「揚羽蝶繍姿」ー吉右衛門丈の役々
揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)揚羽蝶とは、中村吉右衛門家、「播磨屋」の紋です。吉右衛門丈の当たり役を集め、次代に繋ぐべき役者たちが演じました。〈籠釣瓶花街酔醒〉新吉原仲の町、見染めの場。吉右衛門丈の佐野次郎左衛門は、何とも言えない愛嬌がありました。(吉右衛門丈の舞台姿を、ポスターなどの写真で振り返りつつ⋅⋅⋅)今回は松本幸四郎丈が、よく倣って演じています。次郎左衛門の窮地を救うのは、なぜか登場した呉服屋重兵衛、中村種之助さんが演じます。これも吉右衛門丈の当たり役。〈鈴ヶ森〉吉右衛門丈の幡随院長兵衛は、器の大きさと温かみがあり、忘れがたい役。今回は中村錦之助丈が演じます。吉右衛門丈から習った役だそう。台詞にも、「近頃では吉右衛門の長兵衛がよく知られている」、ということを織り込んでいました。白井権八は、中村歌昇さん。吉右衛門丈と同じ「播磨屋」として、弟の種之助さんと共に、多くの教えを受けています。〈熊谷陣屋〉吉右衛門丈の熊谷直実、何度も拝見しました。生涯をかけて取り組み、深めてこられたお役。今回は短い場面ではありますが、吉右衛門丈の志を継ぐ松本幸四郎丈が力演。藤の方は中村莟玉さん、熊谷妻相模は大谷廣松さん。〈播磨潟だんまり〉典侍の局⋅⋅⋅中村児太郎新中納言知盛⋅⋅⋅中村鷹之資一條大蔵長成⋅⋅⋅中村種之助奴知恵内⋅⋅⋅大谷廣太郎佐々木盛綱⋅⋅⋅市川染五郎⋅⋅⋅の若手による一幕。泉下の吉右衛門丈は、どうご覧になったでしょう。一番若い染五郎さんは、これまでに、吉右衛門丈から直接教えを受けたことは、ないかもしれません。ですが、父である幸四郎丈を通して、吉右衛門丈の役々を伝承していく立場。