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ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
ノンジャンル手当たり次第読んだ本を紹介♪

ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
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だったらいいな・・・

「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開―。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!


内容「BOOK」データベースより


数多くのアメリカポストモダン文学の翻訳を手がける柴田元幸氏、村上春樹氏の翻訳活動に協力や助力を行うなど日本屈指の翻訳家の一人。その柴田元幸氏が翻訳第一人者なんだから作品がつまらないなんて事はありえない!面白いんだろうなと思って、ハードルを高く設定して読み始めたのに・・・やっぱり面白い!これって凄い事だと思います。


ポール・オースターが1985-86年にニューヨークを舞台に似た形式の作品を発表する、後にニューヨーク三部作と呼ばれる「ガラスの街」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」、本作はその第一作である。


主人公の台詞回しの1つ1つが格好良くてクールでタフな翻訳が読める!この面白さを感じるとポストモダンアメリカ小説にドはまりする事間違いなしだと思います。 村上春樹訳レイモンド・チャンドラーの探偵フィリップ・マーロウや同氏訳サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデン・コールフィールドの台詞が好きだって人は完全連結タイプの主人公が登場するのでオススメです!

魅力溢れる主人公がいるとそれだけで小説の価値を高めるのですが、この小説の魅力はそれだけではありません!ポストモダンという今までの常識を覆す小説であるという点が凄いのです。


「ガラスの街」は型にはまらない小説・・・一見するとミステリー小説、されどアイデンティティーを問う哲学書に近い小説なんです!主人公は孤高の小説家クイン、クインはペンネームであるウィリアム・ウィルソンを自らとは異なる人格として感じ、またその小説の主人公であるワークこそが実在する人物であると思っている。そんなクインに、ポール・オースター宛の依頼という人違いの依頼が持ち込まれる。その依頼は、神の言葉を求めて息子に一切の言葉を教えなかった罪で刑務所に送られた父親が釈放されるので動向を見守って欲しいと被害者の息子から依頼。この親子の存在が際立って特殊な事もあり、次第にクインは自らの存在をどんどん見失っていくのである。 ホラーでもミステリーでもなく、背筋がゾッとする感覚はなんだろうか?カフカの「変身」の恐怖感がまさに近いように思う。 こんな小説があるんだと唸ってしまう一冊である。


不思議な感覚に包まれる作品で、物語に意味や意義を求めるタイプの読者には嫌われる作品ではないだろうか?結局何が言いたいのか解らないと感想を述べる人も多い・・・この作品は、多解釈型の作品ではないかと思う。 読んだ多くの読者の数だけ解釈が生まれ、そして他の作品と連動する事でより深まっていく作品。

ガラスの街 (新潮文庫)
ガラスの街 (新潮文庫)
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ポール オースター
新潮社 (2013-08-28)
売り上げランキング: 35,075

僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。


内容「BOOK」データベースより


余命幾許もなく命の尊さを感じる、愛猫の喪失に葛藤する・・・お涙頂戴系全開の一冊。

ライン連載小説という新しい小説スタイルを生み出した創世作品である。


作者は本作で小説家デビューとのことですが、数々の有名映画のプロデューサーの経歴がある事から作品は読みやすく理解し易いテイストなので流石は魅せる事のプロだなと感じる一冊です、また作者の情報量の多さが伺えるのは、作中に登場する名言や格言の多さですね、名言集・格言集が大好物って方は満足できるのではないでしょうか?一ページに数個もちらばる、心にのこる言葉の数々を是非堪能していただきたいものです。


少し辛口評価を・・・読みやすく解りやすいと書きましたが生命の尊さを問う作品にしては少しフランクすぎるかなと感じます、先ほど上げた名言や格言を用いて作品に厚みを出しているのですが・・・正直な所、そういった言葉に酔わされているだけで登場人物やこの作品だからこその伝わってくる言葉や思いってものが薄いように感じました。 色々な言葉が飛び交って胸に入ってくるのに・・・「セカ猫」を読んだからこそ伝わってきたものが残っていないのが少し残念だなと感じました。


自分の寿命を得る為に何かを犠牲にしなければならない!この物語の最大のポイントにして一番の葛藤であるこのテーマは注目ですね。 これって身近で考えると食事制限の幸福論なんですよね、長生きする為に体に悪いとされる好物を我慢して食事制限する・・・長生きする為に、生きる楽しみを失うという反比例の葛藤、本作のように死が直結していないのでさほど実感が薄い問題なのですが、ふと立ち止って生きる為にしている行動は果たして死を前に意味がある事なのだろうか?と考えてみると面白いかもしれませんね。

しかしそこは本屋大賞ノミネート作品!黙って感動してろ!って声が聞こえそうですね。

今作品は映画化が決定していますので、一足先に映画の予習をしてみては如何でしょうか?


世界から猫が消えたなら (小学館文庫)
川村 元気
小学館 (2014-09-18)
売り上げランキング: 3,574

異形の怪人エリックは、愛する歌姫クリスティーヌに秘密の特訓を施して鮮烈なデビューをさせる一方、邪魔者には残忍な手を使うことも厭わない。とうとうクリスティーヌを誘拐し、追っ手を手玉にとったが…幾度も映像化・ミュージカル化されてきた傑作小説の真の「凄さ」を新訳で。


内容「BOOK」データベースより


フランスの小説家ガストン・ルルーによって1909年発表された小説「オペラ座の怪人」。数々の映画・ミュージカル化により読み継がれ語り継がれた名作。


オペラ座には怪人が住んでいた、神出鬼没で正体不明のF(ファントム)。そこに座る姿を誰も見たことが無いにも関わらず常に5番ボックス席を占有し、オペラ座の広大な地下に住みつき全てを知り尽くすFは支配人に月2万フランの大金を要求していた。 ある日、若手女優クリスティーヌ・ダーエは聴衆を魅了する歌声を披露した・・・「天使の声」にレッスンを受けたという彼女、その「天使の声」は正にオペラ座の怪人だったのだ。生まれつき醜悪な外見をしていたものの類稀な奇術と天性の歌声で他者を魅了する怪物は、やがてダーエを愛し支配しようと地下へ彼女を連れ去るのだった・・・ダーエの幼馴染にして恋人のラウル子爵は救出に立ち上がる、怪物を追い続けるペルシャ人ダロガも加わり地下へと潜入するのだが、そこで待ち受けていたのは・・・


外見が醜く生みの親に捨てられ見世物小屋で育った怪物、コンプレックスなんて生易しいものでは表現できない闇を抱えた怪物、ゆえに他者を虫けら同然に扱う残虐非道な性格を持ち合わせているものの、この怪人を不思議と嫌う読者は少ないのではないだろうか?それは、正攻法とは言えないけれどダーエに対する歪で深い愛情を目の当たりにするからだろうと思う。 独占し手にはいらなければむしろ壊してしまいたい衝動の大きさは怖いけれどもとても純粋な感情に映る。誰にも屈せず脅し賺し欺く性格の怪物であるがダーエの前ではまるで赤子のような姿を見せる、ダーエの足元にすがりつく怪物の姿は涙ぐましいものであり、恐怖が大半を占めているものの一時でもダーエの心を掴んでいた憐憫の情は読者にも伝わるのではないでしょうか。


オペラ座の怪人を読む上で、注目したいのは若手女優クリスティーヌ・ダーエの心理です!怪人を愛しているのか愛していないのか・・・結局の所よく解らない。愛についても恋人としての愛なのか母性としての愛なのかすら揺らいでいてなかなか掴めないのです。 奇術に心理学と他人を見事に欺きコントロールする怪人を見事に魅了させたクリスティーヌ・ダーエという女性こそが、ほんとうの怪人ではないか?と解釈する読者もいるそうで、その心理を探求する事も本書の楽しみ方のひとつではないでしょうか?



オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)
光文社 (2014-09-26)
売り上げランキング: 26,113

わたしは、貧しい絵描き。友達はいないし、窓から見えるのは、灰色の煙突ばかり。ところがある晩のこと、外をながめていたら、お月さまが声をかけてくれた……。ある時はヨーロッパの人々の喜びと悩みを語り、ある時は空想の翼にのって、インド、中国、アフリカといった異国の珍しい話にまで及ぶ。短い物語の中に温かく優しい感情と明るいユーモアが流れる、宝石箱のような名作。


内容紹介より


デンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン、グリム童話で有名なグリム兄弟と並び児童文学の始祖と呼ばれる人物。 代表作に、マッチ売りの少女・みにくいアヒルの子・人魚姫・親指姫など有名童話がずらりと並ぶ。


友だちもなく、窓から見える風景は灰色の煙突ばかり・・・貧しい絵描きに、お月様が語りかける。


なんて素敵な物語なのでしょう、このシチュエーションだけで世界にぐっと惹き込まれてしまいます^^ それだけではありません、お月様の語り口がとても素敵なんです♪悠久の時を廻ってきたお月様ならではの視点や観察力で世界中の古今東西様々なエピソードが語られるのですが、全ての物語に共通している事は・・・月の光が物語を美しく照らしているって事です。 喜怒哀楽と様々な物語が展開する中でいつもお月様は直接的な役割を1つとしておこないません、超然とそして優しく出来事を見守り見つめています。この圧倒的な視点で語られる物語は・・・お月さまを表すには不適切ですが、まるで太陽のような温かみを感じるのです!この太陽のようなお月様、是非味わって頂きたいと思います。


「絵のない絵本」という題名もすばらしいですね、児童文学にして主人公が絵描き・・・それなのに一切の挿絵が無いのです!いいえ、絵は存在します。 全ての物語は、お月様が世界中古今東西で見てきた様々なワンシーンが語られています、それは一枚の絵のような物語ばかりなのです。 読者は絵描きと一緒にお月様の物語を聞きながら、その情景を思い浮かべる事でしょう。そして、その情景は見事心の中で一枚の絵となっていると思います。 その全ての絵が、とっても素敵でチャーミングなんです。悲しい物語や怒りの物語もあります、でも全ての絵がとても素敵なんです。この感覚は是非読書で味わって頂きたいものです。挿絵がないのに、情景が目に浮かぶ作品は間違いなく一級作品なのですから。


印象的な短編を1つ、それは“第19夜”(すべての物語は、第何夜と題名がつきます)。 一人の才能のない俳優の末路を描いた悲しい物語。 童話といえば優しくて暖かい物語だと思いがち、最近ではほんとうは残酷な物語が多いなんて認知度も高まっているそうですが・・・この短編は悲劇的、悲しい事だけど現実的な物語なんです。そしてこんな悲しい物語なのにお月さまが見ていなければ誰も知らない、関心すらもたない。この世の中で起きる悲劇は、実は誰も気がついていないのかもしれない、我々は知らず知らずに悲劇を生み出す口笛を吹いているのではないだろうか?色々な事を感じさせる物語でした。


絵のない絵本 (新潮文庫)
アンデルセン
新潮社
売り上げランキング: 50,658

第二次世界大戦下のイギリス。夫に先立たれた一人の老ピアニストが出会ったのは、一羽の傷ついた小雀だった。愛情深く育てられた雀のクラレンスは、敵機の襲来に怯える人々の希望の灯となっていく―。特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。世界的大ベストセラーの名作


内容「BOOK」データベースより


サブタイトルの「人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯」。 クラレンスとは、生まれてスグに巣から落ち絶体絶命の危機から救い、愛情をもって育てたイエスズメの名前である。鳥獣学者顔負けの観察眼と考察力によってユーモアを交えながら語られる12年と7週と4日間の夫人とクラレンスの物語。


育てるとの表現は間違いかもしれない、古今東西人間と動物が共生する物語は数多くあれど、本作品ほどに両者が対等に書かれている作品は少ないと思います。 人間と動物の物語で、よくあるパターンとして人間とペットのお話・・・お涙頂戴系に多いのですが、これはペットが期待される以上の行動を起こす事で物語にインパクトを与え、感動を呼び起こす手法。基本的には愛情が介在してはいるものの両者が対等な立場かといえば人間の都合よく扱われている事が多いですね。 次に多いのは動物が人間以上の存在として登場し活躍する物語です、これは昔話やファンタジーに多い傾向にあります。人間に対する自然からの警告や啓示といった意味合いで動物が登場するので、時に人間よりも尊大な動物が登場することになります。

さて、「ある小さなスズメの記録」はどうでしょうか?愛情や絆といった観点から見れば先ほどのよくあるパターンに該当しそうな感じもするのですが、この物語はノンフィクション作品と銘打つだけに、極力感情を煽るようなエピソードなどが除外されています、鳥獣学者顔負けと表現しましたが・・・スズメを人間とは異なる種として尊重した上での観察記録がこの物語には描かれています。例えばピアニストであるキップス夫人の影響で歌を奏でるようになり、戦時下の民衆に夢や希望を与えたなんて感動のエピソードを中心に描くだけで感動動物物語が生まれるはずです・・・ですが、そんな華やかなエピソードを描きつつもスズメの晩年の老いていく姿を克明に描いている、死を前に生命の限り奮い立つ姿を描いている。生老病死という生のサイクルを、スズメの一生を見事に描いた作品であると言えます。この圧倒的なまでの記録は、愛や絆といったものを超えた作品を生み出したのでしょう。だからこそのベストセラーと言えます。 


第二次大戦下を経ている物語というところもポイントですね、戦争といえば人くくりに絶対的な嫌悪感をもって捉えられることが多いです、特に平和な時代であればあるほど、だけどもその状況下でこれほどまで文字通り小さな命を大切に思って書いた作品があるのだという事に胸が救われる思いですね。たとえ人はどんな状況下に置いても命を慈しみ尊ぶ心を保つことが可能であると勇気を与えてくれる気がします。クラレンスが戦時下の人々に希望を与えたように、本作品は世界中の人々に希望をもたらしているのではないでしょうか?とてもすばらしい作品。


ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 (文春文庫)
クレア キップス
文藝春秋 (2015-01-05)
売り上げランキング: 31,199