たまに行く量販店で、ミリタリー物の隅っこで縦てて置かれていた
キットでしたが、何か訴求してくるものがありまして、価格につい
ても1000円少々と安かったので購入してしまいました。
オリーブドラブ系の塗料が2缶あったので、単色ですが全面塗装し
シートなど、一部のパーツは筆で塗り分けています。
茶色と黄土色(?)で汚しのブラッシングをしていますが、実物よ
りもかなり汚しが薄く見えています。
ヘッドライトは指定色の白で筆塗り、水色で陰影っぽくしてみました。
ウィンカーは銀を下地として、クリアーオレンジで仕上げています。
タイヤとホイールはもっと汚さないといけないみたいですね。
TOWの照準器は、MS用に用意している高い反射率のシールを貼付。
全長10cm程の小さい車両ですが、予備を含めてTOW3発搭載と
いうことは、3両程度の装甲車両を撃破する可能性があるんですね。
戦車や自走砲、航空機や、最近はドローンがクローズアップされてい
る昨今ですが、こういう信頼性の高い「小さな兵器」は戦場では将兵
から絶大な支持を得るものです。
その昔、米陸軍のアイゼンハワーが勝利に貢献した兵器について語っ
ていました。 いくつか説があるものの「バズーカ」「ジープ」「C
47輸送機」が筆頭にあがるそうです。 核兵器は特殊すぎ・・・。
このジープの系統に分類されるM151の小さな車体に、現代版バズ
ーカともいえるTOW対戦車ミサイルを装備。
発射操作のポジションはこういう感じになります。
飛翔体の後方からワイヤーが2本伸びている様子がよくわかります。
翼も半開状態の一瞬を捉えた写真のようですね。
模型を見る限り、フロントウィンドを立てた状態ではミサイルは撃てな
いように感じるのですが、この車体も微妙に砲口を右側にずらしてます。
TOWは制式名称をBGM-71と言い、車両搭載型だけでなく、対戦
車ヘリコプターなどにも搭載され、一応は歩兵運搬式のランチャーもあ
ります。 略称であるTOWの意味は・・・
Tube‐launched 、Optically‐tracked 、Wire‐guided
筒発射式 、 光学追跡式 、 有線誘導式
の頭文字からです。
最近活躍中の歩兵戦闘車両M2ブラッドレーにも搭載されています。
最新式のTOWは無線誘導式を導入されており、既に「W」ではない。
またいわゆる撃ちっ放し能力付与も計画されていて、発射すれば兵士が
操作しなくても良い形式が考えられているようです。
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U共和国への、R帝国の無道な侵略戦争が始まって2年。
低く暗い曇り空の下、大地を凍らせる程の寒気の中で、陸戦の要衝、要
塞都市アウディウカへ、R帝国の何十回目かの無策な攻撃が始まった。
一般市民を強制的に徴兵し、にわか仕立てで兵士にしただけの「精鋭」
を乗せた8台もの装甲兵員輸送車BMP‐2は、先陣を切る2両のT‐
90主力戦車の後方から、単縦陣で要塞外縁へと接近する。
が、まだ3kmの距離がある。
T‐90の速度が、進軍速度から戦闘速度へと上がる。
追随するBMPの中は暗く狭く、エンジン音だけがうるさかった。
凍結した地面からの跳ね返りの振動は、ほとんど訓練を積んでいない、
にわか仕立ての精鋭達の体力を奪う。
皆表情は無く、蒼白で、誰も何もしゃべらない。
かなりの遠距離だが先頭のT‐90が発砲を開始する。
125mmの主砲が榴弾と思しき主砲弾をアウディウカ外縁のU軍陣地
帯に叩き込む。 凍った地面がめくれ上がるように吹き飛ぶ。
続いて2両目のT‐90も発砲。 轟音と共にU軍陣地帯の一部が吹き
飛ぶ。 戦車の発砲は直接敵兵を倒す為ではなく、火力で圧力をかけて
自由な戦闘行動=接近に対する反撃をさせない為の攻撃だ。
発砲しつつ更に300m程前進した頃に、BMPの30mm機関砲も火
を噴きはじめたが、そこにU軍の数機のFirstPersonViewドローンが
襲い掛かる。
前線でのFPVは大きく分けて、使い捨ての自爆型と、大型で偵察が主
任務の汎用型がある。 まずは使い捨てのFPVが隊列をかき乱す。
更に、後方に控えた大型FPVからの映像を元に、アウディウカ後方に
配置されている砲撃部隊が座標を絞り込んでいく。
RPGの弾頭を抱えた自爆型FPVの出現に算を乱したT‐90が予定
侵攻ルートを左に外れた途端、足元が大爆発を起こす。 地雷だ。
足元をすくわれ、キャタピラを切断された先頭のT‐90は、砲塔だけ
をアウディウカの方向へ指向する。
キューポラから身を乗り出した車長がそこに装備された機関銃で、邪魔
者扱いするには恐ろしすぎるFPVドローンを撃墜しようと試みる。
FPVドローンのカメラがそのT‐90を捉えた時、ドローンに向け数発
を発砲した車長が突然のけ反り、そのまま吸い込まれるようにキューポ
ラの中に崩れ落ちる。 爆発の破片か、凄腕のスナイパーか、味方の誤
射かもしれないが、とにかく好機と見たFPVドローンが突撃。
曲芸のような急降下機動で開いたキューポラを狙う。 しかしわずかに
逸れた機体は砲塔上面に激突。 FPVに固定された簡単な針金式の電
気信管がRPGの弾頭を炸裂させる。
砲塔がもうもうとした爆煙に包まれる。 数秒を経ず車体の各所から白
煙が噴き出す。 生き残った乗員であろう者の手が、白煙を噴き出すキ
ューポラの中から外側を掴んだ瞬間、白煙は一瞬で炎に変わり、直後に
は豪炎と化す。
ナンバーは比較的新しいT‐90とは言え、その大元はT‐72の改良型
であり、車体を低くするために砲塔下に弾薬を搭載する弱点もそのまま
引き継いでいる。
炎に包まれた分離装薬式の装薬が一気に誘爆する。
最新のT‐90の砲塔は轟音と共に空高く吹き飛び、たっぷり5秒を数
えてから砲身を下にして地面に落ちた。
不運な先頭車が袋叩きに会っている横を、進軍する車列が更に前へと急
いで前進を続ける。
だがT‐90の2号車を先頭にして進めたのもそこから200mだけで、
そこで2号車も地雷に引っ掛かった。 2号車の後方で、地雷怖さに渋
滞を起こしたBMPは、U軍陣地まで2km以上もあるその地点で歩兵
の展開を始めてしまった。
どこかから在庫一掃セールで供与された、トップアタック能力の無い旧
式のTOW対戦車ミサイルには遠めの射程距離。
U軍第29独立自動車化歩兵旅団に配備されている、1世代前の四輪駆
動車M151に搭載されたTOW発射器に付属するAN/TAS4/A照
準器でBMPを狙うのは、まだ戦場経験こそ少ないものの、対戦車ミサ
イルの扱いが上手いセルゲイ・キリチェンコ兵長。
少し前までは、大学生で、ゲーマーで、あの日からは志願兵だった。
元々は建物だったであろう枯れ木などで偽装した壁面の一部を利用して
小型の車体を隠し、後部に据え付けられたTOW発射機だけが敵を睨む。
「セリョーガ、まだ降車していない最後尾のBMPを狙え。」
発射機の右後で双眼鏡を構えるガリーナ・レフチェンコ軍曹が指示する。
「はい、軍曹!」
「後方、よし! 撃て!」
TOW発射時のバックブラストの加害領域に味方がいない事を軍曹が確
認して発射を命令、セルゲイの背中を2回叩くと同時にTOWが飛び出
し、7m進む間に翼を展開、真後ろにブラストが来ないよう左右に配置
された加速用ロケットモーターが点火、コントロール用のワイヤーを曳
きながら猛烈な加速を開始する。
照準器の映像の中のTOW後方に備えられた赤外線ビーコンを見ながら、
セルゲイは命中迄の5秒ほどの間、目標の最後尾のBMPをターゲット
し続ける。
装甲の薄いBMPは、トップアタック能力を持たない対戦車ミサイルで
も容易に撃破できる。 照準器の中で停車している最後尾のBMPの後
方ハッチが開いた瞬間、TOWの一撃が車体中央で炸裂した。
弾頭の爆発と同時に車体の各所から炎が噴き出す。 寸前に開いた後方
ハッチから2人のR軍の兵士が爆風で投げ出される。
1人は背中を火に包まれ、凍った地面を転げまわる。 泥濘状態ならば
その火はすぐに消えたであろうが、悲しいほど固く凍った地面は、燃え
る兵士の期待をことごとく裏切った。
不幸なその兵士は、必死に邪魔な軍装を外し、燃える軍服をようやく脱
ぎ捨てた。 酷い火傷と引き換えにようやく火から解放された彼へ、次
は零下の気温が襲い掛かる。
もう1人の兵士は、ハッチから吹き飛ばされた後、炎の洗礼こそ受けな
かったものの、全く動く気配はなかった。
その間にも、降車に成功した40人前後の歩兵が、走ったり伏せたりし
ながらも、何とかアウディウカ外縁のU軍陣地へ近付こうと努力する。
BMPは30mm機関砲を放ちながら後退しようと試みている。
U軍の歩兵戦闘車なら、対戦車火器の大きな危険性が確認されなければ、
その持てる火力で敵へ圧力をかけ、可能な限り味方兵士を支援する。
また、そもそも2000mも手前で歩兵を下すような事はしない。
戦闘装備を担いで凍った地面を敵前で2000mも進んだ疲労著しい歩
兵(それもほとんど訓練をうけていない)に、いったいどんな戦闘行動
ができるだろうか?
しかし、R軍のBMPの乗員にとっては、とにかく歩兵さえ降ろしてし
まえば自分の仕事は終わり、危険なその場を離脱できるのだろう。
自らが逃げるために、主砲の30mm機関砲で牽制射撃を撒き散らす。
しかしU軍からの攻撃は苛烈で、逃げに入ったBMPは一台々々と爆発
し、あるいは炎を吹き、今になって地雷を踏み撃破されていく。
歩兵も歩兵で、BMPへの援護と思えるような動きは全く見せない。
彼ら歩兵に与えられた命令は「アウディウカを占領せよ」だけだった。
部隊ごと後退すれば恐ろしい懲罰部隊に回される。 兵士が運良く単身
逃げ帰れても、懲罰的拷問の後に命令不服従で粛清される事もある。
彼らにとって、前方に展開し撃ってくるU軍部隊より、後ろにいる味方
の指揮官の方が恐怖だった。
そして、その指揮官が彼らに約束した航空支援はいまだに無かった。
正確には航空支援は既に終わっていた。 彼らと同時にアウディウカへ
攻撃をかける隣の部隊の戦域には、数発の滑空爆弾が確かに落ちていた。
U軍の前衛陣地まではまだ1800mもある。
TOWの次のターゲットを探すレフチェンコ軍曹の双眼鏡の中では、兵
士の表情は見えず、何を叫んでいるかもわからない。
徒労の努力に対し、U軍の榴弾砲がクラスター弾で報いる。
円状の小爆発が、戦場に直径30m以上の爆炎の花を次々と咲かせる。
その爆炎の嵐を生き延び、わずかに残ったR軍兵士へ、FPVドローン
が襲いかかる。
「装填完了!」
TOWの予備弾を装填し終えたセルゲイが、その視線をTOW発射機か
ら双眼鏡を構える車長のレフチェンコ軍曹に移した時、数発の30mm
弾の着弾が偽装された壁面を半壊させ、猛烈な着弾煙を立たせる。
小銃弾くらいならともかく、たとえ流れ弾でも30mm弾ともなれば、
郊外の小住宅のモルタル壁など盾としてはまったく役に立たない。
貫通した30mm弾の一弾がフロントフェンダーを直撃、大きな爆発音
と共に、地震のようにM151が大きく揺れ、ボンネットが大きく跳ね
上がる。 弾丸の威力はエンジンブロックで止められたものの、一撃で
M151を廃車にした。
着弾の衝撃で大きく揺れた車体の射手位置から車外に転落したセルゲイ
の上に、重く古い軍用双眼鏡が落ち、レフチェンコ軍曹が後ろに倒れた。
何かの破片が貫通した胸部と腹部がみるみる赤く染まり、既に口元は血
の泡で覆われている。
「軍曹っ! 衛生兵! 衛生兵!!」
反射的に叫びながら、自身のポーチの簡易衛生キットからガーゼと気道
確保用の経鼻チューブを取り出すセルゲイの声を遮るように、震えるレ
フチェンコ軍曹が囁く。
「セリョーガ・・・、すぐに・・・後退しろ。」
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R軍機甲部隊を撃滅。 U軍防衛部隊の士気上がる。
次の日のSNS「X」への参謀本部の投稿には、大げさなキャプション
を付けた、大型汎用ドローンの撮影した映像が貼り付けられていた。
セルゲイの握るスマートフォンに映るその映像は、R軍機甲部隊と歩兵
部隊の壊滅する様子が捉えられていた。 次々と爆発するR軍車両の映
像は、国際社会へU軍が有利である印象を与えるに十分な効果がある。
が・・・
「・・・やつらはまた来るし、・・・僕の士気は上がっちゃいない。」
U公共放送では、今日もR軍の犠牲者数や喪失兵器の種類まで、どこか
の誰かがカウントした統計は次々に発表されている。
しかし、味方の犠牲者数は電波に乗らない。
昨日倒れたレフチェンコ軍曹や他の14人の事も、終戦までは公に語ら
れる事はないのだろう・・・。