7:繋いでいた手、今この手には体温を感じない
七つ目。
女帝と弟(また捻くれた
疲れきってます、女帝。
あぁ言う形とはいえ、弟が姉を傷つけたのは間違いなくて、
これから回復する目処が立っていないのであればもう二人にしたら拷問もいいところです。
チェック甘いんでもしかしたら違うところがあるかもしれませんが・・・・
それでも弟の前ではきっと「おねえさん」の顔をするんだろうなぁ、と思ってひとつ。
じゃあ裏の顔をと思って。
お姉さんの口調がわかりません(爆
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画面がほの暗く光る薄型のPC。
スクリーンセーバーが起動したままの画面には、幾重にも重なった輪が規則的に回っている。
それを乗せた机のあいている僅かなスペースで、腕を枕にして寝ているのは最愛の弟。
疲れているのだろう、最近は特にこのシステムの佳境とも言えるプログラムを作り、
神経をすり減らしているはずだから。
だから、此処一週間、交通課の出動がないのは彼にとっても、周囲の人間にとってもありがたかった。
独特の機械音が静かに部屋の中に響く。
スクリーンセーバーの画像から一転、電脳空間の庭園の画像に切り替わり、
『G』のキーの上に片足で降り立つように小さな人間が音もなく現れた。
「・・・寝顔だけは、かわらないのよね」
昔も今も。
疲労している弟を見つめる、姉の顔。
とある事故以来、電脳空間の住人となった女性はシステムの本体の調整の為、
今はパーソナルデータのみ弟のPCへとデータを移した状態だ。
容量が足りないから今は子どもの時の、十数センチの大きさだけども。
小さな手が、そっと弟の髪へ伸びる。
しかし触れるか否かの距離で、その動作はピタリと止まった。
(影響、が出るかもしれない)
自分は、人間じゃない。
光と、素粒子と、塵と、電磁波で作られた人型。
ニンゲンの肉体じゃない今、弟に障ったらどんな影響が出るかわからない。
視界に収める分には問題ないだろう。
けれど、触れたり、通過させたりしたらどうなる。
電磁波が触れた人の体に何かしら影響を与えるとは考えられないか。
少しならともかく、手や、足ならともかく。
頭だったら?
複雑に練り込まれ送られているパルスが、少しでも狂ったら?
そう考えてしまうと、彼女は弟の頭さえ撫でてやる事も出来なくなる。
(・・・ヒトハダって、なんだったかな)
もう感覚さえ覚えていない。
それほどまでに、人と触れ合っていない。
「あぁ」
自分が本当の、今のホログラフィぐらいの年だったころには、
嫌がる弟の手を引っ張って、連れまわしたものを。
夜闇の帳が降りきった外へと目を剥け、ほぅ、と彼女は他人事のように無感情に言の葉を紡いだ。
「はやく、死ぬか壊れるか、してくれないかしら」
そうすればもう、弟はこの体温のない体を見つめて、苦しそうに微笑む事はなくなるだろうに。
拷問よ少しは救われたのかもしれないけれど自分が犯した罪をずっと視続けるのはあぁそれともこれは私のエゴなのかしら?
6、綺麗事はゆびさきで紡いだ
ちょっと数個前のお題と設定リンクさせました。
続編と言う事では無いですが。
雨丸君が変な感じで壊れている事に抵抗ある人は回れ右でお願いします。
・・・もう少し文才欲しい。
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拝啓。
さよならと言えずただ怠惰な時間が過ぎている今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
日本は今は夏ですが、クーラー病などになっていませんか?(特に東先輩が)こちらは年中日本
のように四季があるわけでもないので少し暖かいと感じるぐらいです。
ところで少し前にパメリア王女とアルゴさんがそちらへ言ったとお聞きしました。少し前オレもテレ
ビでみましたが、相変わらず仲が良さそうで安心しました。あぁそうそう。あの二人で思い出したん
ですが、しばらくまえにアルゴさんの半身と会いました。皆さんのことをお話したら彼も会って見た
いと笑っていたので、もしかしたら近いうちにアルゴさんとソックリな人をみるかもしれませんね。
あの兄弟もオレたちとは違う形だけど、ちゃんと繋がってるんですよ、素敵ですよね!互いの夢を
否定した事がないなんて、オレたちでも滅多にないのに!あ、皆さんにはわからないかもしれませ
んけど、それならそうで戯言と流してください。解ったつもりでいられても不快ですから。
話を戻しますが、最近よくみなさんの夢を見ます。夢といっても誰も何も喋ってくれないのでそろそ
ろ声を忘れるか、顔が改竄されてしまうでしょう。彩花が阻止しているのか、ちっとも会えませんし。
まぁこのままいけば三年後ぐらいには街中であっても気がつきそうにありませんね。特に二人は伸
び盛りですし(あれ、もうすぐ15でしたっけ?)もし会えることがあったら、声をかけてくださいね。
あ、彩花が呼んでるので今回はこの辺で。次の手紙は夢の中で皆さんの顔が消えてしまったら、お
手紙します。いつまでも健康を祈ってますから、怪我だけはしないように。
それじゃ、愛してましたよ、次の手紙ではさよならが言えるように。
「――――さ、て」
短く黒芯が散らばる机上で、青年は封筒に今まで時間と集中力を大分費やして書上げた手紙を
丁寧にいれて、切手を貼る。便箋は綺麗な海の写真がプリントされており、まさに夏を感じさ
せるものだ。最後にあて先を書いて、中身を確かめて封をすれば完璧だ。後はポストに入れれ
ばこれは目的の場所へ届くだろう。
が。
ボッ、と。
ライターの火で端から焦がし、それを焼いた青年は、火が中ほどまで来た時その手を離した。
火の粉と共にひらりと舞い落ちたそれを足踏み潰して消化する。
青年は火が消えたことだけ確認して、部屋からそそくさと出て行った。
「あぁ、いつか火事になるって―――」
片目に眼帯。頭に猫耳をつけた男が、半分だけ焼けて手紙を拾いあげ『いつもどおり』別の封筒
へいれ、懐へしまいこむ。これは後できちんとポストへ入れるつもりだ。
「いつも、いってるのにね」
半分だけしか文面が読めない、焼けた手紙もこれで12通目。
三ヶ月ぶりに届くそれを、彼らははたして読むのか、捨ててしまうのか。
ただ男が知っていることは、差出人の名前もないこんなものを視ても、
誰も感傷も愛しさも何の感情もわかないということ。
それはきっと彼らだって同じだろう。
《彩雨長編》6:綺麗事はゆびさきで紡いだ
【5:さぁ、裏切りのベルを鳴らせ!】の続きです。
ずっと、一緒なんて―――。
【6:綺麗事はゆびさきで紡いだ】
突然鳴り響いた爆発音。
上を見上げれば本来建物内では見えるはずの無い空が見えており、天井が崩れてしまったのだと理解するのに時間がかかってしまった。
そしてその崩れた天井付近に佇む人物。
このような事件を起こす可能性は大いにあるが、まさか今出会うとは予想もしていなかった人物の姿に。
雨丸は眼を見開いて驚き、隣に立っていた王太からも「なッ・・・!」という驚愕の声が聞こえた。
「久しぶりだね。王太、雨丸君♪」
上から流れ込んでくる空気に乗って、よく知った―――氷魚の声が届く。
その楽しそうな声を耳にしながらも思考が停止してしまっているのか、動かない雨丸の隣にいた王太が。
すぐさま、専用の護衛の背で怯えている、護衛対象の男性の下へと駆け寄った。
そんな王太の行動に気付いた雨丸も、王太に倣って駆け寄ろうとした時。
「え・・・?」
ガシリと、男性を守っていた筈の護衛3人が、王太の身体を捕らえるのが雨丸の視界に入った。
王太もそのオカシイ護衛にすぐに反応する。
「なっ・・・! まさかこいつら!?」
氷魚の―――。
大人姿の人形3体に掴まれてしまっては、小柄な王太も簡単には動く事が出来ず。
己を守ってくれるはずの王太が苦戦している様子を見て、男性はすぐさま這うようにして雨丸の元へと逃げ出した。
建物を壊し、更にWSのエイジの動きを封じたプロの暗殺者達に恐怖しているのだろう。
男性は酷く青ざめた表情で、雨丸の後ろへと移動し、雨丸を盾にするように敵である氷魚たちを見つめている。
「・・・た、助けてくれ!! お願いだ!!!」
床にへばりつきながら雨丸の足を縋るように握り締める。
「頼む見逃してくれ!! 金ならいくらでも出す!!!」
トンッと床に下りてきた氷魚に、必死に懇願する男性。
―――暗殺者と初めて出会ったら、誰しもこのような姿になってしまうのだろうか?
氷魚とは面識があるため、自分には男性の様子が少し異常のように見えてしまうだけなのだろうか。
氷魚が部屋に降り立ったため、そちらに注意を向けながらも、雨丸は少々冷めた視線で男性を見つめた。
視界の隅に入っている王太も、男性をどこか訝しそうに見ているのが映る。
けれども向けられる視線に気付いていない男性は依然氷魚に視線を向けたまま、急ぐように口を開いた。
「た、助けてくれ! お、オレはお前達の大事な客だろう・・・!!」
己が依頼したことを暴露しながらも尚、自分が生き残るために懸命に言葉を発する。
「なあ、あの女にいくら貰ったん、だ? その倍・・・いや、十倍払ってもいい・・・!! だから助けてくれ!」
必死に、叫ぶ。
生きたいというのは人の性。
生を望む事は至極当然のことだ。
―――けれど。
「元依頼人でも、ターゲットになったらそれまでですよ。それは依頼したことがある貴方が一番知ってるんでしょ?」
作り笑顔を氷魚から向けられ、男性がこの世の絶望を見たように涙を流し始めた。
そして縋るように掴んでいた雨丸の服から、手をボトリと地面に落とす。
「いや、だ・・・助けてくれ・・・! お願いだ!! 金ならいくらでも出す!だからッ・・・!!」
「でもさ~滑稽だよねー。殺しの依頼をオレ達に頼んでおきながら、その奥さんが今度は俺達にあんたの殺しの依頼をしてくるなんてね」
「おかげでオレ達は仕事に困らないがな」
男性の言葉などもう聞いていないかのように、氷魚は天井に今だ待機している二人へと話しかけた。
双子なのだろう。天井部分に立っている顔立ちがそっくりな二人は、銃を片手に持ちながら楽しそうに笑い合いあっている。
そんな普通なら警戒しなければいけない光景を瞳に映しながらも。
雨丸は彼らの言葉を頭の中で反復させていた。
彼らの言葉から察するに、おそらくあの女性が言ったことは本当で、この男性は氷魚達に殺しを依頼したのだろう。
―――――なんだろう、何か・・・モヤモヤする・・・・・・。
殺しはいけないことだと、思うし・・・それは当然だと思う。
だから自分はWSとして、そして人としてこの男性を絶対に守らなければいけなくて。
・・・・・・でも、この男性は直接ではないとしても二人の人を間接的に殺していてるんだよね?
けど、だからって殺されていいはずがない。この男性は法でちゃんと裁かれなきゃ。
・・・・・・法、で?
・・・・・・そんなもの、役に・・・たつのかな?
だってこの男性はきっと今助かったら、外国へ逃げて。姿を隠して。・・・きっと、そのまま平和に、暮らす。
・・・・・・なんで?
直接じゃなかったら、その人は何の罪もないの?
『ボクタチ』だけが、悪いのだと。
命令されて、頼まれて、直接手を下したボクタチだけが悪いというの?
人を殺しているからには、自分も殺される覚悟はしているし、まともな死など無いと判っているけど。
だから、命令した方は生きて。
命令された方だけが殺されるなんて。
ボクタチだけが、殺される・・・なんて。
今まで静かに周りを見ていた雨丸が、どこか虚ろな眼をしながら護身用の銃を取り出した。
小型な銃なため殺傷能力は低いが、至近距離なら人一人仕留めることが出来る銃口が、雨丸の足元で床にへたり込んでいる男性へと向けられる。
そんな突然の雨丸の様子に、王太は焦ったように雨丸の名を呼び。
氷魚や天井にいる双子は驚いたように、その様子を見つめていた。
「・・・・・・いや、そんなの―――」
ポツリと雨丸が呟いた言葉が、どんな意味なのかは解らないが。
その瞳が揺らいでいることと、身体が抵抗しているかのように銃が定まっていないのに気付いた王太は必死に雨丸に声をかける。
「しっかりしろ、雨丸!! 大丈夫だから!銃を下ろせ!!」
雨丸の元に駆け寄ろうと必死に身体を動かすが、人形はしっかりと王太の身体を固定しており、全く動かない。
この人形から逃れるのには時間が掛かると判断し、唯一雨丸に届く言葉を必死に使う。
けれども雨丸には届いていないのか。
その瞳は全くと言っていいほど変わらない。
男性もどうしていいのかわからないのだろう。怯えながら銃口を見つめており、氷魚たちも傍観に徹しているため誰も動かない。
と、何かが動いたように空気が流れた。
新たな空気とともに、一人の青年が部屋の入り口へと姿を現す。
自然と。
皆の視線がそちらに集まる中、その青年はたった一人の人物にだけ視線を注いでいた。
その表情はとても嬉しそうで。
「見つけた・・・・・・こんな所に隠れていたんだね、めぇ―――」
場に相応しくない柔らかい声が天井の無い建物に響き渡った、その直後。
―――ドンッ・・!!
鈍い銃声音が一つ、音を立てた。
王太が、ゆっくりと雨丸へと視線を戻す。
今のは、別の銃が発した音だと信じたいが。
銃から僅かに出ている煙と、硝煙の香り。そして、血を流して倒れている男性の姿が、王太の願望を全て裏切っていた。
「さ・・・め・・・・・・まる・・・?」
掠れた声が響くが。
そんな声などもう届いていないかのように、雨丸は青年だけをじっと見つめている。
「・・・・・・あや・・・はな?」
「・・・そうだよ、めぇ・・・・・」
知り合い以上の、親しい関係だと示すかのように。
彩花と呼ばれた青年が、今しがた銃で人を殺した雨丸を何も思わないように近づき、強く抱きしめた。
「なあ比良? これって一応任務終了でいいのかな?」
「かな? ターゲットは死んじゃったみたいだし。でも、アイツ誰? あの人と親しそうだけど、アイツWSのエイジじゃ・・・?」
天井から聞こえた気楽な声で、夢のようなことが起こっている場の空気が一瞬にして現実味を帯びるが。
瞳に映る光景は先ほどとまったく変わっておらず、先ほどからのことは現実なのだと思わされる。
「ワォ、やっぱり本当だったんだね♪ 雨丸君があの人のパートナーだっていう話」
「え、何それ氷魚! 本当?」
「でもパートナーって死んだんじゃなかったか? だから銃の音駄目なんだろ?」
「その辺りはどうなのか、ボクも知らないけどね。でも蜜歌さんから直接聞いたから本当だと思うよ? それにあの人があんな風に笑ってるところ初めて見るしね」
身体が動かない中、視力と聴力だけがいように働き。
氷魚たちの言葉が王太の脳へと届いて、パートナーという言葉が胸に蟠る。
先ほどから色々なことがいっきに起こりすぎて、王太は上手く今の状況がわからなかった。
最初からずっと雨丸は演技で過ごしていたのだろうかという考えも浮かんではいるが。
今一番、王太の頭を占めているのは別のこと。
「・・・な、んで・・・・・・撃った・・・」
先ほどよりもしっかりした王太の声は、雨丸に届いたのか。
ピクリと雨丸が反応して王太の方へと振り返る。
「・・・何で、撃ったんだよ!!」
先ほどと同じ質問が繰り返される。
銃を発砲するまで確かにそこに雨丸はいた。けれども銃を撃ってしまって後、自分の知っている雨丸は変わってしまった。
そのため、撃った理由に王太は全てが込められていると感じたのだ。
けれども返ってきた答えは王太の思っているようなものではなく、いたって簡単なもの。
「・・・・・・不快だったから、かな・・・?」
「・・・・・・不快、だと?」
反復させる王太の声は、雨丸のモノと正反対でとても硬い。
「不快で殺したりはしないけど、氷魚たちが依頼されてたみたいだからボクが殺してもいいかなと思ったんだよ?」
「・・・な、んだよ・・・それ・・・・・・」
王太が見つめる雨丸の表情は、以前一人の死に悲しんでいた雨丸のモノではなく。
酷く淡々としている。
「依頼されたからって、殺していいはずないだろ!? そんなことお前だってわかってただろうが雨丸!! アイツは逮捕して、ちゃんと法で―――」
叫んでいた王太の言葉がピタリと止まる。
それは王太が自分で止めたものではなく、雨丸によって止められたモノだった。
瞬きをしたかのような一瞬の間。
王太から離れたところにいた雨丸はどうやって移動したのか、人形に手足を押さえられている王太の前に立ち、優しく人差し指を王太の口元へと突きつけており。
それ以上何も言うなという無言の動作に、王太はただ目の前の人物を見つめるしかなかった。
「―――――ねえ、班長。・・・このまま綺麗にさよならをしましょう?」
残酷なほど優しい声色に。
もし今、この身体が動いたなら。王太は自分がどういう行動をとったのだろうかとぼんやり考えていた。
―――怒って殴りかかったのか、絶望して何も言えなかったのか。それとも・・・今みたいにただ静かに涙を零していたのだろうか?
→『7:繋いでいた手、今この手には体温を感じない』
5、さぁ裏切りのベルを鳴らせ!
前回と同じパターンが・・・・
きっと王道な者は皆様が書いてくださるだろうと思って紫雨さん視点で。
あ、あと十分か・・・・(前回よりひどい
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手は震えなかった。
今思えば徹底的に真実を受け入れていなかっただけなのだろうが。
風が頬を撫でるように指の腹だけ滑らせて、冷たいことを実感した。
少しだけ、硬い気がする。
それはきっと錯覚だったのだろう。
だって、彼女の爪がもう一度その頬に伸びたとき。
いつもと同じ。
愛しい人の肌に少しだけ沈んだそれは、やはり、震えていなかったのだから。
あぁ、頭の中で静かに鳴り響く、荘厳の鐘の音が。
自分の中で微かに色づいていた新しい命。
あの人はそれを知る前に逝ってしまった。
知らせを受けたときは焦燥感だけが募って、いざ彼の姿を見たときは、
震えもキモチも何もかも凍りついたかのように
心の中で固まって沈み込んでしまった感覚は記憶ではなく体に鮮明に刻み付けられた。
凍てついたそれは、きっと心臓まで凍らせてしまったに違いない。
命を外へと送り出した後、急にこの体はボロボロと不調を訴え、
今はついに人工呼吸器をつけなければ息も出来ないほどの。
どうしようもないと。
沈鬱な表情と、周りへの気遣いからしてそれを知った。
あの人が死んでから、命を生み出してからの自分の時間は凍り付いていた。
苦しいだけの毎日。
命は、どうしているだろうか。
呟くつもりもなかったそれは、たしかにお父様の耳に届いたみたいで。
数日後、その手に一枚の、写真。
見せてもらったそれに映し出されているのは、自分と同じ色彩を持つ、明るそうな男の子。
その表情は誰に向けられているのだろう。
ねぇ。
「ねぇ、お父様」
私、知っているの。
「この子の――――」
『ENISHI』のこと、教えてもらったの。
あの人の命を、あの人が居た証を少しでも多く残したい私と、
栄児の血を引くエイジと、エイジの純粋な血を欲しがった科学者たち。
利が一致したとき。
私が合意を示したとき、興奮していたのか一人がそれを教えてくれたのよ。
だから。
だから、ねぇおとうさま。
(どうして、一人しか写っていないの?)
きっとあの人の色彩を持つ子どもを、どうして見せてくれなかったの?
知っているの。
双子だということ。
そうでなければ、あの計画の意味が無いもの。
私が協力した、意味が無いの。
「この子には、ずっと笑っていて欲しいの」
あの人の色彩の隣で。
ずっと笑っていて欲しい。
簡素な肯定に言葉に頷いて、お父様がその手の平を握り締めた。
罪悪感?
あぁ、そんな顔をしないで。
別の道もあったでしょう。
子どもたちと一緒に、生きる道も。
けれどその道を選べるほど、私は強くなかった。
抱きしめながら、見守られながら、家族で。
あの人だけが居ない生活を、あの広い家の中で。
わたしは。
「この子達を、裏切ったも同然だけれども」
それでも。
「一度だけでも、名前を呼んで、あげたかった・・・」
ごめんね。
『名前を、』
愛しい人の亡骸の前で、呟いた。
白い花で溢れる中、紫陽花をそっと彼の胸の上に捧げた。
『一文字ちょうだいね。あの時言ってた、あの言葉。』
子どもたちに、私達の軌跡を。
『『彩』と『雨』。あなたの、こどもたちに』
愛せなかったけれど。
抱きしめてあげれなかったけれど。
貴方も私も。
だから、せめて名前だけは。
『可愛い、貴方の証へ』
教会の鐘が鳴り響く。
祝福でもなく、ただ、別れの。
きっと自分の鐘が鳴り響くのも、そう遠くは無いだろうけど。
聴いて下さい。父は私を裏切り、私は愛する人と子どもたちを裏切ったのです。
あぁどうか、どうか神よ。この声が聴こえたのならば子どもたちだけは。
あの子たちだけには、この想いを与えないで。
6:綺麗事はゆびさきで紡いだ
まさかのおじい様…。またもやおじい様…。
ん~。せっかくのお題のくせして、私はまともに彩雨を書いていない気がします…lllorz
お題の無駄遣い!!すみません(笑
「
雨丸へ
明日の夜には着く予定だ。
お土産をたくさん買ってある。楽しみにしていなさい。
かちかちと電子端末を操って、文章を打ち込み、メールを送る。文明の利器ともいえるメール機能だが、本当に言いたいことの何割が相手に伝わっているのだろう。そう常々、清十郎は考えていた。
きっとあの幼い子供は寂しいと思いながらも、決してそのことを誰にも言わないのだろう。
奪ってしまった記憶とともに、彼の隣の存在をも奪ってしまったようなものだからだ。
秘密裏に隠密任務についている清十郎は、世界を飛び回っていてどうしても彼を連れて行くことは出来ない。そもそもこの任務とて、雨丸を助けるために受けた条件の一つだったのだ。そして、もう一つの条件が、雨丸が記憶を取り戻した場合の殺害。
清十郎にとって、今の雨丸は本当に愛すべき孫だ。あの初めて見た日の純粋な狂気などなく、まっさらで無垢な愛し子だ。母親が生きていれば、正に生き写しとも言われていただろう。それほどに彼は母親に似ていた。
「
いつか…もし、未来で雨丸が再び記憶を取り戻したとき…」
己はちゃんと彼を殺せるのだろうか。否、殺せるわけがない。
彼を殺すということは、娘をも殺すことだ。雨丸を救いだしてから、常に頭の中で考える最悪の結末。英児たるものいかなる場合のことも想定しておかねばならない。たとえ、逃げ出してしまいたいほどに残酷なことであっても。
どんどんと泥沼に嵌っていく思考の中で、手に握っていた端末が震えた。ヴヴヴとバイブが鳴り、メールの着信を知らせている。
「雨丸か…」
律儀にも彼は、メールを返してきたのだ。
おじい様へ
いい子でまってるから、気をつけてかえってきてね
それでね、今日ね――――
自然と口元に笑みが浮かぶ。
一生懸命綴られた言葉に、清十郎は言いようの無い幸福を感じていた。
「待っている」
それを言ってもらえることがどれだけ嬉しいことか。清十郎は娘を亡くしてからは、あの広い屋敷でずっと孤独だった。
そんな孤独を埋めてくれたのは紛れも無い雨丸だ。そんな子供をどうして殺せるというのだろうか。
清十郎はすぐに返信をして、立ち上がった。
「おい西野!!起きろ!!すぐに日本に帰るぞ!」
「は、え、ちょ、待ってください!!清十郎様!!まだ調査が――――」
「そんなことは知らん。雨丸が寂しいと言って泣いていたらどうするんだ!?」
「え、で、ですが!ちょ、清十郎様!!??」
ばたばたと慌しく部屋を出て行く清十郎に、西野は急いで後を追う。
雨丸へ
愛しているよ
綺麗事はゆびさきで紡いだ