『哀れなるものたち』の前日に鑑賞した本作。たまたまだが、男性支配社会で足掻く女性象を描写した映画を連戦でこなすことになった。この映画、私はそもそも存在自体を認識していなかったのだが、先週109ライズの時間割を観にいくと「あれ、こんな映画が封切られている」→「『ナポレオン』を去年観たし、こういう流れもありか」→「デップがでているのであればお代の価値はあるだろう」→「主人公の容姿が云々というレビューが気になるが、そこは我慢するか」ということで鑑賞決定。

 

 観終わっての所見は「予想通りでした」というもの。映画COMのスコアが3.3と低迷。私の評価は案外悪くなくて『哀れなるもの』と同じ7/10。バランスの取れたいい映画だったと思います。スタンダードな作りの方が私には合うのだろうか。

 

 

 粗筋はこう。

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貧しい私生児として生まれたジャンヌは、類まれな美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界で注目を集めるように。ついにベルサイユ宮殿に足を踏み入れた彼女は、国王ルイ15世とまたたく間に恋に落ちる。生きる活力を失っていた国王の希望の光となり、彼の公妾の座に就いたジャンヌ。しかし労働者階級の庶民が国王の愛人となるのはタブーであり、さらに堅苦しいマナーやルールを平然と無視するジャンヌは宮廷内で嫌われ者となってしまう。王太子妃マリー・アントワネットも、そんな彼女を疎ましく思っていた。

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 この映画のストーリーは大凡史実として伝えられている通りなので、ネタバレもほとんどしません。以下、感想です。

 

・序盤、主人公の少女時代の描写があり、陰のある美少女が演じている。成人してフレームが切り替わるとやや出っ歯で実年齢47歳のマイウェンのアップになる。正直、美しくはなくて、椅子から転げ落ちそうになった。鑑賞中、誰ならよかったのかと考えてしまったのだが、私であればスカーレット・ヨハンソンがいいな、というところ。でも予算が全く不足だろうか。ナターシャ・キンスキー系の女優さんがいいという見解をYoutubeでみたが、現実のデュバリー夫人は愛想のよい人だったらしいので、ちょっと違うと思う。予算不足なので監督と制作のマイウェンが主演もすることにしたのかなぁ? 関係者の誰かが『ご乱心ですか?』と止めればよかったのに。。。ただ、マイウェンの演技は悪くなかったです。知性や機智が滲み出てくる佇まいがあった。でも、美しくはないのです。

・上の粗筋では「孤立」とあるが、彼女を公式愛妾にまで押し立てた勢力もいるはずであり、彼女もその勢力の面倒を見たから地位を維持できたはずなので、完全孤立ということはなかったはずだ。ただの容色だけの女性に公式愛妾が務まるものではない。

・シャネルの衣装提供、ベルサイユでの撮影と作りがフランス総力戦の趣があり、これだけで一見の価値あり。

・CGを恐らくはあまり使ってはいないのだろうか、目に優しい。(『哀れなるもの』と対照的) 特に室内の照明(蝋燭が効果的)は素晴らしい。会食テーブルを上から映すシーンがあるのだが、これは特に印象的なカットだった。

・デップは美男子だったというルイ15世を彷彿とさせるものがあり、全く遺憾なし。

・ルイ16世になる王太子が超絶美男子、長身であり、器が大きすぎる。ああいう人であればフランス革命は起きなかったのではないか?

・ルイ15世の執事さんの抑えた演技がチャーミングだった。

・女性が当時成り上がろうとするとああいうルートしかなかったことは理解できるし、批判できるものではない。幸運にも身分の高い生まれの人々が批判したくなるのは仕方がないことだが、革命が近いことを暗示もしている。

・これも鑑賞中に考えたことだが、どうやればフランス革命を穏やかにできたのだろうか? 劇中にはあまり登場はしないがフランスにも金融資本、商業資本を背負う勢力はいただろうから、この人達を叙爵して貴族階級に取り込みつつ、納税義務を負わせるなどして、新陳代謝を徐々に起こさせるしかなかったのだろうか。。。とはいえ、ルイ15世時代の戦争による財政疲弊は革命でガラガラポンするしかなかったのかなぁ等々。映画を観ながらやはり自分の想念は関心の深いフランス革命前後の考察に移っていくのであった。

 

 スタンダードな作りでストーリーの骨格があり、美しい映像が流れるまずまずの一作。故にキャストが惜しまれる。