隊長が、これまでに鑑賞した「映画」を紹介するシリーズの第286作品目は、『来し方 行く末(こしかた ゆくすえ)』をお送りします。
4月25日から公開されている『来し方 行く末』を、観に行ってきました。
『来し方 行く末』(原題:不虚此行、英題:All Ears)は、現地・2023年9月9日公開の中国映画です。
製作会社:北京標準映像文化傳播有限公司。配給:ミモザフィルムズ。オリジナル言語:普通話(北京語)、日本上映時は、日本語字幕。上映時間:119分。
尚、「隊長のブログ」では、中国映画を、これで28作品を紹介したことになります。詳細は、こちらの記事一覧を、ご参照下さい 。
本作品は、弔辞作家の日常というユニークな題材を軸に、人々の人生模様や死生観を繊細に織り込んだヒューマンドラマです。
監督・脚本:劉伽茵(リウ・ジアイン)。
主演は、胡 歌(フー・ゴー)。
フー・ゴーの他の出演映画は、『チィファの手紙』を、取り上げています。
共演者:呉磊(ウー・レイ)、斎溪(チー・シー)、娜仁花(ナー・レンホア)、甘昀宸(ガン・ユンチェン)、ほか。
あらすじ:主人公の聞善<ウェン・シャン>(フー・ゴー)は、大学院まで進学しながら、脚本家として商業デビューが叶わず、北京で不思議な同居人・小尹<シャオイン>(ウー・レイ)と暮らしながら、今は葬儀場での「弔辞の代筆業」のアルバイトで生計を立てています。
丁寧な取材による弔辞は好評ですが、本人はミドルエイジへと差し掛かる年齢で、このままで良いのか、時間を見つけては動物園へ行き、自問自答しています。同居していた父親との交流が少なかった男性、共に起業した友人の突然死に戸惑う会社員、余命宣告を受けて自身の弔辞を依頼する婦人、ネットで知り合った顔も知らない声優仲間を探す女性・邵金穗<シャオ・ジンスイ>(チー・シー)など、様々な境遇の依頼主たちとの交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みだします。。。
鑑賞した映画館:現在公開中の本作品を鑑賞したのは、東京・銀座のランドマーク「和光本館」の手前「銀座ガス灯通り」を60mほど歩いたところにある「シネスイッチ銀座」。
「シネスイッチ銀座」を訪れるのは、初めてです。「シネスイッチ銀座」は、地下にある座席数271の「シネスイッチ1」と、1Fにある座席数182の「シネスイッチ2」の2スクリーンです。
『来し方 行く末』は、「シネスイッチ1」で上映されています。
(シネスイッチ銀座のHPから)
階段を降りた先にあったのが、2階席。最近出来たシネコンなどでは、2階席があるのは珍しいのでは。
隊長の席がある地下2Fのトイレの前には、木製の椅子が並んでいます。
全体に館内にレトロの匂いを感じます。調べてみたら、当館の前身は、1955年に開業した「銀座文化劇場」で、1997年に「シネスイッチ銀座1・2」としてリニューアル・オープンしたそうです。
「シネスイッチ銀座」を訪れるのは、初めてと書きましたが、「銀座文化劇場」時代に来たことがあるかも知れません。
感想:特にドラマチックなシーンもなく、淡々とストーリーが展開されていきます。日本には「弔辞の代筆業」と言う職業がないこともあり、当初は、監督のリウ・ジアインさんがこの映画に込めた思いを読み取ることが出来ませんでしたが、物語が展開していくに連れて分かってきました。
同居人のシャオインが、何をしている人間なのか、ウェン・シャンとの関係も謎でした。
(左:ウェン・シャン(演・フー・ゴー)、右:シャオイン(演・ウー・レイ))
ところが、ウェン・シャンが、ネットで知り合った顔も知らない声優仲間を探す女性のシャオ・ジンスイを自宅に連れてきたシーンから徐々に謎が解けてきました。
部屋に入ったシャオ・ジンスイが、シャオインの存在を全く認識していません。決定的になったのは、ウェン・シャンがホワイトボードに、自死した声優仲間の一生を時系列に描いて説明している時に、シャオ・ジンスイが突然ホワイトボードをひっくり返したところ、裏には小尹<シャオイン>の文字を中心に相関図が描かれていたシーンで、全ての謎が解けました。
シャオインは、ウェン・シャンの分身だったのです。シャオ・ジンスイには、見えないはずです。
ラストシーンでは、シャオインに姿が消え、ウェン・シャンがパソコンに向かい、弔辞ではなく脚本を書き始めるのでした。
本作品は、ヒューマンドラマであると同時に、ファンタジードラマでもあります。
入場時に、“名刺風オリジナルカード” を貰いました。表面は、名刺風に、弔辞ライター・聞善と書かれています。
裏面は、貰った時に見なかったのですが、エンドロールが終わり、場内が明るくなってから見たら、脚本風になっていました。
上映前に裏面を見ていたら、もう少し早く謎が解けていたかも知れません。
主演のフー・ゴーさん、、『チィファの手紙』では出番は少なかったのですが、主人公の姉・チーナンを虐待して自死に追い込んだ、ダメ男の元夫・ジャン・チャオ役のエキセントリックな演技が思い出されます。
ウー・レイさん、『SHADOW/影武者』 での、関羽の息子・関平役が凛々しかったです。
最後になりますが、これまで「映画」の記事の中で、外国映画の邦題(日本語タイトル)の付け方の良い作品と、悪い作品を挙げていて、それを一覧にしています が、本作は良い例だと思います。
原題の「不虚此行」の日本語訳は、“むだ足を踏まなかった.行ったかいがあった” で、映画のタイトルとして相応しくありません。昨年の東京国際映画祭で上映された際のタイトルは、「耳をかたむけて」でした。これは、英題・All Earsの意訳で、邦題として聞き心地は良いですが、インパクトに欠けます。
昔から慣用句として、文学の世界で用いられていた「来し方 行く末」 が、この映画の邦題として、文学的香りがして良いと思いました。
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