『霧のごとく』
【原題】大濛 (ターモン) / A Foggy Tale
【製作年】2025年【製作国】台湾
【監督】チェン・ユーシュン
【主なキャスト】ケイトリン・ファン、 ウィル・オー、 9m88、 ツェン・ジンホア、 リウ・グァンティン、 ビビアン・ソン

あらすじは…。
戦後間もない 1950年代の台湾。
白色テロによって兄が処刑されたことを知った少女、阿月は、兄の遺体を引き取るため 台北へと向かう。
しかし 遺体を引き取るには 高額な手数料が必要で、わずかな金と兄の形見の時計しか持っていない 阿月は 途方に暮れてしまう。
騙されて 遊郭に売り飛ばされそうになった彼女は、人力車の車夫、趙公道に救われる。
中国出身の公道は、国民党軍の軍人として台湾に渡って以来、故郷へ帰ることができず、その日暮らしの生活を送っていた。
白色テロで軍の仲間を亡くし、人生に行き場を見いだせずにいた 公道は、阿月の想いに心を動かされ…。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤
少々ネタバレあります。
暗いばかりではなく、時々 クスッとなったり ほっこりしたり。
先の見えない 霧の中にいるようですが… 懸命に生きる人たちの姿に、うっすらと晴れ間も感じられました。
重い話だけど、観て良かった
土煙の舞うような道路、露店や古い街並み、ちょっと脱力系の ノスタルジックな音楽もいい。豊かではないけれど、逞しく生きる人たち。
忘れてしまったものを思い出させてくれるようです。
苦難の連続ですが、無垢で真っ直ぐな 主人公の 阿月。健気で可愛らしい♡
ひとりで台北に出るだけでも、どんなに勇気がいったことでしょう。
ガサツで ちょっと おバカだけど、明るく優しい 趙公道。
輪タクを走らせる時の「出発!」と「到着!」の元気な声がいい。
そんなふたりの逃避行?は、生き当たりばったりで、ハラハラドキドキ。
万事休す
と何度思ったことか。
阿月に 養女に出された お姉さんがいて良かったな。物語に華を添えていました。それも 美しい華を♡
悪い人も出てくるけれど、人情も感じられました。劇場の女性たちの連帯感よ
どんな世の中でも、心ある人はいると信じたい。
そして、この頃は “心付け” が幅を利かせていたことも よ〜くわかりました
恥ずかしながら、描かれている時代の台湾の状況 (特に白色テロ) に詳しくないので、少し予習してから鑑賞したのですが…
この頃の 政治事件に関わる裁判は、非公開の軍事法廷において行われていて、弁護人をつけることさえできなかったようで。
しかも、死刑判決を受けた政治犯は、直ちに処刑されたのだとか
一般人は、何がどうなっているのか よくわかっていなかったのでは?
阿月のお兄さんは、本当に 反政府活動をしたのか? それさえも疑わしいけれど、他の被疑者と同じように、直ぐに処刑されてしまったのか。
あの遺体確認のシーンは、涙無しには観られませんでした
台湾語、広東語、普通話だけでなく、少し日本語も出てきましたが…
台湾から言葉を奪ったのは日本なわけで。なんだか 居た堪れない気持ちにもなりました。
それなのに、親日でいてくれる人が多いのは、日本統治の頃の方が “マシ” だったからかしら。 そして、現在に至る
ラストは、蛇足かなとも思いますが…
阿月や、趙公道のように 希望をもって生き抜いてほしいという、監督からのメッセージなのかと受け止めました