ある意味での地域間格差(八ヶ岳・萌木の村) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

 

昨年の晩夏にも行ってまいりました

八ヶ岳の萌木の村。半分遊び・半分仕事でしたので

昨年と比べるとあまり時間は割けませんでしたが

それほど極端に広いわけでもないので

お昼到着でも十分に全体を散策でき

撮影を楽しめました。

 

トップの写真は最寄りの清里駅前です。

ここにも階段状の花壇が広がっており

マツムシソウ(の園芸品種)には

ニホンミツバチが飛来していました(右写真)。

ちなみに萌木の村は、清里駅からせいぜい徒歩15分です。

 

 

 

 

 

夏の萌木の村は、まさに花ざかり。

日本産の山野草が多いナチュラルガーデンで

野趣に満ちた空間となっています。

 

代々木お台場のガーデンに通じるものがありますが

あちらよりも八ヶ岳界隈に咲く(つまり日本在来の)

山野草のシェアが大きくなっているのが特徴です。

無論、すべてがそうというわけではなく

所々に海外産の宿根草も使っています。

(特に悪影響はないみたいです)

 

 

 

 

 

カワラナデシコに飛来したウラギンヒョウモン

ツマグロ以外のヒョウモンチョウというのは

やはり良いものですね。ただし最近はこの周辺でも

徐々にツマグロが増えているとも聞いております。

 

 

 

 

 

 

2種類のマルハナバチが出現。

左は、軽井沢で新顔登録したオオマルハナバチ

右はコマルハナバチのようです。

 

前者は都心部で見る機会がほぼなく

西関東または北関東の自然地に行かないと

なかなか出会えません。逆にそういう場所であれば

コンスタントに出会えるハチとなっています。

 

ただ、タイトルにある「地域間格差」とは

これのことではありません。一応、念のため。

 

 

 

 

 

 

萌木の村は、ガーデンをデザインした

英国人ガーデナー ポール・スミザー氏の意向もあり

生きものの暮らしやすい凸凹した環境になっています。

植栽の高低差ももちろんですが

石組などを見ても、きっちり敷き詰めてはおらず

あえて隙間を設けて小動物が隠れられるようにしています。

また、使っている石は地場産のものらしいです。

 

 

 

 

 

ニホントカゲが飛び出しました。

こういう光景が割と日常茶飯事です。

岩の隙間がちょうどいい住処になっている模様。

 

ここは「エサ」に困ることもないので

暮らしやすいようです。

 

 

 

 

 

これはオオチャバネセセリ

イチモンジセセリとは違い、翅の白い斑点が

一直線ではなく互い違いに並んでいます。

 

都心部でまず見ることはありませんが

狭山丘陵あたりに行けばそこそこ見かけます。

 

 

 

 

 

ちょっときれいなハエが交尾中……

ただ、種名はわかりませんでした。

ミスジハマダラミバエというのが一番近そうですが

翅の模様がかなり異なっておりまして

どうにも決め手に欠けます。というわけで、

新顔登録は一旦保留させていただきます。

 

 

 

 

 

秋のお馴染み ウラナミシジミが出現。

マダツボミ状態のオミナエシに来ていました。

 

昆虫を呼びやすいということもあり

オミナエシとヒヨドリバナは

とりわけ多く植えられています。

 

 

 

 

 

昨年もここで撮影したヒロバネヒナバッタ

似たバッタ(ヒナバッタ)なら都心部にもいますが

本種はやはり丘陵~山岳域の自然度の高い場所に

分布しているようです。

 

 

 

 

 

 

乾燥した原っぱのようなところもあれば

日当たりの弱い林床部もあり、

それぞれに適した山野草が開花しています。

 

ここでの山野草は近隣の自生地より

種を採るなどして苗を育て、増殖させていますが

植物の育ちやすい環境ができているからか

今では本家の自生地より数がどんどん増えているそうです。

 

 

 

 

 

人工的に造成した小川も流れていますが

周囲の植物があまりに元気に育っているからか

角度によっては水場が見えません(笑)

 

 

 

 

 

ここから、2種類の新顔を紹介。

まずはこちらのカミキリムシです。

かなり小型で、配色的にも地味な存在。

ニイジマトラカミキリというそうです。

命名した博士が新島さんという方だとか。

 

遭遇率・・・2(珍種というほどではない模様)

インパクト・・・2 (サイズや色的に目立ちにくい)

美しさ・・・3 (シンプルながらお洒落なトラ模様)

俊敏性・・・3 (そこそこ早く歩き回る)

知名度・・・1 (図鑑には掲載されている)

 

この手の山岳域では割と普通にみられる

カミキリムシなのだそうです。

虎党というわけではないので大阪に沸いたりはしません。つか阪神強い

 

 

 

 

 

こっちも微妙にトラ模様なのですが

トンボエダシャクという蛾の仲間です。

 

遭遇率・・・1(これも珍種ではないそうですが……)

インパクト・・・3 (そこそこ大きめ)

美しさ・・・3 (まあ、蛾なので仕方ない)

俊敏性・・・3 (そんなに速くは飛べない模様)

知名度・・・1 (知らなくてもまあ困らない(爆))

 

類似種にヒロオビトンボエダシャクというのがいて

もしかしたらそちらかもしれない……と迷っております。

まあ、いずれにしても新顔の蛾になります。

名前の通り、ちょっとトンボみたいなフォルムです。

 

 

 

 

 

ちなみにこの日一番虫が集まっていたのは

とある看板横の、恐らく勝手に生えてきたであろう

セイタカアワダチソウでした。

ニホンミツバチが集中しており、蜜を集めています。

 

この花から採れるハチミツは癖が強すぎて

とても人に向けて販売できるものではないそうですが

ハチの方はお気に入りなのか、

飼育されているセイヨウミツバチもよく来ます。

 

 

 

 

 

……こ、これはルリボシカミキリ

日本で最も美しいカミキリムシとして

高い人気を誇る甲虫です。

 

ショップの外壁にくっついていたので

可能な限りクローズアップして撮影。

前回会ったのは、それこそ10年前の話。

昭和記念公園の雑木林で撮影しました。

 

都心部で出会えたら相当ラッキーな種ですが

近くを通りかかった萌木の村のスタッフさん曰く

「毎年来てますよ」とのこと。

 

毎年ですか………そうですか………。orz

 

 

 

 

 

実際、何回かエンカウントしましたし

すぐ目の前に出てきたりもしたので

捕まえて手に持って撮影してみました。

いくら八ヶ岳では「普通」でも、

都心部じゃ「お宝」のようなもの。

次、いつ会えるかわからないのですから

しっかり色んな角度から撮っておきます。

 

接写してみてようやく気付いたのですが

コイツの触角にはギャルのブーツみたいに

モコモコした毛が何か所かに生えています。

色だけを見れば、メタリックグリーンの

ミドリカミキリの方が美しいという説もあるかもしれませんが

やはり日本人好みの「青」ということもあって

人気はルリボシの方が遥かに上のようです。

 

 

 

 

 

最後に、まだ若い個体と思われるジョウビタキ♂

実は萌木の村の中に何個体か営巣しているらしく

ここでは常連さんなのだそうです。

 

調べてみたところ、ジョウビタキの日本での営巣は

ほんの十数年前まではかなり珍しいことだったらしく

通常はユーラシア大陸で繁殖するのだとか。

近年、日本本土での繁殖事例が増えているらしいので

都心部でのエンカウント率が最近高くなっているのも

この辺りに理由があるのかもしれません。

 

なお、上のトカゲと同じくエサは豊富なので

人が多い分天敵も少ない萌木の村は

格好の営巣地となっているようです。

建物の隙間とか、巣をつくりやすい所も多いですしね。

 

 

 

 

 

【7/26 萌木の村で撮影した生きもの】

鳥類・・・ジョウビタキ、ヒヨドリ

昆虫類・・・アカスジカメムシ、アキアカネ、ウラギンヒョウモン、オオスカシバ、オオチャバネセセリ、オオヒラタシデムシ、オオマルハナバチ、キアゲハ(幼虫)、キイロスズメバチ、キタキチョウ、キマワリ、コアオハナムグリ、コアシナガバチ、シオカラトンボ、シオヤアブ、ジャノメチョウ、セイヨウミツバチ、トンボエダシャク、ナキイナゴ、ナミテントウ、ニイジマトラカミキリ、ニホンミツバチ、ヒロバネヒナバッタ、マメコガネ、モンキチョウ、ラミーカミキリ、ルリボシカミキリ

その他・・・ニホントカゲ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2023年9月17日(日)に開催いたします。

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小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

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