前回記事の続きです.
糖尿病性神経根症(Diabetic Radiculopathy)は,しばしば 糖尿病性筋萎縮症と同列に扱われます.
それは 両者が原因と結果の関係にあるからです.
糖尿病性神経根症とは
糖尿病性神経根症の『根』とは神経の根元のことです. 脊椎からでた神経の束は背骨の隙間を通過して全身に伸びていきます.この脊椎から出たばかりの神経束が『神経根』であり,そこから枝分かれしながらもっとも伸びた先端が『末梢神経』です.
神経根 (C) Johns Hopkins Medicine
神経根障害でよく見られるのが椎間板ヘルニアなどで圧迫されたために発生する神経痛です.しかし,(CTなどで検査して)物理的には全然圧迫されていないはずなのに,糖尿病による血行不良などで神経根から痛みが発生する,これが『糖尿病性神経根症』です.
神経根症 (C) Johns Hopkins Medicine
末梢神経障害と異なり,神経の大本から障害されるので,その痛みは神経に沿って広範囲にかつ長く広がります.
第4腰椎からの神経が障害された場合,神経に沿って大腿部から脛の内側にかけて神経損傷と痛みが発生し,これが長期的には当該部の筋肉萎縮を引き起こします.そのため,糖尿病性神経根障害と糖尿病性筋萎縮症は 同じものとみなされます.
胸の痛みも
また糖尿病性神経根症では,この図の通り;
足腰の痛みというと,まず 椎間板ヘルニアなどの整形外科的な原因が調べられます.
ところが糖尿病性神経根障害では,X線/CTで見ても なんら異常がないので,神経障害が発生していることを見落とされる可能性があり,注意が必要です.