新顔続々! でも足下はトラップだらけ(真鶴半島) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

以前の記事でも宣言しておりましたが

ウミウシの観察・撮影を目的に

ふたたび真鶴半島を訪れました。

半島突端部の「三ツ石(みついし)」周辺は

神奈川県でも有数の磯遊びのメッカです。

 

なお、シンボルとなる三ツ石には

鳥居やしめ縄があるということもあって

一見渡ることができないように見えますが

実際には干潮時には陸続きになりますし

「禁止」はされていないので渡ることは可能です。

ただし、潮が満ちると戻れなくなるリスクがありますし

現地でも推奨はされていません。

また、上の俯瞰写真だとわからないかもしれませんが

岩場は非常に歩きにくく、三ツ石に渡るまでに

片道で30~40分くらいかかる様子。

どうしても行きたいなら天気や満干潮時間をしっかり把握し

万全の準備をして行く必要がありそうです。

 

 

 

 

 

下に降りるとこんな感じ。

岩場のアップダウンが激しいので

歩き回るには相当時間がかかります。

(多分、天神島より歩きにくい)

 

しかし、これだけの自然度なら

きっと何かしら新顔にも会えるのではないかと期待。

そうしてタイドプールを漁っていると早速……↓

 

 

 

 

 

おお、これは美しい貝

間違いなく今まで見たことがありません。

実際、見つけたタイミングでは何者かわからず

家に帰って諸々検索してようやく識別できました。

ミスガイといい、貝殻を持つウミウシの仲間だそうです。

 

遭遇率・・・2 (珍種というほどではないそうですが)

インパクト・・・4 (ウミウシにしては大型で目立つ)

美しさ・・・4 (気品を感じるフォルム)

俊敏性・・・1 (ウミウシなのでしゃーない)

知名度・・・2 (美麗種だからかそれなりに知名度あり)

 

 

 

 

 

別の個体を手に乗せてみました。

貝殻の柄が異なることで識別できますね。

この貝殻はほとんど飾りみたいなものらしく

しかも華奢で壊れやすいらしいので

手に持つ際には一応注意が必要です。

 

上記の通り、ウミウシみたいな貝というより

貝の特徴を持つウミウシという感じですね。

(ウミウシは元々貝の仲間ではありますが)

なお、水っぽい質感なのでミ「ズ」ガイと

勘違いしてしまいそうですが、濁点は付かないので念のため。

 

 

 

 

 

 

ほか、各種カニや巨大アメフラシ(右)など

天神島材木座などで見られるような

メジャーな海の生きものが多数観察できます。

恐らく、退屈することはないでしょう。

 

潮が満ちてきても歩ける範囲が広い分

天神島よりも探索効率が良いかもしれません。

ただ、少なくともこの日は天神島のメジャー種である

アオウミウシの姿は確認できませんでした。

潮流などの関係で、生息し難いのでしょうか?

 

 

 

 

 

天神島を始め、磯でよく見かける

イソカニダマシ。カニそっくりなヤドカリの仲間です。

 

 

 

 

 

 

これはイソクズガニ……なのですが

この日は初めて、海藻などを纏っていない

すっぽんぽん巣の状態のイソクズガニに会えました(右写真)。

概ね予想通りのフォルム……とでも言いましょうか。

もちろん左の(?)を纏った状態の個体を

無理やり引っぺがせば右の状態を観察できるのですが

また装飾し直すのが大変ですのでやめておきましょう(汗)

 

 

 

 

 

みずてっぽうニセクロナマコ版)

天神島と同様に多数確認できました。

 

 

 

 

 

 

ではこれはどうなのか?

黒色だしやはりニセクロナマコか?と思いきや

水に浸けてみると大きなトゲがたくさん……。

どうやら、マナマコのようですね。

 

 

 

 

 

こういうフォルムであれば

マナマコであるとすぐにわかります。

なお、言うまでもないことですが

ウニなどと同様、持ち帰ることは固く禁止されています。

 

 

 

 

 

……なんか貝殻的にイモガイっぽくて

気になりましたが、ケースを駆使して直接触れずに

一応水揚げ(?)してみました。

中から何か覗いているようですが……ヤドカリ?

あまり深く追究するのは嫌でしたので

写真だけ撮ってすぐに放してしまいました(汗)

  ▼

読者様からのご指摘により

マガキガイという巻貝であることがわかりました。

中身の形状も似ているので間違いなさそうです。

Wikipediaにも「イモガイに似ているが無毒

わざわざ書いてあるほどでした。

誠にありがとうございました。

 

遭遇率・・・2 (この形状の貝に会ったのは今回が初)

インパクト・・・3 (イモガイを知っている人はビビる)

美しさ・・・3 (貝殻そのものは美しい)

俊敏性・・・1 (貝なので)

知名度・・・2 (沖縄方面では食用にもなるらしい)

 

 

 

 

 

また変なものが出てきた(汗)

クモヒトデの仲間であることはわかるかと思いますが

これはアオスジクモヒトデ。ゴカイが5体合体したような

かなりキモいフォルムですが、見方によっては綺麗……かもしんない。

 

遭遇率・・・2 (そう簡単には会えないはず)

インパクト・・・3 (印象には残る)

美しさ・・・2 (ブルーのラインは綺麗だけど、キモい(直球))

俊敏性・・・2 (他のクモヒトデと同様、よく動く)

知名度・・・2 (磯遊びのマニアでないと知らないかも?)

 

 

 

 

 

裏返すとこんな感じ。

ブルーのラインが目を惹きますが

やっぱりキモさの方が先行します(汗)

恐らく、この系統のメジャー種である

ニホンクモヒトデと比較してもキモいです……。

 

 

 

 

 

で、上記のクモヒトデを始めとして

多くの生きものは岩の隙間などに隠れているのですが

自然度の高さゆえか、天神島よりも遥かに高い頻度で

ガンガゼにエンカウントするので注意が必要です。

 

 

 

 

 

さて、ガンガゼというとこんなふうに

集団で固まっているイメージが強いかもしれませんが

母数が多いここでは必ずしもこの限りではなく……。↓

 

 

 

 

 

ムラサキウニの中にしれっと混じっていたり……。

 

 

 

 

 

非常に小さな「稚ウニ」

思いがけず狭い隙間に隠れていたり……

正直、どこにいるかわかりません。

 

刺されたらすぐに死に至るような存在ではないものの

その場で磯遊びは切り上げざるを得ないので

見方によっては即死トラップに近い存在かもしれない(爆)

シリーズを通じて「トゲ」におびえる

ロックマンの気持ちがよくわかりました。ティウンティウンティウン……

(実際、ロックマンのトゲトラップによく似てるので画像検索してみてください)

 

とりあえず、常に足下に気を付けることと

見えない隙間に手を突っ込むのはやめること。

この2つを厳守するようにするのが最低条件です。

また、このトゲトラップはロックマンのヤツと違って

自力で動ける上、ウニにしては結構速度が速いので

いつのまにか足下に近づかれてプスッということも

あり得ないとは言い切れなかったりします。ガーン

そういうわけであまりにもリスクが高過ぎるため

講座「首都圏生きものめぐり」でここを案内することは

今のところ全く予定しておりません(汗)

 

 

 

 

 

!?

 

 

 

 

 

こ、これはどう見てもウツボ……。

足下をするりと抜け、岩の下に隠れました。

驚いて声を上げた私に気づき

近くの親子連れが網を持って援軍(?)に。

 

ガンガゼよりある意味危険な存在ですが

こんなチャンスは滅多にないだろうと考え

親子さんと一緒に岩の下から追い出し

捕獲・観察・撮影を試みることとしました。

 

途中、お子さんが危うく手を伸ばしかけたので

ものすごく慌てて引き留めたのをよく覚えています(汗)

で、試行錯誤した結果……↓

 

 

 

 

 

見事、巨大なウツボを捕獲。

かなりの大物で、しかも非常に元気な個体。

網を持つお父さんも大変そうでしたので

早々に撮影だけさせていただきました。

ご協力、誠にありがとうございました。<(_ _)>

 

遭遇率・・・2 (実は結構磯に出るらしい)

インパクト・・・5 (間近で見たらヤバい)

美しさ・・・3 (身体の色はなかなかお洒落)

俊敏性・・・4 (動く時は素早く、そして力強い)

知名度・・・5 (名前くらいは誰でも知っているはず)

 

一般には恐ろしく嚙む力が強い

恐怖の魚というイメージが強いかと思われますが

その力強さにはなかなか惹かれるものがあります。

網の中から危うく自力で脱出しかけたり

尻尾でこちらに反撃を仕掛けてきたり……と

強者感を見せつけられ、ある種の敬意すら抱いてしまうほどでした。

また、上記の通り身体の模様は結構綺麗ですし

食材としても美味で人気が高い魚だったりするので

単純に畏怖・嫌悪するのもよろしくないかなと感じる今日この頃です。

 

なお、海賊漫画「ONE PIECE」には多彩な魚人が登場しますが

何気に今のところウツボの魚人は出ていないようです。

マクロファリンクスとかマニアックなのは出ているのに

 

 

 

 

 

そして、この日最後の新顔です。

全身にイボがある(ように見える)

結構大型のでっぷりしたウミウシ。

これはミヤコウミウシというらしく

ここ真鶴半島を代表するウミウシのようです。

 

遭遇率・・・3 (真鶴ではれっきとした普通種)

インパクト・・・4 (多分、一度見たら忘れない)

美しさ・・・3 (キモさもあるけど、美しさも同居する)

俊敏性・・・1 (ウミウシに速度を要求してはいけない)

知名度・・・3 (現地では普通種なので知られた存在)

 

 

 

 

 

手持ちのケース(マカロンが入っていたヤツ)に

入れてみました。サイズ感がわかりにくいかもしれませんが

この個体は最大で6~7cmくらいあったはずです。

ただ、岩の上なんかを歩いていると

保護色になってちょっと見つけにくいかもしれません。

一応、青い斑点はよく観察するとすぐ見つかるので

うっかり踏んづけたりしないよう、気を付ける必要があります。

 

また、卵塊は白いリボン状の物体で

この日そこそこの数が確認できました。

現地の案内板などでも「よく見られるウミウシ」と

書かれていましたので、ここのメジャー種であることは

どうやら間違いないようです。

 

 

 

 

 

夕方になり、潮が満ちてきたところで撤収。

全体的にこの日は潮位が低かったためか

三ツ石には結構な数の釣り客等が確認できました。

 

上記の通り、三ツ石に渡るのは禁止ではないものの

推奨はされていないので、行くなら自己責任です。

 

 

 

 

 

おっと、逆光につき酷い写りですが

まだクロサギが残っていました。

帰る前に撮影しておくとしましょう。

 

全体的に満足のいく磯散策でしたが

また夏場になったら見られるものも変わるはず。

上記の通りリスクはありますが

今年はもう数回足を運びたいところですね。

 

 

 

 

 

【4/28 真鶴半島で撮影した生きもの】

鳥類・・・イソヒヨドリ、ウミネコ、クロサギ、トビ、メジロ

昆虫類・・・アオスジアゲハ、オオゲジ、カラスアゲハ、クマバチ、コフキゾウムシ、コマルハナバチ、セイヨウミツバチ、ツチイナゴ、ニッポンヒゲナガハナバチ、ハグロケバエ、ヒメツチハンミョウ、ヤマトシジミ、ヨツボシケシキスイ

その他・・・アオスジクモヒトデ、アカウニ、アゴハゼ、アメフラシ、イソカニダマシ、イソクズガニ、イソスジエビ、イソヨコバサミ、イワガニ、ウツボ、ウメボシイソギンチャク、オオヘビガイ、ガンガゼ、クロイソカイメン、ケヤリムシ、ショウジンガニ、ダイダイイソカイメン、タカラガイ、タテジマイソギンチャク、トゲアシガニ、ニセクロナマコ、バフンウニ、ヒライソガニ、フナムシ、ホンヤドカリ、マガキガイ、マナマコ、ミスガイ、ミヤコウミウシ、ムラサキウニ、ムラサキカイメン、ヤツデヒトデ、ヨロイイソギンチャク

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2024年6月16日(日)に開催いたします。

 行先は「代々木公園~明治神宮御苑」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。