>オリジナルフルアルバム+カバーアルバム

>タイトル:いまも忘れらんねえよ。

>アーティスト:忘れらんねえよ

>リリース日:2023年 12月 13日

>記事作成日:2024年 1月 8日






聴きました!


忘れらんねえよ柴田さんの、最新作。

本作は2枚組。2枚目は、なんと、ゆかりのあるアーティストが忘れらんねえよの楽曲をカバーしたカバー盤。ぼくは忘れらんねえよの作品が大好きで、大好きではあるんだけれども…ぶっちゃけ、2枚目のNakamuraEmi目当てで購入した感は否めない(笑)。




まずはDisc 1。柴田さんによる、オリジナル作品。




『歌詞書けなすぎて、朝』

『何も言えなくて…夏』みたいに言うな(笑)。

軽快なバンドアンサンブルに、恐ろしく人懐っこいメロディ。これにストレートなラブソングの歌詞でも充てれば“普通に”いい感じの青春パンク的になったろうに…何故歌詞を書けない追い詰められ感を乗せたんだ(笑)。でも、素人(しかも学生時代にバンドかじってて、作詞作曲の真似事もしてた)的には「言いたい事をそのまま歌詞にすりゃ良いだけじゃん」なんて思ったけど、「これまでの楽曲で言いたい事は言い切った」という、僕の疑問へのアンサーが盛り込まれてた。

取り敢えず、スガシカオと斉藤和義に謝ろう(笑)。


『これだから最近の若者は最高なんだ』

逆に、前澤にはなれなかったけど友作にはなれた奴なんて居るんだろうか(笑)。

これもまた、圧倒的にキャッチーなメロディライン。バンドサウンドは、前曲よりも分かりやすいパワーポップ。

この計算で行くと、ぼくもまだ若者なのかもしれない。そんな、謎の前向き感を与えてくれる曲。

…アイドル猫のほうが稼いでるよねぇ。


『夢に出てくんな』

まじで、この人のコンポーザーとしての才能が恐ろしい。どの曲も、例外なく人懐っこいメロディ。

これこそ、まさに青春パンク感に溢れる曲。スタンスパンクスとか、あの辺を想起せずにはいられない。“世代”のぼくには、なんか鼻の奥がツンとする感覚がある。


『アイラブ言う』

ちょっと吐き捨てるような歌い方のボーカルに、“クラスの一軍がそのままバンドのボーカルになりました”タイプのオーラを感じる(笑)。柴田さんがカッコよく歌ってるパターンも、ぼくは好き。


『知ってら』

綺麗な、そして切ないピアノバラード。凄く切ないんだけれども、これを柴田さんが歌ってるんだと思うとなんか救われるんですよねぇ。理屈は、ぼくにも分からん。

この曲もやはり、メロディラインが秀逸。歌詞が持つセンチメンタルは、このメロディに乗っかっているからこそ最大限に“炸裂”している。


『俺にやさしく』

ぼくにもやさしく(便乗)。

前曲のほうがストレートに切ないのに、バンドサウンド全開のこの曲のほうがぼくは泣けたりもする(笑)。“持てる者”じゃない奴の気持ちが、自虐とか卑下とかじゃなくてあくまでもフラットに描かれてるんですよねぇ。だから、泣ける。

俺にやさしくしてほしいだけでなく、君への優しさを持っている主人公だから、好き。


『お前の話は聞いていない』

静かな怒りがほとばしるロックバラード(笑)。なんか終盤にかけて、大団円というか感動的な終わり方をしてるのがウケる。ライブだと絶対、「Say!」とか言いながら客にラララと歌わせるヤツじゃないですか。で、そういうのってだいたい、前向きにシメるタイプの曲じゃないですか。なのにこの曲は真逆で、そのまんま「お前の話は聞いていない」っていう歌ですからね。「ラララ〜」のところでの感情のやり場に困る(笑)。


『いいから』

Ado感(笑)。攻撃的な言葉と音数の多いメロディが、情報量過多でギチギチなオケに乗っかっていて。とにかく、なんか追い立てられるような責め立てられるような感覚。

演奏陣は軒並みカッコよくてキレッキレで。特にペズラインが好きですね。


『2時間なんもしなかった』

慟哭。この曲にあるのは、慟哭以外の何物でもない。

2分に満たない短い曲の中に、慟哭と、憤怒と、寂寞とが交錯し、爆発し、消えていく。


『プロポーズ』

なんと重たいプロポーズなんだ(笑)。このプロポーズには、ブラックホールが発生しかねないぞ。

でも、良い。それが良い。こんな歌詞を書いて歌って、それでしっくり来るのはこの人くらいなものさ。

プロポーズなんて“陽”のカタマリみたいなものなのに…“陽”を煮詰めて煮詰めて凝縮すると、“陰”になるんだな(笑)。


『いやがらせのうた』

なんとも言えない物悲しさが漂う曲。バンドの音が厚いからこそ、歌詞とメロのセンチメンタルが際立って聴こえる。聴き終えると、なんか人恋しくなる。まさに「宇宙にひとりぼっち」の感覚。

本作を聴いて何度も何度も何度も感じた“コンポーザーとしての才能”を、ここで改めて感じる。


『悲しみよ歌になれ』

ハイライト感。アルバムにしろ、ライブにしろ、本編ラストが近付いてきたタイミングでこんな曲が聴こえてきたら、体じゅうが熱くなるのは間違いない。音楽の熱狂と、ライブ(とかアルバムとか)が終わりに近付いてる事を目の当たりにする寂しさとが混ざり合う感覚。


『音楽と人』

ここまでのどの曲とも違った雰囲気で。ぼくは、この曲が、このアルバムの中でいちばんシリアスだと感じました。歌詞もアツいけど、単純にそれだけが理由ではなくて。ボーカルにも鬼気迫るものを感じるんですよねぇ…圧倒的にエモーショナルなんだけれども、同時にテクニカルでもある。今までのこのバンドの楽曲の中で、もっとも「この人、歌うまいな」と思った。叫ぶような歌声の中に、ピッチの安定したビブラートが混じる。それが凄く感傷的だし、哀愁も感じさせる。

これは、控えめに言って名曲だ。


『君の音』

前曲がアツ過ぎたので…この曲はアップテンポなんだけど、なんかちょっとホッとするところもあったりして。

パワーコードのギターが気持ち良い。メロがリフレインするサビも、気軽にノレる。


『犬人間』

最後にこういう曲を持ってくるんだなぁ。意外。

デジタルのシャープなビートが印象的な、EDMフレーバー(それは言い過ぎか?)かつラップフレーバーの曲。オケの都会的な洒脱さが、歌詞の“忘れらんねえよらしい”感じとコントラストを作っていて、新鮮。

また、ギターが良いんだよなぁ。メロディアスで、“歌ってる。

余談ですが。ここまで普段と異なる作風は…ひと昔前ならシングルB面に収録されてた気がする。チャレンジングな曲の置き所って、シングルのカップリングでしたよね。



続いて、Disc 2。女性ボーカリストたちのカバー盤。




『知ってら』/安藤裕子

オリジナルも勿論聴いた事あるけど…コレ安藤さんのオリジナル曲だよね?ね、そうだよね??っていうくらい、安藤裕子色に染まり切っている。安藤さん独特の、“優しい緊張感”に溢れている。懐の深さを感じさせつつ、でもまるで緻密なドミノを組んでいる時のような独特の緊張感のようなものもあり、クセになる。

もう一回言うけど…コレ、安藤さんのオリジナル曲だよね⁉︎(笑)。


『アイラブ言う』/田所あずさ

分かりやすいバンドサウンドに、忘れらんねえよらしさを感じる。前曲に比べると、とても忘れらんねえよ汁が強い。こっちのアプローチも、勿論好き。

それにしても…柴田さんが歌うと“敗戦濃厚”なストーリーなのに、この田所さんという方の歌声で聴くと物凄く前向きで、甘酸っぱくて、勝ち戦みたいに聴こえるのが面白い(笑)。


『犬にしてくれ』/NakamuraEmi

コレはまた…NakamuraEmiのオリジナル曲だよね⁉︎(笑)。この歌詞に、何故こんなアダルティでムーディなアレンジを施せるのか。NakamuraEmiの…というよりもカワムラヒロシPの感受性と想像力、どうなってんの⁉︎

余裕のあるリズム隊の音が、どこまでも渋くてどこまでも深い。そこで歌われるのは、比喩でも誇張でもない「犬にしてくれ」という願い。どういう気持ちで聴いたら良いのかが分からない(笑)。


『バンドやろうぜ』/ネクライトーキー

このバンドらしい“なんでもあり感”というか、ミクスチャー感というか…そういうのが良い感じに出ていて、聴き応えがありました。とにかく、凄くスタイリッシュ。エモーショナルなんだけれども同時に物凄くシュッとしてもいて、それがとてもこのバンドらしく感じられました。


『CからはじまるABC』/橋本絵莉子×忘れらんねえよ

おぉ、激しい感じでくるのか。後期チャットモンチーのような、ユーモアのあるバンドサウンド。そして、この曲だけは柴田さんも参加のツインボーカルスタイル。

歌詞が、2020年代版にアップデートされてますね、芸が細かい。確かに、近年の若者はスノボって感じじゃないわな。

橋本さんの声で「チャットモンチー」を聴きたいところはあったけどね(笑)。




そんな、2枚組計20曲。


一枚目、ご本人によるオリジナル作品のほうは、とにかく全部の曲が良かった。初めて聴いた時、「あっこの曲いいな。おっ次の曲も良いな。えっ更にその次も良いな。うわっまだまだ良いな。」というのが更新され続けた感じがして。

やはり、メロディラインのキャッチーさが圧倒的。ぼくは、忘れらんねえよのメロディ部分が特に好きなんだな。

青春パンク系のエモさがあり。初期のゆずのような分かりやすさがあり。ガレージロックの勢いがあり。高橋優のような激情があり。なんか、いろんな要素が上手く配合されていて、なんかもはやちょっと怖かったです(笑)。


そしてDisc 2、カバー盤のほうについて。

いやこれ、名盤ですよね。ここまで散々書いてきたけど、やはりぼくは柴田さんのコンポーザーとしての才能が突出していると思っていて。それが、別のボーカリストや全く異なるアレンジで聴く事で再確認出来ました。どんな歌声でも映えるし、どんなアレンジでもメロの“押し負けてる感”が無い。どんな格好をしても華やかなオーラを放つ、スーパーモデルのよう。

そしてまた、人選が素晴らしい。イケメン俳優がコントをやるような、通常とは全く違うところに味わい深さを感じる仕上がりでした。これ、シリーズ化してくんないかなぁ。そうなったら、ぼくは毎回ちゃんとフィジカルで購入して、微力ながら収支を支えますよ(そういう人、多いんじゃないかな)。こういうのを聴く事で、オリジナルもまた聴きたくなりますしね。






お気に入りは、

○Disc 1

#01 『歌詞書けなすぎて、朝』

#02 『これだから最近の若者は最高なんだ』

#03 『夢に出てくんな』

#05 『知ってら』

#06 『俺にやさしく』

#09 『2時間なんもしなかった』

#11 『いやがらせのうた』

#13 『音楽と人』

○Disc 2

#01 『知ってら』/安藤裕子

#02 『アイラブ言う』/田所あずさ

#03 『犬にしてくれ』/NakamuraEmi






この作品が好きなら、

・『ROLL ON 48』/フラワーカンパニーズ

・『グアナコの足』/GOOD ON THE REEL

・『さくらの唄』/GOING STEADY

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/