自己流の暗殺剣法を編み出し、盲目的な殺し屋として幕末の世を震えあがらせた岡田以蔵の数奇な生涯を追跡する表題作。日本陸軍建軍の祖といわれる大村益次郎の半生を綴った『鬼謀の人』ほか、『割って、城を』『おお、大砲』『言い触らし団右衛門』『売ろう物語』など。時代の変革期に生きた人間の内面を鋭く抉り、長編とはまた異なる味わいの、人間理解の冴えを見せる好短編、全8編。
内容紹介より
司馬遼太郎(1923年-1996年)代表作に「竜馬がゆく」「燃え剣」「国盗り物語」「坂の上の雲」、戦国・幕末・明治を扱った作品が多い。
比肩する者は無し!?どれほどの取材量が1つ1つの短編に篭められているのか計り知れない印象。
小説家の前身が産経新聞記者だと知ったのは本作読書後でした、作品に描かれる情報量の多さに驚いていただけにむしろ記者だったと聞いて安堵してしまったぐらいに・・・凄まじい史実情報が盛り込まれた作品ばかりでした! 表題作「人斬り以蔵」に興味をもって購入したのですが全ての短編がとっても魅力的です。 ハズレの短編がないというのも凄い。
また大阪府出身の作者だからか・・・近畿県内の物語が多かったように思います、僕が一番気に入った作品「おお、大砲」は我が奈良県の高取町にある高取城の物語。 今は城跡のみとなっているのですが・・・ひそかに天空上の1つとして名高い城跡なのであります・・・「おお、大砲」を読んで思わず見学に行ってしまいました^^
「人斬り以蔵」・・・幕末四大人斬りの一人と呼ばれる人物、そもそも人斬りの異名は創作物の影響であると言われているが、幕末の天誅の名人と呼ばれた事実から剣の腕は確かで多くの者を斬ったであろう人。 天誅の姿と対照的に、投獄の後拷問にてスグに口を割った泣き虫というのが一般的であるが・・・その逸話を逆手にとった司馬遼太郎の物語は背筋も凍る仕上がりとなっており必見である。 師匠と崇めた武市半平太との永遠の服従関係の果てに描かれる愛憎劇は、人間の醜さ愚かさ、哀れさがにじみ出た物語となっており見事。
「おお、大砲」・・・この物語を感想に挙げる方はとても多い事に驚きました。土佐高取の物語だからと特に注目していたのですが・・・時は江戸時代後期、太平の世に幕末の騒乱が近づいてこようとしている、騒乱に備え戦国時代に大活躍した大砲を使用する事を決めた高取城、大砲は全部で6門、大砲は6つの家が代々管理してきた国宝である・・・いまこそ火を噴くときぞと戦で大砲を撃とうとするのだが・・・続きは作品でw ながき太平の世を経て甦る大砲の姿に言及する方が非常に多いです^^ 難しく解釈したり、今の時代に当てはめたりとなかなか見事な展開をされる方が多いですが・・・これは一種の幕末珍事って形で読むのが良いと思います。 後日談なんて特に物語にオチが付いて素敵です、とっても面白おかしく読む事ができるので、オススメの短編です。
本作の楽しみポイント
会話と会話の行間にはさまれる史実情報! 1つの台詞の背景に隠された歴史上の事実や記録が惜しげもなく紹介されているので・・・物語の世界にぐっと惹き込まれてしまいますし、登場人物への感情移入や思い入れといったものがとても強くなる要素となっています。 短編小説なのに長編小説を読んでいるのような情報量の多さに驚くばかり。
