Ciclo/Maria Bethânia | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 昨年もBrazilの新しい才能が次々と独創的な新作を発表する中、Flávio VenturiniJards MacaléMaria Bethâniaといったベテラン勢が素晴らしい作品を届けてくれた。惜しくも2019年の新譜ベスト10にこそ選ばなかったがMariaの『A Menina dos Meus Olhos』も極上の出来であったのはいうまでもない。Maria BethâniaVocalの魅力は自分が年を重ねるにつれてより一層身体に沁みわたるように増していくのであった。若き日のMariaも勿論大好きだし、新たな才能に満ちたSongwriterの作品を歌いながらBahia生まれのIdentityが反映された70年代のアルバムも最高なのであるが、80年代円熟味を増したMariaのVocalがまた素晴らしい。HuskyAltoの歌声と抜群の表現力が醸し出す一種独特の雰囲気が魅力的な歌い手なのであるが、イイ感じに余裕が出て貫録を増してきた、この時代の作品はいつ聴いても聴きやすく、どんな気分の時でもすんなり入ってきて身体の芯まで沁みわたる感じだ。特に本作は肩の力が抜けたような、それでいて芳醇な味わいが気に入っていて、もしかしたらMariaのアルバムの中で一番聴いた回数が多いかもしれない名作だ。例によって抜群の選曲センスで選び抜かれた楽曲をAcoustic GuitarピアノなどAcoustic楽器を中心にしたSimpleな演奏をバックに歌い上げるところが気に入っている。中でも兄のCaetano Velosoが提供したA面B面1曲目が素晴らしく、それだけでもこのアルバムを買う価値はあるだろう。勿論、他の曲も最高で、盟友Gilberto GilにMariaお気に入りのAngela Ro RoGonzaguinhaに加えてAry BarrosoLupicínio Rodriguesといった大御所の作品もMaroaが見事な表現力で歌い、聴いている方はスッカリMariaの世界に惹きこまれてしまうのであった。80年代という過剰な時代に、よくぞこういったSimpleで楽曲の良さをひき立てるようなサウンドで勝負してくれたものだ。動もすれば、その感情表現の豊かさゆえに、時に情熱的に歌うところが聴く時の気分や体力を選ぶ可能性もあるMariaの作品もあるが、本作は構えることなく聴ける大好きなアルバムである。

 

 『Ciclo』はMaria Bethânia83年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はCaetano Veloso作“Motriz”。なんて最高なんだろう。Acoustic GuitarピアノAccordionHarpPercussionが生み出す極上のEnsembleにのって歌うMariaのVocalがグッときますな。

Gal Costaが参加した“Filosofia Pura”は陽気なSambaTropicaliaを支えた二人のBaianaの共演である。Roberto Mendes作。

才媛Angela Ro Ro作の“Fogueira”。ゆったりとしたRhythmにのって優美なメロディを歌い上げるMariaが良い。

Gilberto Gil作の“A Notícia”は前半はJosé Maria Rochaが弾くピアノをバックに、Mariaがしっとりと歌い上げるStringsも控えめに、Simpleな演奏ゆえにMariaのVocalが深く沁みいる。

Toninho Horta素晴らしいAcoustic Guitarのみの演奏でMariaが圧巻の歌唱で聴かせる“Sonhei Que Estava Em PortugalAnda Luzia

”。

タイトル曲“Ciclo”はCaetano Veloso作の沁みまくるBallad。なんとToninhoとCaetanoの二人がAcoustic Guitarで素晴らしい伴奏を付けている。

Ary Barroso作の“Rio De Janeiro (Isto É O Meu Brasil)”は高揚感に満ちたSamba。に仕上がっているがあっという間に終わってしまう。

Gonzaguinha作の“Pra Fazer O Sol Adormecer”。Accordionエレピがイイ味を出している甘く切ないナンバー。

作曲家Lupicínio Rodrigues作の“Ela Disse-me Assim (Vá Embora)”。ピアノとギターをバックにMariaの芳醇なVocalは抗しがたい魅力に満ちている。

Vinho”はGrupo ManifestoVox PopuliGuto Graça Mello作の魅惑の旋律を持ったナンバー。

アルバム最後を飾るのはRoberto Mendes作の“Lua”。ピアノとStringsをバックに歌うBallad。すぐに終わってしまうゆえに余韻がたまらない。

Motriz/Maria Bethânia

(Hit-C Fiore)