「平安S・G3」(24日、京都)
 破竹の6連勝で重賞を制したウォータクティクス。その後の3走はやや足踏みが続いたが、冬場は良績を残している。しかも、舞台はレコード勝ちを収めるなど、4勝を挙げる京都のダート1800メートルだ。得意の季節で完全復活を目指す。
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 秘めた能力はこんなものではない。ウォータクティクスが得意の季節で目を覚ます。未勝利勝ちから6連勝で重賞ウイナーの仲間入り。飛ぶ鳥を落とす勢いで上り詰めた。5馬身差の大楽勝だった準オープン勝ちが12月なら、続くオープン勝ちは2月。厳寒期にこそ力を発揮するタイプだ。
 それまでのパフォーマンスを思えば、重賞を勝ってからの近3戦は、ふがいない結果に終わっている。「それでも、前走は最近ではよく踏ん張ってくれた。ずっと雰囲気は悪くないから。でも、ウォーエンブレム産駒の気難しさがレースで影響しているのかな。展開が左右しますからね」と吉村助手は分析。ハナを奪えないとモロいのも気性からくるものだろう。
 ただ、ここは条件がそろった。京都のダート1800メートルはレコード勝ちを決めた舞台。「京都はベストですからね。寒い時季もいいイメージがあるし、短期放牧明けでも走る」。5戦して4勝を挙げ、負けたのは前走だけという堅実ぶりだ。
 5歳馬だが、キャリアはわずか10戦。陣営はもっと上を狙えるとみる。「無理をしていないから馬は若い。でも、どこかで壁にはぶつかるもの。ここでひと皮むければ、もっと強くなると思う。そこを越えられるかどうか。この平安Sはそんなレースじゃないでしょうか」。好走材料を追い風に輝きを取り戻す。
 「藤沢和雄調教師の一千勝を祝う会」が18日、東京都港区のホテルで約250人が出席して行われた。藤沢和師は「これからも頑張って、5頭は社台ファームに預かってもらえる馬を育てていきたい。もっと数を増やしたいけど、馬房の都合もあるだろうから」と得意のジョークを交えあいさつ。吉田照哉氏、吉田勝己氏、山本英俊氏ら生産者、馬主のほか、角居師や鹿戸雄師、武豊、骨折療養中の内田博など東西の厩舎関係者が出席し、JRA史上最速、最年少での偉業達成を祝福した。
 中山で完全復活だ!! 24日のアメリカJCC・G2(中山・芝2200メートル)に、2008年の皐月賞馬、キャプテントゥーレ(牡5歳、栗東・森厩舎)が参戦する。皐月賞後の骨折で長期休養を余儀なくされたが、昨年11月のマイルCS・GIで4着と力は衰えていない。クラシックを制したゲンのいい中山で復権にかける。一方、昨年の覇者ネヴァブション(牡7歳、美浦・伊藤正厩舎)も今回が休み明け3戦目。重賞2勝の中山コースで、2010年の好スタートを切れるか、目が離せない。

 出走するレースはいつでも“勝負駆け”だ。キャプテントゥーレの目の前にはいつも“賞金”という大きな壁がある。目標としていた有馬記念は除外。ハンデ戦や別定のG2、G3に出走となれば、他馬に比べると重い斤量を背負うことになる。「まずは賞金加算ですね。このままでは出走するレースが限られてしまいますから」と徳江助手は話す。

 鮮やかに逃げ切った一昨年の皐月賞直後に発覚した左第3手根骨骨折という重傷。復帰に約1年4か月もの時間を要しながら、輝きは失われなかった。復帰戦の関屋記念、レースの上がり33秒7という極限に近い瞬発力勝負にも4着と対応すると、続く朝日チャレンジCでは、あっさりと1番人気に応えて重賞制覇。G1ウイナーの底力は本物だった。

 しかし、天皇賞・秋では12着と見せ場のない完敗。続くマイルCSも善戦とはいえ4着に終わった。「G1の壁に跳ね返された感じですね。ただ、長い休みから無事に復帰して、重賞を取れたんだから、よしとしましょう」徳江助手の表情には充足感と悔しさが交錯する。

 年末年始に若干、調教量を減らしたが、15日の坂路52秒1―12秒2という動きを見れば仕上がりに全く不安はない。「調子に激しい上下動の少ない馬。折り合いもつくし前、前で運べますから」と徳江助手。春の訪れを前にしての始動は、はるか先に大舞台を見ているからこそ。“勝負”にきたクラシックホース。結果は自然とついてくる。
 京都メーン・平安Sに挑むダイシンオレンジは、準オープンを勝ったばかりの身。だが、京都ダート1800メートルでは6戦3勝、2着1回、3着2回。

 馬券圏内を外したことがない。矢島助手は「オープンのペースになったらなったで、速い流れの方が折り合いはつけやすい。順調だし、前走ぐらいの出来で使える。ここでどれだけやれるか、楽しみは持っています」と期待していた。
 ウォータクティクスは昨年、今回と同じ京都ダート1800メートルのアンタレスSで1分47秒8のレコード勝ち。昨秋の成績はひと息だったが、リフレッシュして巻き返しを狙う。

 「前走後は放牧に出して、冬場でも歩様の硬さはましな方。昨秋は、じんましんで取り消し後、結果が出なかったが、前走でいくらか踏ん張りが出てきた」と吉村助手は復調気配を感じ取っている。「条件は文句なしだから」と実績ある舞台で期待をかけていた。
 今週の中山メーンは伝統の古馬重賞「第51回AJC杯」。昨年、12番人気で天皇賞・春を制したマイネルキッツが格の違いを見せつける。暮れの有馬記念でも向正面から積極的に仕掛け、5着と掲示板を確保。G1ホースの底力を見せた。盾連覇に向け、10年初戦で絶好のスタートを切りたいところだ。

 今年の関東を引っ張る大将格は、この馬だ。有馬記念5着マイネルキッツが、昨春の天皇賞以来となる2つ目のG1タイトル獲得に向け、10年のスタートを切る。

 14日に行った1週前追いは、三浦(レースは松岡)を背に、ポリトラックで意欲的な併せ馬。タカラサンデー(4歳1000万)を2馬身追走。徐々に差を縮め、直線入り口で、その差は半馬身。内に入り、馬なりのまま併入。時計は6F81秒8~1F13秒6。稽古では走らない馬だが、軽快なフットワークを披露し、好調をアピールした。

 国枝師は「順調に来ているよ。しっかりした調教ができた。変わりなく状態はいい。ここまで乗り込んで来たし、今週やって仕上がるだろう」と好感触。騎乗した三浦も「手前もスムーズに替えていた。しっかりした動きで気持ちが乗っている」と語った。

 前走・有馬記念は、道中10番手から向正面で早めに仕掛ける積極的な競馬。直線でも、しぶとく粘って掲示板を確保した。師は「内容は良かった。力は出せたと思う。2走前のジャパンCが後方から行き過ぎたので、気持ちを入れていくように指示した。それが今回につながるのでは」と期待を寄せていた。

 もともと叩いて良くなるタイプ。昨春の天皇賞も年明け4戦目で制した。昨秋の京都大賞典から使われ、これが4戦目。走りごろだ。これまで戦ってきたメンバーを考えれば、ここでは負けられない。

 今後について、国枝師は「日経賞(3月27日、中山)→天皇賞・春(5月2日、京都)と決めている。ここでも、いい結果を出したい」と意気込む。さらに「この馬は、カンパニーみたいに目覚めるのでは」と大きな期待をかけている。昨年の有馬記念で引退した厩舎の看板馬マツリダゴッホに代わり、今年はマイネルキッツが、さらなる飛躍を誓う。
 キャプテントゥーレは、有馬記念は除外でレース間隔が空いた。昨年11月のマイルCS(4着)以来となるが、中間は坂路で好時計を連発。

 「いつも時計が出るタイプだけど、びっしりできている。いい意味で同じ状態と言えるんじゃないかな」と渡辺助手。2200メートルの距離は初めてだが、中山では皐月賞Vの実績がある。「ベストは2000メートルかなと思うけど、前へ行ける馬だし、チャンスはあるでしょう」と前向きに語っていた。
 「日経新春杯・G2」(17日、京都11R)
 芦毛の牝馬が淀のターフで力強く躍った。2番人気メイショウベルーガが鮮やかに差し切って、重賞初V。池添は2週連続のGタイトル奪取で、06年ファルコンS以来となる池添師との父子タッグでの重賞制覇を達成した。1番人気トップカミングが3馬身差の2着、3着には12番人気のレッドアゲートが入った。
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 狙った獲物は逃さない。重賞ハンター・池添がメイショウベルーガを駆って、淀のゴール板を先頭で突き抜けた。年が明けても、ドリームジャーニーで有馬記念を制した勢いが陰る気配はない。シンザン記念のガルボに続いて、2週連続の重賞ゲット。その手綱さばきはさえわたっている。
 末脚を信じた。迷うことなく、道中は後方2番手のポジション。「自分のペースを守って、走らせようと思った」と池添は直線勝負にかけた。3角でのゴーサインにはいつものようにズブさを見せたが、エンジンが点火すると変身。芦毛の馬体は大外から一瞬のうちにライバルをのみ込んだ。
 ラスト200メートルは独壇場。後続に3馬身の差をつける圧勝で、ベルーガに初の重賞タイトルをプレゼントした。「リズム良く走れたし、直線を向くときは“かわせる”と思っていました。抜け出す脚が速く、ソラを使っていたが強かった。大きいところを狙える馬だと思う」。充実著しい5歳牝馬に笑顔がはじける。
 06年ファルコンS(タガノバスティーユ)以来、約3年10カ月ぶりの父子タッグでの重賞奪取。その強さに開口一番、池添師は「びっくりした」と驚きを隠さない。「フワフワしていたのでどうなるかと思ったが、競馬を覚えてきている。どこかで(重賞を)獲れると思っていた」と成長した姿にほおを緩ませた。
 昨秋のエリザベス女王杯では5着。今年はさらなる飛躍を予感させる。「オーナーと相談してからですね。賞金を獲得したのでどこでも使える」と大舞台への選択肢も増えた。また1頭、強い牝馬が淀で登場した。
 「京成杯・G3」(17日、中山11R)
 急坂でのたたき合いを制した。1番人気のエイシンフラッシュが、逃げ込みを図るアドマイヤテンクウに鼻差で競り勝って重賞初制覇。横山典は16年連続となる重賞Vを決めた。次戦は未定だが、牡馬クラシック戦線へ向けて大きく夢が広がった。2着は3番人気のアドマイヤテンクウで、3着には直線で脚を伸ばした2番人気のレッドスパークルが入った。
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 寒空の下、繰り広げられた熱い戦い。中山名物の最後の急坂、横山典を背にしたエイシンフラッシュの漆黒の馬体がひと追いごとに伸びた。逃げ粘るアドマイヤテンクウを鼻差かわして、先頭でフィニッシュ。着差以上の強さを感じさせる内容で、初めての重賞挑戦で見事に勝利をつかんだ。
 11日の中山4Rでの落馬事故で、騎乗予定だった内田博が骨折。急きょ回ってきた手綱だった。横山典は「イメージ通りのいい馬だったよ」と笑顔。ただ、レースの流れはイメージとは違っていた。「行く馬がいなければ“行っちゃおう”と思っていたのに、まさか安藤さん(安藤勝=アドマイヤテンクウ)が前にいるとは」と振り返る。
 それでも、この勝利が16年連続の重賞制覇となったベテランは少しもあわてなかった。「まじめ過ぎて引っ張るのが大変だったけど、ゴーサインを出せばいつでもはじけそうな感じだった。厩舎スタッフがちゃんと調教してくれているし、ウッチー(内田博)もレースを教えてくれていたからね」。2度の勝利に導いている前任者、そして周囲への感謝を口にする。
 藤原英師も同じ思いだ。「きょうはノリに感謝。ウチの厩舎の馬のことをよく理解して乗ってくれる。それにノリを譲ってくれた、ほかの調教師の理解もあった。みんなに感謝やな」。信頼関係が実を結び、Gタイトル獲得へとつながった。
 次走は未定だが、もちろん皐月賞(4月18日・中山)、ダービー(5月30日・東京)が大きな目標になる。「まだまだ成長途上。しっかりしてくれば、ラストももっと力強くなるはず」と指揮官は伸びしろを強調。春にはさらに成長した姿で、牡馬クラシックの舞台に立っているはずだ。
 ◆第57回日経新春杯・G2(17日、京都競馬場、芝2400メートル、良) また、池添だ!! 2番人気のメイショウベルーガが大外から突き抜け、重賞初制覇。騎乗した池添謙一騎手(30)は10日のシンザン記念(ガルボ)に続く2週連続重賞勝ち。父・池添兼雄調教師(57)の管理馬で、3年10か月ぶりの親子コンビでのタイトル奪取となった。2着は1番人気のトップカミング、3着は12頭中最低人気の関東馬レッドアゲートだった。

 4コーナー手前の下り坂で一気に加速をつけたメイショウベルーガを、池添は直線で大外へ持ち出す。他馬とはまるで違う手応えに、勝利を確信しながらの左ステッキ。それに呼応した5歳牝馬は芦毛の馬体を弾ませて、最大の持ち味である末脚を爆発させた。

 ラスト1ハロン地点で先頭に立つと、牡馬勢にも抵抗できる馬はいない。メンバー最速の上がり34秒9の切れ味で、あっという間に2着トップカミングに3馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。「道中のリズムが良かったし、直線を向く時に全部かわせると思いました」と絶好調男は、今年重賞2勝目を笑顔で振り返った。

 昨年末にドリームジャーニーで有馬記念を制覇した勢いは止まらない。「いい馬に乗せてもらっていますからね」と謙虚な姿勢を崩さないが、今年はすでに8勝。先週のシンザン記念に続く2週連続の重賞Vと手綱がさえわたっている。

 父・兼雄調教師の管理馬であるベルーガでの勝利は格別の味だ。06年のファルコンS(タガノバスティーユ)以来3年10か月ぶり、5度目となる池添親子コンビでのJRAタイトル奪取となった。「父の管理馬で久々に重賞が獲れましたからね」と鞍上が言えば、指揮官も「格別? そうですね。この馬もどこかで重賞をとれると思っていたから」と喜びにひたる。

 次走はオーナーサイドと協議されるが、牡馬相手の快勝に、大目標として天皇賞・春への参戦も視野に入ってくる。「賞金を加算できたので、どこでも使える」と父が言えば、「大きいところを狙える馬だと思っています」と息子も呼応。本格化したメイショウベルーガなら、コンビでのG1制覇も夢ではない。

 ◆メイショウベルーガ 父フレンチデピュティ、母パパゴ(父サドラーズウェルズ)。牝5歳の芦毛。戦績25戦6勝。総収得賞金1億7903万6000円。重賞初勝利。生産者・北海道浦河町の三嶋牧場。馬主・松本好雄氏。栗東・池添兼雄厩舎所属。

 [優勝馬メモ]
◆親子タッグ 調教師と騎手が、親子で重賞を制したのは、09年報知杯FR(ワンカラット)の藤岡健一調教師&佑介騎手以来。
◆牝馬 09年のテイエムプリキュアに続き連勝。過去61年タイカン、65年オーヒメ、93年エルカーサリバー、97年メジロランバダがV。
◆9連敗 トップハンデのサンライズマックス、インティライミはそれぞれ4、11着。01年ステイゴールドが勝ったのを最後に9連敗。