1976/Kenny Wheeler Quintet | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

BLACK CHERRY

  Kenny Wheelerはお気に入りのMusicianの1人。カナダのトロントで生まれてイギリスに渡り活躍してBritish Jazz好きの方々にも馴染みの深い人である。そのTrumpetFlugelhornでの映像を喚起させる奥行きの深いプレイもさることながら、Composerとしても素晴らしい才能の持ち主である。この人の奥深さは相当なもので60年代にFree Iimprovisationの世界でEvan ParkerやDerek Baileyとも共演したりしている。あるいはECM系の耽美派みたいなイメージをお持ちの方もいるだろう。この人は御存知のとおりJazzのフィールドでの活躍が殆どだが、イギリスではかなり様々なフィールドの音楽に関わっていたりする。大好きなGeorgie FameNorma Winston(WheelerはNormaとJohn Taylorと一緒にAzimuthというグループを結成している)のアルバムや、NucleusのアルバムにWheelerは参加している。Blossom DearieのUKフォンタナ盤でも、その名前を目にすることができる。この人がTrumpetやFlugelhornで参加しているアルバムはつい買ってしまうくらい気に入っているのだ。このアルバム『1976』ではAggressiveなKenny Wheelerのプレイが堪能できる。また、エレピの導入は、なんとなくFreddie HubbardのCTI~CBS時代を思わせる。この頃のHubberdは硬派なJazzファンから相当反発を食らったらしい。けれど、ここで聴けるKenny Wheeler Quintetの音楽は、ありきたりのフュージョンとは一線を画すものがある。


 『1976』はカナダの放送局に残された録音の発掘盤。すべてオリジナル作品で全6曲が収録されている。70年代前半のBill Evans Trioに参加していたMarty Morellのドラムスにカナダで活躍するベーシストDave Young、このコンビが中々良い。鍵盤はGary Williamson。Tenor SaxのArt Ellefsonは大好きなRonnie RossAllan Ganley58年に結成したThe Jazz Makers(最高)のメンバー。Garry Williamsonの弾くFender Rhodesが、この時代らしい、イイ味を出している。

ここでのWheelerのプレイはECMでの柔らかく包み込むような叙情的な演奏からは考えられない。一般に、Free以外での、例えば中期ECM以降のWheelerの音楽は芸術的な建築物を思わせる独自の美意識に基づいた入念に作りこまれた音楽というイメージもあるが、ここでの音楽は案外ラフなスケッチのような趣を持っている。かといえば、60年代のLondonでのFreeAvant-Gardeでもない。しかし、この人の持つ独特の雰囲気、世界観が作り出す音像は、やはり幻想的で心地良いものがある。英国人ではないにもかかわらず、英国的な、曇り空のようなベールに包まれたような雰囲気を漂わせるところにWheelerの魅力があらわれている。また、Jam Session風に演奏したとしても、どこか気品のようなものを感じてしまう。

○Kenny Wheelerの曲を演奏するGeorge Gruntz Big Band。Paul Motianと組んだKenny Wheeler の溌剌としたソロが素晴らしい→Everybody's Song But My Own/George Gruntz Big Band

(Hit-C Fiore)