犬とおっさん(人間)

テーマ:

盲導犬候補生アーシー(仮名)と

本日は某ホームセンターに

歩行訓練に出かけました。

 

今日はここで英国盲導犬協会の

募金活動が行われるという話で

訓練がてらちょっと皆様に

ご挨拶をしようかと。

 

 

お店に到着したのがお昼過ぎ、

まずはアーシーのお腹を

お店の外で空にしてから

のこのこと入店しますと

なるほど、お店の出口のところに

英国盲導犬協会のシンボルカラー(?)である

真っ青な上着を来た人たちの集団が。

 

そしてその足元には数頭の犬たちが。

 

現在訓練中の盲導犬候補生の他に

引退盲導犬が1頭と『健康上の理由から

盲導犬にならなかった』犬が1頭。

 

この状態でアーシーが興奮しない訳はなく

「アーシー、落ち着いて。お座り。落ち着け!

お座り!アーシー、よく聞いて、お座り!座れ!

お座り!そうそう、で、そのまま待て・・・いやだから

まずお座り!リードを引っ張るんじゃありません!」

 

何かしら、すっかり『優秀な盲導犬の

関係者および犬の間に紛れ込んだ

駄目犬と駄目飼い主』みたいな

情けない有様になっていた我々でしたが

そこに今回の活動を主導していると

おぼしき女性がやって来て

「きゃー、よく来てくれたわね!ありがとう!

この犬のお名前は?アーシー?いい名前ね!

今いくつ?まだ子犬でしょ?6ヵ月?

やっぱりまだ子犬ね、いいわね、これくらいの子は

まだまだ子犬らしくていたずらっ子で!」

 

「いやいや、普段はもう少しいい子なんですけど」

 

「今日はお店も混んでいるし他の犬もたくさんいるし

6ヵ月の子なら興奮して当たり前よ!」

 

そんなこんなでアーシーはそこで

他の犬たちと情熱的に挨拶を交わし

それで少しは気分も落ち着いたのか

その場に座り込んでくれたので

私はその横に立って

行き交う人々と会話をすることにして

「その子も盲導犬候補生ですか?名前は?」

「アーシーです!」

「アーシー、じゃあいい子にしているんだよ!」

 

「えっと、その犬もやはり盲導犬になるんですか?」

「そうです、盲導犬候補生です。名前はアーシーです」

「お利口そうだねアーシー!」

 

10分ばかりそんなことをしてきたら

一緒にお店に来ていたわが夫(英国人)が

とことこと近づいてきたので

私は募金活動に従事していた関係者の方々に

「あ、紹介します、うちの夫です」

 

その瞬間私の隣に立っていた殿方二人が

「あー!君、それは駄目それは駄目!

正直すぎる!あのさ、君はさっきからずっと

『この子が!私の!アーシーです!』って

すごく誇らしげに、高く弾むような声

楽しそうに犬を紹介していたでしょ、

それが自分の旦那を紹介する時には

そんなに声を落としちゃって・・・

君のその気持ちはわかるけどさ!」

 

私のどの気持ちがおわかりなのです!

わかりました、では改めて・・・

皆さん、紹介します!私の愛する夫です!」

 

「うーん、試みはいいけどさ、

遅い、それはもう遅すぎるよね」

 

何なんだ!

 

その後私は犬を連れて店内を歩き

20分ほど歩行訓練を実施。

 

夫はその間

募金活動の手伝いをしているものと

思っていたのですが

訓練を終えて青服集団の元に向かっても

その姿がそこには見えず。

 

あれ?とその場に立ち止まったら

活動主催者の最初の女性が駆け寄ってきて

「今日は本当にありがとう!

アーシーちゃんにも新しい体験だったと思うから

今日は帰ったらよく休ませてあげてね!」

 

「もっと長くお手伝いが出来なくてすみません」

 

「いいの!そんな風には考えないで!

5分、いえ、10分でも犬を連れてこの場に

立っていてくれただけで大感謝なのよ!

そりゃ犬がこの場にいるといないじゃ

客寄せ効果が段違いなんだけど、

でも一番大事なのは犬、

絶対に無理をしちゃいけないわ!

だからもう帰ってくれて大丈夫なのよ

・・・それとももう少し犬の訓練をしたいとか?」

 

「いや、そうではなくて・・・あの、

うちの夫は今どこにいるんでしょう?

何か見失っちゃったみたいで」

 

その瞬間、先ほどの殿方二人が

「何っ!君の夫がどこかに行ってしまった?

・・・一瞬の隙を逃さないとは出来る男だ・・・!

いいかね、男というものはだね、機会さえあれば

常に妻から逃げたいと考えているもので・・・」

 

何なんだこの二人組は!

 

その後もこのおっさんコンビは

「君の夫は駐車場に向かったと思う、

あ、でも車を探すより先に

隣のお店を見たほうがいいんじゃないかな、

その間に旦那さんは逃走距離を稼げるし・・・

じゃなくて買い物ってきっと楽しいし!」

 

「うんうん、もしも旦那さんが戻ってきたら

ちゃんと言っておくから、車じゃなく

バスを使って姿をくらませ・・・じゃなくて

君と犬が探していたよって!」

 

夫は5分後に

クッション売り場で発見されました。

 

 

なお私からこの殿方二人組の話を聞いた夫は

最初は素直に笑っていたのがふと顔を曇らせると

「その二人はあれですね、僕をのけ者にして

隙あらば君を口説こうとか

そういうことを考えていたんでしょうね。

まったく油断も隙もあったもんじゃないですね」

 

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本日は『ニャイター発ワン同』ではない

普通のニュースを話題にしたいかと。

 

・・・時事ネタは当ブログにおいて

基本的に不人気なんですけど

でも現在のこの英国の『EU離脱』をめぐる

社会・政治の熱い動きに関しては

一言書いておかないと

許されない気がするというか。

 

そんなわけでこの数日間、そうですね

この2週間くらいでしょうか、私と夫(英国人)が

毎日ニュースを確認して感心しているのは

メイ首相が今に至るまでなお辞任していないこと。

 

いえ、これは嫌味では決してなくてですね、

普通の一刻の宰相、一般的な首相なら

もうとっくに政権運営を放棄して

「すみませんでした、自分には無理でした、

これ以降の仕事は次の内閣にお任せします」って

開き直って逃げを打って当然の事態が

このところ続いているわけなんですよ。

 

たとえば現在の英国与党党首が

メイさんではなくて

某ボリス・ジョンソンさんだったらですね、

あの人ならそうですね、今回

ラーブ離脱担当大臣が辞任する(11月15日)前、

その前任のデイヴィッド・デイヴィス離脱担当相が

辞任を表明した(2018年7月8日)時点で

「閣僚がアホやから政権運営でけへん」とか言って

首相の座から逃走していたと思いますね。

 

 

 

(ボリス・ジョンソンに対する熱い風評被害)

 

いや、もうそれくらい今の第二次メイ内閣は

閣僚辞任が相次いでいる印象で、

先にも触れたように今年の7月、

デイヴィス離脱担当相が辞任した時には

一緒にボリス(外務担当)も辞めていますし、

それでまた11月になって

 

ラーブ離脱担当相と

マクヴェイ雇用・年金担当相が辞めて

こうした人たちの辞任理由が揃いも揃って

メイ首相が進めようとしている

『EU離脱の方針・計画』に

合意できないから、という純粋に政治的なそれで

ある意味見ていてとてもわかりやすいというか、

そうですよ、国会討論や

新聞の政治記事に私が求めるのは

こういう真面目で真剣な意見の応酬、

やれ『口利き』だ、それ『闇献金』だ、

そういう話も面白いし大事ですけど

でもやっぱり国会で議員が火花を散らすには

それにふさわしい

硬派な話題というものがあるわけで。

 

ところでこの英国の

『EU離脱の方針・計画』についてはですね、

私はこれ、『万人が納得できる』方針・計画の

策定は不可能だと思っているんですよ。

 

どの方向に舵を切っても、その判断に

異を唱える人々は絶対に存在するのです。

 

また、その選択によって今後

どんな結果が到来しても、

そこで不満を抱く人も必ず出る。

 

そんなわけで今、

英国の政治家として一番楽な行動は

とにかくメイ首相のやることなすことに

難癖をつけて批判すること、でございましょう。

 

そうしておけば

ある一定数の支持は獲得できますから。

 

それとは逆に、今、英国首相として

一番楽な選択は『辞任』であると私は信じます。

 

そんなことしたら政治家としての名に

傷がつく、という声もあるかもしれませんが、

安心してください、すでにメイさんは満身創痍です。

 

近頃のメイ首相に私が連想するのは

第一・第二エンジンが故障した大型旅客機を

嵐の中なんとか近場の草原か海原に

緊急着陸させようとしている機長の姿で、

もう必死になって計器と地図と

にらめっこをしているところに

本来であれば機長を補佐すべき

副操縦士や機関士が横から口を出して

「緊急着陸は危険ですよ、

滑走路を使う方がいいですよ」

「だから滑走路がここらへんにはないの!」

「・・・僕、先にパラシュートで

脱出させていただきますね、失礼~」

 

私が機長ならそんな副操縦士の頭頂部に

思いきり操縦マニュアルの角のところ

めり込ませたいところなんですが

メイ機長は正直そんなことをする

手間さえ惜しい状況なのではないかと。

 

だってとにかく今は飛行機を

飛ばし続けなくちゃならないわけですから!

 

どこかに無事に着陸させないと

いけないわけですから!

 

無事に着陸出来たら出来たで

乗客たちは文句をいうことでしょう、

もっと他に方法があったのではないか、

そもそもの見通しが甘かったのではないか、

機長の判断は誤っていたのではないか。

 

でもこの機長はさ、メイ首相はさ、

もともとEU離脱には懐疑的な立場で、

それを『しかし政治家ならば国民の声、

住民投票の結果に従うもの』として

ここまでEU離脱を押し進めてきたわけで。

 

ところで私はメイ首相の『声』を

ラジオのニュースを通して

耳にすることが多いのですが、

この人は己の『不安』が『早口』という形で

声に現れる人なのではないか、と

個人的に感じております。

 

この間(2017年6月)の総選挙の

選挙戦後半の頃など、意識的に

『余裕のある』風を装って声を低く、

威厳をもって発言しようとするものの

言葉がペラペラと上滑ってしまっていて

「あれはよくないと思うぞ。

聴き手に不安感を与える話し方だ。

『自分を不安にする』人間に

有権者はあまり投票しないものだぞ。

保守党の選挙対策委員か誰かに

その旨教えてあげたらどうだ」

 

厚意から夫にそう告げたところ、夫は

「でも保守党はすでに広告代理店だの

スピーチの専門家だのに多額のお金を払って

そういう指導をお願いしていると思うんですよね」

 

結局去年の選挙で保守党は

予想外の敗北を喫しまして、

そこから1、2ヵ月、メイ首相はやはり

私がその声を聞くたびにあの

『己の不安が声の速度に滲み出ている

話し方』をしてしまっていてですね。

 

これはメイ第2次内閣は

短期政権で終わるかな、と

勝手に予想していたところに

今回のこのEU離脱をめぐっての

さらなる揺さぶり、これはもう致命傷間違いなし、

メイ首相お疲れ様!でも後釜は誰になるのっ?

 

・・・ところがですね、皆様、最近の

メイ首相の『声』、お聞きになったことあります?

 

あの人ね、ものすごく優秀な

スピーチ指導員に鬼の短期特訓を受けたか、

あるいはここにきて完全に自分の立場に対し

『腹をくくった』様子でいらっしゃいますよ。

 

声に不安がまったく出ていない。

 

メイさんはもう多分、自分自身の

無傷での帰還を諦めたんだと思います。

 

誰がやっても非難される仕事、

たぶん報われることがほとんどない使命、

でも今自分が逃げても事態は絶対に好転しない、

貴重な時間だけが無駄に費やされ、

大英帝国が乗り越えるべき

苦難の波はさらに高くなる。

 

「地位にしがみついている」と嘲る人もいるだろう、

でもこうなったら誰かが

荒波に正面からぶつからねばならない。

 

義を見てせざるは勇無きなり。

 

彼女の立場を想像するだけで

私は自分の腸が捻転するような

ストレスを感じるのですが

(Norizoさんに限ってこの比喩は笑えない)、

明鏡止水の境地に入ったメイ首相に

怖いものなどもはやない、たぶん。

 

思うにあの人は今、己の評価だの

来期の仕事だの

今後の人生だのを超えたところで

『英国の首相たるもの、有事の際に

なすべきことは何か』という

その一点だけを考えて

行動しているように私には見えます。

 

歴史小説だと周囲と社会は

こういう指導者に率いられて

苦難を脱するものなのですが

・・・悲しいけどこれ現実なのよね。

 

 

 

英国のEU離脱、

その着地点はどこになるのか。

 

しかし我々は洒落抜きで

歴史の分岐点に立っておりますね。

 

2018年も残りもう1月とちょっとでございます。

 

 

どういうものか私はボリス・ジョンソン氏のことを

『首相の器ではない』と思っているようで、

いや、優秀な人だし宴席で会ったら

絶対に楽しい人だと思うんです、

でも何かしら、あの人にはその・・・

『逃げ癖』があるような気がするの・・・

 

党首選の時とか

EU離脱方針における閣内対立の時とか

「え、今?今そこでそういうことしちゃう?」みたいな

 

わが夫は割とボリスに好意的というか

「あの時は彼もああするしか

なかったんですよ」的なことを

言うんですけど、でも私は一国の宰相には

「こうするしかない、けど、そうはしない」みたいな

意地のようなものを求めたいかな、と

 

しかし声、話し方というのは大事ですね

 

今のメイ首相のあの『大衆を安心させる』声音、

あれは政治家として大いなる武器だと思います

 

わが国の安倍首相も実は

『弱気』が『早口』として出てくる方かと

 

(2017年の都議会選挙前とか

『ああ!早い!早い!』という感じであった)

 

絶対に『気持ちゆっくり目』に喋った方が

安倍首相には格段の風格が添えられますので

自民党の広報担当者は

今後気を付けてくださるように

 

(このブログはどこに向けて

何を発信しているのか)

 

声に自信のあるあなたも

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猟奇!青カバ事件!

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英国スコットランド奥地の民家にて

本日午後、青カバの変わり果てた姿が

その民家に住む男女により発見された。

 

 

民家の居間の中央で

青カバは無残にも全身のワタを

周囲にまき散らした状態であったという。

 

この青カバは現在この家に暮らす

盲導犬候補生(黄色、雌犬)が

生家より持参したもので

当初より盲導犬候補生はこの青カバに

強い愛情と執着を示していた。

 

 

その愛情と執着の強さは

盲導犬候補生が成長してからも変わらず

当局はこうした愛憎のもつれが

事件の背景にあったものとして捜査を進めている。

 

 

ワタを抜かれた青カバが発見された時

その隣で盲導犬候補生がそのワタを

愛おしそうに口に含んでいた、という

目撃証言・写真も存在することから、

当局はこの盲導犬候補生を容疑者とし

現在慎重に取り調べを行っている。

 

 

なおこの盲導犬候補生は

今回の事件の被害者となった青カバの他に

桃色のブタにも一時強い愛着を

示していたとも言われている。

 

 

この桃色ブタは現在行方不明になっており

当局は第二・第三の事件の存在を念頭に入れ

現場検証を進めているとの話である。

 

 

桃色ブタは体長約30センチ、

強く握ると「ぴぎっ」と鳴き声をあげる。

 

 

捜査関係者によれば盲導犬候補生は

「青カバにも桃色ブタにも

危害を加えるつもりはなかった。

ただ心から愛していただけ」と供述しているとのこと。

 

 

事件現場となった民家に暮らす白黒猫は

匿名を条件に次のように語ってくれた:

「あの犬は悪い犬ではないが

愛情表現の激しさには普段から

ついていけないものがあった。

いつかこんな事故が

起きるのではないかと懸念していた」

 

冬を迎える北国の住民を

さらに震え上がらせる猟奇事件である。

 

    (11月18日、ニャイター発ワン同)

 

 

これ、続報があるとすれば

天才的モグリ医者Norizoによる

奇跡のワタ再入手術レポートになるかと

 

 

 

 

まったくあの犬は!

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盲導犬候補生アーシー(仮名)のため

真正ひきこもり時代の生活が嘘のように

毎日毎日外に出ております私ですが

最近はいくつか『行きつけ』のお店、

みたいな場所も出来てきまして。

 

そんなお店の一つが

車でちょっと走った先にある町の

『八百屋さん』。

 

日本の八百屋さんと違って

道に向けて品物を並べるのではなく

道路に面したドアを開けて中に入ると

そこにカウンターがあって

そのガラスケースの中とカウンターの奥に

地元で採れた新鮮野菜・果物が

ずらりと並んでいる、という内装。

 

そんなお店の片隅に

『犬用おもちゃ・お菓子』が置かれていて

私とアーシーは現在週に1度ここで

大きな『骨の形をした犬用の

おしゃぶり』を買っているのでございます。

 

「うちは犬のおもちゃをこうして

売っている位だから、気にせずいつでも

お店に入って来てくれていいよ」と

店主さんには言ってもらえているのですが

一応念のためお店のドアを開けるたびに

他のお客様たちに向かって

「すみません、犬を連れて入店します。

アレルギーをお持ちの方はいらっしゃいませんか」

とか訊ねちゃっている私のこの小心ぶり、

いや、小心を装った狡猾さと言うべきか。

 

だって逆の立場になったら

「・・・えー、犬がお店に入ってきちゃうんですかー」

とか言いたくても言えないでしょ?これは。

 

ともあれ本日も他のお客様たちから

笑顔で入店許可を得たうえで

アーシーとともにお店に入り

「よし、アーシー、ゆっくり、急がず、

私の横についてお店の奥に・・・

急いじゃ駄目!あと他の人の

ニオイを嗅ぐのも駄目!集中!

私の横について・・・左側!左側につくの!」

 

お店に入るまでは割と『いい子』であった

本日のアーシー嬢、何故かこの瞬間に

いたずらっ子状態になりまして。

 

「な、なんかすみませんね、あ、じゃあ

ちょっと横を通らしてください、

犬と人が奥に入りまーす、なんちゃって

(気まずさを誤魔化そうとあえて

『滑る』笑いを狙いに行く私)」

 

そう言いながら大柄な紳士の横を通り過ぎ、

犬のおもちゃコーナーの前で

アーシーに『お座り』の姿勢を

取らせようと悪戦苦闘しておりましたら

その紳士が無表情にしかし良く通る声で

「訓練中かね」

 

「左様でございます」

 

「犬と君、どっちがどっちを訓練しているのかね」

 

「・・・おっしゃる通りでございます」

 

まあ本当に道のりは遠いのでございますよ。

 

 

 

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盲導犬候補生アーシー(仮名)と

本日はバスに乗ってまいりました。

 

バス停でバスを待つこと5分、

近頃のアーシーはこういう時

静かに私の足元に

座り込めるようになっていて

個人的にはこういう小さな点に

大きな進歩を感じて

喜んでいる私なのですが、

そこにしずしずと道の向こうから

2階建てバスが登場。

 

バス停に並んでいた他の人たちに

先に乗車してもらいつつ

アーシーと私が座れる席はあるかな、と

バスの中を窓越しに眺めたら

私とアーシーが座りたい『入り口近くの席』に

お洒落な若い今時の男の子が座っていて、

そしてこの男の子が興奮した口調で

何やら背後にいる女の子たちに話しかけている。

 

あの輝く瞳、上気した頬、小刻みに揺れる肩、

間違いない、あれは犬好き青年・・・!

 

ともあれ順番が来たのでバスに乗りこみ

「盲導犬候補生です。訓練のため

バス停1つか2つぶん乗車させてください」

と運転手さんに告げ、許可を貰ってから

座席のほうに体を向けると件の青年が

素知らぬ顔をして席を移動していました。

 

つまり先ほどまではその男の子は

車両前方の2人掛けの席に座っていたのが

この時はその斜め前の、簡易席というのでしょうか、

椅子が折り畳み式になっている箇所に

腰を落ち着けていて、で、全身から

「犬!こっちに来い!この座りやすい

席に座れ!俺が今空けてやったこの

2人掛けの席に座りに来い!」という

念波を発しているような感じで。

 

しかしこれは私とアーシーにとっては

非常にありがたい事態。

 

そのまま私も青年の思惑には気づかぬフリで

2人掛け席に座りアーシーを床に伏せさせ、

すると青年の友達らしい女の子たちが

青年に向かって小さな声で

「よかったじゃなーい!」

 

・・・青春真っ只中の若者たちって可愛いなあ!

 

しかしここでニヤケ出しては

私は犬を連れた不審人物、

必死で難しい顔を維持しておりましたら

バスが動き出すとそれまで黙っていた青年が

思いつめたような眼差しをして

「あの、僕・・・(May I...?)」

 

言いながら両手は虚空に突き出され、

わかる、わかるよ、君、犬に触りたいんだよね!

 

しかし残念ながら今はそういうの、駄目でさ!

 

「すみません、この犬は現在訓練中で、

犬のことは無視してください」

 

私の言葉に青年は一瞬にして表情を消す

正面に視線を据えて黙り込んでしまい

・・・あ、私、今、言葉がきつかったかなあ・・・

 

せっかく犬に対して好意を示してもらえたのに

私はそれを台無しにしたというか、

もう少し他にいいようはあったかなあ・・・!

 

その間中アーシーは非常に『いい子』に

床に座り込んでいて、うーむ、辛いところだが

訓練を第一に考えれば私は間違っていなかった、

でもほら、社交的にというか人としてというか・・・

 

静かに悩んでおりました私でしたが

バスが大きく左にカーブを撮った瞬間

さっきからずっと仏頂面をしていた青年が

そのまま唇だけを動かして

「僕、うまく出来ています?(Am I good?)」

 

え?

 

何それ、私にお尋ねですか?

 

でも何を?

 

「失礼ですが何とおっしゃいました?」

 

「いえ、僕、上手に

犬のことを無視できていますか?

すごく難しいです、だってこんなに

可愛くて賢い犬なんですから・・・!」

 

バスを降りる際、私は青年に

重ねてお礼を申し上げました。

 

アーシーと私の訓練は

世間の善男善女に支えられていると

しみじみ感じる経験でした。

 

 

 

機会があるならバスの中で

犬の近くに座りたいあなたも

犬は距離をとって

眺めるが良し、なあなたも

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