わたしは、貧しい絵描き。友達はいないし、窓から見えるのは、灰色の煙突ばかり。ところがある晩のこと、外をながめていたら、お月さまが声をかけてくれた……。ある時はヨーロッパの人々の喜びと悩みを語り、ある時は空想の翼にのって、インド、中国、アフリカといった異国の珍しい話にまで及ぶ。短い物語の中に温かく優しい感情と明るいユーモアが流れる、宝石箱のような名作。
内容紹介より
デンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン、グリム童話で有名なグリム兄弟と並び児童文学の始祖と呼ばれる人物。 代表作に、マッチ売りの少女・みにくいアヒルの子・人魚姫・親指姫など有名童話がずらりと並ぶ。
友だちもなく、窓から見える風景は灰色の煙突ばかり・・・貧しい絵描きに、お月様が語りかける。
なんて素敵な物語なのでしょう、このシチュエーションだけで世界にぐっと惹き込まれてしまいます^^ それだけではありません、お月様の語り口がとても素敵なんです♪悠久の時を廻ってきたお月様ならではの視点や観察力で世界中の古今東西様々なエピソードが語られるのですが、全ての物語に共通している事は・・・月の光が物語を美しく照らしているって事です。 喜怒哀楽と様々な物語が展開する中でいつもお月様は直接的な役割を1つとしておこないません、超然とそして優しく出来事を見守り見つめています。この圧倒的な視点で語られる物語は・・・お月さまを表すには不適切ですが、まるで太陽のような温かみを感じるのです!この太陽のようなお月様、是非味わって頂きたいと思います。
「絵のない絵本」という題名もすばらしいですね、児童文学にして主人公が絵描き・・・それなのに一切の挿絵が無いのです!いいえ、絵は存在します。 全ての物語は、お月様が世界中古今東西で見てきた様々なワンシーンが語られています、それは一枚の絵のような物語ばかりなのです。 読者は絵描きと一緒にお月様の物語を聞きながら、その情景を思い浮かべる事でしょう。そして、その情景は見事心の中で一枚の絵となっていると思います。 その全ての絵が、とっても素敵でチャーミングなんです。悲しい物語や怒りの物語もあります、でも全ての絵がとても素敵なんです。この感覚は是非読書で味わって頂きたいものです。挿絵がないのに、情景が目に浮かぶ作品は間違いなく一級作品なのですから。
印象的な短編を1つ、それは“第19夜”(すべての物語は、第何夜と題名がつきます)。 一人の才能のない俳優の末路を描いた悲しい物語。 童話といえば優しくて暖かい物語だと思いがち、最近ではほんとうは残酷な物語が多いなんて認知度も高まっているそうですが・・・この短編は悲劇的、悲しい事だけど現実的な物語なんです。そしてこんな悲しい物語なのにお月さまが見ていなければ誰も知らない、関心すらもたない。この世の中で起きる悲劇は、実は誰も気がついていないのかもしれない、我々は知らず知らずに悲劇を生み出す口笛を吹いているのではないだろうか?色々な事を感じさせる物語でした。
