A-397 モーゼ全身像(小)
A-397 モーゼ全身像(小) H.16.5×W.5.5×D.6.5cm
前回に引き続き、ミケランジェロ作のモーゼ像ですが、こちらはかなりのミニチュアサイズになります。
巨大な原作彫刻に比べると、あまりにも縮小されたものですので、再現性云々はあまり意味がないかもしれません・・。
後世の人による、ユリウス二世霊廟の予想図の一つ。二段目右側にモーゼ像が配置されています。
モーゼ像自体についてはすでに十分書いてしまいましたので、きょうはモーゼという人物について少しだけ・・。
レンブラント 十戒を持つモーゼ
特別にキリスト教に帰依していない私にとっては、モーゼという人物について知っていることといえば・・・。
旧約聖書、十戒、出エジプト、海が真っ二つに割れて・・・というところでしょうか。たぶん大昔のハリウッド映画の伝える雰囲気だけをつかんで、分かったような気になっているような気がします(しかも”十戒”の映画は、見たことがない・・)。
ということで、例によって、Wikiをパラパラと読みひろって、モーゼの生涯についてレポートしてみたいと思います。
キリスト教世界にとっては、旧約聖書と新約聖書という二つの聖典があります。新約聖書はキリストの存在以降について記したもの、旧約はそれ以前の世界について記したものということになります。
モーゼは、旧約聖書の登場人物です。
モーゼというと、日本人の我々にとっては、キリスト教の重要人物というイメージがありますが、実は彼はユダヤ教、イスラム教に於いても最も重要な預言者という地位を占めています。
現代のニュースなどを見ていると、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教、というこの巨大宗教勢力は、常に諍いごとの根本原因になっているような印象を受けますが、この三つの宗教がそれぞれ大切にしている経典に同一の人物が登場するというのは奇妙な印象を受けませんか?
そもそも、”旧約聖書”という呼称は、イエス・キリストとの新たな契約から出発したキリスト教徒たちが、それ以前の世界観をキリスト教的に解釈して”旧約”と呼んだだけで、もともとは旧約聖書だけだったのです。
ですから、ユダヤ教にとっては、この”旧約聖書”だけが唯一の聖書ですし、イスラム教もムハンマドによるコーランと同時に、”旧約聖書”と呼ばれる聖書を自分達の神の啓示が書かれた預言書として扱っています。
つまり大元をたどってゆくと、この三つの宗教の根っこは同じということになります。ところが、長い年月と積み重なった争いごとによって、お互い相容れない存在となってしまっています。
宗教というものに特別な気持ちのない私からすると、なんで?という気にもなるのですが、事はそんなに単純な話ではないんでしょうね~・・・。
ということで、モーゼは旧約聖書の”出エジプト記”に登場します。
モーゼはヘブライ人としてエジプトで生まれ、当時のファラオのもとで迫害されていた同胞のヘブライ人を率いてエジプトを脱出するよう神からの啓示を受けます。
現在のパレスチナの周辺の”約束の地”を目指してエジプトを脱出したモーゼ達の一行は、その後40年間にわたって”荒れ野”をさまよいます。苦難の道中では、シナイ山で十戒を授かったりといったエピソードが描かれます。
モーゼ自身は、約束の地を目前にして亡くなったとされています。
約束の地を前にしたモーゼの死
こういったエピソードの”さわり”だけを書き綴ると、なんでユリウス二世霊廟にど~んと”モーゼ像”がフィーチャー??とちょっぴり疑問なのですが、迫害されていた民を救ったリーダーとして、キリスト教では重要な存在なんでしょうね。。
ダビデっていうのも、旧約聖書の登場人物ですよね。。そして、ユリウス二世霊廟の前に手がけたシスティーナ礼拝堂の天井画でも、ミケランジェロは旧約聖書の世界を中心に描いています。
当初、ユリウス二世は天井画に”キリストの十二使徒”の物語を描くよう命じたにも関わらず、ミケランジェロはこれを拒絶し、旧約聖書の創世記を中心としたプランで教皇を説得したと言われています。。
この辺は、時代の雰囲気なんでしょうか・・・。晩年のミケランジェロがシンプルな祈りを具現化したようなピエタ像に執着していたことを考えると、1500~1515年頃のフィレンツェ・ローマという都市、そしてミケランジェロ自身の持っていた高揚感が、このような”旧約”的なテーマに向かわせたのでしょうか。。。
私のにわか勉強では、この辺の事情は理解が不十分ですね~。
ちなみに、モーゼの頭上にある二本の”つの”。
これは、モーゼが頭上から発していた”光”を表現しているんだそうです。そして、右手にもっているのは”十戒”が記された石板。
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