推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。
内容紹介より
ビブリア古書堂第4巻の題材が江戸川乱歩だった。江戸川乱歩は敬愛したエドガー・アラン・ポーをもじった名前である事はあまりにも有名である。そのポーの作品をたまたま購入していたのも運命の巡り合わせというものであろうか・・・光文社新訳古典「黒猫/モルグ街の殺人」は表題作品を含む全8作の短編集作品である。面白過ぎる!探偵推理小説の先駆者として名高いポーが生み出した名探偵オーギュスト・デュパン!「モルグ街の殺人」を読めばきっと読者は探偵そのものはもちろん探偵推理小説自体を好きになる事間違いなし!探偵ものは探偵そのものに魅力を感じる事が出来るかどうかが重要な要素であるがデュパンも魅力の点で文句ない人物である、恐るべき考察力と洞察力は先見の明とも思える頭脳の冴えを見せつけ怪事件を難なく解決してみせる。また「モルグ街の殺人」は僅か数十ページの作品である、事件から推理・解決までがあっという間なのも面白い!短いのだけど、内容は十分だし人物の魅力も完璧である。目も当てられぬ猟奇殺人が読者の心を掴み颯爽と探偵が事件を解決、読み手は自身の心が揺さぶられている感覚を味わう事が出来るでしょう。読み手の心を揺さぶるという意味において、「モルグ街の殺人」以外の短編に焦点を当ててみたい、「モルグ街の殺人」以外の収録作品には探偵は登場せず、殺人や悪事を働いた張本人による独白の作品ばかりである。その全ての作品が“良心の呵責”に苛まれ神経衰弱・精神的に不安定となった人物の自らの犯行や人生の回顧や懺悔が描かれている。人間の本性や衝動のままに殺人または犯罪に手を染めた様々な登場人物が事後に自らの理性や良心に目覚める又は打ちのめされる物語なのである。最近ではサイコ系の異常殺人者が犯罪を犯すテイストの作品も多く見受けられる様になっているが、ポーの作品の犯罪者にはおよそ人間の善とされる心の残り火を感じさせる心ある人間が描かれているのがポイントで、読者は語り手の心理描写(多くが恐怖や戦慄)をつぶさに感じ取れるようになっている。理性と本能の狭間で葛藤する登場人物を描く技術が圧倒的に高く、巧みであり、非常に明確なメッセージ性を備えた物語を描くエドガー・アラン・ポー。これは名前を残す作家だなと素直に関心してしまう一冊でした。
個人的に好きな短編は「ウィリアム・ウィルソン」ですね、語り手の男には同姓同名で自身に瓜二つの人間と出会う、常に自らを真似し助言を与えてくる彼、やがて知性と技量から悪事に手を染める語り手だが、その都度同姓同名の男に一歩先を越され企みが破綻していた・・・ある日男は彼を殺害しようともくろむが・・・ドッペルゲンガーとも統合失調症とも解釈されそうな物語であるが、物語の幕引きが最高潮に怖い!見事。恐怖の演出という意味に置いてポーの右に出るものはそうは居ないのではないだろうか?「黒猫」の物語によって日本人の黒猫=不吉のイメージが定着したと言われれば、ポーの作品の影響力がどれ程の物であるか容易に解ると思います。江戸川乱歩が敬愛するエドガー・アラン・ポー、恐怖の作品をお楽しみください。




