
Chris Speddingを贔屓にしている者として、本盤はようやく手に入れた甲斐があったSpedding参加作であった。いや、Spedding抜きにしても本盤は最高にお気に入りの出来であった。とにかくMike Gibbsの70年代のアルバムはどれも素晴らしい作品であるのは間違いない。現在Zimbabweとして知られる、当時英国領であったSouthern Rhodesiaで生まれたMike GibbsはBerkleeで学び60年代に英国にやってきた。Graham CollierやMike Westbrookといった英国Jazz界の才能溢れる革新者たちと共演し70年には最初のリーダー作をDeramからリリースしている。Gary BurtonとのCllaborationで知られるGibbsであるが、彼自身の70年代の優れたリーダー作には英国Jazz界の俊英たちが多数参加している。Trombone奏者であるGibbsのOrchestral Jazzは独特の構成美を保ちながら、そういった名手たちに支えられBritish Jazzらしい繊細で奥行きのある数々の名作を生み出している。Big Band Jazzが苦手であった自分はMike Gibbsの作品に接して考え方が大幅に変わった。独特の和声感覚とRhythmアプローチ、ソリストの名演を生みだすArrangementsの妙、どれもが素晴らしい。同じく大好きなMingusやClarke-BolandのBig Bandとは異なる魅力に満ちている。75年の最高傑作『The Only Chrome-Waterfall Orchestra』がGibbsの頂点ともいえるが、本盤でのシンプルながらスリリングでEmotionalな熱演もジャンルの壁を飛び越えて楽しめるものになっている。
『Just Ahead』はMike Gibbs Bandの72年録音のLive盤2枚組。
1曲目はKeith Jarrettの“Grow Your Own”。SpeddingのソロがBrilliantなのは言うまでもない。珍しく速弾きまでキメている。が、Brass隊のみになった(これも気持ち良い)後に炸裂するJohn Taylorの、なんとエレピ・ソロとFrank RicottiのVibraphoneソロも素晴らしい。ここでのTaylorのエレピでのFunkyなプレイは聴きものである。Roy Babbingtonのうねりまくるベースも最高。
一瞬Soft Machineかと思わせる浮遊感漂うBabbingtonのベースとエレピのイントロの“Three”。Sax奏者Ray Warleighの吹きっぷりも良し。
SpeddingのLaid Backしたセンス抜群のSlideが冴えまくる“Country Roads”。それにしても、ここでのSpeddingの泥臭いSlideソロは最高Dave MacRaeのエレピ・ソロも負けじといった感じでLazyなBlues感覚が素晴らし過ぎるナンバーに仕上げている。
幻想的なエレピから始まる“Mother Of The Dead Man”はCarla Bleyの“Genuine Tong Funeral”からの抜粋。Henry LowtherとKenny WheelerのTrumpetソロが素晴らしい。浮遊感に満ちたサウンドがたまらない。
“Just A Head”はGibbsのオリジナル。Alan SkidmoreのJohn Coltraneが乗り移ったかのようなTenorが炸裂。
続いてもGibbs作の“Fanfare”。仰々しいイントロに少々興ざめではある。大好きなSax奏者Stan Sulzmannのソロが短いながら聴けて満足とすべしか。
“Nowhere”はPercussionとエレピが作り出す神秘的な空間に迷い込んだと思ったら、John Marshall先生のドラム・ソロが乱入。後半はBrassが壮大なスケールを描き出すかと思ったらアッサリ終わってしまう。
Carla Bleyの名曲“Sing Me Softly Of The Blues”ではStan Salzmannの今度こそ長尺でのソロが聴ける。期待通りの素晴らしい吹きっぷりで魅了してくれるこの人はセンス抜群で、Skidmoreに負けず劣らずの名演だ。Ricottiのソロ、Speddingのバッキングも心地良い。
最後をシメるのはGibbs作の“So Long Gone”。Chris PyneのTromboneがFeatureされる中、Spedding先生はErectric Sitarをビョンビョン弾いておりやす。それにしてもビックリもぐら(笑)なDave MacRaeのエレピ・ソロは圧巻。最後は怒涛のAfro祭りで最高っす。
(Hit-C Fiore)