☆当サイトではミニプラグを用いた簡易マイクロホンは一切否定します。
無指向性マイクロホンの構造にもルールがある。
「どうせ安物の50円か100円、適当につなぐだけさ」への警鐘
2011年に「1130 :甘くないぞ 単一指向性マイクの自作」の記事を書きましたが今回はその無指向性版です。
ECMの簡易チェックとして裸のカプセルでおこなうことはあるが・・・
それはそれでカプセル(ユニット)メーカー測定通りの結果になるはず。
しかし完成形のマイクロホンとしてそんな状態で使われることはあり得ません。
ケース材質と構造により音質は激変します、その点を吟味して磨かれた無指向性マイクロホンの仕上がりには驚かされることでしょう。
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-12422545393.html
普段、無指向性カプセル(ユニット)の背面・裏側構造は気にされていますか。
ケースの剛性や重量が音質の決め手になっていることも重要です。
また、「金属ケースにおさめればシールドは万全」と誤解していませんか。
さらにマイクロホンの「物理特性」はプロフィールであり、一聴した結果の説得力からは程遠いことだけは肝に銘じたい、楽器作りにも似たそこから先のマイク愛による作りこみによって、またセッティングによって音は天と地ほど変わることを忘れてはなりません。
「単なる無指向性マイク」でそんなの関係ないというかたはこの例をご覧ください。
おなじ100円のECMカプセルが「安物ラジカセマイク」で終わるか「世界級のコンデンサマイク」になるかはココがちがうだけなのです。コンデンサマイクに貴賤はありません、どうぞ誤解なきように。
「そんなバカな」とおっしゃる方はどうぞ退出してください、貴殿の思う程度のマイク内容ではありません。
Shinの「fetⅡ」 内部構造
この形状は「ファンタム式パナ改マイク」以前、2009年から採用しています。
このように内部構造をお見せするのは「ファンタム式パナ改マイク」以前から採用して以来初めてです。
当初はフロントメッシュのない構造でした、2013年、フロントメッシュを加え現在の形になりました。
この構造を元に説明します。 (fetⅡは胴体部直径6mmのピンマイクです)
(背面音圧不感処置)
ケース(フロント)にはケーブル穴があります。無指向性ECMの裏は小基板にFETと電極があります。 裏側からも低域を中心に音声は侵入し、逆相成分として干渉し、正相の「音圧成分」を汚します。
fetⅡ の場合ECMをマウントした状態ではその裏面は厚いエポキシによって背面の音響回路から遮断されます。このときエポキシはケース(フロント)の内部すみずみまで行きわたりますのでカプセルはフロントメッシュを含めたそれと一体化されます。
(ヘルムホルツ共鳴除去)
ケース(リア)の内部共鳴(レゾレーション)は組立完成時、管内は配線ケーブルで満杯となるため 「起こらない」といえる。
また、カプセル裏面の音響対策との相乗効果もあって望ましい音響構造が出来上がりました。
(マイクロホンの個体共振防止)
ヘルムホルツ共鳴とも密接に関係する「本体鳴き」のこと。
「剛性の高い材料で小さく」作ることによって限りなくデッドに仕上がっていますので固有の共振周波数を持ちません。
(運動支点の強化)
「筐体と振動版(ダイアフラム)が一緒に動く」とすればそれはちょうど台車の上に乗せたSPと同じ。 一定の振動モーションを超えるあたりから歴然と音が怪しくなる。
WM-61Aの質量0.2グラムに対して15倍である3グラムにし、さらにその剛性はアルミの約2倍である真鍮材にしてすべてを一体化することによりダイアフラムの運動支点が固定化されますので裸のカプセルと比較したらその音声は圧倒的に「芯」があります、おそらくひずみ率の低減につなが っているはずです。
プラスチック筐体など「軽いマイク」の音の悪さはここに原因があると考えています。
(防振しない「防振」という考え方)
開発当初「ゴム防振」を実施しましたが、フラフラの「防振」よりむしろ「非防振、高質量化・重量化」 と「ヘルムホルツ共鳴」の排除こそマイクロホンの決定的防振策だというのが私の経験的な持論です。
(静電シールド構造の見直し)
フロントメッシュはデザインの高品位化のためにまず採用しました。
WM-61Aは単体でもさほど静電界の影響(誘導ノイズ)の出にくいカプセルではあります。
しかしながら一旦金属ケースに収納した時点でその等価回路は大幅に変化します。変化した等価回路・分布定数で表される)を見た場合内部ECMは外側金属に対して同電位化し、ファラデーシールドを完結させます。フロントデザインの高品位化と同時にシールドを完全にしました。
fetⅡでは「60メッシュ」という音響的に影響の出ないものを絞り加工して用いています。
以上はカプセル単体では成しえない「音作り」に通じる内容、すなわちマイクロホンとしてもっとも重要な部分です。
このようにしてこそ理論的にも「音圧型」である無指向性マイクロホンが成り立つと考えています。
市販マイクでもよくある「マイクを手でさわるとハムが出る」とか「シャーシーに触っているとハムが止まる」など誘導に対して好ましくない現象を起こすマイクロホンは多くの場合この設計や考え方がそもそも間違っています。
メーカー製でなぜそんなことが起こる?
それは電気音響・オーディオ技術の範疇ではなく生粋の「無線技術」だからです。
等価回路と分布乗数回路で電気回路を見ることのできる無線屋とEMC技術屋の範疇をオーディオ的に理解するのはまず不可能なのです、おそらく経験的手法で片づけているのではないでしょうか。
この点は古今東西のメーカー製品を見てまいりましたが昔の製品の方がまともな設計であることは何を意味するのか。
自作の場合は?
マイクの外筐はカプセル、ユニットの「入れ物」という考え方のもと、すべてを合成した等価回路で描くことがないかぎり常に「未完成要素」をかかえたマイクロホンが出来上がる、何も起きなければ「偶然」です。
「単なる無指向性マイク」でも原理原則で結果が出る。
筆者が絶対拒否する「プラグインパワー」という簡易接続では多くの場合、明るめの音と裏腹に ①質量・重量・不要振動 ②シールド構造 に不安と問題を抱え、自作では「逆相」でも平然と「いい音だ」と宣う素人マイクはゴメンだ。SN比・最大SPL不足・ひずみ率の点で劣るため次元の異なる低次元のマイクロホンを余儀なくされる、それが「ラジカセマイク」と呼ばれるならラジカセがかわいそうでもある。
以上
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3、fetⅡ‐bright など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作)
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