Elastic Rock/Nucleus | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

BLACK CHERRY
 60
年代後半欧州Jazzを聴くきっかけとなったのはDon RendallIan Carrの双頭グループやAlan Skidomoreらの、Miles DavisやJohn Coltraneの影響を受けながらも英国独自の音楽を確立してきた先進的なMusician達を知ったことだ。アメリカのJazzは50年代のハード・バップや60年代のモードフリーにより様々な形を変えながらも全盛時代を築いていった。それに対して伝統あるクラシックトラッド現代音楽や、植民地や周辺諸国の民族音楽の基盤があったヨーロッパの先鋭的な音楽家がアメリカのジャズのモードやフリーの影響を受けてヨーロッパ独特のJAZZを開花させていく。最初は模倣から始まったが、それらが欧州各地で独自のJazzとして進化していくのが面白い。結果として、イギリスやドイツ、フランス、イタリア、オランダ等各国独自の音楽的背景国民性文化を反映した個性的な音楽再構築されていて非常に興味深い作品群が誕生した(東欧や北欧の各国も同様)。 

 英国ではJazzとRockの交流も盛んであり、ユニオンの問題もあって、MusicianはジャンルにとらわれることなくFlexibleに活動してきた。

Milesに影響を受けたTrumpeterのIan CarrもDon Rendallとの双頭Quintetなどで英国人らしいJazzを追求してきた。そんなCarがよりElectricなJazzを目指そうと結成したのがNucluusである。Carは、伝説のEmCee Fiveで活動後、Rendallと組むことになるのだが、その後に結成したNucleusといい、英国人のIdentityを追求したJazzを目指してきたように思われる。

Nucleusは後にSoft Machineに加入してリーダーになるKarl Jenkinsに、後に同じくSoftsに参加するJohn Marshallも参加。BassistはTubby HaysThe Jazz CouriersにいたJeff Clyne。Alexis KornerとやっていたBrian Smithも参加した。そしてギタリストとして女泣かせのChris Speddingが参加したところが、このグループのユニークなところだ。

 

 『Elastic Rock』は70年に発表されたNucleusのデビュー・アルバム。JazzやRock、民族音楽が有機的に絡み合いながら各メンバーの個性がぶつかり合って英国人にしか出せない繊細でCoolな音楽を作り出している。特にKarl JenkinsのOboeとChris SpeddingのRockともJazzともつかない摩訶不思議な中庸のギターが、英国詩情をかもし出す。インプロも躍動的でありながら、どこか醒めた感じが英国っぽい。Jeff ClyneとJohnMarshallのリズム隊が時にFunkyになっても決して度がすぎない。浮遊感のあるTrumpetと鍵盤とOboeが静かに曇り空に舞い上がっていくかのようだ。テクニカルではあるが、決して技巧で押し通す音数や白熱のアドリブで圧倒するのではなく、独特の空気感とTrip感覚がくせになるワビサビの世界ともいえる。70年代のNucleusのアルバムはどれも素晴らしい。

 

Ian Carr + Nucleus Website

(Hit-C Fiore)