普通人の映画体験―虚心な出会い -48ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2016年9月12日(月)立川シネマシティ(シネマ・ツー:東京都立川市曙町2ー42ー26、JR立川駅北口から徒歩6分)で、18:20~鑑賞。

Apocalypse Now

作品データ :
原題 Apocalypse Now
製作年 1979年
製作国 アメリカ
上映時間 153分

米国初公開 1979年8月15日

「地獄の黙示録」

1960年代のベトナム戦争下のジャングルを舞台に1人のアメリカ軍将校暗殺を命じられた大尉が4人の部下と共に直面する戦争の狂気を描く。製作・監督は『ゴッドファーザー』 (1972年)→『ゴッドファーザーPART II』(1974年)のフランシス・フォード・コッポラ。ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(Heart Of Darkness、1902年)を原作に、物語の舞台をベトナム戦争に移して翻案した叙事詩的映画(エピックフィルム)。
出演はマーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、アルバート・ホール、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、デニス・ホッパー、G・D・スプラドリン、ハリソン・フォード、ジェリー・ザイスマー、スコット・グレン、ボー・バイヤーズ、ジェームズ・キーン、ケリー・ロッサル、ロン・マックイーンなど。

日本初公開は1980年2月23日(配給:日本ヘラルド)。
2001年に、コッポラ自らの再編集で未公開シーンを追加し、49分長い「特別完全版」(原題:Apocalypse Now Redux)が製作・公開された(米国公開:2001年8月3日、日本公開:2002年2月2日)。
2016年4月16日より「デジタル・リマスター版」(1980年に日本公開のオリジナルバージョン)をリバイバル上映(配給:boid)。


ストーリー :
狂うような暑さのサイゴンの夏。ブラインドの降りたホテルの一室で、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は空ろな視線を天井に向けていた。505大隊、173空挺隊所属、特殊行動班員である彼に、それからまもなく、ナ・トランの情報指令本部への出頭命令が下った。本部では3人の男が彼を待ち受けており、そのうちの1人がウィラードに、今回の出頭目的を説明した。それは第5特殊部隊の作戦将校であるウォルター・E・カーツ(マーロン・ブランド)を殺せという命令だった。カーツはウェストポイント士官学校を主席で卒業し、空挺隊員として朝鮮戦争に参加、数々の叙勲歴を持つ軍部最高の人物であったが現地人部隊を組織するという目的でナン川上流の奥地に潜入してからは、彼の行動が軍では統制できない異常な方向へと進んでいった。情報によると、彼はカンボジアのジャングルの奥地で原地人を支配し、軍とは全く連絡を絶ち、自らの“王国”を築き上げている、というのだ。そのアメリカ軍の恥である錯乱者カーツを暗殺しなければならない、というのが軍の考えだった。この密命を受けた若い兵士ウィラードは、4人の部下、クリーン(ローレンス・フィッシュバーン)、ランス(サム・ボトムズ)、シェフ(フレデリック・ホレスト)、チーフ(アルバート・ホール)を連れ、巡回艇PBR(patrol boat river)に乗り込んだ。まず、ウィラードは、危険区域通過の護衛を依頼すべく、空軍騎兵隊第一中隊にキルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)を訪ねた。ナパーム弾の匂いの中で目覚めることに歓びさえ感じているキルゴアは、花形サーファーであるランスを見ると彼にサーフィンを強要した。ワーグナーの「ワルキューレの騎行」が鳴り響く中、キルゴアの号令で数千発のナパーム弾が海岸付近のベトコンの村(前哨基地)を襲った。キルゴアのもとを発った彼らは、カーツの王国へとPBRを進めた。河岸に上陸するたびにウィラードに手渡される現地部隊からの機密書には、カーツの詳細な履歴と全行動が記されており、読めば読む程ウィラードには、軍から聞いたのとは別の人物であるカーツが浮かび上がってきていた。王国に近づいたころ、クリーンが死に、チーフも死んだ。そして、王国についた時、ウィラードはそこで、アメリカ人のカメラマン(デニス・ホッパー)に会い、彼から王国で、“神”と呼ばれているカーツの真の姿を聞かされる。カーツは狂人なのだろうか。それとも偉大な指導者なのだろうか。ウィラードにも分からなかった。そして、遂にカーツとの対面の日がきた。テープレコーダーや本に囲まれたカーツの元にやってきたウィラードは、軍の命令に従い、“神”と呼ばれる人間カーツを殺すのだった―。

▼オリジナル予告編 



▼「特別完全版」日本版予告編



▼「デジタル・リマスター版」予告編 

2016年9月12日(月)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)で、15:25~鑑賞。

作品データ :
原題 GODS OF EGYPT
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ
上映時間 127分


『アイ,ロボット』『ノウイング』のアレックス・プロヤス監督がメガホンを取り、古代エジプトの王座をめぐる壮絶なバトルを描くアクション・ファンタジー・アドベンチャー映画。神と人間が共に存在する世界で、王座獲得の命運を左右する“神の眼”を盗み出そうとする「コソ泥」の青年の奮闘を映し出す。
「コソ泥」役に『マレフィセント』のブレントン・スウェイツ、その「恋人」役に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のコートニー・イートン。『ゲーム・オブ・スローンズ』TVシリーズのニコライ・コスター=ワルドー、『300 スリーハンドレッド』のジェラルド・バトラーらが脇を固める。

ストーリー :
神と人間が共生する古代エジプトでは、神々を讃える石像やピラミッドが建ち並び、「生命の神」オシリス王(ブライアン・ブラウン)の統治のもと、繁栄を誇っていた。しかし、オシリス王の弟である「砂漠の神」セト(ジェラルド・バトラー)が王を殺害。王座を強奪し、混乱が広がる。多くの民が苦しめられる中、オシリスの子、「天空の神」ホルス(ニコライ・コスター=ワルドー)は恋人ザヤ(コートニー・イートン)をセトに奪われた盗賊ベック(ブレントン・スウェイツ)と組み、エジプトの王に君臨するための鍵を握る重要なアイテム“神の眼”を盗み出すべく、困難極まりない冒険の旅に出る…。

▼予告編

2016年9月9日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、19:05~鑑賞。

作品データ :
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 120分


日本の怪獣映画史に名を残す“ゴジラ”が、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明が総監督、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の樋口真嗣が監督を務め、シリーズ初のフルCGで復活。東宝製作のゴジラシリーズの第29作で、『ゴジラ FINAL WARS』以来約12年ぶりの日本製作のゴジラ映画。巨大怪獣の出現で未曽有の危機にさらされた人々の物語が描かれる。長谷川博己、竹野内豊、石原さとみをはじめ、総勢328名のキャストが出演。

ストーリー :
東京湾・羽田沖—。突如、東京湾アクアトンネルが巨大な轟音とともに大量の浸水に巻き込まれ、崩落する原因不明の事故が発生した。
首相官邸では総理大臣以下、閣僚が参集されて緊急会議が開かれ、「崩落の原因は地震や海底火山」という意見が大勢を占める中、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)だけが、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘。内閣総理大臣補佐官の赤坂秀樹(竹野内豊)をはじめ、周囲は矢口の意見を一笑に付すものの、直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。
慌てふためく政府関係者が情報収集に追われる中、謎の巨大不明生物は鎌倉に上陸。普段と何も変わらない生活を送っていた人々の前に突然現われ、次々と街を破壊し、止まること無く進んでいく。
政府は緊急対策本部を設置し、自衛隊に防衛出動命令を発動。さらに米国国務省からは、女性エージェントのカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)が派遣されるなど、未曽有の脅威に対し、日本のみならず世界もその行方を注視し始める。
そして、川崎市街にて、“ゴジラ”と名付けられたその巨大不明生物と、自衛隊との一大決戦の火蓋がついに切られた…。
果たして、人智を遥かに凌駕する完全生物・ゴジラに対し、人間に為す術はあるのか?

▼予告編


2016年9月8日(木)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、19:30~鑑賞。

作品データ :
原題 MIRACULUM (ラテン語で「奇跡」の意)
製作年 2014年
製作国 カナダ
配給 ピクチャーズデプト
上映時間 109分


『トム・アット・ザ・ファーム』『Mommy/マミー』などで若手実力派監督としても高く評価されるグザヴィエ・ドランが、俳優として出演したサスペンスタッチのヒューマンドラマ⇒運命に翻弄される人間、人生の選択を迫られる人間たちの群像劇。監督は『7 DAYS リベンジ』(長編映画デビュー作、2008年)のダニエル・グルー。

ストーリー :
ダウン 時に人は、ただ奇跡が起きるのを待つしかない。
ともに「エホバの証人」の信者である看護師と、末期の白血病を患うフィアンセ。老境にありながら情熱的な不倫を続ける、バーテンの男とクロークの女。互いへの失望を偽りながら暮らす、アル中の妻とギャンブル狂の夫。そして、過去の謎めいた過ちを償うためドラッグの運び屋となる一人の男…。
彼らは気づかない。自分の決断が思わぬところで、他人の運命を変えてしまっていることに。正しい選択とは何なのか。人間に許された最良の決断とは?
その複数の物語が現在と過去を行き来しながら、終着点―墜落する運命にあるキューバ行きの飛行機へと向かう…。

アップ エティエンヌ・シマー(グザヴィエ・ドラン)は、「エホバの証人」の熱心な信者である。今日も教会で、聖書の一節を読んでいる。彼には、同じ信者で、看護師をしているジュリー・ボドリー(マリリン・キャストンゲ)という婚約者がいる。愛し合いながらも慎ましい生活を送るカップルだが、エティエンヌは末期の白血病に侵され、病状は悪化の一途をたどっていた。
エティエンヌの白血病は輸血をすれば科学治療で直ることは医者も約束しているのに、彼は頑なに信仰の下に輸血を拒む。エホバの証人の聖書解釈では、輸血は禁じられている。
ジュリーは敬虔な信徒として祈りをささげてきたのに、婚約者が奪われてしまう…、輸血をすれば愛する人は助かるのだが…と、やりきれない思いに悩む。

ある日、キューバ行きの飛行機が墜落する事故が勃発する。
(本作は冒頭と終幕で、この同じ飛行機事故を描く。事故後にそれと関わっていく人物の時間と、事故に被害者として関わってしまうまでの人物の時間を交錯させる構成である。)

1墜落事故の生存者は一人の男だけで、ジュリーの勤務する病院に運び込まれる。彼女はその大やけどを負った患者の命を救おうと、献身的な看護を続ける。
唯一生き残った身元不明の男は、ジュリーと同じ希少血液型である。回復手術にその希少型血液が必要とされると、適合する彼女に献血が求められる。
顔もわからず、時折痙攣を起こしながらも必死に生き長らえる生存者の姿に、彼女は動揺せずにいられない。献血⇒輸血にいたれば、エホバの証人のコミュニティーに居場所がなくなる…。しかし、人の命を救うナースという職業につく者として、彼を絶対に死なせたくない…。

2シモン(ガブリエル・サブーリン)は、ベネズエラから麻薬入りカプセルを運び込む(体内に麻薬を仕込んで密輸する)。
彼は何かがあったらしいのだが、その「運び」で稼いだ金を姪(兄の娘)のもとに置き、やがて他人になりすまして最終のキューバ便に乗る。

3夫婦であるマーティン(ロビン・オベール)とエヴェリン(アンヌ・ドルヴァル)は内心、お互いにうんざりしつつ、自堕落な生活を送っている。マーティンはギャンブル狂いで、カジノに入り浸っている。エヴェリンはアルコール中毒で、酒におぼれる日々である。
そんな2人は毎年、キューバにバカンスに行くのだが、今回は搭乗寸前に関係が壊れる。

4マーティンの通うカジノで、バーテンをしているレイモンド(ジュリアン・ブーラン)は、初老の男。クローク係りの初老の女・ルイーズ(ルイーズ・ターコット)とは不倫の仲である。レイモンドはマーティンのキューバ行きの話を聞いて、ルイーズとのキューバ旅行を計画する。
レイモンドとルイーズの老不倫カップルは、飛行機恐怖症を居合わせたシモンの励ましで克服し、嬉しそうにキューバ便に乗り込む。

前掲の四つの物語は、微妙に絡まり合いながら、現在になったり過去へ戻ったりと、やがて悲劇的な飛行機事故に収斂(しゅうれん)する。
本作では結局のところ、神の存在をテーマに、それぞれの登場人物たちの下した「究極の選択的決断」~それは果たして正しかったのか、あるいは誤っていたのか?~が描かれる。

日本語タイトルの「神のゆらぎ」とは、神の気まぐれでもあるし、偶然性のことでもある。
本作のヒロイン、ジュリーは、老爺から「飛行機事故が起きたのは全能の神がいないからだ」という決定的な言葉を投げかけられ、信仰よりも大切なものに気づく。
彼女は苦悩と葛藤の末に苦渋の決断を下す。ただ一人の生き残りの男に血液を提供することを認め、エホバの証人のコミュニティーを去るにいたった―。

▼予告編



◆Xavier Dolan’s Comment :  
【「美しき天才」と称される若きカリスマ、グザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan、1989~)。以下はいま、世界が注目する俳優兼監督の彼の本作に対するコメントである。】
〈私は映画監督ですが、意識としては「俳優業」が一義的です。ただ待っていてもやりたい役のオファーが来ないので自分で自分に役を与えるために監督になったのです。『神のゆらぎ』ではエホバの証人のカップルを演じていますが、いままで演じたことがない新しい役どころだったので、ぜひやってみたいと思いました。役者というものは常に新しい演技を探求する性分なんだと思います。特に今回の役では、宗教の制約から恋人にさえ輸血を拒み死ぬことをよしとするとても難しいキャラクターですが、彼には彼の考え方があって、それを頑なに信じている男なのだと思います。僕にはそんな彼が「とても愛おしい人間」と思えるのです。エホバの証人という宗教心については、とくに感じるものはありません。エホバはホモセクシャルを禁じている宗教ですが、この登場人物を卑下しているわけでもなく、ただ彼の皮膚と自分を同化させるだけだ、と捉えています。僕自身、幼い頃に厳格なカソリックの叔母に連れられて教会へ通っていた経験があることから、何かを強く信じる人間の心について理解がある方だと思います。ですから信仰心がある人間を演じるのは僕にとって難しいことではありません。人が何かを信じるということの意味は理解しているつもりです。〉(フランス版HUFF POST インタビューより抜粋)
2016年9月8日(木)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、14:40~鑑賞。

作品データ :
原題 SING STREET
製作年 2016年
製作国 アイルランド イギリス アメリカ
配給 ギャガ
上映時間 106分


『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』のジョン・カーニー監督の半自伝的作品で、街で一番イカした彼女を振り向かせるためにバンドを組んだ少年の恋と友情を、1980年代ブリティッシュ・サウンドに乗せて描いた青春音楽映画。主人公にはオーディションで選ばれた新人、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ。共演にジャック・レイナー、ルーシー・ボーイントン。

80年代、ロンドンはロック好きの誰もが憧れる「聖地」だった。新しい音楽が次々に生まれ、様々な国から様々な才能が集まり、混じり合い、さらに新しい音楽が生まれる。「聖地」と言うより、音楽の「泉」と言うべきだろうか。そこに行けば何かができる、何かが変わる。若者の誰もにそう思わせてしまう力がイギリスから生まれる音楽にはあった。
本作は80年代半ばのダブリンが舞台となる。そこに生きる音楽好きの若者たちもまた、世界中の若者たちと同じような思いを抱いていた。海を渡ればすぐイギリス。その近さゆえに自分たちとロンドンとの違いもはっきりと実感して、その絶対的な遠さに希望と絶望のハーモニーを奏でていた。海を渡ることが彼らにとって、生を実感する最大の出来事だった。イギリスに憧れる彼女の心を奪おうと始めたバンドは、次第に主人公の人生の中心になり、いつの日か彼もまた、イギリスを目指すようになる。今この暮らしから抜け出したいのではなく、そこに行けば何かが変わるという、賭けにも似た小さな希望を、彼は育てようとするのだ―。


ストーリー :
舞台は1985年の、アイルランドのダブリン南部にあるインナーシティ地区。この場所に住むロウラー家は、不況から建築家の父ロバート(エイダン・ギレン)が失業し、苦境に陥っていた。喧嘩が絶えないロバートと妻ペニー(マリア・ドイル・ケネディ)は別居も考えており、ロバートは酒浸りで喫煙量も増えている。ある日の家族会議で、ロバートは末の息子コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)へ、学費を節約するため、私立学校から無料の公立高校へ転校するよう話す。ロバートは転校先のシング・ストリート高校(Synge Street CBS)について評判が良いと話すが、コナーの兄・ブレンダン(ジャック・レイナー)は、ばらばらになった家族の現状とコナーの転校を思い切りからかう。そんな現状から逃れるように、ブレンダンとコナーはロンドンのポップ音楽へのめり込む。
シング・ストリート高校へ向かうコナーだが、校則違反の茶色い靴を校長のバクスター修道士(ドン・ウィチャリー)に見咎められたほか、いじめっ子のバリー(イアン・ケニー)に目を付けられてしまう。散々なスタートを切ったコナーに、ただひとり自称「校内コンサルタント」のダーレン(ベン・キャロラン)が声を掛け、2人は友人になる。2人が下校しようとした時、コナーは高校の真向かいにあるフラットの入り口に立つ若い女性モデル・ラフィーナ(ルーシー・ボイントン)に気づき、その姿に一目惚れする。彼女の気を引くため、コナーは組んでもいないバンドのミュージック・ビデオ (MV)へ出演しないかと持ちかけ、ラフィーナの電話番号を手に入れる。ダーレンはマネジメント担当を引き受け、楽器に万能な友人・エイモン(マーク・マッケンナ)をコナーに引き合わせる。
その後、「街で唯一の黒人」として誘われたンギグ(パーシー・チャンブルカ)、メンバー募集の張り紙を見てやってきたギャリー(カール・ライス)とラリー(コナー・ハミルトン)を加え、バンドは5人体制になる。また、バンド名は高校名とかけて「シング・ストリート」(Sing Street)に決まる。彼らはエイモンの家で1980年代のバンドをコピーし始めるが、デュラン・デュランをコピーしたテープを聴いたブレンダンは、ロックの師匠として「他人の曲で女の子を口説くな、自分の曲を作れ」と弟を叱咤する。コナーはエイモンと作曲を始め、自作曲「モデルの謎」(“The Riddle of the Model”)を完成させる。メンバーはてんでんばらばらの衣装を着てミュージック・ビデオ撮影に臨み、ラフィーナは謎のあるモデル役とメイクアップを担当する。撮影後、コナーはラフィーナを家まで送り届け、キスをしようとする。ところが、そこにラフィーナの年上の彼氏・エヴァン(ピーター・カンピオン)がオープンカーを乗り付け、彼女を連れて走り去ってしまう。別れ際にラフィーナは、エヴァンとロンドンに出て、モデルとして成功したい夢を語る。2人が立ち去った後、コナーはラフィーナの住むフラットが、実は身寄りの無い子供たちのために作られた施設だと気づく。帰宅して落ち込むコナーを、ブレンダンは彼なりに勇気づけて、弟の恋を応援する。
数日後、コナーと再び会ったラフィーナは、自分の生い立ちをコナーに話し、新曲を書いて、自分がロンドンに発つ前にMVを撮影してほしいと頼む。海辺のダン・レアリーで2本目のMVを撮影している最中、ラフィーナは「何事も半端はだめ」と、泳げないにもかかわらず作品のため海へ飛び込む。コナーは海へ飛び込みラフィーナを助けてキスを交わし、2人の間に信頼感が生まれる。
ロバートとペニーの婚姻はいよいよ破綻を来たすが、一方でコナーとラフィーナは交際を進展させ、2人はコナーの祖父が所有していたモーターボートでダン・レアリーから程近いダルキー島へ向かう。島から、アイルランドを離れブリテン島へ向かうフェリーを見た2人は、ラフィーナの「アイルランドを離れロンドンに行く」夢について語り合う。
学校主催のプロムを初ライブに決めたメンバーは、新曲・MV作りに没頭する。コナーは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ばりのMVを撮ろうと妄想するが、ラフィーナは撮影現場に現われない。彼女のフラットに向かったコナーは、住人からラフィーナがエヴァンと共にロンドンへ旅立ったことを伝えられる。ところが、エヴァンには伝手(つて)など無くロンドンで雲隠れし、彼に騙されたラフィーナは程なくしてダブリンに戻ってくる。バンドはプロムに向けて準備を進め、家庭環境からぐれていたいじめっ子のバリーをローディーとして引き込む。プロムでのライブでは、バクスターを揶揄する歌まで歌って大成功する。
プロムの後、コナーとラフィーナは、モーターボートが停泊しているダン・レアリーまで送ってほしいとブレンダンに頼み込む。2人はモーターボートでウェールズのホリーヘッドへ向かう計画を明かす。コナーとラフィーナはブレンダンに見送られ、ロンドンでの新しい生活を求めて、ブリテン島へ向かうフェリーを追うように、モーターボートでアイリッシュ海を渡るのだった。

▼予告編



▼劇中での人気曲「Drive It Like You Stole It(ドライヴ・イット・ライク・ユー・ストール・イット)」のMV

2016年9月2日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、19:00~鑑賞。

作品データ :
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 128分


直木賞作家・黒川博行の小説『後妻業』を、大竹しのぶと豊川悦司の共演で映画化。『愛の流刑地』『源氏物語 千年の謎』の鶴橋康夫監督がメガホンをとり、資産を持つ独身男性の後妻に収まり、多額の金品を貢がせる「後妻業」を生業とする女の姿を描く。

婚活大国ニッポン!今、日本は世界でも類を見ない婚活ブーム。結婚相談所は全国に4000社、利用者は60万人と言われている。そして、婚活世代は以前とは様変わりしている。長寿化や核家族化に伴う結婚観の変化や、2004年以降の段階的な年金制度改正によって離婚後も夫婦で年金が分割可能となったこと等も影響し、「熟年離婚」が劇的に増加した。一方で、未婚の中高年男性も急増しており、50歳の時点で一度も結婚経験がない男性は、2010年時点で5人に1人、1995年から2倍以上も増加した。また、65歳以上の一人暮らしは約600万人、男性の5人に1人、女性の2人に1人が独身である。その結果、50代以上の世代による「熟年婚活」が急増している。離婚後のセカンドライフを楽しみ新たなパートナーを望む人々や、未婚の中高年男性をメイン顧客とした熟年層向けの結婚相談所や婚活サービスが巷で人気を博すようになった。
そんな世相を背景に、結婚相談所で効率よく相手を見つけ、資産を狙って結婚詐欺を働く犯罪が“後妻業”である。


ストーリー :
「武内小夜子、63歳、若くして夫を失った熟年女性です。好きなことは読書と夜空を見上げること…わたし、尽くすタイプやと思います」
結婚相談所主催のパーティで淑女然として自己紹介する小夜子(大竹しのぶ)。その魅力に老人たちはイチコロである。80歳になる中瀬耕造(津川雅彦)もその一人。二人は互いに惹かれあい、結婚。幸せな夫婦生活を送るはず、だった―。
2年後、耕造の娘、中瀬朋美(尾野真千子)は病院へと急いでいた。父親の耕造が脳梗塞で突然倒れたからだ。姉の西木尚子(長谷川京子)と病院で合流すると、のんきに着替えを持って来た後妻の小夜子から法外な葬式費用を要求される。かねてから耕造の世話をろくにしていないように見えた小夜子に激昂する朋美と、ただただ唖然とする、主婦で世間知らずの尚子だったが、耕造は回復することなく亡くなってしまう。さらに、小夜子に法的効力のある“遺言公正証書”を突き付けられ、小夜子が全財産を相続する事実を言い渡される。
朋美は同級生の弁護士に助けを求め、さっそく小夜子の調査が始まるが、そこで衝撃の事実が発覚する。なんと小夜子は、金持ち老人を色香で虜にし、後妻に入って金品を巻き上げる“後妻業の女”だったのだ!小夜子は過去に8人もの男と結婚を繰り返しては夫と死別したり、夫の行方がわからなくなっており、その背後には結婚相談所・所長の柏木亨(豊川悦司)の影があった。
「結婚相談所に限って言えば、男の高齢者がよくモテる。第一条件は資産があること。持病があればなおいい。看取る時間の効率が良いから女同士の取り合いになったりする…」
次から次へと“後妻業”を繰り返してきた小夜子と柏木、2人の悪事を暴こうと奔走する朋美と、調査に協力する裏社会の探偵・本多芳則(永瀬正敏)、小夜子の次のターゲットでありながら、彼女が本気で愛してしまった不動産王・舟山喜春(笑福亭鶴瓶)、そして彼らを取り巻くひと癖もふた癖もある人々…。今、愛とお金をめぐるドラマが始まる―!!

▼予告編



▼公開記念ナビ特番 <ストーリー編>

2016年8月25日(木)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、20:35~鑑賞。 

作品データ :
原題 CARTEL LAND
製作年 2015年
製作国 メキシコ アメリカ
配給 トランスフォーマー
上映時間 100分


『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督が製作総指揮を執ったドキュメンタリー。メキシコ麻薬戦争の最前線にカメラを持ち込み、自ら武器を手に麻薬組織と全面抗争を繰り広げる「自警団」の活動に密着し、その戦慄の実態を赤裸々に映し出していく。監督は、ドキュメンタリー作品のプロデューサーなどを手掛けてきたマシュー・ハイネマン。2016年・第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネート。

ストーリー :
メキシコの中西部ミチョアカン州は、麻薬の巨大組織「テンプル騎士団」が支配するカルテル・ランドと化していた。罪のない市民を巻き込んだ犯罪や殺し合いが多発し、幼い子どもまでもが残虐な方法で殺害される。政府や警察は巨大化したカルテルに弱腰で、中には組織と癒着している者もいる。
怒りを露わにした市民たちは、ある日、「自警団」と呼ばれる麻薬組織に対抗する武装グループを立ち上げる。中心となったのは町医者のホセ・ミレレスで、彼は堕落した政府を尻目に日々ライフルの腕を磨き、カルテルと戦う準備をする。ミレレスの勇気に同調した市民たちは、ミチョアカン州の各地で自警団の活動を始めていく。

ミレレスに賛同した多くの市民たちには、自警団のユニフォームと銃が支給された。自警団はカルテルのメンバーが潜伏するアジトを特定し、次々と制圧していく。そして、メンバーを捕らえては警察に引き渡していた。
ある日、警察が自警団の前に現われて武装解除を要求する。警察側は自衛行為とはいえ武装集団を野放しにできないと主張し、これに対して自警団はどうやって自分の身を守ればよいのかと訴える。
自警団から武器を取り上げようと軍隊が出現し、怒り狂った自警団は暴動を起こし、警察の車両に襲いかかる。市民たちも一緒になって警察を取り囲み、やがて警察は自警団に武器を返還して退散する。
それ以来、自警団は公認扱いとなり、ついに町からカルテルを追い出すことに成功する。ミレレスは偉大な戦士として一躍街のヒーローとなるが、政府は自警団の活動を警戒するようになる。

自警団はさらに結束力を固める一方で、ミレレスは次々に暴動を起こすメンバーたちを不安に思い、事あるごとに「我々はカルテルと同じように汚れてはいけない」と訴える。しかし、一部の幹部メンバーはミレレスのことを疎ましく感じており、彼らは自警団を利用したい欲望を抱えていた。
ある時、ついに政府が自警団の解体に動き出す。すると自警団のメンバーたちは仲間割れを始め、ミレレスは命を狙われる身となる。その後、ミレレスは飛行機事故に巻き込まれ重傷を負い、自警団のリーダーポストから外される。
ミレレスが療養している期間にも、自警団はカルテルを追い出していき、次第に暴走を始める。カルテルから奪った麻薬の密売を行なう者もいれば、留置所のような場所を建設し、捕えた人間に拷問を加える者もいた。市民たちはカルテルと自警団のどちらが悪なのかわからないと非難を始める。

しばらくしてミレレスが自警団に復帰すると、彼の腹心だったベルトランとシエラが裏切り、政府公認の合法化した「地方防衛軍」という組織を立ち上げていた。
もとは政府がカルテルと癒着していることから立ち上げた自警団が、政府にコントロールされてしまっては元も子もないと、ミレレスは地方防衛軍に加わることを拒否する。
地方防衛軍は政府から武器や軍服が支給され、政府から要請があれば軍や警察に協力するというルールが作られた。しかし、カルテルのメンバーは政府の関係者や地方防衛軍と癒着して、麻薬を横流しして武器やトラックなどの必要物資を入手していたのだった。

2014年2月25日、メキシコ連邦警察によって自警団元リーダーのミレレスは、武器の不法所持で逮捕された。刑務所に収監されるミレレスの姿が映し出される場面で、物語は幕を閉じる―。

▼予告編

2016年8月25日(木)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、18:10~鑑賞。

作品データ :
原題 SICARIO
 【Sicario シカリオとは、主に中南米で使用されるスペイン語で、「(誰かに金で雇われた)ヒットマン、殺し屋、暗殺者」の意】            
製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給 KADOKAWA
上映時間 121分
米国公開 2015年9月18日 
日本公開 2016年4月9日


メキシコの麻薬カルテルを撲滅すべく、アメリカとメキシコ国境の町に送り込まれたFBI女性捜査官が、麻薬戦争の最前線で目の当たりにする衝撃の実態をリアルかつ極限の緊張感で描き出した社会派サスペンス・アクション。
ヒロインを『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『イントゥ・ザ・ウッズ』のエミリー・ブラントが演じ、ベニチオ・デル・トロやジョシュ・ブローリンといった実力派が脇を固める。
監督は『灼熱の魂』『プリズナーズ』『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。オリジナル脚本は数多くのTVシリーズで活躍してきた俳優テイラー・シェリダンが、麻薬戦争の被害者であるメキシコからの移民などへの取材を基に執筆。撮影は『ショーシャンクの空に』『007 スカイフォール』の名匠ロジャー・ディーキンスが務め、音楽は『プリズナーズ』でヴィルヌーヴ監督とタッグを組んだ作曲家ヨハン・ヨハンソンが手掛けている。

「ボーダーライン」(1)「ボーダーライン」(2)
「ボーダーライン」(3)

ストーリー :
【主要キャラクター】
○ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)
 FBIで誘拐事件を担当する女性捜査官。アメリカ・アリゾナ州の州都フェニックス在住。離婚を経験し、子どもはおらず、長らく仕事一筋。独立心旺盛で、物事の正否や法の秩序に頑なにこだわる。対メキシコ・カルテルの≪特捜チーム≫(特殊部隊)の一員となったストレスから禁煙していたタバコを再開。

○マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)
 自称、国防総省の特別捜査官。実は“CIA”所属。≪特捜チーム≫の作戦リーダーで、ケイト・メイサーをチームにスカウトし、麻薬戦争に引き込む。ざっくばらんな性格だが、簡単に真実を打ち明けない男。良心をあえて排除することを選択し、実利的に問題解決を図ろうとする。どこかかなり上の高官たちから超法規的な大きな権限を与えられている。

○アレハンドロ・ギリック(ベニチオ・デル・トロ)
 謎めいた寡黙な男。元はメキシコ・フアレス市で働く検察官だったが、メキシコの麻薬組織=ソノラ・カルテルのファウスト・アラルコンに妻子を殺され復讐の鬼と化す。現在はコロンビアの麻薬組織=メデジン・カルテルに雇われる殺し屋(Sicario)であるとともに、アラルコン殺害を目標とするCIAに協力し、「国防総省のコンサルタント」という肩書で≪特捜チーム≫に加わっている。

○マニュエル・ディアス(ベルナルド・サラシーノ)
 ソノラ・カルテルのアメリカ国内組織におけるトップ。表向きは合法的な実業家で、ソノラ・カルテルとの繋がりの証拠は掴ませていない。FBIの一般職員が見ることのできるファイルには、彼の兄(ギレルモ)やいとこ(アラルコン)の存在は記載されていない。

○ギレルモ(エドガー・アレオラ)
 マニュエル・ディアスの兄。ソノラ・カルテルのメキシコ・フアレス市におけるトップ。メキシコの現地警察に逮捕・収監され、アメリカに引き渡される。

○ファウスト・アラルコン(フリオ・セサール・セディージョ)
 マニュエル・ディアスのいとこ。ソノラ・カルテルの麻薬王(実は“ナンバー3”)で、多くの処刑を命じた男。マニュエル・ディアスのボスにあたるが、所在などの詳細は不明の人物。≪特捜チーム≫今次の作戦の最終ターゲット。

○シルヴィオ(マキシミリアーノ・ヘルナンデス)
 メキシコの国境の町ノガレスに在住する警察官。息子には銃に触れることを禁じ、サッカーにも付き合う、一見平和な家族を支える良き父親であるが、(パトカー常用の)麻薬の運び屋として、ソノラ・カルテルの麻薬密輸を幇助している。

【事の進行順】
(1) アリゾナ州フェニックス近郊のチャンドラーでの人質奪還作戦
FBIの誘拐即応班を指揮するケイト・メイサーは、アリゾナ州の荒野にたたずむ一軒家で信じがたい光景を目の当たりにした。誘拐事件の人質を救出するために強行突入したその家は、“ソノラ・カルテル”のマニュエル・ディアスの所有物で、壁の中に数十体もの腐乱死体が隠されていたのだ(顔を潰されてビニールに包まれて吊るされる!)。しかも離れの物置を捜索中に凄まじい爆発が起こって警官2名が殉職し、ケイトも頭部にケガを負ってしまう。

(2) FBIフェニックス支部のオフィスで
FBIの会議室に呼び出されたケイトは、上司のデイヴ・ジェニングス(ヴィクター・ガーバー)から思いがけないことを告げられる。アメリカ社会を蝕むソノラ・カルテルの撲滅とディアスの追跡を専任とする≪特捜チーム≫が編成され、現場経験の豊富なケイトがその一員にスカウトされたという。その場でチームのリーダーを務めるマット・グレイヴァーと対面したケイトは、突然の出向要請に困惑しながらも、巨悪を討つ使命感に駆られて「志願します」と返答する。

(3) ルーク空軍基地(アリゾナ州フェニックス)→フォートブリス陸軍基地(テキサス州エル・パソ)
ルーク空軍基地に赴いたケイトは、マットに迎えられて小型ジェット機に乗り込む。機内にはアレハンドロという見知らぬ寡黙な男が同乗していた。彼は麻薬カルテルの内実に精通したコロンビア人の元検察官で、「国防総省のコンサルタント」とのこと。
同機はフォートブリス陸軍基地に到着。早速基地内で、次の行動~エル・パソから国境を越え、メキシコのシウダー・フアレスへの移動~のブリーフィングを受ける。集められていたのは、デルタフォース(Delta Force、陸軍特殊部隊)、連邦保安官、DEA(麻薬取締局)といった歴戦のつわものども。

(4) Welcome to Ciudad Juárez(メキシコ・フアレス市)
ケイトを含む≪特捜チーム≫は5台の車に分乗し、物々しく武装したメキシコ警察に先導されながらフアレス市内へと向かう。そこでケイトの目に飛び込んできたのは、麻薬カルテルが見せしめのため高架下に吊した幾つもの惨たらしい死体。それは、まさにカルテルの暴力に支配された街のおぞましい実態だった。やがてチームが裁判所でディアスの兄ギエルモの身柄を引き取ったのち、ケイトはさらなる衝撃に見舞われる。アメリカとの国境の手前~メキシコ側検問を抜けた直後、アメリカ側検問に繋がる橋の上~で渋滞に巻き込まれた際、カルテルの襲撃を事前に察知したチームが猛烈な銃撃を浴びせ、敵を皆殺しにしたのだ。周りに民間人が大勢いるも、事は躊躇なく決行された。どん引きしたケイトも、銃撃を受けて、車内から拳銃で応戦する。その後、一行は無事にアメリカ国境を渡る。

※シウダー・フアレス(Ciudad Juárez、フアレス市)は、メキシコ・チワワ州最大の都市(旧名はエル・パソ・デル・ノルテ〈El Paso del Norte〉)。人口は2010年の統計によれば1,332,131人、メキシコで8番目に大きい都市に指定されている。市の北側にメキシコとアメリカの国境(アメリカ=メキシコ国境)でもあるリオ・グランデ川が流れている。川を渡ればアメリカに入国することになり、テキサス州最西部の町エル・パソにたどり着く。シウダー・フアレスにはエル・パソと結ぶ四つの橋があり、2008年に22,958,472人の移民がこれらの橋を利用して二つの都市を行き来したといわれている。シウダー・フアレスとエル・パソを合わせば、アメリカとメキシコの国境地帯の都市で2番目の大きさを誇り、その人口もおよそ210万人に跳ね上がる。近年、工業化が著しく、世界中で最も発展が早い国の一つとして知られているが、同時に急速に治安が悪化して「戦争地帯を除くと世界で最も危険な都市」とも恐れられていた(2009年には年間に2575人が殺されるという、世界で一番殺人が多い町だった)。しかし、2012年にホンジュラスの都市サン・ペドロ・スーラに抜かれ、「世界で2番目に危険な場所」となった。2012年以降は殺人件数が減少しているものの、今もなおジャーナリストなど町の実態を調べようとする者にとって世界で最も危険な都市の一つであり、新しいカルテルも台頭しつつある。

ダウン SICARIO scene ― Border Battle


(5) フォートブリス陸軍基地でギレルモを尋問 
エル・パソのフォートブリス陸軍基地に帰還して、ケイトは民間人を巻き添えにしかねない今回の作戦の違法性についてマットに激しく抗議する。しかし、「これが現実だ。見るものすべてから学べ。君は学ぶためにここにいる」と軽く一蹴されてしまう。
基地内で、ギレルモへの尋問(拷問)が開始された。アレハンドロはウォーターボーディング(水責め)で彼を締め上げ、ソノラ・カルテルがアメリカとメキシコの往来に使用している秘密のトンネルの存在を聞き出す。ちなみに、ケイトはその拷問には一切関知しなかった。

(6) アリゾナ州ツーソンで不法入国者をスカウト 
マット、アレハンドロ、そしてケイトは、フォートブリス陸軍基地からアリゾナ州フェニックスへ戻る。そこでレジー・ウェイン(ダニエル・カルーヤ)が合流し、≪特捜チーム≫に加入。ケイトが、FBIにおける相棒のレジーも仲間に加えるよう、マットに強く迫ってのことだった。
一行はレジーの車でツーソンへ(フェニックスから約2時間)。ツーソンの入国管理所(Immigration Office)では、逮捕されたメキシコからの不法入国者が大勢集められていた。マットがFBIのケイトの名を騙り、その権限で地元警察に連れてこさせた。
アレハンドロはメキシコ人の中からノガレス(町の中央に国境が通っていて、アメリカ側〈アリゾナ州〉とメキシコ側〈ソノラ州〉に分かれている)で捕まった者だけを残し、あとは帰す。
更にその中から以前にもアメリカ・アリゾナ州に来た者を探し、既婚かどうかや刺青の有無(カルテル関係者かどうか)をチェックする。
一方、何が行なわれているのか分からないケイトは、作戦の全容について教えなければ≪特捜チーム≫から抜ける、とマットに詰め寄る。
彼は応じる。「ノガレスの東にトンネルがあるとギレルモが吐いた。その場所を特定したい。当面の狙いは、ソノラ・カルテルに混乱を引き起こすこと。そうすれば、ソノラ・カルテルのアメリカの最高幹部マニュエル・ディアスは、メキシコ国内の彼のボスに呼び戻されるだろう。そのボスとは、ディアスのいとこ、ファウスト・アラルコンだ。ディアスを追跡すれば、謎に包まれていたアラルコンの所在も分かるだろう。」ケイトは、ギレルモがそんな重要情報を素直に自白したことが信じられないが、とりあえず納得…。
不法入国メキシコ人数人から得た情報をもとに、地図で麻薬密輸のための地下トンネルの場所が特定された。

(7) 資金洗浄屋の逮捕→行きずりの情事(アリゾナ州フェニックス)
マットはソノラ・カルテルの資金洗浄(マネー・ロンダリング)~アメリカ国内の麻薬取引で得られた金を、当居の監視をすり抜ける手法でメキシコへ送金~を行なう女を銀行で逮捕し、虹色のゴムバンドに束ねられた大量の紙幣を押収し、ディアスの口座を凍結する。
ケイトは口座の金の流れを追えば正当にディアスを逮捕できると意気込むが、マットはそれを否定する。当面の狙いは、ディアスではなく、彼を従えるアラルコンであると彼女に告げる。

ケイトはFBIの上司・ジェニングスにマットの≪特捜チーム≫が展開中の超法規的捜査について報告し、助言を求める。しかし彼から、「この捜査に対する協力要請は政府の上層から下されたものだから、法や手続きのことは気にしないでやれ」と説得されてしまう。
苛立ちを募らせたケイトは、気を紛らすために、レジー・ウェインに案内させてバーへ酒を飲みに出かける。(FBIフェニックス支部から出ていくレジーの車の後を、アレハンドロが尾行していく…。)そこでケイトはレジーの友人で地元(フェニックス)警察官のテッド(ジョン・バーンサル)と会い、一緒に飲んでいるうちに気安い雰囲気になり、彼を自宅のアパートに招き入れる。しかし、行きずりの情事はたちまち悪夢に変貌した。彼の持ち物から銀行で押収した札を束ねる虹色のゴムバンドと同じ物を発見したケイトは、彼がソノラ・カルテルに買収された汚職警官であることに気づく。テッドは捜査情報を探るために、ケイトに接近したカルテルの内通者だったのだ。彼女は拳銃を取ろうとするが、テッドが応戦し窮地に立たされる。そこにアレハンドロが現われ、テッドを拘束する。カルテルの動きを先読みしていたアレハンドロに危ういところを救われた彼女は、もはや何も信じることができない無力感に打ちのめされる。
アレハンドロ、マットはテッドを尋問し、カルテルに買収されている他の汚職警官の情報を聞き出す。

(8) 秘密トンネルでの銃撃戦(アリゾナ州ノガレス→メキシコ・ノガレス)
マニュエル・ディアスの屋敷は、軍用の偵察ドローン(高度3000メートル上空を飛行)による監視下に置かれていた。そのディアスに動きがあった。屋敷を出て、黒のベンツ(ナンバーはRIN-31-B7)に乗り込み、メキシコに向かう様子だ。マットの思惑が当たって、カルテルがディアスをメキシコに呼び戻すことになった…。
いよいよ正念場に立った≪特捜チーム≫は、ノガレスの秘密トンネルを急襲する作戦を進める。
出発直前、マットはケイトとレジーにこの作戦に同行するよう命ずる。そして、その理由をためらわずに口にした。「CIAは単独での国内活動を禁止されているからだ」。
マットはCIA局員だった!ケイトはこの驚愕の事実を知らされ、自分が都合よく利用されていたことにショックを受ける。

※米国では、警察(Police)が同一の州で起こった犯罪を管轄し、FBI(Federal Bureau of Investigation、連邦捜査局)が複数の州にまたがった犯罪を管轄する。FBIは司法省配下の法執行機関で、逮捕権のみで起訴権をもたず主にアメリカ国内で捜査を行なう。一方、CIA(Central Intelligence Agency、中央情報局)は大統領の直属機関で、国家の安全保障政策の決定に必要な諜報活動(ヒューミント)を行なうことを主任務とし、米国への他国からの犯罪などの防止や対策、捜査を担当している。

そもそも、FBI捜査官のケイトを≪特捜チーム≫に加えたのは、FBIという公的組織を「隠密作戦」の隠れ蓑に使えるためだった。そして、チーム内で振り当てられたケイトの役割とは、「生きる通行手形」として、ただ国内の各州に渡るチームの行動を当たらず障らず傍観すことであり、チーム自体の捜査力・戦力として期待されていたわけではなかった。
この酷遇に憤慨するケイトだったが、何はともあれ捜査の行方を最後まで見届けたい一心で作戦に参加する。

チーム~マット、アレハンドロ、ケイト、レジー、そして屈強な軍人たち(デルタフォース)~は、ノガレスに向かう。途中、「標的(ディアス)は、まもなく国境を通る」と軍のオペレーターから一報が入り、急ぐ一行。

ダウン SICARIO scene ― at dusk before entering the tunnel 
【光を有効に利用したカメラ演出が見事で、暗闇の中、自然と地平線の光の影に消える突入場面は何とも魅惑的!また、背後に流れる効果的な音響演出も緊迫感を高め、作品全体のドラマ性に深みを与えている。】



デルタフォースを先頭とする一団は、麻薬密輸団のメンバーたちと交戦しながらトンネルの奥へと進行する。
アレハンドロは単身でチームから離別し~トンネルの横道に向かって銃撃するデルタフォースの面々を尻目に~、トンネルを直進しメキシコ側の出口へ向かう。ケイトがその後を追う。
トンネルを抜けたメキシコ側(倉庫)では、ノガレス在住のメキシコ警官シルヴィオ(マキシミリアーノ・ヘルナンデス)がカルテルメンバーの一人と一緒に、パトカーから麻薬を積み降ろしているところだった。彼はソノラ・カルテルに買収された、麻薬の運び屋だった。
そこへアレハンドロが現われ、カルテル・メンバーを射殺。そしてシルヴィオを拘束した時、彼の後を追って来たケイトが銃を向けて静止を命じる。と、アレハンドロは彼女の防弾ベストを撃ち、「2度と俺に銃を向けるな。アメリカに戻れ」と警告する。

負傷してフラフラの彼女は、トンネルを引き返しアメリカ側に戻り、マットと対峙する。トンネル急襲の事態は、アレハンドロをメキシコ側に送り込むための陽動作戦だったのだ。激怒する彼女に、マットはアレハンドロの正体を明かす。
「アレハンドロは“メデジン・カルテル”の殺し屋(Sicario)だ。かつて検察官だったが、ソノラ・カルテルに妻の首を切断され、娘は酸に沈められて殺された。彼はその復讐を遂げるためなら、麻薬カルテルだろうがアメリカだろうが誰とでも手を組むし、邪魔は許さない。」

マットによれば、CIAが主導する≪特捜チーム≫の作戦の目標は、アレハンドロを利用し、コロンビアのパブロ・エスコバル(1949~93)時代の再来を図ることに尽きた。その言わんとするところは―
 麻薬王・エスコバルが創設した「メデジン・カルテル」は1970~80年代、アメリカに流入する全てのドラッグを扱っていた。当時のアメリカ(CIA)は、メデジンから“みかじめ料”を取ったり麻薬の出荷量を決めるなどして、麻薬市場を一応コントロールできていた。だが、90年代に入ってメデジンが弱体化→壊滅の危機に瀕(ひん)するにつれ、メキシコ・カルテルが台頭→アメリカ(麻薬密輸)シェアNo.1になってからは暴虐を極め、今やCIAの手に追えない事態を引き起こし続けている。そこで何とかメデジンと組んでメキシコ・カルテルを潰し、再びコントロールがきく状態に戻したい!CIAの喫緊の要務は、コロンビア・カルテルの復権を果たすことだ。―

ケイトはこのマットの計画の全貌を世に暴露してやると息巻くが、マットは彼女に「それは大きな過ちだ」と警告する。

(9) ディアスを捕捉→アラルコン一家を射殺(メキシコ・ノガレス郊外)
アレハンドロはシルヴィオにパトカーを運転させ、ディアスの車の後を追う。ヘッドセットマイクで軍のオペレーターと通信し、標的(ディアス)の現在位置とルートを確認しながら。
パトカーはディアス自らが運転する車(ベンツ)に追いつく。→アレハンドロの銃撃で、シルヴィオが死亡し、ディアスは足を負傷する。拘束する。→アレハンドロは拘束したディアスと共にベンツに乗り込み、ディアスにファウスト・アラルコンの自宅まで運転を命じる。
アラルコン邸にたどり着いたアレハンドロは、ディアスの首を切り、武装した門衛4名を射殺する。→彼は家に侵入し、護衛1名を射殺する。→彼は妻および二人の息子と食事中のアラルコンと対面する。
アレハンドロの妻と娘の殺害を命じたのは、アラルコン本人であることが明かされる!
アレハンドロはその場で、まずアラルコンの妻子3人を一瞬で射殺する。→アラルコンは言葉を失い、切羽詰まった絶望感を味わわされる。→アレハンドロはやおらアラルコンに銃弾を撃ち込む。それは、一途な復讐の念に燃えた、容赦のない殺「人」だった!

ダウン SICARIO scene ― Time to Meet God


(10) ケイトとアレハンドロの対峙(アリゾナ州フェニックス)
ケイトのアパートにアレハンドロが現われ、彼女を拳銃で脅し、今回の捜査を全て「合法的」とする書類にサインをするよう命じる。拒否したケイトに更なる脅しをかけ~「サインしないなら、君は自殺することになるだろう」~、強引にサイン済み書類を手に入れたアレハンドロは、その場で彼女の拳銃を分解し、「ここは狼の町だ。君は狼ではない。まだ法が存在するどこか小さな町~理非曲直に従って生きられる世界~へでも引っ越せ」と言い放ち、アパートを去る。ケイトは即座に銃を組み立て直し、ベランダからアレハンドロの後ろ姿に銃口を向けるが、結局撃てずに銃を下ろし涙する…。

(11-ラスト) シルヴィオの息子(メキシコ・ノガレス)
シルヴィオの息子が母(シルヴィオの妻)を連れて、サッカーに行く。二人はシルヴィオが昨夜死亡してしまった事実をまだ知らない様子…。
子どもたちがサッカーの試合に興じ、親たちが観戦している。試合は遠くから響くマシンガンの発砲音で一時中断となるが、すぐに何もなかったかのようにゲームが再開される―。

▼予告編



▼メイキング映像



▼特別映像(「劇伴」解説)



▼ Academy Conversations : SICARIO
Sicario discussion with director Denis Villeneuve, cinematographer Roger Deakins, and actors Benicio Del Toro, Emily Blunt and Josh Brolin on September 16, 2015 at the NYIT Auditorium in New York. (Academyとは、The Academy of Motion Picture Arts and Sciences〈略称:AMPAS、映画芸術科学アカデミー〉のこと。)



■私感 :
国境麻薬戦争の「今」を極限の臨場感で捉えたクライム・サスペンス・アクションの傑作!
しかし、この映画は単なるクライム・アクションではない。現実世界の相当に根深い問題をテーマ化することで、登場人物の内面にスポットを当てた人間ドラマでもある。そこでは、麻薬捜査の一断面を切り取ることによって、社会や人間の深層にある「怒り」や「苦悩」や「理不尽さ」を鮮烈に浮き彫りにしている。

この上なく重厚にして刺激的な映画体験~極限のダイナミズム、圧倒的なスリルとサスペンス、胸に押し寄せるエモーション~をもたらす快作!
本作は俳優・脚本・演出・画面構成・音楽・背景が見事に一体化した超一級品の社会派ドラマ⇒ヒューマン・ドラマである。

私は約2時間、文字どおり最初から最後まで、不安な緊張感を持続しながら~死と背中合わせの危うい“ボーダーライン”に誘(いざな)われながら~、画面を食い入るような目で観つづけた。

俳優陣の中では、エミリー・ブラント(Emily Blunt、1983~)とベニチオ・デル・トロ(Benicio del Toro、 1967~)の演技がくっきりと際立って目立つ!

イギリスの女優・ブラントは、FBI捜査官としての倫理と現実の過酷さに精神をすり減らすケイト・メイサーを好演している。
正義感にあふれ、仕事に熱心で秩序を重んじ、ルール通りに作戦を運ぶことにプライドをかけるケイト。そんな彼女が麻薬戦争の得体の知れない闇【理非曲直を目安に自身の行動の基準体系を決められない⇒善悪の境界線(ボーダーライン)があいまいな、白黒つけられない領域】に引きずり込まれて、心が折れるような試練に直面し、信念やモラルが崩れ、最終的には忍びがたい屈辱も味わう…。
この主人公ケイトの内面的な揺らめき・葛藤・挫折を、ブラントはきめ細かくリアルに体現している。

私はブラントの出演作を、これまでに9作鑑賞した。
『プラダを着た悪魔』(2006年)→『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009年)→『ウルフマン』(2010年)→『ガリバー旅行記』(2010年)→ 『アジャストメント』(2011年)→ 『砂漠でサーモン・フィッシング』(2011年)→『LOOPER/ルーパー』(2012年)→『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)→『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014年)。
彼女は女王役からダンサー役まで、またコメディ出演、アクション挑戦…と、役柄を幅広く、数(かず)こなす。知性あふれる、スタイル抜群(身長171cm、体重52kg)のカッコイイ女優だ。

本作の最も不可解なキャラクター、アレハンドロ・ギリックを演じた、プエルトリコ【正式国名:アメリカ合衆国プエルト・リコ自治連邦区(Commonwealth of Puerto Rico)】出身の男優デル・トロも、ひときわ光彩を放つ。
アレハンドロは映画の前半では全く正体不明、クライマックスに彼の不幸な過去が判明する人物。彼はかつては勇敢な検察官だったが、麻薬戦争に巻き込まれて家族を皆殺しにされたことで、今は身を転じて、自分の人生を破滅させたカルテルを掃討するには、どんな線を超えることも厭わない“Sicario”(殺し屋)となった。
この麻薬王たちを狙うSicarioを、デル・トロは冷徹に演じている。その彼の迫真力に満ちた演技には、確固たる存在感がにじみ出るとともに、男の気をそそる色気も漂う。
ターゲットを確実に仕留める酷薄非情な狙撃手(暗殺者)アレハンドロ=デル・トロは、時にケイト=ブラントにさりげない優しさ~互いの心の底に儚く通い合う一瞬の何か不思議なつながり~を見せる男でもあった。

私がこれまでに鑑賞したデル・トロの出演作は、次の通りである。
『007 消されたライセンス』(1989年)→『トラフィック』(2000年)→『21グラム』(2003年)→『シン・シティ』(2005年)→『Che(チェ)』〈『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』〉(2008年)→『ウルフマン』(2010年)→『野蛮なやつら/SAVAGES』(2012年)→『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)→『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)。

ベニチオ・デル・トロは幾つかのTVに出演後、『007 消されたライセンス』などに小さな役で映画出演するが、下積み生活は続いた。そして2000年、スティーブン・ソダーバーグ監督の『トラフィック』(Traffic)で、麻薬王と対決させられるメキシコ州警察の捜査官役で圧倒的な存在感を示し、オスカー(第73回アカデミー賞助演男優賞)を受賞、ついにトップスターの仲間入りを果たした。プエルトリカンとしてはリタ・モレノ、ホセ・フェレールに続く史上3人目のオスカー受賞者であり、南米系俳優の希望の星となった。
彼は188㎝の長身で、カリスマ性に富む、クールで危険な香りが漂う実力派俳優である。「目で妊娠させる男」ともいわれ、その無機的な感じのする鋭い眼光は妙に粘っこく光るとともに、信じられないほどの優しさと温かさを漂わせている。

私がデル・トロを明瞭に対象化できたのは、彼の主演作『Che(チェ) 』(スティーブン・ソダーバーグ監督)において。
同作は革命家チェ・ゲバラ(1928~67)の半生を描いた、アメリカ・フランス・スペインの合作伝記映画。フルヘンシオ・バティスタによる独裁政権をフィデル・カストロと共に倒すキューバ革命までを描く前編『チェ 28歳の革命』(The Argentine)と、ボリビアでの敗北と処刑までを描く後編『チェ 39歳 別れの手紙』(Guerrila)の2部作で成る、全編の上映時間が約4時間半に及ぶ超大作映画。

キューバ革命の英雄⇒世界中の人々に愛された伝説の英雄、チェ・ゲバラ。彼こそは、私に言わせると、体制・権力の総体を不断に相対化しつづける人生を全うした(39歳の短い生涯!)、その意味での世界一の風雲児=快男児にほかならない(かのビートルズのジョン・レノンは、ゲバラを「世界一格好いい男」と絶賛している!)。

※「チェ・ゲバラ」は通称。「チェ」は主にアルゼンチンやウルグアイ、パラグアイで使われているスペイン語で「やぁ」、「おい」、「お前(親しみを込めた)」、「ダチ」といった砕けた呼びかけである。ゲバラが初対面の相手にしばしば「チェ。エルネスト・ゲバラだ」と挨拶していた事から、キューバ人たちが「チェ」の発音を面白がり付けたあだ名である。彼の本名は、エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ(Ernesto Rafael Guevara de la Serna)。

プエルトリコ出身のデル・トロは、アルゼンチン出身のチェ・ゲバラを、体重25kgも減量した、ゲバラそっくりの姿形で、それこそゲバラに成りきって、入魂の演技で熱演している。
もっとも私によれば、俳優魂に徹したデル・トロがゲバラにおける永続革命の“崇高な精神”を果たして、どこまで全的に表現しえたかどうかは疑問が残る。
それはともかく、私にとって彼ベニチオ・デル・トロは、「世界一かっこいい男」ゲバラに扮したという、その一事をもって、私の映画体験史上にありありと刻印された、同時代を代表する名優の一人となった。

波『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』
「チェ」ドンッチェ・ゲバラとベニチオ・デル・トロ
(いずれ劣らぬ強者〈つわもの〉なれど、どちらが、よりハンサムなりや!?)

ゲバラとデル・トロ
2016年8月25日(木)下高井戸シネマ(東京都世田谷区松原3-27-26、京王線・東急世田谷線下高井戸駅から徒歩2、3分)で、15:50~鑑賞。

作品データ :
原題 MACBETH
製作年 2015年
製作国 イギリス フランス アメリカ
配給 吉本興業
上映時間 113分


『ハムレット』『オセロ』『リア王』と並ぶ、シェイクスピアの四大悲劇の一つとして知られる『マクベス』を映画化。中世スコットランドを舞台に、勇敢で有能だが、欲望と野心に囚われた将軍マクベスが、野心家の妻と共に歩んだ激動の生涯を描く。
『SHAME―シェイム―』『それでも夜は明ける』のマイケル・ファスベンダーがタイトルロールを演じ、マクベスの妻に『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』『サンドラの週末』のマリオン・コティヤールが扮する。監督はオーストラリア出身で、デビュー作『スノータウン』に続いてこれが長編2作目の新鋭、ジャスティン・カーゼル。

ストーリー :
激しい内戦で荒廃したスコットランド。仁徳が高く慈悲深いダンカン王(デヴィッド・シューリス)に仕える将軍マクベス(マイケル・ファスベンダー)は、反乱軍との激しい戦闘の末、勝利を収める。その帰路、謎めいた魔女が現われ“マクベスは領主になり、そして王になるだろう”という不可解な予言を囁き、ともに行動していた将軍バンクォー(パディ・コンシダイン)には“子孫が未来の王になる”と言い残して忽然と霧の中に消えていった。そこへ王の使者が現われ、コーダーの領主が死亡しマクベスが領主となるよう勅命が下る。そんな中、マクベス夫人(マリオン・コティヤール)は愛する夫を王位に就かせるために一計を案じる。マクベスの領地にやってくるダンカン王を暗殺しようというのだ。その恐ろしい計画を聞かされたマクベスは、妻の邪悪な囁きに激しく動揺する。まもなく王が到着し、盛大な祝宴が催された。勝利の美酒に酔いしれた王は、諸侯が居並ぶその場で長男のマルコム王子(ジャック・レイナー)に王位を継がせると宣言。善良で人望の厚いダンカン王を殺害することの罪悪感に苛まれる一方、妻から執拗に暗殺計画の実行をけしかけられたマクベスは真夜中、戦場で死亡した少年兵の亡霊に導かれるように王が眠るテントへと忍び込み、敬愛する王の胸に何度も短剣を突き刺すのだった。翌朝、ファイフの領主マクダフ(ショーン・ハリス)がダンカン王の血まみれの死体を発見。何食わぬ顔で現場に足を踏み入れたマクベスは、王殺害の濡れ衣を着せるために酔いつぶれていた王の従者二人を抹殺する。こうしてマクベスは、イングランドへ逃亡したマルコム王子と従者たちに罪をなすりつけ、新たなスコットランド王に指名された。さらにマクベスは、バンクォーの子孫が王になるという魔女の予言を阻止するため、刺客を放つ。だが、刺客はバンクォーの命は奪ったものの息子フリーアンス(ロックラン・ハリス)を取り逃がし、その夜の晩餐会の席上でバンクォーの不気味な幻影を目の当たりにしたマクベスは、錯乱状態に陥ってしまう。耐えがたい不安に駆られたマクベスは、城を抜け出し、魔女に新たな予言を請う。“マクダフに用心せよ”という言葉に従い、マクベスはマクダフの妻子を捕らえて火あぶりにする。その常軌を逸した振る舞いは、マクベス夫人の目にも狂気の沙汰に映った。やがて絶望した夫人は見る見るうちに衰弱して息絶え、マクベスは妻の冷たい亡骸を抱きすくめる。そのとき城の外には復讐の鬼と化したマクダフとイングランドの軍勢1万人が押し寄せ、荒野は地獄の如く真っ赤に燃え上がっていた…。

▼予告編

2016年8月24日(水)吉祥寺プラザ(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-19、JR吉祥寺駅北口サンロード突き当たり左)で、16:30~、日本語吹替版を鑑賞。

作品データ :
原題 FINDING DORY
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
上映時間 103分


カクレクマノミのニモと愉快な仲間たちによる冒険を描いた『ファインディング・ニモ』(2003年)の続編。前作から1年後の世界を舞台に、何でもすぐに忘れてしまうナンヨウハギのドリーが唯一忘れなかった大事な家族を捜すため、壮大な冒険の旅に出る。ニモとマーリンの親子やカメのクラッシュといったおなじみのキャラクターも登場する。監督は、『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』で2度アカデミー賞長編アニメ映画賞に輝いたアンドリュー・スタントン。

ストーリー :
ある晩、ドリーは突如過去の記憶を思い起こす。そのまま朝になり、彼女はニモと共に学校の遠足へ行くが、そこで不注意により激流に飲まれ、気を失ってしまう。他の生徒に囲まれて目を覚ますと、過去に似たような経験があったことを思い出す―「激流には近付いてはいけない」と言われていたこと、そしてそれを自分に教えてくれたのは両親だということ。彼女は幼少期、何らかの理由で両親とはぐれ、次第に誰を探しているかも忘れながら彷徨っているうちに成長し、マーリンと出会っていたのだ。改めて両親を探すことを決心した彼女は、唯一覚えていた「カリフォルニア モロ・ベイの宝石」という言葉を手掛かりに、ニモ、マーリンと共に両親を探す旅に出る。その道中、両親にまつわる様々なことを思い出す。

グレートバリアリーフからカリフォルニア沿岸に着いた3匹だったが、途中でイカに襲われ、ニモが怪我をしたかもしれないという。助けを求めるべくドリーが水面へ上がると、人間に捕まり、海洋生物研究所の隔離棟に連れて行かれてしまう。そこでタグを付けられた彼女は、そばにいたミズダコのハンクに話を聞く。彼によると、研究所の生き物は適切な処置を受けていずれ自然へ還されるが、クリーブランドの水族館に送られるものにはタグが付けられるという。そして、その出発は翌朝。彼は自然界にいい思い出がないため、水族館に送られて隠居することを望んでおり、彼女のタグと引き換えに、家族の元へ連れて行くことにする。

ドリーは道中、自分のことを覚えているというジンベエザメのデスティニーと隣の水槽に暮らすシロイルカのベイリーに会い、自分の家がオープン・オーシャンという展示水槽にあることを教えてもらう。「カリフォルニア モロ・ベイの宝石」とは、まさしく自分が育った海洋生物研究所がある場所のことだった。彼女はハンクにタグを渡してオープン・オーシャンの水槽に入り、ハンクは隔離棟へ戻って行く。水底に並べられた貝殻を見た彼女は、それが家への道しるべとして両親が置いてくれたものであることを思い出し、遂に実家にたどり着く。しかし、そこはもぬけの殻で、そばには紫色の貝殻、そしてパイプへとつながる激流が見える―幼少期、自身の将来を案じる母を見た彼女は、慰めに母が好きだった紫色の貝殻を拾おうとしてパイプに吸い込まれ、両親とはぐれてしまっていた。ナンヨウハギは全て隔離棟に移されたと聞いた彼女は、パイプを通って再び隔離棟へ行く。

ドリーがパイプの中を進んでいると、試行錯誤の末館内に入ったニモ、マーリンと再会する。彼女が隔離棟でハンクの助けを借りてナンヨウハギの水槽に入ると、困惑の中温かく受け入れられる。しかし、他のナンヨウハギは彼女の両親の現在について口を濁す。実は随分前に彼女を追って隔離棟へ行ったが戻ってこなかったという。マーリンが彼らは亡くなったのだろうと告げると、彼女は動揺する。ハンクがタグのない3匹を水槽から出そうとしたところで職員に見つかってしまい、その拍子に彼女は海につながるパイプへ転落、ニモとマーリンは水槽に取り残され、トラックに載せられてしまう。

絶望に浸るドリーが海底で慌てふためいていると、貝殻が並んでいるのを見つける。それを辿って誰かの家に行き着くが、そこからは何方向にも貝殻が並べられていた。そこへやってきたのは、両ビレに貝殻を持った彼女の父・チャーリーと、母・ジェニーだった。遂に両親との再会を果たした彼女は、最後にニモとマーリンを助けようと研究所へ戻るが、ちょうどトラックが出発するところだった。両親を連れてデスティニーとベイリーと共にダメ元でトラックを追うが、彼女は道路橋の袂に集うラッコの協力で車の流れを止めることに成功する。トラックに乗り込んだ彼女は、ニモとマーリンに会って話をするも、今度は彼女だけがトラックに取り残される。トラックからの脱出を試みた彼女は、ナンヨウハギに擬態してトラックに乗っていたハンクと共に荷台から脱出し、トラックを乗っ取り、ハンクの運転で研究所へ戻ることにする。彼女の道案内によりラッコがいた橋まであと一歩と迫るが、既に警察がパトカーでバリケードを作っていた。行き詰まった彼女は、ハンクにトラックごと海へ突っ込むよう指示し、荷台の魚も含め、海へ戻ることができた。彼女は両親にニモとマーリンを改めて紹介する。

ドリーは両親、デスティニー、ベイリー、そしてハンクも連れてグレートバリアリーフに帰り、新しい仲間と共に日々の暮らしを送る。ある時、マーリンはドリーが一人でどこかへ行くのを見かけ、心配してこっそり後をついて行くが、彼女はそれに気づいていた。延々と続く海中を眺めながら、二人で家族とは何かについて語り合う。

エンドロール後、前作でビニール袋ごと逃げ出した魚たち(タンク・ギャング)がはるばるカリフォルニアへ到達し、海洋生物研究所の職員に回収されるところでラストとなる。

▼日本語吹替版予告編