今回はラウンドハウス内部の画像2枚を解説する
【1964年11月27日】
BB65/00204: The interior of the Round House
showing the iron structure and conical roof before conversion.
27th November 1964, RCHME.
この画像は撮影年月日が前回紹介したものと同日なので、同一人物・同一目的の撮影だと思う。この1964年という年は、アーノルド・ウェスカー率いる芸術運動組織、センター42がラウンドハウスを活動拠点に定めた年なので、おそらくそのために撮影されたものだろう。これは酒造会社ギルビーの倉庫としての利用終了から25年後のことである。その間ラウンドハウスは廃墟となり、その間第二次大戦のドイツの空襲を生きのびた(第9回参照)。
この画像には手前から左にかけて、設計図にはないギャラリー(円周状の高台)が設けられている。このギャラリーはギルビー時代に設けられた木製のもので、センター42時代には素材が鉄製に変わる。つまりこの画像はギャラリーが鉄製に変わる直前の貴重なものだ。
この画像から高さを目測すると16フィート3インチ(約4m 95cm)で現在より約1m45cmも高く、幅は39フィート6インチ(約12m 4cm)なので現在の倍の幅だったことがわかる。
頂塔部分のガラス屋根は一部が板に差し替えられている。また割れたガラスを修復した跡もある。かなりみすぼらしい状態だが、おそらく十分な修繕費用が得られなかったのだろう。また設計図によれば頂塔の柱の裏側は鉄板で補強してあるが、この写真ではこの補強が1本おきになっている。
外壁と垂木が接する箇所は、残念ながら暗くてよく見えないが、どうにか垂木受け(シュー)の金具が一部だけみえる。現在この部分は垂直にパネルで塞がれており、この金具はほぼ見えない。ちなみにこの金具を3Dモデリングで再現したものが下の画像である。
次に床面をみると、線路の箇所にセメントで埋めた跡がある。おそらくギルビーの倉庫時代に埋められたのだろう。線路もそのままの状態で埋まっていると思われる。
垂木を受けるリブの先端部(うずまき状の箇所)が鮮明に写っているのは非常に貴重だ。現在この位置の近くには照明設備が設けられているので、今この画角でここまで鮮明に撮影することはできない。この写真からすると設計図の前面図(下図右)は不正確な気がする。
【2016年7月20日】
Scottee, The Roundhouse, 100 Chalk Farm Road, Camden, Greater London
Chris Redgrave, Historic England, 2016-07-20
この画像もGoogle Arts & Cultureで確認したもので、ヒストリック・イングランドというイギリスの歴史遺産管理団体のクレジットが入っている。ちなみに写っている人物はパフォーマンスアーティストのスコッティ。これが現在のラウンドハウスの内部の姿である。
先の写真とほぼ同アングルだが、ギャラリーの高さと幅が異なるのがわかるだろう。現在のギャラリーは、高さ11フィート6インチ(約3m 51cm)、幅は20フィート(約6m 10cm)であり、ギルビー時代のものより低く幅も狭くなった。
この画像では、柱の周辺の複雑な箇所も詳細にみることができる。柱の上部、スパンドレル、ビーム、複雑な形状の金具の構造まで詳細にわかる。3Dモデリングにはこのレベルの画像が必要なのだが、なかなかいいものがなく、あったとしても有料で高額なので、こうした画像は実にありがたい。
次回は画像資料についての3回目をする予定だったが、レッドホイールについて解説する。