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2024年1月追記
これまでにマイクロホンの開発・発表をしたり、既成マイクの音質チューニング(改造)してきたなかで、単一指向性マイクの「速度孔」というものは「どういう意味を持つものなのか、調べてもその概念がよくわからない」というご意見を頂きました。
「それは大変!」コレこそが単一指向性マイクが単一指向性たる動作を形成する重要部分なのだが・・・
なるほどググった程度では「Shinさんの・・・・」ばっかり出てきてしまいますね。
Shinさんの造語というわけでもないはずですが、世の流れでしょうか。
かつてどこかで「ヴェロシティ・ホール 」と呼んだことがあるが・・・もはや今それも見当たらない。
古い書物を調べてみると、他に次のような呼び名がバラバラに使われている。
・速度成分を取り入れる穴
・音響位相構造・ダイアフラム背面の開口部
・背面開孔
・音波導入口(背面・側面)
・音孔
・小孔
などがここ半世紀以内の書物などからピックアップ出来ました。
ただし、リボンマイクや初期の単一指向性ダイナミック型ではさらに複雑な構造を余儀なくされている為、いろいろやられてきた。
わからないときはルーツまでさかのぼるといろいろ見えてくる。
初期にはRCAの77D(可変指向性)ではラビリンス「迷路」構造と合わせたシャッターによって「単一指向性」を含む指向性の切り替え、これは日本製リボンマイクでは姿カタチを変えてパクりましたよね。(写真上側)
このRCAのパテントを踏まないWestern Electric (のちALTEC)の639A(B)やWestern Electric のRA-1142のように無指向性ダイナミック型と両指向性のリボン型を合成して「単一指向性」を得る。(写真下側)
指向性を得る構造について非常に判りやすい解説である
(原型両指向性のリボンマイクの例だが、他方式マイクでも読み替えられる)
(実用マイクロホンハンドブック 1967年初版CQ出版社刊 より)
この時代、コンデンサマイクのドイツ勢、ノイマンでは「差動型ダイアフラム」を活かしたり殺したりしながらすべての指向性を創造してきた。
筒先方向に指向性を持たせたものを「軸方向単一指向性」とあえて呼び、取り扱いに警告を加えた。
このように「単一指向性」を得るために先人はあらゆる知恵を出し完成させ、それらのマイクロホンは元気なものは今持ち出しても素晴らしい音で迫ってきます。
無指向性マイク自作の延長上だ、とタカをくくってチャレンジしても絶対に失敗する「落とし穴」があります。
過去2回にわたってこれをお伝えしましたが「速度孔」のことはWeb上ではあまり見かけません。
しかし、これは指向性マイクの基本中の基本要素であるので、呼び名がどうであれ、実際にマイクロホンのデザインに活かした各社のパフォーマンスを見ると良い。
「単一指向性コンデンサマイク」自作のツボ (前編・後編)
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10896210475.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10896210475.html
特にクラフトに具体的な「後編」と今回の記事をあわせていただくと「速度孔」の秘密と奥深さがお判りいただけると思います。
最も確実に設計通り指向性を得る方法としてECMユニットを裸にした場合、誘導さえ受けない条件を探し出せば良い結果になりますが、実用的には不可能ですのでケースに収めた状態で完成度を上げる以外に選択肢はありません。
さらに「マイクロフォン」を基礎から学べる機会がどんどん消えている事に危機感を感ずると同時にWebには頼れない「古い書物」からの情報の貴重さをあらためて感じます。
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