監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと① | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

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このシリーズ
1 面会交流について悩んでいるお母さんたちへ
2 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』から
3 監護者母の場合の父との面会交流,子の評価①~人数,割合の紹介 
4 監護者母・父との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介① 
5 監護者母・父との面会交流なしの場合の子の意見~子の声の紹介②
6 監護者母・父との面会交流あり・なしの子の意見について~私が感じたこと
7 監護者父の場合の母との面会交流,子の評価②~人数,割合の紹介
監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③
監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-1 
10 監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-2

 前回記事④-2で,監護者父・母との面会交流なしの場合の4人の子の声を紹介し,そして,FPICのまとめ的な解説を紹介しました。
 この記事では,監護者父・母との面会交流あり・なしの子の意見についてのしもちゃんの感想を紹介したいと思います。

2 監護者父の場合について

(1)
 FPICの解説の中には,「監護者父は17人で,監護者父・母87人の20%を占める。この比率は,離婚統計の監護の実情に近い割合である。」とあります。
 両親の離婚のケースで,約20%が父が親権者となり,約80%が母が親権者となっているということでしょう。
 まず,離婚後に母が子を監護する場合が約80%ということを押さえたいと思います。

(2)
 母が監護者となる割合が約80%となる理由については,私は,①母子結合が強い場合が多い,②父の育児意思・能力・諸条件に欠ける場合が多いという2点があるのではないかと想像します。

(3)
 まず母子結合の強さですが,実務的には,「母親(母性)優先の原則」として語られていることがあります。
 例えば,『子の監護をめぐる法律実務』(編集 冨永忠裕(弁護士)・新日本法規)という本の11頁~17頁中で,子の引渡しの審判における比較考量要素として,①監護者としての適格性・養育環境,②子の意思の尊重,③監護の継続性(現状尊重の原則),④母親(母性)優先の原則,⑤兄弟姉妹の不分離などが紹介されています。
 そして,その中で,「母親(母性)優先の原則」として,次のような説明があります。

☆☆引用開始☆☆
 乳幼児にとって母親の存在は,感情表現の調節や情緒的成熟を促すなど,格別の意義を有しています。精神医学および発達心理学の立場から,4歳になるまでは母親による育児が子どもの健全な発達上不可欠との指摘もあります。
 もっとも,母親の監護養育能力に疑問がある場合は,父側に祖母やおばなど,母に代わって母性を発揮し得る協力者がいる場合もありますので,この原則を機械的に適用することはできません。
☆☆引用終了☆☆

 私は, 「母性」とか「4歳になるまでは母親による育児が子どもの健全な発達上不可欠 」とか言われると,母性神話とか3歳児神話とかを思い出し,ちょっと文句をつけたくなる部分がでてきます(私はドラマ『mother』のマニアック解説をしていますが,簡単に「母性」と言ってこのドラマを説明することには一定の警戒心を持っています。)。
 他方で,精神医学や発達心理学上の知見もあり,子が乳幼児のときの母子の関係性というのは,やはり大きいのだろうとも思います。

 また,この日本社会において,子が乳幼児期,児童期の場合,子の育児…起こして,着替えさせて,食事作って食べさせて,保育園・幼稚園・学校に送り出し,洗濯し,お風呂に入れ,寝かしつけ,いろいろな話をし,遊んだり・・・・そういう子育ての多くを母親が担っていて父親の育児関与が低い場合が多いという事情もあると思います。
 最近は,イクメンなどという言葉も言われ,父親の育児関与について少しずつ見直されてきているようですが,まあ,それもまだまだでしょう。

 「性別役割分担」論(性別役割強制論)とか,世帯主=夫を中心に組み立てられた「日本的雇用慣行」とか租税や社会保険や福利厚生の諸制度の在り方とか・・・・

 そういう制度,文化の中で,基本的に,夫・父が外で働いて稼いで世帯主,妻・母は家事労働メインで家計補助的なパート労働従事という状態が長く続き,現在においてもそれが強く残っていると私は考えています。

 そうしますと,育児関与の強い母と子の結合が強くなるのはそりゃそうだろうと思います。
 その反面,父親の方は,そういう制度や文化の中で,育児関与の意思や能力を欠落させていくのもそりゃそうだろうと思います。
 多分,イクメンでありたい父は,ものすごい制度や文化のプレッシャーの中でそれを選び取っているのでしょうね。
 父親の個人的資質に解消できない制度や文化の問題というのはとても大きいと私は思っています。
 ですから,私は,この日本のシングル・ファーザーの皆さんの多大な苦労にも思いを馳せます。

 そういうわけで, ①母子結合が強い場合が多い,②父の育児意思・能力・諸条件に欠ける場合が多いということになり,離婚に際し,約80パーセントが監護親母という結果をもたらしているのだろうと私は感じます。

(4)
 そうしますと,離婚に際し,監護親父となる20パーセントについては,私は,そうなるだけの理由がそれぞれに大きくあったのだろうと私は考えます。

 いろいろな理由があるでしょう。


 先の
『子の監護をめぐる法律実務』(編集 冨永忠裕(弁護士)・新日本法規) でも指摘されているように,母親の監護養育能力に疑問がある場合もあるでしょう。

 私は,「無条件的母親万歳」論者ではありません。
 母=「母性あふれる『良き母』」というのは幻想だと私は思っています。
 子を虐待する母もいれば,不貞に走って子を放置する母もいれば,首を傾げたくなる価値観・行動原理の母親もいれば…まあ,さまざまです。
 

 その母自身は「良き母」でありたいと願いその資質十分であっても,DVの中で子がDV加害者の父に絡め取られて,母子が離反させられ,歪んだ父子結合が形成されているという場合だってあります。
 『DVにさらされる子どもたち』(バンクロフト&シルバーマン)の46頁~48頁で,「外傷性の絆」として紹介されています。
 以前,「子どものために離婚しない」という考えについて~H24.5.29タイトル変更・記事追記訂正の中で,同書を引用して紹介しました。
 DV手段として子どもが道具利用され(子にとって虐待),その延長に,子の親権者父を母が強いられて離婚したというのもそれなりに多いように思います。


 FPIC調査研究の監護者父・母との面会交流なしの10歳の子3人のケース監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-1のように,父の両親(子の祖父母)の関与があって,親権者父となり現実の子の養育監護は祖母が担うという場合だってあるでしょう。


 監護者父となったいろいろな理由がそれぞれのケースであるように思います。

(5)
 やや乱暴な言い方ですが,監護者母80パーセントに対する監護者父20パーセントですから,そのように監護者父となった「特殊事情」がそれぞれのケースにあり,その「特殊事情」が,子の心の傷や面会交流の在り方や子をとりまく関係性に大きく影響してくるのではないかと私は感じました。

 次の記事では,以上のように私が感じたことを踏まえ,さらに,監護者父・母との面会交流あり・なしの場合について私が感じたことをご紹介していきます。
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