Plenitude/Ginga Trio | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Ginga TrioBrazilの幻のPiano Trioといわれているらしいのだが、おそらく、そう崇められている同国の3人組は少なくはないだろう。しかし、まず、このジャケットの雰囲気に少し惹かれるものがあったりして例によって手を出して聴いてみると、これが中々掘り出し物であったのだ。Ginga TrioはピアノにBenéことBenedito Dantas ChiaradiaにベースのNelsinhoこと Nelson Rui Gonçalves Xavier de Aquino、ドラムスにはGuilhermeことAntônio Guilherme de Souza Francoという3人組。本作は彼らのデビュー・アルバムということになるが、おそらくアルバムはこの一枚しかリリースされていないようだ。彼らもまた素晴らしいアルバム一枚残して消滅してしまった幻のPino Trioのひとつなのであった。ドラムスのGuilhermeは Sao Paulo生まれで後に米国に渡りThiago De MelloのBig Bandに在籍してMc Coy TynerやBuster Williams、Archie Shepp、Don Pullen、Lonnie Liston SmithやAzar Lawrenceらと共演したGuilherme Francoと同一人物なのかもしれないが確証はない。ピアノのBenedito Dantasは66年にリリースされた、これまた幻のBoliche Trio唯一のアルバム『Boliche Trio』の楽曲クレジットにその名が残されており、本作の“Plenitude”の演奏も残されているが、Organ主体のJazz Bossaを聴かせてくれているこのTrioで実際に演奏に参加していたのだろうか?いずれにしてもGinga Trioの唯一残したアルバムは中々の出来であることには間違いない。リズム隊は変幻自在にRhythm Changeを披露するが躍動感に満ちており、Benéのキレの良いピアノや誰が演奏しているのかわからないが浮遊するFluteも素晴らしい。そしてTom JobimCarlos LyraにまじえてCaetano VelosoTucaのセンス抜群のCoverも効かせてくれる反面、João Do ValeDorival Caymmiの作品も取り上げ、懐の深さも感じさせてくれる。そして“Ginga”など自作曲もCoverに負けず劣らずの出来であるところが素晴らしい。

 

 『Plenitude』はGinga Trio65年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目タイトル曲“Plenitude”はいきなり低音部でゴリゴリ弾くピアノに「オー、オー」と雄たけびを上げる男性Chorusに耳を奪われる。メンバーのBenéことBenedito Dantasの作品。

L.Helena”はLyricalなピアノのフレーズからJazz Bossaに展開する。Fluteもイイ感じ。BenéとSérgio Bussabの共作。

続いてもTribalなRhythmにのって浮遊するFluteが素晴らしいJoão Do ValeJosé Cândidoの“Carcará”。

Tom Jobimの名曲“Inútil Paisagem”は冒頭のArcoも雰囲気タップリ。

Carlos Lyraの“Maria Moita”は抒情的なOpeningから躍動感に満ちた展開になるところが素晴らしい。キレの良いピアノも実に気持ち良い。

Caetano Velosoの“De Manhã”はこれまた優美なFluteがイイ感じでユッタリしたRhythmにのって極楽気分。

B面1曲目は激カッコイイベースラインから始まる“Ginga”。勿論メンバーのオリジナルであり、引き締まった心地良いRhythmにのってBenéのピアノとFluteが躍動する。

Dorival Caymmiの“Das Rosas”は素朴なChorusがイイ感じの詩情に満ちたJazz Bossaに仕上がっている。

BluesyなJazz BossaBlusão”は大人の渋さが最高。

Elis Reginaの名唱でも知られるMarcos ValleとPaulo Sérgio Valleの“Preciso Aprender A Ser Só”は愛らしいRomanticなBalladに仕上げられ、思わずウットリしてしまう。

Yemanjá”は女性ギタリストTucaことValeniza Zagni da Silvaの作品。浮遊するFlute気持ち良すぎのナンバー。

アルバム最後を飾るのは作者であるBenéの典雅なピアノ独奏Jovem”。

(Hit-C Fiore)