辛い荷役の労働と酒にあけくれる男のもとに転がり込んだ美しい女。互いの心を軋ませながらも癒しのドラマが始まる。表題作他全七篇
内容紹介より
浅田 次郎さんといえば直木賞受賞作品「鉄道員」(ぽっぽや)。私は映画「鉄道員」を見て主演高倉 健さんの無言の演技に涙した記憶があります。が、「月のしずく」を買う時点では「鉄道員」著者が浅田 次郎さんだって事すら知らなくて、たまたま友人がそれ「鉄道員」の作者だよと呟いたので気付いたのでした。浅田 次郎さんに関しては書棚あ行でよく見る作家さん、赤川 次郎さんに似てる作家さんって印象しかなかった。「月のしずく」という美しそうな題名に惹かれてちょいと手をだしてみようかと今回の読者に至りました。これも巡りあい。「月のしずく」は久しぶりに感動の涙を流した一冊、とても素敵な本です。様々な事情を抱える男女の物語ばかりである、浮気や不倫といった一般的な感覚からは不純と受け取られるような恋愛ばかりの設定であり、一見すると憎愛や泥沼に満ちた作品になってしまいそうな設定の物語が多いのだが、驚くべき事に純愛小説以上の素敵で清々しい恋愛模様を感じる事になるのだから凄いポイントだと思う。その最大の原因は登場する男女の人格であろうと思える。基本的に女性は社会的ステータスや知的水準の高い人ばかりである、各話ともに問題を抱える恋愛状態や人生を歩んでいる設定であるが、常に人を愛する事を真剣に考え求めている人物として登場する、対する男性は女性が現在付き合っている男性に比べると格段に格下の社会的ステータスであったり不器用なほど愚直な性格でお世辞にも格好のつく人物として描かれていないのである、そんな相反する二人・本来出会う筈のない二人が出会い交わった時に奇跡ともいえる物語が生まれるのである。読者の気持ちを代弁するかのように女性が必ず男性に抱く感情-この人は、誰?-この言葉が読書感想の全てを物語っているように思います。ちょっと話を盛りすぎではないだろうか?こんな男性いないよ。と読者も感じてしまうでしょう、実際居てなさそうな人物だから感動を生むのだし素敵だと感じるのだろうけども、浅田 次郎さんの素晴らしい所は決して突飛でもない人物を描いているわけではないという点だと思う。素敵だなと感じる男性の全ては“真心”の化身と言える。人間が美徳と感じる“真心”を具現化した人物が全ての物語に登場するのである。そして“真心”を受け取った女性は必ず変化を迎える事になる。そう読者の心に変化が訪れるように。僕が好きなストーリーを二つあげたい、まず“花や今宵”、運命のいたずらって言葉がぴったりの物語な上に全ストーリーの中で一番男女ともに救済されているかのような作品である、男女のパワーバランスは相変わらずであるが、共に落ち込み共に助け合う様子は素敵である。つぎに“ピエタ”、これは男女の恋愛だけでなく親子(母娘)の物語が絡まって素晴らしい、また男性が異国の人だという点も良い!恋に人種は関係ないなどと安易な恋愛観を押し付ける安っぽい物語ではけっしてない、何故彼女はその男性を選んだのか?そしてその男性を真っ直ぐに見つめた時に訪れる素晴らしい感動は圧巻である。真心が描かれた作品は感動の涙なくして読めぬ一冊。貴方は誰に月のしづくを与える事が出来るのか?また与えてみましょう。





