藤本渚。将棋プロ四段。世間的には全く認知されていないが、将棋界ではもしかすると藤井とそこそこやれるかもしれない素材として注目されている18歳棋士。今年度勝率は現時点で藤井を上回りトップで、歴代最高勝率更新が十分に視野に入っている。
とはいえ、私自身は彼の棋譜を丁寧に並べるということはしていなかった。ただ王位戦リーグ初戦で佐藤天彦に快勝したというので、ではではと並べてみた。特に煌きとかは感じないが、普通に手厚く押し切りました、以上!という勝ち方で、強さは出ていますね。佐藤天彦は名人陥落以降はA級の中では比較的『鰯』ポジションだったが、今期はまずまず勝っている。その相手に概ね優勢を維持して押し切っており、王位リーグの次戦以降も強敵が揃っているが、勝ち込む可能性はそれなりにある。ただ、ここまでの対戦相手をみると、A級棋士は菅井と佐藤天彦だけ、竜王戦1組棋士を足しても都成がでてくるくらいで、最高勝率更新か!と煽ろうとしても藤井とは相手がレベル違い過ぎる。偉業ではあるが、仮に最高勝率を更新して年度1位になっても、衆目は藤井に集まって動かないだろう。ただ、王位リーグを勝ち抜くようだと、これは大いに盛り上がる。他の棋戦は叡王戦本戦で既に敗北、棋聖戦も去年8月の段階で姿を消しており、藤井の前に番勝負で連続して現れるという状況ではなさそうだ。もう少し待ちましょう。
王位戦だが、先手四間飛車に対し、後手番で急戦を仕掛けたのは中々に見所があるか。。。自玉の囲いが堅くないとやる気が出ない私などにはできない作戦だ。以下、自然に攻撃陣を解して攻め続け、ペースを握る。優勢のまま終盤に入ったところで、変な指し手はあった。
1図の下段香は普通に△5一歩の底歩で不都合があるのか? 佐藤天彦の次の手が▲5三歩ではなく▲5三銀(詰めろなので気持ちは分かる)だったので、△4一銀以下金気を埋めて防戦に成功できたが、▲5三歩とされていれば△5七桂成▲4一銀△3一玉の局面で先手には▲5九金~▲6八歩の防戦が可能であり、かつまだ銀を盤上に打っていないので、先手の攻めの制約も多くはなく、激戦が続いていただろう。戻って△5一歩であれば香車が後手の手駒に残るので、この香車を4二に埋め込む等の余地があり、分かりやすかったようだ。
この辺の精度は今後の修行で改善されると思いたい。藤井聡太の怒涛の連勝もあまりに続けば興趣はなくなってしまう。互角の好敵手とはいかなくても、時々は競ってくれる棋士の出現をファンは待望している。藤本には十分にその可能性はある。どうか恙なく伸びてくれますように。