ほんとなかよし -2ページ目

ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
ノンジャンル手当たり次第読んだ本を紹介♪

ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
読んだ誰かが読書をちょっとだけ好きになるブログ

だったらいいな・・・

自己流の暗殺剣法を編み出し、盲目的な殺し屋として幕末の世を震えあがらせた岡田以蔵の数奇な生涯を追跡する表題作。日本陸軍建軍の祖といわれる大村益次郎の半生を綴った『鬼謀の人』ほか、『割って、城を』『おお、大砲』『言い触らし団右衛門』『売ろう物語』など。時代の変革期に生きた人間の内面を鋭く抉り、長編とはまた異なる味わいの、人間理解の冴えを見せる好短編、全8編。


内容紹介より


司馬遼太郎(1923年-1996年)代表作に「竜馬がゆく」「燃え剣」「国盗り物語」「坂の上の雲」、戦国・幕末・明治を扱った作品が多い。


比肩する者は無し!?どれほどの取材量が1つ1つの短編に篭められているのか計り知れない印象。


小説家の前身が産経新聞記者だと知ったのは本作読書後でした、作品に描かれる情報量の多さに驚いていただけにむしろ記者だったと聞いて安堵してしまったぐらいに・・・凄まじい史実情報が盛り込まれた作品ばかりでした! 表題作「人斬り以蔵」に興味をもって購入したのですが全ての短編がとっても魅力的です。 ハズレの短編がないというのも凄い。

また大阪府出身の作者だからか・・・近畿県内の物語が多かったように思います、僕が一番気に入った作品「おお、大砲」は我が奈良県の高取町にある高取城の物語。 今は城跡のみとなっているのですが・・・ひそかに天空上の1つとして名高い城跡なのであります・・・「おお、大砲」を読んで思わず見学に行ってしまいました^^ 


「人斬り以蔵」・・・幕末四大人斬りの一人と呼ばれる人物、そもそも人斬りの異名は創作物の影響であると言われているが、幕末の天誅の名人と呼ばれた事実から剣の腕は確かで多くの者を斬ったであろう人。 天誅の姿と対照的に、投獄の後拷問にてスグに口を割った泣き虫というのが一般的であるが・・・その逸話を逆手にとった司馬遼太郎の物語は背筋も凍る仕上がりとなっており必見である。 師匠と崇めた武市半平太との永遠の服従関係の果てに描かれる愛憎劇は、人間の醜さ愚かさ、哀れさがにじみ出た物語となっており見事。


「おお、大砲」・・・この物語を感想に挙げる方はとても多い事に驚きました。土佐高取の物語だからと特に注目していたのですが・・・時は江戸時代後期、太平の世に幕末の騒乱が近づいてこようとしている、騒乱に備え戦国時代に大活躍した大砲を使用する事を決めた高取城、大砲は全部で6門、大砲は6つの家が代々管理してきた国宝である・・・いまこそ火を噴くときぞと戦で大砲を撃とうとするのだが・・・続きは作品でw ながき太平の世を経て甦る大砲の姿に言及する方が非常に多いです^^ 難しく解釈したり、今の時代に当てはめたりとなかなか見事な展開をされる方が多いですが・・・これは一種の幕末珍事って形で読むのが良いと思います。 後日談なんて特に物語にオチが付いて素敵です、とっても面白おかしく読む事ができるので、オススメの短編です。


本作の楽しみポイント


会話と会話の行間にはさまれる史実情報! 1つの台詞の背景に隠された歴史上の事実や記録が惜しげもなく紹介されているので・・・物語の世界にぐっと惹き込まれてしまいますし、登場人物への感情移入や思い入れといったものがとても強くなる要素となっています。 短編小説なのに長編小説を読んでいるのような情報量の多さに驚くばかり。

人斬り以蔵 (新潮文庫)
人斬り以蔵 (新潮文庫)
posted with amazlet at 15.06.19
司馬 遼太郎
新潮社
売り上げランキング: 83,185

三十二歳のヒロイン、水越麻也子は、結婚六年目の夫に不満を抱き、昔の恋人野村と不倫の逢瀬を重ねていた。だが歳下の情熱的な音楽評論家、通彦との恋愛で、麻也子は大きな決断を迫られることになる…。「不倫」という男女の愛情の虚実を醒めた視点で描いて一大社会現象を巻き起こし、TV・映画化された、恋愛小説の最高峰。


内容「BOOK」データベースより


世の中の、妻を蔑ろにしている男性たちよ!この一冊に恐れ慄くがよい。


いやぁ~おっそろしい物語ですねぇ~夫がマザコン(に見えて仕方がなく)、結婚当初に比べて自分への愛を感じない(営みも減り、記念日のプレゼントもない)という~夫婦のマンネリに不満を持つヒロイン・・・常識や良識で語ればそれは当然乗り越えなければならないものなのに、不満や我慢が爆発してしまったのがこの物語!


なんといってもヒロインの傲慢さが目に付く!私は一人苦労している!昔の恋人と不倫はしているが、肉体関係のみのドライな感覚、不倫に溺れる愚かな女友達と私は違うと思っている。 やがて運命(と感じた)の人と出会うのだが・・・それも自分が特別な瞬間に出会ったと嬉々とし、やがて不倫とは違う真実の愛にたどり着いたと思い込んで一大決心をする!私は幸せになるべきだと言わんばかりに!!

そう、すべては題名にあるように「自分の不機嫌」が原因なのに・・・それに全く気がついていない、現状に満足することなく常に欲求や欲望を抱く心にこそ際限ない不満や不平が生み出されているというのに・・・私は特別な存在!なのにこの境遇!全ては最初の傲慢さが諸悪なのではないのか?そう立ち止る事すらしない、むしろ次々と不機嫌は生み出され、そして行動に移して行くのである。 おぉなんて行動力がある女性なんだろうか。恐ろしい。


この物語で一番面白いのは、そうやって不機嫌をぶちまけて生きているヒロインに常に一番おいしいポジションで接している昔の恋人=最初の不倫相手・野村である。 こいつぁ~一癖も二癖もある男ですな、世の男性に恐怖を与えるような筋書きの物語の中で、結局不倫ってものは男女共にそろってなければ出来ない行為なんだって事を象徴しているかのような人物として登場します。必見の人物ではないでしょうか?


この物語は、男性と女性でかなり印象が違ってうつる作品なのではないでしょうか?主人公の人間性や道徳観は抜きにして批判をしているのは男性で、女性は逆に共感する部分を多く見出しているように思えます。 真似る事やけっして偉いとは思わないが素直に純粋に生きている女性であると同性の方は評価しているように思います^^ でもそれを言うなら肉欲だけを見事に見たいしている野村の存在に賛同している男性が多いのも事実で・・・結局の所、人間は同性に共感しやすいという事でしょうか?ただそうなってくると林真理子という女性作家は、一部とはいえ共感をうむ男女を描き出しているという離れ業をやってのけているって事になるので・・・やはり凄い事なんですよね。 男女の愛を考えさせられる一冊。

不機嫌な果実 (文春文庫)
林 真理子
文藝春秋
売り上げランキング: 183,767

極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。


内容「BOOK」データベースより


夢野 久作は、日本探偵小説三大奇書の1つ「ドグラ・マグラ」をはじめ怪奇性と幻想性のある作品が特徴で、主に独白体形式と書簡体形式の二つの手法を用いている。 本書で収録の「支那米の袋」は、事件の真相や経緯を一人の人間が語る独白体形式、「瓶詰の地獄」は3通の書簡をそのまま収録しているような書簡体型式となっている・・・この一冊で両方のスタイルを楽しむ事ができます。


収録短編「瓶詰の地獄」 「人の顔」 「死後の恋」 「支那米の袋」 「鉄鎚(かなづち)」 「一足お先に」 「冗談に殺す」


「瓶詰の地獄」、無人島に流れ着いた幼い兄妹だが、やがて成長し肉欲に目覚めおそらく近親相姦を犯してしまうという物語・・・無垢な精神が肉欲という罪に苛まれ苦しみ狂う姿がなんとも救いようのないホラー感を生み出している。 この作品はエピソードもさることながら、瓶に入った3つの書簡といった形式がとられている事から、それぞれの書簡がどの順番に書かれたものかという解釈が定まっておらず、未だに検証や推理が後を立たないといわれている。 一般的に有力なのは第3→第2→第1の書簡といった順序とみなされる事が多いのだが・・・近親相姦の罪が明確になっているかどうか?また精神的な崩壊の度合などから絶対的に固定できないともいわれている。 多くの人が持論をネットで紹介なさっているので読後に読んでみると面白いかもしれない。


私がイチオシするのは、「鉄槌(かなづち)」。ホントウの悪魔というものはこの世にいるものかいないものか・・・書き出しからなんとも興味をそそるではないか!主人公は叔父を悪魔だと思い続けているが・・・その叔父のもとで特異な能力を発揮しはじめる自分自身の存在にも疑問符が浮かび上がる・・・叔父の妾と驚きのラスト展開は圧巻!事件そのものや悪魔とは何か?を明確にしていない事で読者はより物語の深みに吸い込まれてゆく・・・「瓶詰の地獄」とならび夢野短編の最高傑作と名高い一作である。



瓶詰の地獄 (角川文庫)
瓶詰の地獄 (角川文庫)
posted with amazlet at 15.06.01
夢野 久作
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 126,088

美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した友を追う「僕」の中で何かが壊れていく…。緊張感あふれるストーリー展開と深い人間洞察が開く新しい小説世界。


内容「BOOK」データベースより


ポール・オースターのニューヨーク三部作最後の作品、先の2作「ガラスの町」「幽霊たち」に登場した世界観や登場人物を継承し、より高みに到達した印象を受ける作品。


三部作の中で一番まともな設定や筋書きだったように思える。 というのは、基本的に主人公のアイデンティティーが崩壊するニューヨーク三部作なのだが、今作の主人公の崩壊具合は他の作品に比べると緩やかなものである・・・その最大の理由として、主人公と一緒になって壊れる人間の存在が挙げられる。

全ての作品に共通しているのは、主人公が不在の人物を追うという筋書きであり、その不在の人物も一癖も二癖もある人物なのであるが・・・少なからず主人公の人格を蝕んでいく程度に、人格が崩壊している人物なのである。 そして「鍵のかかった部屋」では、その主人公よりも程度が酷く人格が壊れた人物が登場するので、相対的に主人公の人格崩壊が弱く感じてしまうのだろう。


さて、人格崩壊と連呼しているが・・・ニューヨーク三部作は、崩壊の物語である。

ただし、「幽霊たち」を除けば、この物語は冷静になり自分を取り戻した後で過去を振り返っているといった描かれ方をしているので全く救済がないわけではないのだが、 全体的には暗い物語である事は否めない。 ちょっとした台詞回しのかっこよさや探偵小説形式のスリルある展開がなければとても怖い作品になっていたことだろう。 この感情を1つに絞らせないって所もポストモダン作品の面白い所といえるのではないでしょうか?


結局の所三部作を全て読んだからといって作者が何を描き、何を言いたかったのかを1つに絞る事が出来ませんでした・・・難解ではない物語なのですが、解釈が多岐に渡る作品ですので。ポール・オースターの他の作品や当時流行した小説等を読み進めることで理解や解釈が深まっていくタイプの作品だと思います。 ですので、村上春樹氏の作品のようなメタ色の強い傾向の作品を好む方には良い作品かもしれませんね、反面解りやすくて答えがあるってタイプの小説が好きな方には不向きな作品です。



鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
ポール・オースター
白水社
売り上げランキング: 63,835

私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何の変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー…。’80年代アメリカ文学の代表的作品!


内容「BOOK」データベースより


アメリカのポストモダン作家ポール・オースターが描くニューヨーク三部作の1つ「幽霊たち」、第一作品である「ガラスの街」は探偵小説の形式をとりながらもアイデンティティーを問いかける哲学めいた物語だったのだが・・・今作「幽霊たち」はより一層磨きが掛かった印象を受けます。 


登場人物の名前が、とっても特徴的です。 「ガラスの街」では著者と同姓同名のポール・オースターを登場させている著者だけに名前の付け方にコダワリがあるのではないでしょうか?今作ではホワイトにブラック、そしてブルーと登場人物の名は全て色によって表現がされています。 この効果により、色独特の印象は受けるものの名前から得る人物の先入観といったものが一切無くなっています。自分と他人の境界線を見失ってしまうといった物語でアイデンティティーとは何かを考えさせる作品にはぴったりの名前の付け方だと言えますね。 


本作の文体が全て現在形なのも特徴的といえます、よりサスペンス色が強くなるのと同時に自らの人格が崩壊していく主人公に読者は寄り添いながら物語を読み進めることができます。


日本では本作題名の舞台が発表されているそうですが・・・配役等を見ると一人で二役を演じている様子です、これはかなりのポイントではないでしょうか?俳優の出演料の関係から一人二役って事も十分に考えられるのですが・・・作品のイメージからいえば、一人の人間も名前や台詞が変わる事で様々な登場人物になりえる。 そして一度その登場人物が自分の存在に疑問を持ったとすれば・・・舞台上では混乱が発生するのではないでしょうか?まさにそんな世界が描かれている一冊。 舞台も見てみたかったなぁ・・・


探偵モノとして・・・先の「ガラスの街」も同様なのですが、探偵としてはポンコツとしか言いようのない主人公なのも面白い所ですね。 最終的に人格崩壊に近い状態になってしまうのですから・・・仕事能率うんぬんのレベルではないのですけどもね、同じ作業や工程ばかりの日々に次第に精神が疲弊していき自らを見失うのですが、ある意味で仕事人間で息抜きが出来ない主人公なのかな?なんて単純解釈をしてしまいました。 探偵が大活躍するミステリー好きには評価されないものの、職業探偵としてこれほど真摯に物事に取り組んだ探偵はポール・オースター作品以外にはいないのではないでしょうか???といってもやっぱり人格崩壊してちゃ~元も子もないですけどねw

幽霊たち (新潮文庫)
幽霊たち (新潮文庫)
posted with amazlet at 15.05.19
ポール・オースター
新潮社
売り上げランキング: 40,586