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このシリーズ
1 面会交流について悩んでいるお母さんたちへ
2 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』から
3 監護者母の場合の父との面会交流,子の評価①~人数,割合の紹介
4 監護者母・父との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介①
5 監護者母・父との面会交流なしの場合の子の意見~子の声の紹介②
6 監護者母・父との面会交流あり・なしの子の意見について~私が感じたこと
7 監護者父の場合の母との面会交流,子の評価②~人数,割合の紹介
8 監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③
9 監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-1
10 監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-2
11 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと①
前回記事では,離婚の場合に監護者父となるのが約20パーセント,約80パーセントは監護者母となっているという事実自体から,離婚の場合に監護者父となるケースでは,そのケースに特有の特殊事情が大きく存在しているのではないかという私の考えを紹介しました。
その続きです。
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先の
監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③で紹介したように,監護者父で母との面会交流ありの8人の子のうち7人は肯定的評価,1人は「分からない」でした。
その「分からない」の方は,離婚原因が父不貞という状態で離婚の際に親権者父となり,その後,その父が離婚原因となった不貞相手と再婚し,さらにその再婚相手の義母と再び離婚したというケースであり,面会交流云々よりもご自身の人生全体についての意味喪失が大きいと思われるケースでした。
監護者父の場合で母との面会交流が実施されているケースは,おおむね,FPIC解説が言うような「夫として,妻としての対立感情を抑えて,父として,母として,子どもが心に抱いていることを心の目で感じ,受けとめてやれる親の在り方」が実現できているのではないかと私は感じました。
そして,その際,監護親である父の理解ある態度が鍵になるように私は感じました。
前記事
監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと①で私は,離婚に際し,子の監護者が父になるのは,それなりの特殊事情がそれぞれにあるのではないかという私の考えを紹介しまし。
そういう特殊事情の中で,母との面会交流が実施されたということ自体に,監護親父がFPIC解説が言うところの「親の在り方」を態度で示されたことが伺えると私は思います。
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次に監護者父で母との面会交流なしの子8人について
FIPC解説では8人のうち,同一の両親の離婚である3兄弟10代,そして4人の声を紹介しています。
そこでは,面会交流それ自体の評価というよりも,両親の離婚についての親の説明,子の気持ちの確認,離婚後の監護についての子の意見の聴取について,どのケースも,母が排除され,父や父方の祖父母の説明しかなかったことが分かります。
離婚に際し,監護者が父となる特殊事情について,大雑把には,私は,以下の4つの類型に分類できるうに思いました。
①母が監護養育能力に欠ける場合(母虐待,母不貞等の母有責などなど)
②父が子をDV道具として利用し子が父との間で歪んだ愛着関係にある場合
③父方祖父母と母との確執があり,父方祖父母が子を囲い込んだ場合
④その他
上記①ないし③のような場合ですと,離婚ついての説明等や離婚後の監護についての子の意見聴取等で母が排除されてしまうのは,なるほど,さもありなんと私は思います。
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くどいですが,FPICのまとめ的解説を再度,紹介しましょう。
☆☆☆引用開始☆☆☆
母子関係は,父子関係よりも情動的である。子どもが何歳のときに母親とどのような別れ方をするかは心理的外傷の程度を左右する。夫として,妻としての対立感情を抑えて,父として,母として,子どもが心に抱いていることを心の目で感じ,受けとめてやれる親の在り方が,子どもの心理にはいかに大事なことが考えさせられる。
☆☆☆引用終了
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私は,上記FPICのまとめ的解説には,そういう見方もあるだろうと思いますが,他方で,いろんな疑問も湧いてきます。
(1)
「母子関係は,父子関係よりも情動的である。 」というのは,もう少し丁寧な説明が欲しいところです。
母子関係が「情動的」というのが,どういう意味で語られているのか。
先の
監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと①で紹介しました,いわゆる母親(母性)優先の原則の背景にある考え,つまり乳幼児期の母親の役割の大きさや児童期の養育監護に由来する母子関係の重要性を念頭に置いているような気がします。
一応,そういう母子関係の重要さがあるとして,どの母も「良き母」というわけではありません。
一方では ①子を虐待する母もいますし,子の養育を放棄して不貞に走る母親もいるでしょう。
他方では,②「良き母」であったのだけれど,父のDVや祖父母との確執などにより離婚に際し親権者となることを諦めざるを得なかった母もいるでしょう。
(2)
「子どもが何歳のときに母親とどのような別れ方をするかは心理的外傷の程度を左右する。」というのは,そうもいい得るのでしょうが,もう少し突っ込んだ議論をして欲しいと思いました。
上記の①の母でしたら,私は,その母には,子に対する罪責感をしっかりと背負っていただきたいと思います。ですから,「そういう母との別れ」が子の大きな心の傷となるのだということを強調することはよろしいかと思います。
上記の②の母親でしたら,その「母と子の別れ」は,強いられた別れです。ただでさえ必要以上の罪責感を背負っている「良き母」に,「子どもが何歳のときに母親とどのような別れ方をするかは心理的外傷の程度を左右する。」 と言ってしまったのでは,ますますその母親は罪責感に責めさいなまれます。
しかも,「母親とどのような別れ方をするかは心理的外傷の程度を左右する」といいますが,心的外傷(トラウマ)の大きさを言うなら,母親との別れ方以前に,離婚前の養育状態から刻まれる慢性心理虐待(特にDV環境下の養育)の方にも着目したくなります。
前記①の母ですと,その母との別れより前に,監護養育能力に欠ける母に長期に亘って養育されているわけですから,その虐待的養育環境下での心的外傷を見過ごすことはできません。
あまりにもとんでもない母である場合,むしろ,その母との別れは,子にとって救済であったかもしれない。
前記②の母ですと,その母との別れ以前に,DV環境下での養育や父方の祖父母と母との確執の中での養育があるわけです。そういう慢性心理的虐待下での長期に亘る養育による心的外傷を見過ごすことはできません。
母との別れの心的外傷のみを取り上げるのは,子のトラウマによって子に生じる様々な身体症状,精神症状その他の諸問題について,父の責めに帰せられるべきもの,父方祖父母の責めに帰せられるべきものを曖昧化させてしまうように私は感じました。
もちろん,「子どもが何歳のときに母親とどのような別れ方をするか」は子の心的外傷に影響するのでしょうが,それが子の心的外傷を「左右する」というのは単純化し過ぎで,子の心的外傷は,離婚前の養育環境も含めて,もっと多層的なもの,複合的なものとして考える必要があると思いました。
そうでないと,母の責任ばかりが強調され,離婚に至る父や祖父母の責任が曖昧化されるように私は思います。
さらに次の記事でFPICのまとめ解説について私が感じた問題点の続きを紹介していきます。
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