2006 :自作マイクのMems化に朗報、 ICS-40720、730の手半田法完成 | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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一般失敗率はほぼ100%です。  

しかしポイントを押さえ、スキルさえれあれば失敗はしません。

 

サーチ  このブログはDIYサイトではありません。

貴方と一緒に考えるサイトです、お間違えなきようお願いします。

 

この記事の無断リンク及び記事の商業的窃用は固くお断りします。(ShinさんのPA工作室 管理人)

(※スキルには個人差があります、超小型回路試作など、微小ハードウェアに手慣れている方のみを対象としています)

 

 

ここまでたどり着くのに3ヶ月以上費やしましたが、これで本質的解決に至ったと思います。

 

マイクロホン自作をされる読者の皆様に一刻も早くこの事実をお知らせしたくて本記事をお届けします。

 

 

 ここではINVENSENSEのICS-40720、40730の2品種について実施した事柄からの報告となります。

 

 他についてはICS-40300、40619が同一手順で成功していますが、他メーカー・その他品種について筆者はご報告できませんのであしからずご了解ください。

 

 

「熱に強い」と豪語するMemsマイクがなぜ「半田付けの熱でほとんどが不良になるんだ?

「なぜだ!」「どうしてなんだ?」 疑問は深まるまま、背に腹は代えられない、としても「0.2秒瞬間半田付け法」まで訓練して進めるごとに「なにかが変だ」と感じるようになり、今日もまた深夜を迎えた。

 「クリップにはさんで放熱しながら半田付けすればいいかも」、と思い付いたまま実施、あまりにも小さく肝心のMemsマイクはどこかにすっ飛んで紛失した。

 

 メーカーからは「手半田でのデータは持ち合わせていない」「基板キットならある」と言い放たれた。

しかし私たちは手半田こそがすべて、基板キットなどまるでAMAZONからケシゴムが1個届いた荷物のような様子でバカ高、これは本末転倒だ。

 

 

MOUSERから2~3個づつ各種Memsマイクを取り寄せて安易に取り組み始めたが、そんな気構えではとても間に合うシロモノではない、再輸入は量を増やして実験試作を継続した。

 「手半田の熱になぜ弱いんだ?」と瞬間半田付けワザはますます手品師のようになったが、これじゃ「技術者」ではなく「奇術者」だと認識。

 

 この、「きわめて熱に弱い」デバイスを安定的に扱えることナシにハンドクラフトは成り立たない。

 

 なぜ、高温のリフロー環境で問題が起きなくて、手半田だと壊れるんだ?という疑問はますます高まるなか、「俺、なにか間違っているはずだ・・・」と、感じつつドン詰まりだ。

 

 そんな時ふと、これを打破するヒントが届き、Memsマイクをあらかじめ熱しておくことが決定的に有効なことが判明、すぐヒートガンを注文した。

そして事態は一変した。

 

 

≪「プレヒート」が状況を変えた≫

その鍵 「プレヒート」(予熱)と呼ばれ、許容温度範囲でこの「マイクロ・メカトロ部品」の複合構造のキシミをほぐしてなじませることがキモだった。

 

試料にあらかじめ「ヒートガン」により一定時間熱する(プレヒート)を実施することで懸案の問題は一気に吹き飛んだ。

 

使用したヒートガン

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07T592VRR/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o05_s00?ie=UTF8&psc=1

 

 

(ヒートガンはヘアドライヤーでも代替えできます、温度注意)

 

 

 ヒートガンで恐る恐る100℃ 30秒間を与え、そのあと低温ハンダを使ってリード線のハンダ付けをおこなった。(普通ハンダでOKを確認した)

ヘッドホンからみずみずしい音声が聴こえたときは「完成した!」と感激した。

このあと一般半田(60%半田)でも同様に問題ないことが確認された。

 

次にクリーム半田を用いたテストをおこなった。

これはペースト状の半田材が熱で溶けると金属化してくれる。

微小な半田作業にはたいへん使いやすく驚いた。

 粘性のあるクリーム状であるため 「ヌレ性」が良く、特にコテを当てた際、毛管現象により細素線に瞬時でしみ込み、同時に金属化する速さは極小部分の半田付けにはジャスト・フィットの半田材だと思います。

 しかしプレヒートなしでは一般半田と結果は同じであり6-4半田の性質そのものでもある。

 

(使用したクリーム半田)

クリーム半田

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00MILNHYA/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o06_s00?ie=UTF8&psc=1

 

 

プレヒート後、クリーム半田使用。

 

 

 

 

 

《たどり着いた手半田手法》 

 プレヒートとクリーム半田とを組み合わせた方法が最も適切、と判断。

つまり、「プレヒート」こそがこのMemsマイクの手半田を可能とする最大のカギだったことが下記進化の過程でハッキリとしました。

 

 

 

1.普通にはんだ付けした場合(100%失敗)

 

手法の進化 1

一般はんだ使用、20W半田ごてでリード線のハンダ付け

  (ランダムノイズのみで音声ナシ、または特性劣化)にて不良となった。

   失敗率は高く、ほぼ100%である)                                  (X)完全破壊

 

手法の進化 2

一般はんだ使用、20W半田ごてでリード線の瞬間半田付け(0.2秒)  

成功率は筆者で 6~70%、やや感度のバラツキがみられる             (△)半破壊

 

手法の進化 3

1.リフロー用クリーム半田使用、プレヒートなしで瞬間半田付け(0.2秒)

  (結果3個中1個は熱破壊、2個は感度の差があるものの正常音)  (X・△)破壊

 

 

 

2.プレヒート後はんだ付けした場合(100%成功)

 

手法の進化 4 

1.ヒートガンにより約150℃30秒加熱(プレヒート)

2.低温はんだ使用、温度調整半田ごて(230℃)でリード線のハンダ付け

    (結果良好)                                                               (OK)

 

手法の進化 5

1.ヒートガンにより約100℃60秒加熱(プレヒート)

2.低温はんだ使用、20W半田ごてでリード線のハンダ付け

  (結果良好)                                                               (OK)

 

手法の進化 6

1.ヒートガンにより約100℃60秒間加熱(プレヒート)

2.一般はんだ使用(千住金属60%)、20W半田ごにてハンダ付け

  (結果良好)                                                                (OK)

 

手法の進化 7

1.ヒートガンにより約100℃60秒間加熱(プレヒート)

2.リフロー用クリーム半田使用、20W半田ごにてハンダ付け

  (結果良好)                                                               (OK)

 

(これ以上事例を増やしてテストすることは個人としては限界です)

 

上記を経て「リフロー」に代わる机上半田手法が完成しました。

 

 

ビックリマーク 音を聴け

プレヒート後半田付けをおこなった際は、その時点で音を確認する必要があります。

それは「熱破壊」をまぬがれたことを確認する必要があるからです。

 その時点の音を聴かずしてマイクロホン製作はあり得ません。

 

 繰り返し述べますが、マイクロホンクラフト最強のツールとして「マイボイス・リアルタイムモニター」を発表しており日常的に使っています。

 それは物理測定よりも、音楽録音よりも適切な結果がリアルタイムに判明する最強のマイクロホン・テストツールだからです。

これを行わないで製作された自作マイクの音は「仏作って魂入れず」に等しく、まず信じられません、ここが違うと結果は天と地ほどの差を見せます。

 

世界中に広まった「AMAZONの中華激安マイクの改造」では「マイボイス・リアルタイムモニター」だけで仕上げていますが価格で2桁上の音を出すため、あれから4年経った現在なおブームは続いて「定番改造化」しています。

 

ヨーロッパ製高級マイクとの鳴き合わせでもこの手法で臨みますので、いつも国内メーカー製マイクを退けてきました、それは当然でしょう。

 

(このサイトにたいする各種ご批判は「2ちゃんねる」から最近閉鎖されたわずかな無断リンクまで長年にわたり自分の目で確認しており知っています)

 

 そのなかで、最近の「自慢ばっかり」というのがありますが真実にフタをするのは自作マイクの可能性にフタをするに等しい行為だと認識しています。

 ドイツ・オーストリア・デンマークといった海外メーカー製を意識し、それを超える自作マイクしか私はめざしていませんので当然その方向で完成しますが、「貴方は何をめざしているのか」です。

今後もネットの雑音に左右されることは一切ありません、ありのままを伝えてまいります。

 

 

 

 

熱破壊されたMemsマイクの不良品

 

 

 

以上、INVENSESのICS-40720及び40730にて手半田を可能とする手法を約3ヶ月探ってきましたが、おかげさまでこれを克服することができました。

 

クローバー INVENSENSE社のICS-40720及び40730を選んだ理由は下記。

 

Memsマイクメーカー10社の製品、公表されているすべてのスペック調査をおこない、この2品種を選択しました。

 

クローバー 参考   memsマイクメーカー各社HP該当ページ

≪Knowles≫ ≪Invensense (TDK)≫ ≪Infineon≫ ≪CUI Devices≫ ≪STMicroelectronics≫ ≪ホシデン≫≪JRC≫ ≪gettopacoustic≫ DB Productshttps:≫ ≪vespermems.com/technology≫

 

 そして2019~2020年現在、単体マイク用途として「適切」と判断したのがICS-40720及び40730という大きさと性格の異なる2 種類です。

 

INVENSENSEのシリーズでは他の9社比、F特、SN比、ダイナミックレンジ、SPL/ひずみ率の点だけでも10年分の差を感ずるほど抜き出たモノがあるからです。

したがって秋葉原で見られるモノとの違いは圧倒的、あれは単なる「シリコンマイク」、10年の開きがあります。

またスマホへの採用率と「単体マイク」への採用とは視点が異なります。

 

他社・他品種については本記事内容はあてはまらない場合があることをご承知ください。

 

以上で「Micro Leaf」 マイクロホン試作について最大の課題であった手半田による熱破壊の課題は解決しました。

かくして自作マイクのMems化は一歩現実の話となりました。

 

 

じゃ、そのマイクってどんな音なの?。

音決め途中のマイクを持ち出して雨上がりの幹線道路に出て環境録音を行った。(ダウンロード期限:2020年4月19日)

音符https://38.gigafile.nu/0419-cbbb0cd374592d17524aab994aed9b519

音符https://38.gigafile.nu/0419-ceccde63ffda25a744045d89d9ac1bd21

 

クローバー このちっぽけなマイクの音だとは誰もがにわかに信じがたいですが事実です。

 

 

録音に使用した試作中の「Micro Leaf」 コンデンサマイク。

録音機:ZOOM H6 レコーダ  (P48にて)

 

 

(前関連記事もご参考ください)

1933 :memsマイク使用 音楽用途マイクの試作 (第1/4編)

2002 :memsマイク使用 音楽用途マイクの試作 (第2/4編)

2003 :memsマイク使用 音楽用途マイクの試作 (第3/4編)

2004 :memsマイク使用 音楽用途マイクの試作 (第4/4編)

 

 

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   以上

 

 

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fetⅡ、fetⅡi、fet3、
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