人生とは善への希求であり、その努力にこそ人生の意義がある。善こそは人生の目的なのだ。だが、この目的は何によって達成しうるのだろうか。トルストイ(1828―1910)はこう断ずる、それは人間にのみ与えられたあの理性の働き、すなわち愛によってである、と。『人生論』にはこの偉大な「人生の教師」晩年の思索と体験のすべてがこめられている。
内容 「BOOK」データベースより
代表作「アンナ・カレーニナ」「戦争と平和」は超長編にして最高傑作、19世紀ロシア文学を語る上でドストエフスキーやトゥルゲーネフと共に欠かすことのできない作家トルストイ。私は「戦争と平和」「クロイツェルソナタ」「イワン・イリイチの死」の作品を経験しましたが、どれもが印象的である「戦争と平和」は圧倒的多数の登場人物全てが活き活きと表情を持ち多声的に綴られる物語は圧巻だったし、「クロイツェルソナタ」はまるでピアノの旋律で奏でられているかのような文体に魅せられた、「イワンイリイチの死」が最も印象的でありトルストイの死生観(作中では死の恐怖)が全面に押し出された作品で終幕の衝撃度は今でも忘れない。ドストエフスキーの「罪と罰」の終幕と並び私がオススメする終わり方が素敵な作品です。
そんな読めば衝撃を与えてくれる、凄いと言われていて本当に凄い名作家トルストイの「人生論」が如何なるものぞと読んでみた、82才と長寿の天命をまっとうしたトルストイであるが国家的規模の作品である代表作に挙げた2作品は30~50才で書き上げているし、70才以上にして「復活」という代表作品を書き上げる人生常に最前線文豪として生きた人物、その人生観・死生観はやっぱり半端なものではなかった、「人生論」は約60才のトルストイが自身が命に関わる病に対峙し人生を見つめた作品との事である。作品でも生命そのものの考察、特に死生観に関わる認識に重点が置かれている傾向が強い、作家独特のセンスで煙に巻かれている印象を受けなくも無いが一つ一つの理論理屈には不思議と根拠を感じ作者の力強い確信が見出せ気が付けば言葉の魔法に掛かった様に読書をしてしまう事でしょう。「人生論」と題名だけを聞けば哲学的な書物として敬遠してしまいそうな印象ですが、基本的には情緒的で心に訴えかけてくる詩的な作品ですので意外と理解しやすいかもしれません。人間独自の理性や愛を描ききるトルストイならではの人生観・道徳観を読んでみる事で他作品の読解に役立ったり一段深く作者を知る事が出来るのではないでしょうか?
