ルーマニア語の原題は「善良な人々」
――めっちゃ皮肉。
(↓特典でもらった葉書)
英語のタイトルは、Men of Deeds「実行する男たち」
――何を実行するのかが問題。
そして日本語のタイトルは「おんどりの鳴く前に」
たしかに映画の冒頭で
走行中のトラックの荷台に詰め込まれたニワトリの一羽が逃走し、
その後も何度か登場する。
「雄鶏が鳴くまでに三度……」という
イエスからペテロへの言葉に由来する、という話もあるけれど、
そうなのかどうか、
映画を観る限りでは分かりづらい、
てか、分からん。
まあ、
ルーマニア正教の司祭は
大いに関係するけど。
そして村長も検察官も、
さらには警察官である主人公も、
特別な「自覚」を持たない限り、
基本的に「そっち側」の人間。
* * *
ともあれ、
ブラックコメディだ、という触れ込みだが、
笑えたのは3回。
むしろ感じたのは、
ルーマニアの鬱屈。
考えてみれば、
独裁者チャウシェスクが処刑されてから
まだ35年しか経ってない。
権力構造の上の方には、
その頃の体質が色濃く残っていて不思議はない。
それでいて「共産主義」の看板を下ろしたもんだから、
フェールセーフのハシゴだけが外されて、
儲ける奴は儲けるが、落ちる奴はどこまでも落ちろ、
という社会になっても不思議はない。
(これはルーマニアに限らんか)
そういう中での、鬱屈。
だから主人公の最後の行動の、
すなわち「自覚」の選択肢は、
あれ以外なかったのかもしれない。
ある意味、はっちゃけてる作品だけど、
ズルリと重いっす。