問題は2点目なのです。私が見て愕然とさせられて、

サッカーにピックプレーを組み込むべきだと改めて思わせたのは。
 
再び岩清水選手を振り切ったロイド選手が、
ジョンストン選手のヒールキックのこぼれ球を拾ってゴールとなったのですが、
問題はその前。
 
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動画での確認はFIFAのHPで。
FIFA HIGHLIGHT

ヒールキックの時点で、なでしこの選手は見事にマークを外されまくり。アメリカの策に嵌ったなでしこ選手が、前を取られ、無力化されていました。
 
ここでアメリカンフットボールやバスケットでよく見かけるピックプレー(バスケットではスクリーンプレーともいう)の基本パターンが使われています。
ピックプレーとは、1-2/6で紹介したとおり、守備選手同士を衝突させたり、
静止している攻撃選手が守備選手をブロックするプレーです。
 
結果論ですが、アメリカ相手にタイトなマンツーマンでカバーしようとしたのは
失敗だったと思います。
ピックプレーが最も掛かりやすいディフェンスだからです。
このディフェンスをするならば、
時と場合に依って、タイトに付いているだけでなく、ちょっと外しておくとか、
マークマンをチェンジする準備をしておくとかが必要なのです。
が、なでしこ各選手には素養が乏しく、
そのような事前練習・なでしこリーグでの経験も無かったように思えます。
 
結果ジョンストン選手とヒース選手に付いていた大儀見選手と有吉選手が、
ピックプレーに教科書通りに嵌ってしまった。
ジョンストン選手は大儀見選手を約2m振り切って、
フリーでヒールキックを行っています。
このプレーでは特にヒース選手のブロックが効いていましたし、
その後のポジショニングも有吉選手を完璧に押さえ、
すばらしいとしか言えない状況を作っています。
 
なお、このプレーでアメリカ代表はあちこちでピックプレーを使おうとした形跡があります。
①得点したロイド選手に振り切られた岩清水選手も、
 プレーが始まる前に川澄選手と交差し若干の混乱を招いている。
②宇津木選手は1点目同様ピックプレーで引っかけられようとしているが、
 今度はモーガン選手の単純なハンドオフで振り切られている。
 
1点目、2点目ともに、記事によると一夜漬けだったそうですが、
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2015/07/17/kiji/K20150717010753050.html
アメリカの各選手が普段からアメフトやバスケに触れて、
ピックプレーに親しんでいたから一夜漬けでも本番で使えるのだと思います。
 
もっと言うと、サッカーはブロッカーへの規制がルール上甘い。
また、実質審判1人で20人近くを見ているので、
反則まがいのブロックやホールディングなども見逃され易い。
厳しいルールと審判団の中でプレーするNFL・NBAに親しんでいる
アメリカのコーチ陣からすれば、サッカーの環境は楽勝で、
もっと深く掘り下げることだって可能でしょう。
 
今回の敗戦を糧に、なでしこもピックプレーの理解を深めて欲しいものです。
特に宮間選手がいるのですから、正確なキックとピックプレーを組み合わせれば、色々出来るのではないかと思います。
オリンピック予選や本戦で、今度はオフェンスでピックプレーを使って得点を上げてもらいたいものです。

しかし、あれから3ヶ月以上経ったのに、東アジア杯やなでしこリーグのセットプレーにピックプレーが見られない。
オリンピック予選やリオの本番で大丈夫か?と思う訳です。
 
嘆いているだけでは仕方ないので、今後しばらくは、なでしこJAPANや各国代表の国際試合、なでしこリーグの(といってもTV放送のある試合だけになります)のセットプレーの戦略をコーナーキックを中心に分析していきたいと思います。
 
以上です。
 
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目次 1.概要(アメブロ版)

 

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