これこそまさに高嶺の「華」(八ヶ岳・萌木の村) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

突然ですが、ここは清里(山梨県)の駅前広場。

「人気リゾート地→斜陽→廃墟」などと

アレなイメージを抱く方も多いかもしれませんし

実際ちらほらと使われていない建物が見られますが

ちゃんと営業しているお店もあります。

実際、昼食は駅前の食堂で済ませましたが

他にもお客さんはいらっしゃっていました。

 

仕事の関係で、この近くの「萌木の村」という施設に

以前取材でお伺いしたことがありましたが

取材時は雪の降る冬場だったこともあり

動植物は全くと言っていいほど見られませんでした。

そこで今回、最盛期である8月の内に

プライベートで現地を見ておきたいと思い

高速バスとJRを乗り継いでやってきた次第です。

「首都圏」でないことは最早触れるだけ野暮

 

 

 

 

 

ここが萌木の村です。日本に暮らしている

とある英国人のガーデナーさんがデザインした

高原らしいナチュラルガーデンが見事!

(ガーデン以外にレストランやショップもあります)

使用されている植物はほとんどが山野草・宿根草です。

写真だとわかりにくいいですが、左の茂みの中には

人工的に作られた小川が流れています。

 

 

 

 

 

 

蜜源が豊富な他、隠れる場所や幼虫の食草なども多く

八ヶ岳らしい周囲の恵まれた自然も相俟って

昆虫達には居心地よい環境のようです。

(左:ナツアカネ、右:ルリシジミ

 

 

 

 

 

キアゲハには何度か遭遇しました。

(逆にナミアゲハの姿はありません)

いずれも珍しいチョウではありませんが

こちらの方がより標高の高い環境を

好むということかもしれません。

 

 

 

 

 

キアゲハを探せ!

5秒以内に見つけられたら……何もありません

 

 

 

 

 

 

レストラン前にも多くの植栽があります。

この時期一番目立つのは、やはりオミナエシでしょうか。

前々から書いております通り、昆虫を呼びやすい花で

自然派のガーデンを目指す際には重宝されます。

(ただし雨上がりは臭うので嫌われます。最悪抜かれます(爆))

 

 

 

 

 

富士山周辺の亜高山帯に咲くというフジアザミ

アザミの仲間でも花が巨大で、下向きに咲きます。

その華やかさゆえに園芸植物かと思いがちですが

実は山野草であり、日本の固有種でもあります。

 

 

 

 

 

オミナエシローズヒップ(バラの実)の組合せ。

 

 

 

 

 

ギボウシなど、日陰で育つ植物も多く見られます。

すでに開花期はほぼ終わってしまっていましたが

ギボウシならではの大きな葉はよく目立ちます。

 

 

 

 

 

 

左:バークチップを敷いて歩きやすくした散策路

右:廃車(?)を利用した巨大なアレンジメント

 

やや閑散としている感がある清里において

萌木の村は四季を通じて結構観光客が多いため

こうした人にやさしい仕掛けも多々見られます。

 

 

 

 

 

石垣の隙間には、トカゲなどが住み着きます。

ナチュラルガーデンと呼ばれる庭は数多いですが

こうした「生きもの目線」をここまで実施しつつ

魅せる庭として美しく仕立てているところは

日本でも数少ないのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

石組には、ここの近くで切り出された石を用いています。

「くさび」の跡がそのまま残されているのが興味深い。

 

 

 

 

 

萌木の村のガーデンは、いわゆる「花壇」だけでなく

散策路にまで植物が堂々とはみ出ているのが特徴です。

このようにキッチリと分けない植栽が

自然な雰囲気を醸し出してくれます。

(写真ではオミナエシがはみ出しています)

 

 

 

 

 

開けたガーデン。手前にあるのはフジバカマ

ご存知アサギマダラに好まれる秋の七草ですが

どちらかというとこの花よりは

オミナエシの方が昆虫を呼ぶ効果は高い模様です。

 

 

 

 

 

ここからは昆虫の紹介が続きます。

予想通り、平地ではあまり見られない

ちょっと珍しい昆虫が多数出現しました。

 

まずはこの昆虫。コウモリの耳みたいな

奇妙な突起が背中に生えています。

名をミミズクといい、こう見えてカメムシの仲間。

名前の由来はミミズク(鳥)の耳(?)みたいな

突起を持っているからとされています。

 

遭遇率・・・1 (森林暮らしらしく、都心ではまず目にしない)

インパクト・・・3 (印象的なフォルム)

美しさ・・・2 (見ての通り色は地味です)

俊敏性・・・3 (この時はほとんど動きませんでしたが)

知名度・・・2 (シンプルな名称なので覚えやすい?)

 

 

 

 

 

上から見ると、何となくセミのような形。

実際、セミもカメムシの仲間ですしね。

 

 

 

 

 

新顔ではないですが、久々のオオゾウムシ

他のゾウムシと比べても明らかに大き目です。

 

 

 

 

 

「死んだフリ」をするオオゾウムシ。

ゾウムシやハムシの仲間によく見られます。

 

 

 

 

 

花にはスズメバチも来ていましたが

自然共生の場である以上は当然のことです。

(写真はキイロスズメバチ

 

 

 

 

 

上記のキイロスズメバチが来ていた植物には

こんな小さなカメムシも多数確認できました。

アオモンツノカメムシといいます。

昨年新顔登録していますね。

 

 

 

 

 

2019年に新顔登録したトゲカメムシ

萌木の村では多数確認しています。

 

カメムシやハムシなどは植物を食害するため

多くのガーデンでは忌み嫌われる存在ではありますが

あちこちで見られることからもわかる通り

萌木の村では薬剤による駆除はしておりません。

管理は大変そうですが、私のようなマニアにとっては嬉しいことです。

 

 

 

 

 

一見ヒナバッタのように見えましたが

こちらは近似種のヒロバネヒナバッタ

見ての通り翅の下側がちょっと膨らんでいるのが

名前の由来……らしいのですが

撮影して拡大しないと気づけないかもしれません。

 

遭遇率・・・2 (丘陵~山岳域を好み都会では会いにくい)

インパクト・・・2 (地味な色で、石の上にいるとわかりにくい)

美しさ・・・2 (美麗種とは言い難い)

俊敏性・・・3 (バッタらしく跳んで逃げていきます)

知名度・・・1 (一応手持ちの図鑑には載っている)

オール2まであと一歩

 

どちらかというと翅のふくらみよりも

腹部の先端付近が赤いのが「ヒナバッタじゃないな」と

気づかせるきっかけになりました。ただ、これだけでは

どうやら識別できないようなので注意が必要です。

 

 

 

 

 

この日、最もインパクトが大きかったのはこちら。

カワトンボやオオアオイトトンボなどと同じく

メタリックグリーンの美しい身体が目立つ

シオカラトンボ大のトンボです。

名をタカネトンボといい、タカネ(高嶺)の名の通り

標高の高い山岳域に生息するトンボです。

 

遭遇率・・・1 (都心部では見られないと思ってよい)

インパクト・・・3 (サイズは大きいので目立ちやすい)

美しさ・・・4 (見ての通り金属光沢が見事)

俊敏性・・・4 (他のトンボに準じます)

知名度・・・3 (図鑑には載っています)

 

エゾトンボ科というカテゴリに属しており

その中では本種が一番普通種……らしいのですが

そもそも山岳域にしかいないので

もし東京都内で見かけたりしたらちょっとした事件です。

 

 

 

 

 

正面から見るとこうです。 ぶっちゃけアブと大差ない

この個体はなぜか建物内に迷い込んでおり

窓際でへばっていたのを拾って撮りました。

その後、すぐに元気に飛んでいきましたが。

 

この日はあまり天気がよろしくなく

終始暗い雲が被っていたので

晴天時よりも昆虫の数は少なかったと思われます。

それでも、贅沢な私が4時間程度滞在して

まったく飽きることがないくらい盛況だったので

八ヶ岳界隈に出かけるなら、ぜひ一度は寄っていただきたい名所です。

無論、季節の植物もたっぷりと楽しめます。

 

 

 

 

 

最後に、お馴染みのアサギマダラです。

陽が傾いた頃に2頭見られました。

フジバカマではなく、オミナエシで吸蜜しています。

今年は何だかんだで方々で見かけるかも?

 

 

 

 

【8/31 萌木の村で撮影した生きもの】

鳥類・・・エナガ、ホオジロ、ヤマガラ

昆虫類・・・アオモンツノカメムシ、アカスジカメムシ、アサギマダラ、イチモンジセセリ、ウラナミシジミ、エサキモンキツノカメムシ、オオゾウムシ、オオマルハナバチ、キアゲハ、キアシナガバチ、キイロスズメバチ、クロヒカゲ、コアオハナムグリ、コアシナガバチ、コミスジ、スジクロシロチョウ、タカネトンボ、チャバネセセリ、ツバメシジミ、ツマグロヒョウモン、トゲカメムシ、トラマルハナバチ、ナツアカネ、ナミテントウ、ニホンミツバチ、ハサミムシ、ビロウドコガネ、ヒロバネヒナバッタ、ホソヘリカメムシ、ミドリヒョウモン、ミミズク、ムネアカオオアリ、モンキチョウ、ヤマトシジミ、ルリシジミ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2022年9月25日(日)に開催いたします。

 行先は「秋の里山ガーデン&四季の森公園(横浜市)」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。