってもなかなか目覚めない、ことのようです。しかし揚句の詠っている情景は、どちらかと言えば、のたりのたりかな(春の海ひねもすのたりのたりかな 与謝野蕪村)の句の心情に近いように読めます。いずれにしても作者は睡魔におそわれ、心おだやかなのか、または困っているのか、読み手を楽しい想像に誘うのどかな句です。(笠原亜紀)

 

春なのに喉に小骨の刺さりし儘  板見耕人

 

 句の構成が面白い。上五の「春なのに」が意外で、どうして春なのかがひっかかった。小骨が喉に刺さったのと同じように気になった。春は明るい方向をイメージする。それなのに小骨が刺さった違和感が一体なんなのかと苛立っている。しかも刺さったままだというからして、もやもやした気持ちが晴れるわけがない。陽気な春との対比で詠んでいる。小さい頃に小骨が喉に刺さった時に母が「ご飯を噛んで呑み込みなさい」と教えられた事を思い出した。(池永一生)

 

再発の恐れふところ花見酒  木下をさむ

 

 病のことはどこにもない。句を読む人はそれでもしっかり受け止める。

言葉の計らい程の良さですかね。「ふところ」が効いている。「ふところ」は気持・心。友人知人と花の下に、それを秘して明るく振舞っているのだろう。苦い酒。この句を読む米寿過ぎの老人には、じーんと沁み込む句。自己を詠んだ句はつよいです。よく知らない俳人ではあるが、鳥居真里子の「生きる途中土筆を摘んでゐる途中」を思い出した。(柳沼宝海)

 

<全出句・得点順>

4 春風は睡魔を乗せて窓辺より 溢平

4 春なのに喉に小骨の刺さりし儘 耕人

4 再発の恐れふところ花見酒 をさむ

3 さ、よ、な、ら、と言葉ちぎって春嵐 溢平

3 落第や大師橋下ハーモニカ 宝海

3 鯉の口大きく開(あ)くや蕗の薹 をさむ

3 春寒し医師のことばの棘刺さる 宝海

3 春彼岸両隣にも手を合わす 一生

3 安居して弥生に雨の匂ひかな 耕人

3 春灯下音は命よバンドマン うらら

3 春ひとり遺影の妻の笑ひ声 宝海

2 咲かずして今宵集ふや花見酒 一生

2 洗ひ髪かき乱されし春の塵 亜紀

2 ふきのとうダンボール中花開く 亜紀

2 再会の笑顔の君は春コート 一生

1 鶯のここよと初音葉をゆらし はつ音

1 盃をかさね翳すや八重櫻 たけし

1 花冷えを酒精に紛らす赤提灯 溢平

1 税申告人も土筆も並び居り うらら

  タンポポの絮も家族の沸騰花 たけし

  花冷えの海辺の先の化粧富士 耕人

  桜待つ目視観測談話かな うらら

  スタートはここから春へ五十キロ はつ音

  唐松の枝先朧富士白し をさむ

  遠き日の堤防の土手蓬摘む 亜紀

  寒戻り一歩一歩の風の中 はつ音

  ひたむきにの根元の鼓草 たけし

 

■次回4月23日(火)は中原道夫先生による新橋句会です。午後2時~5時。会場は新橋・港区生涯学習センター204号室です。皆さまこぞってご出席下さい。

欠席投句は前日までに耕人までメールかFAXにてご送付ください。

【講評】特選五句について  中原道夫選・評  [兼題]当季雑詠

百千鳥ときに礫となりて飛ぶ  板見耕人

百千鳥は特定の鳥ではなくいろいろな鳥の意味で使う。集団で行動する鳥もいれば、あまり群れない種類もいる。稲雀などは大群で、収穫の秋には〝投網〟を広げたような姿で移動する。揚句は「ときに礫と―」という中七の形容に頷くことになる。柔らかいものなのに固まるとまるで硬い〝礫〟のように見える。
  
妻と来し那須の枯野に自撮り棒  柳沼宝海
  
今となっては懐かしい思い出になってしまったよう。枯野では出会う人も少なく、撮ってもらうことも出来ず、やはり自撮り棒を持参したのは良かった。こういうタイプの句は中七にそれぞれ思い出の土地を当て嵌めて、尾瀬の―、近江の―と、シチュエーションと季節を組み合わせる―というように、ご当地俳句として互換性を愉しむことが出来る。

春の日や本家の墓の消えてをり  池永一生
 
うららかな一日、墓参で故郷へ帰省したか。まず自分の家の墓にお参りして次なる(ついでだからと)本家の墓にもと思い行くと墓が消えていて驚く。本家からそんな墓仕舞の話も聞いていない。近ごろ跡継ぎもいない家の墓仕舞が流行っていると仄聞するが、まさか分家の我が家に連絡もなく―まったくの寝耳に水。これからもこういう事態が増えていくのだろうか。暖かな日だけに妙な寂しさが漂う。

冬日射す瓦礫の中の草一本  柳沼宝海

恐らく能登大地震その後に残された荒涼たる景。三陸沖地震の津波の引いた後の凄まじい瓦礫の山とダブって見える。少し落ち着いたものの、さほど片付くふうにも見えず、依然として景の中にある。「草一本」と限定せずとも、瓦礫の中に伸び始めた状態であれば「草の丈」と、一本に拘ることもない。

 

〈全出句・得点順〉
特6 百千鳥ときに礫となりて飛ぶ 耕人 
特5 妻と来し那須の枯野に自撮り棒 宝海
特4 春の日や本家の墓の消えてをり 一生
入4 魔の山の木霊も凍る白き壁 をさむ
入4 たゆたうて人みな梅に許されに 耕人
特3 冬日射す瓦礫の中の草一本 宝海
入3 春時雨とどまることを手放して はつ音
入3 のどけしや花観音も眉ひらき 耕人
入3 圧死する人数多(あまた)能登に牡丹雪 溢平
 3 白魚の小さき一盛何グラム うらら
特2 真夜中の貌は知らねど冴えかえる はつ音
入2 紅梅の陽に日にほどけ我もまた はつ音
入2 掛け布団すき間にすっと余寒かな 溢平
入2 薄日差す屋根に植木に雪まだら 亜紀
 2 坂上の伴天連屋敷冬薔薇 をさむ
 2 春雷のトレモロのごと近づけり うらら
 2 春岬プロペラ並ぶ風の道 一生
 2 鬼が道聞くは空耳節分祭 うらら
 2 ひい孫の喜怒哀楽や障子越し 宝海
 2 夜興引(よこひき)の犬も車で向かいけり をさむ
 1 春驟雨聳ゆ煙突かすみをり 一生
 1 椿まだ零れぬほどの重さかな 溢平

 1 烏鷺の攻め一手の音や春の雷 亜紀
   席ゆずり一寸ほっこり春の月 亜紀

次回の互選句会は3月26日(火)午後2時から新橋・生涯学習センター204号室)です。

◆高得点句に寄せて

 

善人のふりして並ぶ初詣  岩田溢平

「善人のふり」が、この句を読む人のさまざまなことにリンクしていく。初詣、我が家では大きな寺社には行かず、氏神に家族で行く。御初穂は前日に届けてある。この句のように〝善人〟の列ができている。

今年は、め組の頭が列の整理役だ。みな善人になりきっている。新年の挨拶があちこちで続く。善人ばかり、ふりしていない。以上が私の善人のふり。いやいや、「ふり」は、いい姿格好の意。さらっと詠んでいるようで素敵な一句だ。読む人が主人公になる。(柳沼宝海)

 

幾何学に雪吊の庭支配さる  池永一生

 

 〝雪吊〟は雪の多い東北や北陸地方の庭園などで、樹木保護のために用いられる。樹冠上部に立てた柱の一点から各枝へと放射状に張った多くの縄によって降る雪の重みから枝が折れないように守る仕組み。冬の風物詩として特に金沢の兼六園の雪吊が有名だ。

 一生さんはこの冬、兼六園を訪れたのだろうか、いくつもの雪吊が織りなす幾何学模様によって庭と空が分割されて現れた風景への率直な驚きが句から伝わってくる。庭園や雪吊といった優雅で情緒的な背景に対して〝幾何学〟〝支配〟という無機的かつ非情な措辞がとても効いていて、句の中に新しい風景を創り出したことに感心した。(板見耕人)

 

<全出句・得点順>

5 善人のふりして並ぶ初詣 溢平

5 幾何学に雪吊の庭支配さる 一生

3 凍てし能登明けの明星見ゆるらむ 一生

3 鏡中に生涯見たり年男 耕人

2 倒裂し孤立無援の冬芽かな たけし

2 初夢に亡母装い高島田 社会

2 今日四日遺影の妻とふたりきり 宝海

2 妻病みて三寒四温の時を待つ 青眠

2 小豆粥人には人の隠し味 はつ音

2 日輪の眞っ向に来る初御空 うらら

2 列島に正月のなえ突き刺さる はつ音

2 山雀の骸一羽ややま凍てり をさむ

1 闊歩するブーツ軽快冬うらら うらら

1 南極の氷のロック太鼓の香 をさむ

1 ラジオ付けベッドの中の夜長かな 亜紀

1 戦火冬街瓦礫命赤ん坊 宝海

1 凍てついた光溶けだす御来光 をさむ

1 なゐの魔手なすすべも無き松の内 社会

1 横時雨若きふたりに傘貰ふ 宝海

1 初日記ぞぞぞ空白恐怖症 耕人

1 震度七令和六年元日の 亜紀  

  約束は神様だけの寝正月 耕人

  未明より豪雪警報被災地に 溢平

  寒椿江戸のしぐさに宙返り たけし

  義援金振り込み寒さ分かち合う 亜紀

  浮かぶまま寒中見舞いに便りのせ 青眠

  もぐやいな朝の香放つレモンの果 溢平

  師に仲間手放すあすや去年今年 はつ音

  新年会裏金以っておもてなし 社会

  鬱金香に球根も売る三代目 一生

  大寒や海賊の海避けてゆく 青眠

  蝋梅の香気さそふも耽美かな たけし

  さまざまな行事始まる五日かな うらら

 

 

次回2月27日(火)は中原道夫先生による新橋句会です。午後2時~5時。会場は新橋・港区生涯学習センター204号室です

なお申し訳ありませんが耕人は当日どうしても仕事で出られませんので、欠席投句は前日までに一生さん(ike.photo@outlook.jp)までメールでご送付ください。

【講評】特選五句について  中原道夫選・評  [兼題]当季雑詠

 

 

ファイティングポーズで死ぬる枯蟷螂  板見耕人

 

〝枯れ〟から死に近いカマキリを想像する人もいよう。カマキリには緑色のものと最初から薄茶色したモノが存在して、緑色のものが茶色となり死ぬ―のではないらしい。本能的に何にでも威嚇するポーズを取ることはよく知られる処だ。ファイティングポーズで死んだボクサーは居ない。そこが面白いと言えば面白い。

  

バーテンが一服点す路地の除夜  土田社会 

 

 大晦日でも営業しているBAR。店内で煙草を吸うのは(客が吸ったとしても)憚るのだろう。ときおり外へ出て一服するのだ。団地ならさしずめ〝蛍族〟と言うのだろうが―人が遊ぶとき必ず一方で休まず仕事をしなければならない職業がある。

 

気が付けば尉となる炭一人酒  木下をさむ

  

 尉(じょう)は年老いた男性の意だが、他に炭が灰になった状態も言う。ここでは炭といっているから白い灰。一人酒は少々演歌調で俗っぽくなるから〝一人酌む〟のほうが少しは恰好が付く。だいぶこの酒肆で長居をしたようである。

 

所在なく日にち薬の日向ぼこ  小平春草

 

 よく言われる〝日にち薬〟とは実際には存在しない薬。人が亡くなったりして心が癒えるのに少しずつ一日一日時間が解決する、謂わば〝癒し〟時間のこと。それを日向ぼこをする人、何を癒やすかは判らぬが、齢を取っていくことも安寧―心の拠り所なのだ、と。

 

人間の造りし戦車冬の月  柳沼宝海

 

 時々戦争をやり軍需で潤うことで回している国もあると仄聞する。人を人が殺し合ってという愚かを未だに繰り返す。ここでは月下に浮き上がらせるように一台の戦車(破損していて残骸であろう)だが、人間の戦争のために造ったもの全てを指すと思われる。

 

<全出句・得点順>

特5 ファイティングポーズで死ぬる枯蟷螂 耕人

特4 バーテンが一服点す路地の除夜 社会

特4 気がつけば尉となる炭一人酒 をさむ

特4 所在なく日にち薬の日向ぼこ 春草

入4 猪鍋の煮える笑いの生まれをる 風写  

入4 深山を鎮めしままの冬銀河 風写

 4 模試の朝山茶花達はまだつぼみ 社会

 4 子供らの秘密の小道竜の玉 春草

特3 人間の造りし戦車冬の月 宝海

 3 冬茜太宰の陸橋見納めし 一生

 3 冬耕の首を傾げて鳶の笛 耕人

 3 十二月女房殿の後をゆく はつ音

 3 出番待つサンタに届くお弁当 社会

入2 めくるめく都会の砂漠年果つる うらら

入2 オリオンを仰ぎ用足す帰り道 溢平

入2 神棚も仏壇もありクリスマス 宝海

 2 孫嫁ぐピアノなき部屋夜半の冬 宝海

 2 短日やステージⅢの悪性腫瘍 をさむ

 2 万感の冬木が映す今日の我 はつ音

 2 母と待つ手より大きな落葉持ち 一生

 2 青年の祝(はふり)駆けたる冬野かな 風写

入1 盤上に和服の袖や日短 亜紀

入1 鶴来たる羽を伸ばしてランウェイ うらら

入1 今年こそ誓った年も暮れにけり 溢平

入1 コンビニのレジ打つサンタアルバイト 溢平

 1 冬かもめ恋しい浜はあと少し はつ音

 1 風の音や闇見上ぐれば大オリオン 耕人

 1 生きてなお四季を感じて年暮るる 亜紀

   罪深き禁断の蜜林檎かな うらら

   硝子戸の外の小庭や藪柑子 をさむ

   軒下に吊るす塩引鮭山の宿 春草

   風そよぐ銀杏並木も師走かな 亜紀

   丸顔の道産子来る着ぶくれて 一生

 

次回の互選句会は1月23日(火)午後2時から新橋・生涯学習センター202号室です。

◆高得点句に寄せて

 

街の灯にためらふ冬の月連れて  片桐うらら

 

 心地よく、どこか華やいだ気分が句に流れる。どんな出で立ちで歩けばこんな気持ちになれるのか。向かう先に待つ人か。それは遠路を作者の誕生日を一緒に過ごすため訪れた方とのぬくもりに他ならない。街の灯にちょっぴりセンチメンタルを添えて、今日の月はこころに。(青野はつ音)

 

小春日の腹に沁みこむ重湯なり  木下をさむ

 

 人は食べなくては生きてゆけない。作者は手術をしたばかりだ。この句はその術後のことを読んだものだ。食事がとられるようになったということは順調に快復がすすんでいるという証しだ。中七の「腹に沁みこむ」はそのときの実感だ。当然に胃に負担のかからない重湯であるが、ありがたいと感じた。これで健康をとり戻して生きてゆけると、明るい兆しに喜びもひとしおだ。おりしも小春日が病室に差し込む。快復を祝福するかのように。病句だが明るい。句会でをさむさんに会える日も近いと感じた。(池永一生)

 

芸の道枯れててっぺん烏瓜  土田社会

 〝芸の道〟というから古典芸能を思い浮かべたが、作者はシャンソン歌手。もちろん広義の〝芸〟に含まれる。句のほうはどこか達観した境地で詠まれていて、たいへん調子の良い句だ。好きな芸で精一杯生き抜いたのちにふと振り返って見上げた空、枯れた蔓の先に赤い烏瓜の実がひとつ陽に輝いている。まるで誇らしい自分だけの勲章のよう。芸の世界は〝てっぺん〟を目指す上昇志向が原動力。そこに身を置いた人ならではの、芸道への希求と諦念が込められているようだ。(板見耕人)

 

 <全出句・得点順>

5 街の灯にためらふ冬の月連れて うらら

5 小春の日腹に沁みこむ重湯なり をさむ

4 芸の道枯れててっぺん烏瓜 社会

3 バースデイそう誕生日秋刀魚買う 亜紀

3 そう悪くない人生さ衣被 耕人

3 熊もまた受難の時代冬籠る 一生

2 冬の日や小さき遺影枕元 宝海

2 小春日の懐に抱く勇気かな はつ音

2 小春日の歩行訓練石蕗の花 春草

2 短日の何処のあかりをつけようか はつ音

2 鈍色や烏ひと鳴き時雨をり 一生

2 友逝きぬ一駅歩く秋の夜 宝海

2 秋深し食事運動骨密度 亜紀

2 気ごころの知れたるはずの日向ぼこ はつ音

2 朝使う湯たんぽの湯のありがたさ 溢平

1 車椅子押さず歩めば秋実る 青眠

1 小春日や生き方諭す太宰の地 一生

1 枯れ野にて戦争ごっこ死んだふり 宝海

1 朝ゴジラ観て帰りゆく時雨かな 耕人

1 白波に触れる指先冬の音 たけし

1 マネキンの頭部の案山子白き富士 をさむ

1 青き海紅き海(み)に入り秋進む 青眠

1 啄むや熟柿落してせめぎあい たけし

  寒月や我が家目指して千鳥足 溢平

  癖のある馴染みのテリア冬毛かな 社会

  旅先の露天の風呂や残る虫 春草

  一茶忌の我まさに怪我治療中 うらら

  おでん買い小走りに去る青信号 社会

  明石大橋秋夜クルーズ光る数珠 亜紀

  たぐりよす新そばほのか昼さがり 溢平

  雲海の案内(あない)するなり紅葉谷 をさむ

  紅の海白き船ゆく画布を見る 青眠

  秋晴れやナース採血手際よく 耕人

  拭き上げし床小春日に閃かし うらら

  里の道しばし狸と睨めっこ 春草」

  鴨啼くや虚空の翼ホバリング たけし

 

次回12月19日(火)は中原道夫先生による今年最後の句会です。会場は新橋・港区生涯学習センター304号室。句会後に忘年会を開催します。

 

 

【講評】特選五句について  中原道夫選・評  [兼題]当季雑詠

 

 

秋風も観客にして村歌舞伎  板見耕人

 

 勿論、観客が疎らだから秋風も観客にしたのではない。村歌舞伎の行われている過疎、山間の地には一足先に秋がやって来ていて、涼やかな夜ともなれば肌寒く感じられる、そこを読み取る必要がある。秋風も観客に〝して〟より〝入れ〟でも良かったかと村歌舞伎の賑わいを想像してみるのだ。

 

捨案山子大の字になり石枕  柳沼宝海

  

 捨案山子という季語はあるが実際にカカシを作ったら農業を止めない限り一回で捨ててしまうということはまずない。翌年も草臥れて来た部分など取り替えてまた田圃に立たせる。田から抜いて畦に寝かせたモノを便宜上〝捨案山子〟と思ってよい。ちょうど都合よく路肩に石があった…とすれば何もないより硬くても石の枕くらいほしいと作者は思ったよう。

 

夜長し遺品整理の縁とは  池永一生 

 

 「縁」から類推して直系つまり子供ではないよう。偶々知り合いになった程度の関係でも、生前仲良くして頂いたのだから貴方も故人の愛用していたもの貰って欲しい、と言われたと勝手に想像する。以前より時々家にお邪魔するくらいの間柄だったのかも知れない。あれやこれやと故人の話をするうちに夜も更けて―。

 

主無きままの暗室夜半の秋  池永一生

 

 暗室を持つくらいの人だから趣味が昂じたか写真家か、という処だろう。どのくらい主が亡くなってそのまま放置してあるのか想像の域を出ない。残された人も時折覗く程度なのだろう。夜半の秋から集(すだ)く虫の音も遠ざかりつつある感じ。〝残る虫〟と下五に据えることも出来るが、ここは〝夜半の秋〟でむしろ読者に聴覚は任せた方が得策と思える。

 

思い出もはるかに芙蓉ちる途中  栗原けいこ

 

 想い出もはるか―は叙述の為方として普通なのだが「芙蓉ちる途中」のフレーズが下部に来ることに因って散る途中すなわち現在進行形―地べたに芙蓉の花は着置せず、ずっと空間に留まって浮遊しているかのような錯覚を受ける。そしてその芙蓉ちる―は遥か昔の思い出の中のシーンのようであり時空のズレを永遠に有した儘、眼前にあるという不思議な句である。

 

〈全出句・得点順〉

特6 秋風も観客にして村歌舞伎 耕人

 6 できた事できないと泣く妻の秋 青眠

入5 音出しのカウントはギター秋の宵 うらら

入5 朝寒に羽織る一枚ミルクティ 亜紀

入4 週末を籠り獣のやうに冷ゆ うらら

特3 捨案山子大の字になり石枕 宝海

特3 夜長し遺品整理の縁とは 一生

特3 主無きままの暗室夜半の秋 一生

入3 三日月の湾に漁船のあかりあり はつ音

入3 片付けという名の始末秋高し はつ音

 3 伊那谷の秋を左手(ゆんで)に飯田線 耕人

 3 鍵穴を探して瞑し暮れの秋 溢平

 3 じうじうと秋刀魚焼けたり酒を持て 溢平

特2 思い出もはるかに芙蓉ちる途中 けいこ

 2 大太鼓雲わきあがる秋祭 けいこ

 2 逆上がりひとり練習つわの花 をさむ

 2 あおき海あかねに満ちて秋来たる 青眠

 2 微笑むも朗笑もある新酒かな うらら

 2 この月をまた見るときは土の中 宝海

 2 秋空は天晴れパレット青絵の具 溢平

入1 秋映す節穴覗く遠き過去 一生

 1 初めての席を譲られ秋団扇 をさむ

 1 中空の中秋の月望の月 亜紀

   秋日和米寿隠せず友集ふ 宝海

   荒滔々オーロラ求め火の国へ 青眠

   東京の地霊求めて九月尽 をさむ

   好物の横目ですぎる石榴かな はつ音

   ふる里や時間指定の今年米 亜紀

   杜鵑草そなへインコの墓の辺に けいこ

       刈入れの後の棚田に風清し 耕人

 

※次回の11月28日(火)は会員互選句会、12月19日(火)は中原先生句会(午後2時から新橋・生涯学習センター)です。

◆高得点句に寄せて

 

男坂登りきれずに大夕焼け  栁沼宝海

 

 男坂は女坂に比べて急である。その名は登山道に限らず、神社の参道や都会にもある。お茶の水・駿河台の男坂は石段で途中に平らな踊り場が一つに対して、女坂には三つある。段数は七十三もある。

 さて、作者は地元の港区にある愛宕神社の男坂のことを言っている。本殿まで一直線に延びる石段が八十六段あり、傾斜が急で怖いほどだ と書かれていた。女坂は、迂回して段数が百七段であるから男坂に比べて緩い。男坂は出世の石段と言われ、ご利益がある。

 作者は、男坂で夕焼け見たさに歩を早めたが、急な石段であるから息も上がり、途中で上るのを諦めた。若干の挫折を味わったが、大夕焼けは街を包み作者も包んだ。体力が落ちたことを実感したが、大夕焼けはそれらのすべてを忘れさせるほど素晴らしかった。私は愛宕神社に参拝をしたことがない。男坂を上ってみたいと思った。(池永一生)

 

 

夕焼けにニタリと笑ふ曼殊沙華  岩田溢平

 

 特選にいただいたこの句を読んだ時、初めに思い出したのは幼いころの故郷(甲斐の国)の秋の光景。土手や田の畔に生える真っ赤な紅色の連なり.よく見ると長い雄蕊と雌蕊も赤い六弁花を数個輪状に付ける曼殊沙華の姿である。田舎では彼岸花とも呼ばれていた。

 この句が詠まれた日の映像は、夕刻に染まる花と時間とともに逆光に輝く夕焼けの風景を撮影しながら作者が感じた.さまざまに変化する画像の楽しさでしょうか。想像以上にバランス良く撮れたファインダーを見て、作者は思わず微笑んでしまった。

 曼殊沙華の名句では「曼殊沙華どれも腹出し秩父の子」金子兜太、「露の村いきてかがやく曼殊沙華」飯田龍太、などがある。(武井たけし)

 

 

<全出句・得点順>

 

5 男坂登りきれずに大夕焼け 宝海

5 夕焼けにニタリと笑ふ曼殊沙華 溢平

4 曾孫抱く骨なきごとし秋うらら 宝海

4 駆け足で生きた幼子秋立ちぬ をさむ

4 まろき海われを包みて月まんてん 青眠

4 初秋刀魚更に細身に研ぎ澄みて 亜紀

4 さしあたりおなもみほどの未練かな 社会

3 新涼や腓(こむら)がへりの仕打ちあり 一生

3 なっちゃんの味方はじいじ鳳仙花 耕人

3 船上の盆踊る手に天の川 青眠

3 清流に映る藁屋根柿紅葉 をさむ

2 白芙蓉一日(ひとひ)ふりゆく人もまた けいこ

2 目につきて片付け始む秋の朝 はつ音

2 余炎を冷ませ歯に沁むコップ酒 溢平

2 秋蝶やゆらゆら迷ひて上る天 溢平

2 古稀集ふどっと方言晩夏旅 一生

2 泣きじゃくる団地の何処か雲の峰 一生

1 クーラーに命継ぎて九月末 亜紀

1 つつましく昭和は遠く敬老会 けいこ

1 みまかれし数だけ咲くよ曼殊沙華 けいこ

1 あるときは地を鳴らしゆく野分かな 耕人

1 楽しみは弁当だけの運動会 をさむ

1 俗名は小さく記され鰯雲 耕人

1 母ゆずり椅子押す手にも秋の風 青眠

1 奥那須にスマホの妻と大花野 宝海

1 破れ蓮疲れ果てたる栄華かな 社会

  野菊むれ十七音の奉づかな たけし

  天空に架かる薫のこぼれ萩 たけし

  彼方此方に羽撃き揺るる女郎花 たけし

  足がただすうっと前へ秋うらら はつ音

  自分との距離を縮めて九月かな はつ音

  虫の音やゴミ出しの朝静まりて 亜紀

  数珠子玉十人十色が平和の世 社会

 

■次回10月24日(火)は中原道夫先生による新橋句会です。

【講評】特選五句について  中原道夫選・評  [兼題]当季雑詠

 

 

蝉しぐれ柩の母の若づくり    板見耕人

 

 最近母上の死に立ち会ったときの作。「送り人」その中に死者に化粧を施す係の人がいて、その技術とやらには近年目を瞠るものがある。作者は母の化粧の思いにも依らぬ仕上がりに若き日の母と対面したかのよう、満足した別れだったようである。

 

ひとり身の急ぐことなし夜の秋  青野はつ音

 

 夫が先に逝ったかその逆か解らないが、当初は寂しい思いをしたよう。しかしその寂しさと引き替えに、自分のペースで何事も運ぶ自由さを手に入れたことに気付く。この先そうは長くないとすれば急ぐことも考えられるのだが、ひとり身がそれを制止する。ゆっくりでいい、と。

 

雲のごと白をたばねて盆の花  栗原けいこ

 

 盆花というと芒、女郎花、エゾ菊(アスター)、百日草、鶏頭、溝萩(精霊花)という(地方にも因るが)処か。最近は初雪草という葉とも花ともつかぬ白い花をよく見かける。その植物と特定はしないが、原色の花の中にあって白い花を束ねる清々しさを愛で供養したい気分になった。

 

黒を着る用事の増えて秋日傘  土田社会

 

 秋日傘からまだ秋暑の時期と思われる。そんな暑さのなか喪服など(慶事もあるが)をどうしても着る必要が、それも段々増えて来るのはいたしかたないこと。それは年齢と世間との柵(しがらみ)の所為。

 

酩酊しベンチの枕天の川  柳沼宝海

 

 したたかに酔って、気が付けば公園のベンチで寝ていたという話。寒い時期は無理だが爽やかな秋口なら気分も良い。天の川も顔前近くまで降りて来て具(つぶさ)に見ることが出来そうである。

 

〈全出句・得点順〉

特7 蝉しぐれ柩の母の若づくり 耕人

特5 ひとり身の急ぐことなし夜の秋 はつ音

特5 雲のごと白をたばねて盆の花 けいこ

 5 夾竹桃祈りの日々の過ぎてゆき 春草

入4 殺意なき殺意めらめら曼珠沙華 うらら

 4 夏の草兵士の墓の星三つ 宝海

特3 黒を着る用事の増えて秋日傘 社会

入3 只一人夏酒仕込む女杜氏 溢平

 3 蟬わんわ鳴いてあの世に飛んでゆく 溢平

 3 きざむ音あの日この日の秋茗荷 はつ音

 3 遠雷や痛みはじめる五十肩 春草

特2 酩酊しベンチの枕天の川 宝海

入2 シアターに涼を求めしポップコーン 溢平

入2 納骨を済ませし昼の冷素麺 耕人

入2 泡虫の泡の中なる一壷天 をさむ

入2 妻詠みし澄雄の句読む秋の夕 宝海

 2 ベンガルトラは水浴びさらば吉野信 耕人

 2 つかの間のヒロインとなる秋あかね うらら

 2 肉体も精神も喰む残暑の気 社会

入1 夏座敷待って待たされ雨の音 亜紀

入1 郷土料理腕ふる姪の玉の汗 亜紀

 1 はしたなきことを言ひたる鬼やんま うらら

 1 仏間にもコロナ歳月蝉しぐれ 亜紀

 1 台風にスターリンクのナビ薦め 社会

 1 担ぎ手の黒髪ふたつ秋まつり をさむ

 1 「アイスーアイスー」声流れゆく軒忍 をさむ

   待ちわびる最終章の残暑かな はつ音

   金魚死すわれより先に逝きしかな けいこ

   送り火の広がる空やマッチの火 けいこ

   何やかやお盆過ぎて墓参り 春草

 

※次回9月26日(火)は会員互選句会(午後2時から新橋・生涯学習センター)です。