シオサイダーディープレイ ~ラスト~ | 俺的スロ日記

俺的スロ日記

行儀良く真面目なんてペナ喰らえと思った

シオサイダーディープレイ~その①~
シオサイダーディープレイ~その②~
シオサイダーディープレイ~その③~



美しいババジのUターンを見た翌日、俺はいつもどおり、友人よりも5分ほど早くババジの後ろに並んだ。


きっとババジ達は、ヤンキー漫画のようにガン飛ばしてきた友人の事が、気に入らないだろう。


言い争いになったりケンカになったりという雰囲気はないが、絶対に友人の事が、気に入らないに決まっている。


俺は変な火種にならなければ良いがと不安だった。しかし事は不思議な方向に発展した。

ババジ達は友人のことが『気に入らない』の反動なのか?俺のことを『お気に入り』になられ、俺は可愛がられる。









この日以降、並びの時間に、ババァが個別包装の菓子を俺にだけ配るようになった。友人には配らない。古典的かつ昼ドラ的な手法だ。

こんな安い菓子で俺を懐かせようとしているのであろうか?馬鹿じゃねぇのか?













たった数日間、安い菓子を与えられた俺は簡単に懐いてしまい『よばれよか?(いただこうか?)』みたいな雰囲気でババジ達と仲良く菓子を喰い、楽しく並びの時間を過ごしだす。


ジジィのメロンネタに、愛想笑いしてあげるのも上手になってきたし、ババァがくれる個別包装の菓子に対して、なんだよぉ今日もハッピーターンかよ!カントリーマームくらい配れよと!心の中で好みの菓子を欲しがりながらも『アリガーッス!』と感謝の言葉は必ず言うようになった。





しかしババジ達と仲良くする俺を見た友人はイラっとしたのだろう『チッ!』と舌打ちをしたのである。


俺は友人のことを、『え?何なのこの人?』みたいな目で見てやった。

この店では俺と友人は、他人同士を装って打っているから、俺がババジと仲良くしたって関係ねぇだろ、こっちはこっちで徹してるだよクソボケ野郎が!みたいな目で、もう一回見てやった。


そしたら友人は『ツィィィッ!』と強舌打ちをした。結構お怒りの御様子だ。

俺は『ちょ・・・そういうのヤメテよ・・・』みたいな目でチラ見した。








『ツィィィッ!』

『ツィィィッ!』

『ツィィィッ!』


数分おきに友人の強舌打ちが鳴る。一回でも強舌打ちしたら、後は強舌打ちが誘発するシステムらしい。怒っているよと伝えてきてるのだ。


友人の顔を見ると、舌っ先を上前歯の裏に貼りつけて、何発でも放つぞ!みたいな表情で俺を威嚇する。こいつもこいつで馬鹿野郎だな。


そんな事より15時のおやつ用にくれる、雪の宿を配給してもらわないと、もうすぐ入場時間だと焦り、ババァに雪の宿をいただきポケットに詰めた。









入場数分前、店員が列を整列させる。

先頭からババァ・ババァ・ジジィ・俺・友人といつも通りの並びができた時だった。

ジジィが安定のメロンネタを喋りクソスベっているところに、ババァが『わたしがそのメロンいただこうか』というコンボが出た。そしてジジィがワンコの様に懐いている俺にメロンネタをふってきた。


ジジィ『兄ちゃんのメロンはサクランボやろ?』と俺に問いただす。


一瞬、ん?と考えたが俺のメロンは、寸法的にも経験的にも、疑う事なき純潔サクランボだった。

ジジィが初めてうまい事を言って驚いたのと同時に、童貞である自分に頬を染めた(ポッ!)








その時、後ろから風が来た。

俺の後ろに並んだ友人から風が来た。

笑う事を我慢して、鼻から小刻みに抜いて処理しているリズミカルな鼻息が、俺のうなじを襲う。


フンッ・・・ フンッ・・・ フーーーンッ!・・・・・・フンッwフンッwフンッwフンッw


一回長めに抜いた事で上乗せされる我慢笑いあるあるを、俺は甘んじて、うなじで受け入れるしかない状況。神様は僕に試練を与えて下さったようだ。


前方のジジィから公衆の面前で童貞をあばかれ、後方の友人からリズミカルに風で笑われている。


下を向いたまま赤面しながらも、1分でも1秒でも速くこの時間が過ぎてくれと祈ったが、ポケットにパンパンに詰めた雪の宿が、時の加速度にブレーキを掛けていた。



投了