Portraits/Graham Collier Music | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

$BLACK CHERRY
 今年もまた、幾人もの大好きなMusicianが、惜しまれつつ現世に別れを告げて旅立っていった。中でもGil-Scott HeronBert Janschは、もしかして来日してくれるかも?なんて期待を持っていただけにショックであった。11月にMichael GarrickGordon Beckという英国を代表する名ピアニストが亡くなったことも残念でならない。結局、一度も生演奏を観ることができなかったかったことは悔やんでも悔やみきれない(Garrickに関しては、近々書く予定であったが、あらためてその功績を振り返ってみたいと思う)。そして尊敬するGraham CollierRussell Garciaという英米のJazz界の巨頭がいなくなってしまった喪失感。偉大なるComposerでありBandleaderであり教育者でもあった彼らの功績は、日本での知名度とは裏腹に、世界中から惜しみなく賛辞を与えられ続けるだろう。
 Graham Collierの名前を初めて知ったのはKarl Jenkinsつながりである。Oboe奏者鍵盤奏者であるJenkinsはベース奏者Graham Collierのグループに参加後、Nucleus、そしてSoft Machine加入と、ドラマーJohn Marshallと同じ歩みを辿っている。2人が参加しているThe Graham Collier Septetの最初のアルバムである67年作『Deep Dark Blue Centre』では、さまざまなModeを駆使し(Natural Minor Scaleのヨナ抜き日本調のPentatonic Modeが面白い)、Collierの独特のOrchestratinの中でメンバーが有機的に絡み合いImproviseしていくのが個性的であった。次作のGraham Collier Sextet名義での『Down Another Road』ではJenkinsが大活躍で、特にOboeでのプレイは英国Jazz独特の色彩感が感じられる。JenkinsとMarshall脱退後の70年作『Songs For My Father』、そして『Mosaics』では、さらなる革新性を増しながらCollierの追及する音楽は、英国らしい独自性を強めていく。上述の2人だけでなくHarry BeckettKenny WheelerNick EvansStan SulzmannAlan WakemanMike Gibbs、ピアニストのJohn TaylorGilgameshNational Healthに加入するギタリストPhilip LeeといったBritish Jazz~Rockの歴史を彩ってきた名手たちがCollierと作り上げた素晴らしい作品は永遠に輝き続けるだろう。

 『Portraits』はGraham Collier Musicの73年にリリースされたアルバム。メンバーは前作『Mosaics』から鍵盤奏者Geoff CastleとドラムスのJohn Webbが残った。管楽器奏者として新しく加わったのがFlugelhorn奏者のDick PearceAlto Sax奏者のPeter Hurt。そしてギターEd Speight。大好きなMonty Python71年に公開された映画『And Now for Something Completely Differentモンティ・パイソン・アンド・ナウ)』と同じタイトルの2つのパートから成る組曲とアルバム・タイトル曲の全3曲すべてCollierの作品。Geoff Castleは後にNucleusとの活動でも知られるが、Philip(Phil) LeeやDave SheenRon MatthewsonらとPazを結成する。また、ギターのSpeightは後にIan Dury and the Blockheadsとの活動でも知られるが、Kilburn and the High Roadsの結成時のメンバーでもある。
アルバムは英国の田園風景を想わせるようなイントロの“And Now for Something Completely Different Part 1”で幕をあける。ギターとFlugelhornとピアノが穏やかに奏でる旋律が素晴らしい。ギターの爪弾きからアップテンポModalなThemeに展開すると、Speightのギター・ソロ、そしてCastleのピアノのみになり6拍子になったかとおもうと全員がSwingし始める。ピアノ・ソロ、そして静寂が訪れたかと思うとWebbのドラム・ソロが始まる。そして再度の牧歌調の展開にのってピアノがリリカルなメロディを奏で、アップテンポのThemaが繰り返され曲が終わったかにみせて、16ビートのNucleus的なJazz Rockが始まる。Hurtのソロ、そしてPearceのソロが続く。
Speightのギターの爪弾きから始まる“And Now for Something Completely Different Part 2”はやはり英国の牧歌的な雰囲気漂うナンバー。Speightのソロ、そしてピアノとFlugelhornの織り成すPastoralなEnsembleが夢見心地。アップテンポに展開してHurtのソロが炸裂するとFreeな様相から一転して1曲目の穏やかなThemeに戻りエンディングを迎える。
アルバム・タイトル曲“Portraits”はCollierが新加入のFlugelhorn奏者Pearceの為に書いたという楽曲。その通りFlugelhornとAlto Saxが優美なThemeを奏でPearceが素晴らしいソロで魅了する。
Collier's website→◎Graham Collier Music

 故人のご冥福を心よりお祈りいたします。

(Hit-C Fiore)